社員10人以下の零細企業の社長の年収事情は？年収の決め方も解説！

社員10人以下の零細企業では、社長の年収がどのくらいなのか、またどのように決めるべきなのか分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。

大企業や中小企業と比べ、社員10人規模の企業では売上や利益が安定しにくく、社長の年収も社員の給与や資金繰りと密接に関係します。そのため、社長の年収を高く設定しすぎても、逆に低くしすぎても、社員や会社経営に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、社員10人以下の企業では、社長と社員の距離が近く、社長の年収は社員のモチベーションや会社の信頼性にも影響します。適切な年収設定を行うには、税金や社会保険、会社の成長段階など、さまざまな視点から検討することが欠かせません。

この記事では、社員10人以下の企業の社長の年収事情を中心に、年収に影響を与える要因、社員10人規模の企業で働くメリット・デメリット、そして社長の年収の決め方や注意点までをわかりやすく解説します。これから起業を考えている社長や、社員10人以下の企業で働くことを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

【リスクが大きすぎる】
税理士や社労士に役員報酬の計算を任せるべき理由

役員報酬の計算ミスは、単なる計算間違いでは済みません。
法人が役員報酬の計算を誤ると、税務上の否認リスクや加算税・追徴課税といった重大な問題に発展します。

特に役員報酬は、一般の給与と異なり、法人税法上の厳格なルールが定められており、少しの計算ミスや手続き漏れが、そのまま損金不算入につながります。

たとえ役員が一人だけの会社であっても、役員報酬の計算ミスは例外ではありません。
役員報酬の再計算や修正が必要になれば、税務署からの指摘対応や追徴課税への対応が必要となり、経営者自身の負担は一気に増大します。
このような背景から、役員報酬の計算は自社対応ではなく、税理士などの専門家に任せるべき業務といえます。

給与計算に関する参考記事：「給与計算ミスへの対処法は？責任・リスクや防止策も解説！」

役員報酬の計算ミスによる税務・信用リスク

役員報酬を誤って計算・支給すると、まず問題になるのが法人税の取扱いです。
役員報酬は、要件を満たさなければ経費として認められず、税務署から否認される可能性があります。

役員報酬の計算ミスが続くと、税務署から「役員報酬を適切に管理できていない法人」と評価されやすくなり、
結果として税務調査の対象になりやすくなります。

また、役員報酬には源泉所得税がかかるため、会社は「預かって納める税金」を正確に処理する責任を負います。
役員が一人しかいない会社であっても、源泉所得税の計算や納付を誤れば、一般の給与と同様に加算税や追徴課税が課されます。

実際に国税庁が公表した令和5年度のデータでは、申告漏れ総額は9,741億円、追徴税額は3,197億円に達し、法人1件あたりの追徴額は平均550万円と、調査を受けた企業にとって極めて重い負担となっています。

社員10人以下の企業の社長の年収は？

零細企業の社長の年収は、社員数や業種、企業規模によって大きく異なります。特に社員10人以下の零細企業では、社長の年収は中小企業と比べて低めになりやすい傾向があります。

一般的に、社員数が少ない零細企業では、売上や利益の規模が限られるため、社長自身の年収も抑えられがちです。その一方で、具体的な社長の年収を把握するには、統計データや業界別の調査結果を参考にすることが重要になります。

たとえば、2023年の中小企業白書によると、零細企業の社長の平均年収は約600万円とされています。ただし、この年収水準は社員数が何人か、特に社員10人以下かどうかによっても大きく変動します。

また、社長の年収は企業の収益力や財務状況に強く左右されます。社員が少ない企業ほど、社長の判断がダイレクトに業績へ影響し、結果として年収にも直結します。

さらに、零細企業は市場環境の変化に弱く、年収の安定性が低い点も特徴です。そのため、零細企業の社長には、社員の雇用を守りながら、自身の年収をどう確保するかという経営判断が常に求められます。

社員10人以下の企業における社長の年収の実態

社員10人以下の企業では、社長の年収は企業の業績とほぼ直結します。業績が好調な場合は社長の年収も増えやすい一方、業績が悪化すると年収はすぐに減少します。社員10人規模の企業では、社長が経営だけでなく、営業・現場対応・管理業務などを兼務するケースも多く、業務負担は非常に大きくなりがちです。しかし、その労働量に見合った年収を必ずしも得られるとは限りません。

