簿記の借方・貸方とは?複式簿記の基礎知識と具体的な仕訳方法を解説!

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公開日:2025年6月

更新日:2025年6月17日

簿記を学ぶ上で欠かせないのが、「借方」と「貸方」という考え方です。特に複式簿記では、すべての取引を借方と貸方に分けて仕訳するルールが基本となっており、会計処理の正確性を保つ上で重要な役割を担っています。しかし、簿記初心者にとっては「借方・貸方ってなに?」「左右の違いは?」と混乱しがちなポイントでもあります。

この記事では、簿記における借方・貸方の基本的な意味から、左右の覚え方、実際の仕訳例、取引の分類や財務諸表への影響まで、わかりやすく解説します。これから簿記の勉強を始める方、または仕訳に苦手意識がある方も、借方・貸方の仕組みをしっかり理解することで、簿記への苦手意識を克服できるはずです。

借方・貸方とは

借方と貸方は、簿記における基本的な概念であり、複式簿記を用いて日々の取引を記録する際には、すべての取引を「借方」と「貸方」に分けて仕訳することが求められます。簿記では、1つの取引を借方と貸方の両方に記帳することによって、取引の全体像を明らかにするという特徴があります。

たとえば簿記において現金が増加した場合は、借方に「現金(資産の増加)」を記入し、その増加の原因となる売上などを貸方に記録します。逆に現金が減少した場合は、貸方に「現金(資産の減少)」と記帳し、その減少の理由を借方に示します。このように、簿記では取引の「結果」を借方または貸方に記載し、その「原因」を反対側で補完するという形式をとります。

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簿記における借方と貸方は、それぞれ以下のような内容を記載するために使用されます。

借方に記載される内容 貸方に記載される内容
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の増加 費用の減少
収益の減少 収益の増加

簿記のルールに従い、借方は仕訳帳や総勘定元帳の左側に記載され、主に資産や費用の増加を示します。また、負債・純資産・収益が減少した場合にも、借方に記帳されます。

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一方で貸方は右側に記載され、負債や純資産(自己資本)、収益の増加を示します。資産や費用が減少した場合には、貸方に取引が記帳されます。

このように、簿記の基本原則である借方・貸方の仕訳を正しく理解することが、企業の財務状況を正確に把握する第一歩です。借方と貸方に記載する金額は常に一致している必要があり、簿記ではそのバランスを保つことで帳簿の整合性を維持します。

複式簿記における借方・貸方のわかりやすい覚え方

複式簿記においては、取引の仕訳を行う際に「借方」は左側、「貸方」は右側に記載するのが簿記の基本ルールです。

借方 貸方
普通預金 100 売上100

借方・貸方の覚え方はここがポイント!

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「かりかた(借方)」の「り」が左払いであることから借方は左側、「かしかた(貸方)」の「し」が右払いであることから貸方は右側に記載すると覚えると、簿記における左右の位置を感覚的に理解しやすくなります。

簿記の原則において、資産の増加や費用の発生は借方に仕訳し、負債の増加や収益の発生は貸方に仕訳するのが基本です。たとえば、現金の増加は簿記上「現金(資産)」を借方に、売上が発生した場合は「売上(収益)」を貸方に記載します。

一方で、簿記では資産や費用が減少した場合には貸方に、負債や収益が減少した場合には借方に記載します。つまり、借方・貸方の使い分けは取引の内容に応じて反転することがあるため、正確な仕訳が求められます。

SoVa税理士ガイド編集部

借方・貸方とは?簿記の基礎知識についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:借方と貸方の違いとは?考え方や覚え方を解説

複式簿記に慣れていない段階では、「この取引は借方か貸方か」と判断するのに時間がかかるかもしれませんが、簿記の学習や実務を通じて繰り返し仕訳を行うことで、借方・貸方の判断力が身についていきます。

簿記を学ぶうえでは、できるだけ多くの仕訳例に触れ、実際に借方と貸方に分けて記帳する練習を積むことが、理解を深める近道です。借方・貸方の仕組みに慣れることで、簿記全体の構造も自然と身についていくでしょう。

借方・貸方を使った簿記上の取引分類

簿記では、取引を正確に記帳するために「借方」と「貸方」に分けて仕訳を行います。

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借方と貸方に記載される取引の分類は、以下の5種類に整理されており、これは簿記における基礎的な知識となります。

