役員報酬の変更手続きはどうしたらいい?手順や注意点を解説!

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公開日:2025年6月

更新日:2025年6月27日

役員報酬の変更手続きは、会社の経営状況や役員の昇格・降格などに応じて柔軟に見直すことができますが、変更には一定のルールと手順を踏む必要があります。特に、法人税法や会社法に基づいた役員報酬の変更手続きを適切に行わなければ、損金算入が認められないといった税務上のリスクが発生する可能性もあります。

この記事では、役員報酬の変更手続きが可能なタイミングや具体的な手順、注意点について詳しく解説します。適切な対応を行い、税務トラブルを未然に防ぎましょう。

役員報酬の変更手続きはできる?

役員であっても、会社の業績が好調なときには役員報酬を増額したり、経営状況が悪化した際には役員報酬を減額したりするケースがあります。しかし、従業員の給与とは異なり、役員報酬の変更手続きには厳格なルールが設けられています。

SoVa税理士ガイド編集部

自由に役員報酬を変更できると、安易な利益調整が可能になってしまうため、税務署が役員報酬の損金算入を認めない可能性があります。

定期同額給与の変更手続きには期限がある

役員報酬のうち、従業員の給与のように一定期間ごとに支給される「定期同額給与」は、特に注意が必要です。定期同額給与の役員報酬を変更する場合は、原則として事業年度開始日から3ヶ月以内に株主総会を開催し、議事録を作成したうえで金額を改定しなければなりません。この変更手続きを怠ると、変更後の役員報酬が損金として認められず、法人税の対象となる恐れがあります。

役員報酬を変更する具体的なケース

役員報酬の変更には、以下のようなケースがあります。

  • 役員報酬を増額する場合:会社の業績向上、目標達成、役員の昇格、役員賞与の支給、扶養家族の増加など
  • 役員報酬を減額する場合:業績不振、資金繰りの悪化、役員の降格、事故や不祥事の発生など

いずれの場合でも、適切な変更手続きを経て役員報酬を見直すことが重要です。正しい手順に従わずに役員報酬を変更すると、税法上の取り扱いに問題が生じ、損金算入が認められなくなるリスクがあります。

役員報酬の変更手続きができるタイミング

役員報酬の変更手続きは、原則として事業年度開始日から3ヶ月以内に行う必要があります。この期間内であれば、役員報酬の金額を全額損金として算入することが可能です。したがって、多くの企業ではこの3ヶ月以内に役員報酬の変更手続きを完了させるのが一般的です。

役員報酬の変更手続きに関するここがポイント!

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ただし、4ヶ月目以降に役員報酬を変更することが法律で禁止されているわけではありません。会社に一定の税務上の不利益(損金不算入)を受け入れることで、いつでも変更手続きを行うことは可能です。

さらに、一定の条件を満たす場合には、4ヶ月目以降の役員報酬変更手続きであっても損金算入が認められるケースがあります。

変更手続きができるタイミング①:新たに役員が就任・退任したとき

事業年度の途中で新たに役員が就任した場合には、その人物に対して新たに設定された役員報酬について、期首から3ヶ月を過ぎていても変更手続きが認められ、損金として算入できます。
たとえば、従業員を昇格させて役員に任命したり、外部から新たに役員を迎え入れたりした場合が該当します。

SoVa税理士ガイド編集部

役員報酬の変更手続きについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:役員報酬が変更できるタイミングは?手順や注意点とあわせて解説

また、これまで役員として在籍していた人物が退任した場合には、その退任を理由に役員報酬の変更手続き(減額)を行うことも可能です。

変更手続きができるタイミング②:役員が昇格・降格したとき

事業年度の途中で、役員の役職に変更があった場合も、役員報酬の変更手続きが認められるケースがあります。

たとえば、副社長が社長へと昇格したような場合、業務内容や責任の範囲が大きく変わるため、それに見合った役員報酬の増額が必要です。このような事情が明確であれば、期首3ヶ月以降であっても、役員報酬の変更手続きを行い、損金算入することが可能です。

役員報酬の変更手続きに関するおすすめ記事:役員報酬変更の流れ!金額の決め方や変更できるタイミング

変更手続きができるタイミング③:会社の業績が大きく悪化したとき

会社の業績が大幅に悪化した場合には、経営上の判断として役員報酬を減額することが必要になる場合があります。このようなケースでは、たとえ事業年度の途中であっても、役員報酬の変更手続きによる減額が損金として認められることがあります。

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ただし、単に前期と比較して軽微な減益であった場合などは、国税庁から減額理由として認められない可能性があります。明確な業績悪化の証拠があることが、役員報酬変更手続きの妥当性を担保するうえで重要です。

また、報酬額が契約書で明確に定められている場合や、法令による制限がある場合には、たとえ業績が悪化しても役員報酬の変更手続きができない場合もあるため、事前の確認が必要です。

役員報酬の変更手続き方法

役員報酬の変更手続きを行うには、会社法と法人税法の両面から、正確なフローに沿って進める必要があります。なかでも、株主総会の開催と議事録の作成は、形式的にも法的にも欠かせない重要なステップです。

以下では、役員報酬の変更手続きに必要な具体的な手順を、順を追って解説します。

役員報酬の変更手続き手順①:役員報酬の金額を決定する

最初に行うべきは、役員報酬の金額の決定です。増額・減額のいずれの場合も、正式に金額を定める必要があります。たとえ金額を変更しない場合でも、「変更しない」という意思決定を株主総会で行い、その内容を議事録に明記します。