実態として、社員10人以下の零細企業の社長の年収は、おおよそ400万円〜800万円程度が一般的とされています。ただし、この年収レンジはあくまで目安であり、業種や地域、社員構成によって差があります。たとえば、新規顧客の獲得や大きな案件の成功によって、一時的に社長の年収が大きく伸びるケースもあります。一方で、取引先の倒産や景気後退などにより、社員10人以下の企業では年収が急激に下がるリスクも避けられません。

従業員5人規模の企業における社長の年収の現状

従業員が5人程度の企業では、社長の年収はさらに厳しい水準になることが多く見られます。特に創業初期や資金繰りが不安定な時期には、社長が自ら年収を抑え、社員の給与や運転資金を優先するケースも少なくありません。この場合、社長の年収は300万円〜500万円程度にとどまることもあります。社員数が少ないほど、社長の年収は企業の体力を反映しやすくなります。

一方で、業績が安定し、社員が定着している企業では、社長の年収も徐々に増加する傾向があります。特に、社長自身が高い専門性や技術力を持ち、それが企業の競争力につながっている場合には、年収アップが期待できます。従業員5人規模の企業では、社長の年収は企業の存続や成長と密接に関係しています。創業段階では年収を抑えざるを得ませんが、事業が軌道に乗れば、社長の年収も段階的に引き上げることが可能です。

ただし、社員が少ない企業では経営資源に限りがあるため、急激に年収を伸ばすのは容易ではありません。そのため、社長の年収を安定させるには、社員10人規模への拡大や、継続的に利益を生むビジネスモデルの構築が重要となります。

社員10人以下の零細企業の社長の年収事情に関するおすすめ記事：零細企業の年収は？中小企業との違いや働くメリットとデメリットを解説

社員10人以下の企業の社長の年収に影響を与える要因

社員10人規模の会社では、社長の年収を売り上げ基準で考えるケースが多く、適切な割合を知ることが重要です。

社長の年収は売り上げの何パーセントが目安？

社長の年収は、社員数や売り上げ規模に大きく左右されます。特に社員10人以下の企業では、売り上げとのバランスが重要です。社長の給料は、企業の売り上げに強く依存します。一般的には、売り上げの数％〜10％程度を社長の年収として設定するケースが多く見られます。

たとえば、年間売り上げが1億円で、社員10人規模の企業の場合、社長の年収は100万円〜1,000万円程度が目安となります。ただし、売り上げが同じでも、利益率や社員の人件費によって社長の年収は大きく変わります。

特に、利益が少ない企業や、社員の給与負担が重い場合には、社長の年収をあえて抑え、企業の存続を優先する判断が求められます。社員10人以下の企業では、社長の年収調整が経営の安定性を左右する重要なポイントになります。

また、企業の成長段階によっても社長の年収は変動します。創業初期は社員を守るために社長の年収を低く設定し、成長期に入ると徐々に引き上げるのが一般的です。

社長と社員の年収バランスが経営に与える影響

社長と社員の年収バランスは、企業経営の健全性に直結します。特に社員10人規模の会社では、その影響が顕著です。

社長の年収が高額である一方、社員の給与が低い状態が続くと、社員の不満が高まり、モチベーション低下や離職につながりやすくなります。社員数が10人前後の企業では、1人の退職が経営に与える影響も小さくありません。

そのため、社長は自身の年収だけでなく、社員全体の給与水準や将来の昇給余地も考慮する必要があります。社員が納得できる年収水準を維持することが、結果的に社長の年収の安定にもつながります。

一人社長・社員なしの場合の年収の考え方

一人社長の場合、社長の年収はそのまま企業の利益を反映します。社員がいないため、売り上げと社長の年収の関係が非常にシンプルです。

業績が良ければ社長の年収は増えますが、売り上げが落ちれば年収も即座に減少します。また、税金や社会保険料の負担もすべて社長自身が管理する必要があります。

一人社長は、給与所得控除や各種控除を活用しながら、手取り年収を最大化する工夫が欠かせません。一方で、社員がいない分、業務負担は社長に集中するため、効率的な働き方や外注の活用が重要になります。

将来的に社員を雇い、社員10人規模へ成長させる場合には、社長の年収だけでなく、社員の人件費を見据えた設計が必要です。

雇われ社長と社員10人以下企業の年収比較

雇われ社長の年収は、企業規模や社員数によって大きく異なります。従業員100人以上の企業では、社長の年収が1,000万円を超えることも珍しくありません。

一方で、社員10人以下の企業では、雇われ社長であっても年収は500万円前後に抑えられるケースが多く見られます。企業の利益余力が限られているため、報酬水準も低くなりがちです。