借方と貸方を使った取引の分類

取引の分類 概要
資産 借方に記載されることが多い会社の財産のこと。簿記上は現金や売掛金などが該当。
負債 貸方に記載されることが多い、買掛金や借入金などの支払義務のある金額。
純資産(自己資本) 貸方に記載されることが一般的な、資産と負債の差額。返済義務のない資金。
収益 貸方に計上されることが多い、売上や受取手数料など会社が得る収入。
費用 借方に記載されることが多い、収益を得るために必要な支出。

簿記では、これらの取引を記帳する際に「勘定科目」を用いて仕訳を行う必要があります。借方と貸方の両方に勘定科目を割り当てることで、簿記上の記録が完成します。たとえば現金が増えた場合は借方に「現金」、売上が発生した場合は貸方に「売上」と記帳します。

以下は、簿記での仕訳に用いられる代表的な勘定科目です。

記帳の際に利用する主な勘定科目

取引の分類 主な勘定科目
資産 現金、当座預金、普通預金、売掛金、前払金、建物など(主に借方に記帳)
負債 買掛金、未払金、前受金、預り金、長期借入金など(主に貸方に記帳)
純資産(自己資本) 資本金、利益準備金、繰越利益剰余金(通常は貸方に記載)
収益 売上、受取手数料、受取利息、固定資産売却益、雑収入など(貸方に記帳)
費用 仕入高、外注費、給与手当、消耗品費、地代家賃など(借方に記帳)

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このように、簿記における借方と貸方の正しい理解と勘定科目の適切な使い分けは、仕訳の正確性を高め、会計帳簿の整合性を保つために不可欠です。

借方・貸方の簿記上の仕訳例

ここからは、簿記において借方・貸方がどのように使われるのか、実際の仕訳例とともに確認していきましょう。簿記での記帳では、すべての取引を借方と貸方に振り分けて仕訳することが基本です。今回は、簿記の代表的なケースである現金取引と掛取引に分けて、それぞれの仕訳を見ていきます。

現金取引

商品の受け渡しやサービスの提供と同時に代金を現金で支払う、または受け取る取引を簿記では「現金取引」と呼びます。以下は、接待にかかった費用を現金で支払った際の簿記上の仕訳例です。

取引先の接待を行い、3万円の飲食代を現金で支払った場合の簿記処理

借方 金額 貸方 金額
交際費 30,000円 現金 30,000円

この仕訳の手順を簿記の観点から確認してみましょう。

まず、取引を「何が起きたのか」と「なぜ起きたのか」に分けて考えます。このケースでは、「交際費を使ったこと」が原因で、「現金が減った」という結果が生じたと捉えられます。

次に、それぞれの内容を簿記上の適切な勘定科目に当てはめます。費用に該当する「交際費」は借方に、支出した「現金」は貸方に記載します。

そして、仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿に、借方として交際費、貸方として現金を記入し、金額を一致させて記帳を完了します。これが、簿記における基本的な仕訳の流れです。

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掛取引

掛取引とは、簿記において商品の引き渡しやサービスの提供があっても、その場で代金を受け取らず、後日支払いを行う取引のことです。

たとえば、10万円の商品を販売し、代金が翌月に支払われる予定の場合、売掛金として借方に、売上として貸方に仕訳します。

掛取引で10万円の商品を販売した場合(代金は翌月支払い)

借方 金額 貸方 金額
売掛金 100,000円 売上 100,000円

後日、代金が普通預金口座に振り込まれた場合には、普通預金を借方、売掛金を貸方に仕訳します。

前月の販売代金として、普通預金に10万円振り込まれた場合

借方 金額 貸方 金額
普通預金 100,000円 売掛金 100,000円

一方、掛取引で商品や材料を仕入れた場合には、「買掛金」として貸方に計上し、支払い時に「買掛金」を借方に記載します。

掛取引で10万円の商品を仕入れた場合(支払いは翌月)

借方 金額 貸方 金額
仕入 100,000円 買掛金 100,000円

前月の仕入れに対して、現金で10万円を支払った場合

借方 金額 貸方 金額
買掛金 100,000円 現金 100,000円

このように、簿記ではすべての取引を借方と貸方に分けて仕訳し、帳簿に記録します。

借方・貸方の仕訳に関するここがポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

借方と貸方の金額が常に一致していることが、複式簿記の基本原則であり、正しい会計処理を行うための土台となります。

借方・貸方を用いた会計処理

複式簿記では、すべての取引を借方と貸方に分けて仕訳することが基本です。仕訳を行った後は、簿記のルールに基づいてすべての借方・貸方のデータを集計し、「財務諸表」を作成します。このように、複式簿記における借方・貸方の記録が、財務諸表作成の出発点になります。