この役員報酬の変更手続きにおける第一ステップは、株主総会における普通決議によって行われます。

SoVa税理士ガイド編集部

役員報酬の変更手続きについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:役員報酬の変更タイミングは?手続きや改定の時期について解説

役員報酬の変更手続き手順②:株主へ株主総会招集通知を送付する

決定した役員報酬の変更内容を承認してもらうために、株主へ向けて株主総会の招集通知を送付します。通知は原則として、総会開催の2週間前までに発送しなければなりません。

通知書には、開催日時、場所、目的事項(例:役員報酬の変更手続きに関する議案)を記載します。オンラインで開催する場合には、その方法や参加方法に関する案内も同封します。
なお、同族会社などでは招集通知を省略し、口頭での調整が行われることもありますが、可能な限り文書で通知することが推奨されます。

役員報酬の変更手続き手順③:株主総会を開催して役員報酬変更を決議する

株主総会を開催し、役員報酬の変更手続きとして正式な決議を行います。決議は通常、普通決議によって可決されれば有効です。

役員報酬の変更手続きはここがポイント!

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この株主総会の開催日は、法人税申告書に記載する「決算確定日」と一致させる必要があります。申告の根拠となるため、開催日と記録の整合性が非常に重要です。

役員報酬の変更手続き手順④:株主総会議事録を作成・保管する

役員報酬の変更手続きにおいて、株主総会の議事録作成は会社法上の義務です。議事録には、役員報酬の変更内容や決議事項を明確に記録し、10年間会社にて保管する必要があります。

税務署や株主、債権者などから閲覧請求がある可能性を踏まえ、正確かつ詳細な内容を記録しておきましょう。

役員報酬の変更手続き手順⑤:取締役が複数いる場合は取締役会を開催する

取締役が3名以上在籍している場合は、株主総会に先立ち、取締役会を開催する必要があります。ここでも、役員報酬の変更手続きに関連する以下のような事項を議決し、議事録を作成・保管します。

  • 株主総会の招集に関する決議
  • 取締役の競業取引の承認
  • 取締役の利益相反取引の承認
  • 計算書類等の承認
  • その他、重要契約等に関する承認

役員報酬の変更手続きに関するおすすめ記事:役員報酬は変えられる?変更時期や3つの手続きについて徹底解説

このように、役員報酬の変更手続きは、会社のガバナンスと税務の適正な管理の観点から極めて重要な意味を持ちます。不備のある手続きは、役員報酬の損金算入が否認される原因となるため、各ステップを漏れなく進めることが求められます。

役員報酬の変更手続きをする際の注意点

役員報酬を変更する際には、大きく2つの変更手続き上の注意点があります。1つは、法人税法上の「定期同額給与」に該当するための変更時期のルールを守ること。もう1つは、会社法上の手続きとして株主総会議事録を作成し、役員報酬の変更内容を正式に記録することです。

この2つを怠ると、役員報酬の損金算入が否認されるリスクがあります。

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注意点①:事業年度開始から3カ月以内に役員報酬を変更する

法人税法上、定期同額給与としての役員報酬に該当させるには、事業年度開始から3カ月以内に役員報酬の変更手続きを行う必要があります。この3カ月という期限を過ぎてしまうと、変更後の役員報酬は損金に算入できなくなる可能性があります。

たとえば、3月決算の企業であれば、法人税の申告期限は5月末となるため、役員報酬の変更手続きは6月の支給開始に向けて4〜6月の間に実施可能です。ただし、株主総会は申告期限である5月末までに開催しなければなりません。
つまり、支給開始日(6月)と株主総会の開催日(5月末)との間にタイムラグがあるため、法人税法と会社法の整合性に注意が必要です。

注意点②:株主総会議事録の作成とその日付の重要性

会社法上、役員報酬の変更手続きには株主総会での承認が必要です。このときに作成する株主総会議事録は、変更内容を正式に記録した証拠書類として扱われ、役員報酬の損金算入を認めてもらうためにも欠かせません。

役員報酬の変更手続きはここがポイント!

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取締役が3名以上いる場合は、株主総会に加えて取締役会の開催も必要です。この場合には、取締役会議事録の作成も含めた二重の変更手続きが求められます。

さらに、株主総会議事録の日付は、法人税申告書に記載する「決算確定日」と一致させなければなりません。株主総会では1年間の財務状況や経営状況を株主に説明し、その承認を得てから法人税を申告するという流れであるため、決算確定日が議事録より先に来ることは許されません。

まとめ

役員報酬の変更手続きは、事業年度の開始から3カ月以内のタイミングであれば比較的スムーズに行えますが、それ以降でも一定の条件を満たせば変更が可能です。

SoVa税理士お探しガイド編集部

適切な時期に変更手続きを行い、株主総会での承認と議事録の作成など、必要な法的ステップを確実に踏むことが重要です。

役員報酬の変更手続きを正しく行うことで、税務上のトラブルを回避し、企業の信頼性やガバナンスの健全性を維持することにつながります。変更の際には、会社法・法人税法の要件を十分に確認し、慎重に手続きを進めましょう。

役員報酬の変更手続きに関するおすすめ記事:役員報酬とは? 会社設立前に知っておくべきルールや金額の決め方を解説

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