雇われ社長の場合、固定給に加えて業績連動型の報酬やボーナスが設定されることが多く、企業の業績次第で年収が大きく変動します。社員10人規模の企業では、業績のブレがそのまま社長の年収に反映される点に注意が必要です。

また、ストックオプションなどの長期インセンティブが付与される場合もあるため、表面的な年収だけでなく、報酬全体の設計を見ることが重要です。

社員10人以下の企業で働くメリット・デメリット

大企業と比べると、社員10人以下の零細企業では社員の年収が低めに感じられることがあります。しかし、零細企業ならではの働きやすさや、社長との距離の近さに魅力を感じる社員も少なくありません。

年収だけを見ると不安に感じやすいものの、社員10人規模の企業では、業務の裁量や成長機会など、大企業とは異なる価値があります。年収・働き方・社長との関係性を総合的に比較し、自分に合った企業を見極めることが、就職・転職の成功につながります。

零細企業で働くメリット

社員10人以下の零細企業で働く社員には、以下のようなメリットがあります。まず、社長との距離が非常に近い点が大きな特徴です。社員数が10人前後の企業では、社長や役員と直接やり取りする場面が多く、意思決定のスピードも早くなります。自分の意見が経営に反映されやすい環境は、社員にとって大きなやりがいにつながります。

次に、裁量の大きい仕事を任されやすい点も魅力です。社員10人規模の会社では、年齢や社歴に関係なく、社長から重要な業務を任されるケースも珍しくありません。結果を出せば評価につながりやすく、年収アップや役職付与のチャンスも広がります。

さらに、肩書や役割が付きやすい点も零細企業ならではです。社員数が少ない分、早い段階でリーダー的なポジションを任され、キャリア形成を加速させることができます。

零細企業で働くデメリット

一方で、社員10人以下の零細企業には、年収面を中心としたデメリットも存在します。代表的なのは、社員の年収が安定しにくい点です。

また、社員数が10人前後と少ないため、人間関係の影響を受けやすい点も注意が必要です。社長との相性や、社員同士の関係性が合わない場合、職場環境が大きなストレスになることもあります。

このように、零細企業では年収だけでなく、働き方や人間関係も含めた総合的な判断が重要です。社員として安定した年収を重視するのか、社長の近くで成長機会を得たいのかを整理したうえで、自分に合った企業を選ぶことが大切といえるでしょう。

社員10人以下の企業の社長の年収の決め方

社員10人以下の企業では、社長の年収は会社の体力や社員への影響を踏まえて慎重に決める必要があります。

社員10人以下の企業の社長の年収の決め方①：会社規模と利益から逆算する

社員10人以下の中小企業では、社長の年収は会社の規模や利益水準に大きく左右されます。特に、社員10人規模の企業では、売上や利益がそのまま社長の年収余力に直結します。

国税庁の調査によると、会社の資本金が小さいほど役員報酬（社長年収）の平均額は低くなる傾向があります。たとえば、資本金2,000万円以下の企業では、役員報酬の平均年収は約647万円にとどまる一方、資本金10億円超の企業では平均1,758.3万円と大きな差があります。

社員10人以下の企業では、利益を社長の年収として過度に配分すると、社員の給与や事業資金が不足するリスクがあります。そのため、会社の規模・利益・社員数を客観的に見極めたうえで、無理のない社長年収を設定することが重要です。

社員10人以下の企業の社長の年収の決め方②：税金と社会保険を踏まえて最適化する

社員10人以下の企業で社長の年収を決める際には、税制や社会保険料の影響も必ず考慮する必要があります。

役員報酬として支払う社長の年収は、法人税の計算上、損金として扱われるため、法人税の負担を軽減する効果があります。一方で、社長個人には所得税・住民税が課され、年収が高くなるほど税負担も増加します。

さらに、社会保険料は社長の年収額を基準に算出されるため、社員10人以下の企業では会社負担分も含めてコストインパクトが大きくなりがちです。法人税・社長個人の税金・社会保険料のバランスを意識しながら、年収を決めることが、経営を安定させるポイントになります。

社員10人以下の企業の社長の年収の決め方③：社員や社外からの見え方を意識する

社員10人以下の企業では、社長の年収は社員や取引先から見えやすく、経営姿勢を判断される材料にもなります。

社長の年収が極端に高い場合、「社員の給料は上がらないのに社長だけ高年収」という印象を与え、社員のモチベーション低下につながる恐れがあります。特に社員10人規模の会社では、こうした不満が組織全体に広がりやすい点に注意が必要です。