財務諸表とは、1年間の取引を簿記で記録・仕訳した結果をもとに、借方と貸方のデータを整理し、経営者、融資元、投資家などの利害関係者に対して財務状況を報告するための決算書類です。

SoVa税理士ガイド編集部

借方・貸方とは?簿記の基礎知識についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:借方・貸方とは?仕訳の基礎知識と実際の仕訳例を解説

たとえば、銀行に融資の申し込みを行う際には、財務諸表の提出が求められます。また、青色申告で確定申告を行う個人事業主や法人には、税務署への提出が簿記制度上義務付けられており、借方・貸方を含む正確な帳簿処理が前提となります。

代表的な財務諸表には「貸借対照表」と「損益計算書」があり、特に青色申告を行う際には、これら2種類の書類を、簿記に基づいた借方・貸方の集計から作成し、提出する必要があります。

借方・貸方とは?簿記の基礎知識に関するおすすめ記事:【税理士監修】貸方・借方とは?意味や仕訳方法、貸借対照表の見方などを解説

貸借対照表

貸借対照表は、簿記の用語では「B/S(バランスシート)」とも呼ばれ、個人事業主や法人の特定時点における資産・負債・純資産の状態を、借方・貸方の形式で示すものです。

簿記上、貸借対照表では左側(借方)に資産を、右側(貸方)に負債と純資産を記載するという決まりがあります。この表の作成には、1年間の仕訳帳に記載された借方・貸方のデータをもとに、各勘定科目ごとに集計を行います。

SoVa税理士ガイド編集部

借方と貸方の合計金額は、簿記における基本原則として必ず一致しなければなりません。もし貸借が一致しない場合は、借方または貸方の仕訳ミスや集計漏れが疑われます。

簿記ソフトを利用すれば、仕訳入力に基づいて借方・貸方を自動で集計してくれるため、財務諸表の作成にかかる時間と労力を大幅に削減できます。手動で借方・貸方の合計を出すと、集計ミスが起こりやすく、簿記初心者にとっては負担が大きくなりがちです。

損益計算書

損益計算書は、簿記で「P/L(プロフィット・アンド・ロス)」とも呼ばれ、1年間に発生した収益と費用、そしてその差額である純利益をまとめた書類です。損益計算書を作成するためにも、日々の取引を借方・貸方に分けた仕訳帳の記録が不可欠です。

簿記の観点から見ると、損益計算書では収益が貸方、費用が借方に記載され、純利益はその差額として算出されます。借方には費用や利益の減少要因が、貸方には収益や利益の増加要因が配置されるというのが、簿記における基本構造です。

SoVa税理士お探しガイド編集部

ただし、損益計算書の表示形式は、借方・貸方を左右に分けるのではなく、縦に収益→費用→純利益と並べるスタイルが一般的です。そのため、借方・貸方の関係はあくまで簿記的な概念として理解する必要があります。

純利益については、単独で借方・貸方に仕訳されることはなく、収益(貸方)から費用(借方)を差し引いた残額として算出されます。簿記上の表現を簡潔に言えば、「純利益=貸方の収益 − 借方の費用」となります。

このように、複式簿記によって記録されたすべての借方・貸方の仕訳情報が、最終的に財務諸表の作成に繋がっており、正確な簿記処理が不可欠であることが分かります。

まとめ

借方と貸方は、簿記における最も基本的でありながら最も重要な概念です。複式簿記では、取引を正確に記録するために、必ず借方と貸方の両側に勘定科目を振り分け、仕訳を行います。左右の位置や取引分類、仕訳例を理解することで、簿記の仕組みが一気に明確になるでしょう。

SoVa税理士お探しガイド編集部

また、日々の取引を借方・貸方に分けて仕訳することは、最終的に貸借対照表や損益計算書といった財務諸表の作成にもつながっており、正しい簿記処理が経営判断にも直結します。

この記事で紹介した内容を参考に、簿記の基本を確実に押さえ、借方・貸方を自在に使いこなせるようになりましょう。

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