社員10人以下の企業の社長の年収を決める際のヒント

社員10人以下の企業では、社長の年収は税金・資金繰り・社員への影響を踏まえて慎重に決めることが重要です。

社員10人以下の企業の社長の年収を決める際のヒント①：法人税と所得税のバランスを意識する

社員10人以下の中小企業において、社長の年収を決める際は、法人税と所得税のバランスを考えることが欠かせません。役員報酬として社長の年収を高く設定すれば、その分は法人の損金となり、法人税を抑える効果があります。

一方で、社長個人には所得税や住民税、社会保険料が課されるため、年収を上げすぎると個人側の負担が重くなります。逆に、社長の年収を抑えすぎると、社員10人以下の企業では法人税の負担が増え、会社全体の資金繰りを圧迫する可能性もあります。

そのため、社員数や利益規模を踏まえ、法人と社長個人の税負担が偏りすぎない年収設定が重要です。

社員10人以下の零細企業の社長の年収事情に関するおすすめ記事：中小企業社長の年収事情！知られざる報酬の裏側を徹底解説

社員10人以下の企業の社長の年収を決める際のヒント②：経費を活用して年収以外で調整する

社員10人以下の企業では、社長の年収だけで調整しようとすると、税負担やキャッシュフローに無理が出やすくなります。そこで重要になるのが、経費の適切な活用です。

社長が業務のために使用する車両費、通信費、出張費などは、合理性があれば経費として計上できます。これにより、年収を過度に引き上げなくても、法人税の課税所得を抑えることが可能です。

社員10人以下の企業の社長の年収を決める際のヒント③：役員報酬の変更タイミングに注意する

社員10人以下の企業であっても、社長の年収（役員報酬）は原則として「定期同額給与」として設定する必要があります。
年収を変更する場合は、事業年度開始から原則3か月以内に、株主総会や取締役会で正式に決議する必要があります。

業績悪化や利益構造の変化に応じて社長の年収を見直すこと自体は問題ありませんが、頻繁な変更や根拠の曖昧な決定は、税務署から否認されるリスクがあります。社員10人以下の企業ほど、年収変更の理由や手続きを丁寧に整えることが重要です。

社員10人以下の企業の社長の年収を決める際のヒント④：将来を見据えた年収プランを立てる

社員10人以下の企業の社長は、目先の利益だけで年収を決めるのではなく、将来の事業計画を見据えた年収プランを考える必要があります。

たとえば、利益が一時的に増えた年でも、社長の年収を急激に上げるのではなく、内部留保を厚くし、社員の雇用や設備投資に備える判断も重要です。会社の成長段階に合わせて、社長の年収を段階的に増やすことで、税負担と資金繰りの両立がしやすくなります。

社員10人以下の企業の社長の年収を決める際のヒント⑤：社員や社外への透明性を確保する

社員10人以下の企業では、社長の年収は社員や取引先から見えやすく、経営姿勢として受け取られます。
年収の決め方が不透明だと、社員の不信感やモチベーション低下につながる恐れがあります。

そのため、社長の年収は会社の利益水準や社員の給与とのバランスを踏まえ、合理的に説明できる範囲で設定することが大切です。透明性のある年収設計は、社員の納得感を高め、企業全体の安定経営につながります。

社員10人以下の企業の社長の年収を決める際の注意点

社員10人以下の企業では、社長の年収の決め方を誤ると、社員や会社経営に大きな悪影響を及ぼします。

社員10人以下の企業の社長の年収を決める際の注意点①：生活費ベースで年収を決める

社員10人以下の企業で、社長の年収を「自分の生活費を確保できる金額」から逆算して決めるのは、非常に危険な考え方です。なぜなら、社長個人の生活水準と、会社の利益や資金繰り、社員への支払い能力は本来まったく別物だからです。

「生活レベルを下げたくない」「最低でもこの年収は欲しい」といった理由で、社長の年収を一定額以上に固定してしまうケースは少なくありません。また、会社設立時に前職の給料を基準にして社長の年収を決めてしまう例も見られます。

しかし、社員10人以下の企業では、売上や利益がまだ安定していないことも多く、社長の年収を個人都合で決めると、社員の給与支払いや運転資金に悪影響を及ぼす可能性があります。

社員10人以下の企業の社長の年収を決める際の注意点②：役員報酬をゼロにする

社員10人以下の企業を新たに立ち上げた際、「会社を守るために社長の年収をゼロにする」という判断をする社長もいます。しかし、役員報酬をゼロにする年収設計は、必ずしも健全とはいえません。

確かに、社長の年収をゼロにすれば、短期的には会社の資金繰りは楽になるかもしれません。しかし、その結果、社長個人の生活が成り立たなくなれば、精神的・経済的な不安が経営判断に悪影響を及ぼします。最終的には、社員や会社全体にもマイナスの影響が及びかねません。

また、適正な社長の年収を設定したうえで赤字になるのであれば、無理に黒字化して法人税を支払うこと自体が目的化してしまう恐れもあります。社員10人以下の企業では、短期的な数字よりも、翌年以降の売上拡大や事業の安定化に注力するほうが重要です。

社長の年収をゼロにすることでしか会社が成り立たない状態は、まだ経営基盤が整っていないサインともいえます。社員を守り、事業を継続させるためにも、無理のない範囲で社長自身の年収を確保する視点が必要です。

社員10人以下の企業の社長の年収を変更する際の注意点

社員10人以下の企業では、社長の年収変更は税務・社員への影響が大きいため、正しいタイミングとルールの理解が不可欠です。

社員10人以下の企業の社長の年収を変更する際の注意点①：事業年度開始から3か月以内に決める

社員10人以下の企業で社長の年収（役員報酬）を変更する場合、原則として事業年度開始から3か月以内に決定しなければなりません。これは、事業年度の途中で社長の年収を変更すると、会社の利益調整や法人税の操作につながると税務署が判断するためです。

たとえば、決算が近づいて「想定より利益が出そうだから社長の年収を増やす」といった対応は、原則として認められていません。社員10人規模の企業では、こうした判断が法人税・所得税の両方に大きな影響を及ぼします。

また、社長の年収は株主総会での決議が必要となります。株主総会は通常、事業年度終了後3か月以内に開催されるため、そのタイミングで社長の年収変更を正式に決める流れになります。このため、「事業年度開始から3か月以内」というルールが設けられているのです。

なお、ルールを無視して事業年度の途中で社長の年収を増減した場合、変更後の年収のうち「変更額×月数分」は会社の損金として認められません。その結果、社員10人以下の企業でも法人税が増え、さらに社長個人には所得税が課されるという二重の税負担が生じる恐れがあります。

社員10人以下の企業の社長の年収を変更する際の注意点②：例外的に認められるケースを正しく理解する

社員10人以下の企業であっても、社長の年収変更が例外的に認められるケースは存在します。ただし、その要件は明確に決まっており、安易な判断は禁物です。

年収の増額が認められる代表的なケースは、社長や役員が新たに就任した場合や、役職が上がった場合です。たとえば、社員から取締役に昇格した、取締役から専務取締役になった、といったケースが該当します。

一方、年収の減額が認められるのは、役員を退任した場合や役職が下がった場合です。

また、会社の業績が著しく悪化し、資金繰りや社員の雇用維持に深刻な影響が出る場合には、社長の年収を減額しても損金算入が認められることがあります。ただし、「思ったより売上が下がった」「利益が減った」といった程度では認められず、株主や債権者に影響が及ぶレベルである必要があります。

社員10人以下の企業では、社長の年収変更がそのまま経営の安定性や社員の安心感につながるため、ルールを正しく理解したうえで慎重に判断することが重要です。

まとめ

社員10人以下の零細企業における社長の年収は、売上や利益、社員数、税金や社会保険といった多くの要素に影響されます。社員10人規模の企業では、社長の年収が会社の資金繰りや社員の給与に直結するため、慎重な判断が求められます。

社長の年収は「生活費ベース」や「前職の給料基準」で決めるのではなく、会社の利益水準や将来の成長計画、社員とのバランスを踏まえて設定することが重要です。また、年収を決める際のヒントや注意点、年収変更のルールを正しく理解しておくことで、税務リスクや社員とのトラブルを防ぐことができます。

社員10人以下の企業では、社長の年収は単なる個人の収入ではなく、社員・会社・経営の安定性すべてに関わる重要な要素です。自社の状況に合った社長の年収を設計し、社員とともに無理のない形で成長していくことが、長く続く企業経営につながるでしょう。

社員10人以下の零細企業の社長の年収事情に関するおすすめ記事：社員10人以下の零細企業を経営している社長の年収実態とは？魅力的な年収事情を徹底解説