役員報酬は日割り計算できる?就任・退任時の対応方法についても解説!

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公開日:2025年6月

更新日:2025年6月28日

会社役員に支給される「役員報酬」は、従業員の給与とは異なる取り扱いが必要です。とくに注意したいのが、役員の就任や退任が月の途中だった場合、役員報酬を「日割り」で支給できるのかという点です。

役員報酬は原則として「定期同額給与」として毎月同額を支給する必要があるため、日割り計算での支給は慎重な判断が求められます。

本記事では、役員報酬の基本から、日割りでの支給可否、日割り支給によるリスク、やむを得ず日割りに近い対応をする際の代替策、さらに月途中での就任・退任時の実務対応まで、詳しく解説します。

役員報酬とは

役員報酬とは、会社の役員に対して支給される報酬であり、従業員に支払われる給与とは異なります。役員は従業員とは異なる立場にあるため、業務に対する対価は「給与」ではなく「役員報酬」として支給されます。役員報酬は原則として定期同額で支給する必要があり、変更や調整を行う際には法人税上のルールに則ることが求められます。

SoVa税理士ガイド編集部

月の途中で就任・退任する場合、役員報酬を日割りで計算するかどうかは注意が必要であり、定期同額給与の要件に照らして適切に処理しなければなりません。

役員の範囲についても、役員報酬の対象となる人物を明確にしておくことが重要です。役員とは、会社の業務執行や監督を行う幹部職員を指し、会社法第329条1項および法人税法第2条第15号により、以下のような立場の者が役員報酬の支給対象となります。

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■法令上の役員の範囲
会社法に定められた株式会社の役員および法人税法上の役員には、次のような者が含まれます。

  • 取締役
  • 会計参与
  • 監査役
  • 理事
  • 監事
  • 清算人

なお、上記に該当しない場合でも、一般の従業員(使用人)ではなく、会社の経営に関与している人物は、役員報酬の支給対象となる「役員」に該当します。さらに、一定の条件を満たす同族会社においては、経営に従事する使用人も役員とみなされ、役員報酬の支給および日割り計算の判断が必要となるケースもあります。

役員報酬は日割り計算できる?

結論から言うと、役員報酬を日割りで計算して支給する必要はありません。そもそも役員報酬は、日々の労働の対価ではなく、役員としての職務執行全体に対する報酬であるため、給与のように日割りで算出するという考え方が適用されません。

SoVa税理士ガイド編集部

役員報酬は日割り計算できるかについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

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役員報酬は「委任契約」に基づく報酬

これは、会社と役員との関係性が「労働契約」ではなく「委任契約」であることに起因します。会社法第330条において、「株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う」と明記されており、役員報酬はこの委任契約に基づいて支払われます。

たとえば、取締役であれば会社の業務執行や意思決定、他の役員の監督などを担いますが、これらは日単位で評価される性質のものではありません。同様に、監査役においても、取締役の職務を継続的に監査するという性質から、役員報酬の支給額を日割りで調整する必要はないとされています。

月途中の就任・退任でも日割り支給しないのが原則

したがって、月の途中で役員に就任または退任した場合でも、役員報酬を日割りで支給することは通常行いません。

役員報酬の日割り計算可否に関するここがポイント!

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一般的には「その月の役員報酬を全額支給する」または「その月は支給しない」のいずれかを選択することになります。これは、法人税法において「定期同額給与」のルールがあり、役員報酬が毎月同じ額で支給されることが、損金算入の要件とされているためです。

日割りで支給した場合のリスクに注意

なお、誤って日割りで役員報酬を支給してしまった場合には、税務上「定期同額給与」と認められず、当該役員報酬が損金不算入とされるリスクがあります。そのため、役員報酬を支給する際には、日割り支給の是非について十分な理解を持ち、慎重に判断する必要があります。

役員報酬を日割りで支給したらどうなる?

役員報酬を日割り計算で支給すると、定期同額給与の原則に違反する月が発生し、その月の役員報酬は損金不算入となる恐れがあります。日割り支給は一見柔軟な対応に見えるかもしれませんが、法人税法上のルールでは慎重な判断が必要です。

役員報酬を損金算入できるのは限定的な支給方法のみ

法人税法第34条第1項では、役員報酬は原則として損金に算入できず、損金算入が認められるのは以下の3つの支給方法に限られています。

  • 定期同額給与
  • 事前届出給与
  • 業績連動給与

このうち、月給形式での支給に対応しているのは「定期同額給与」のみです。つまり、役員報酬を日割りで支給した場合、この「定期同額」のルールを満たさなくなる可能性が高く、結果としてその分が損金にできなくなります。

日割りと定期同額給与の関係

定期同額給与とは、毎月同じ金額の役員報酬を継続して支払う方法であり、会社による所得調整や利益操作を防ぐために設けられています。たとえば、「今月は利益が多かったから日割りで上乗せ支給しよう」「今月は少なめにしよう」というような対応は、すべて定期同額給与の要件を満たさないため、その増減分が損金不算入となります。

役員報酬を日割り計算する場合に気をつけておきたい注意点

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とくに、役員報酬を日割りで増減させた場合、「一時的な増額・減額」として扱われ、法人税上の不利益を被るおそれがあります。

役員報酬が損金不算入となる具体例

たとえば、毎月50万円の役員報酬を定期同額給与として支給していたところ、ある月のみ日割りで80万円支給した場合、その超過分30万円は損金不算入となります。さらにこの状態が3か月続けば、「30万円 × 3か月 = 90万円」が損金に計上できません。

逆に、赤字回避のために40万円に日割り減額した場合でも、「40万円を新たな基準と見なす」扱いとなり、それまでの月に支給していた50万円との差額10万円が過去月分もさかのぼって損金不算入となる可能性もあります。

このように、役員報酬を日割りで変更することは、将来的な税務調整に波及するリスクがあるため注意が必要です。

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役員報酬の日割り支給で損金不算入になった場合の影響

役員報酬を日割り支給して損金不算入が生じた場合、会社と役員双方に税負担の不利益が生じます。

まず、会社側では日割りで支給した役員報酬が損金と認められないことで、その分課税所得が増加し、法人税の負担が増えます。

一方、役員個人は、受け取った役員報酬について、たとえそれが日割り分であっても、所得税・住民税・社会保険料の対象となります。つまり、会社の経費にはならないのに、個人には通常どおり税金がかかるという、ダブルのコストが発生します。

それでも役員報酬を日割り支給したい場合

損金不算入のリスクがあるにもかかわらず、役員報酬を日割りで支給することは通常ありません。定期同額給与の原則に反するため、法人税上の不利益を被る可能性が高いからです。しかし、どうしても日割りのように柔軟な支給方法を検討したい場合には、発想を転換して、日割り計算以外の対応策がないかを探ることが重要です。

この章では、特に退任予定の役員に対して、日割り支給に代わる役員報酬の取り扱いを検討していきます。

役員報酬を日割りで支給したいときは「役員退職金」の活用を検討

日割りのような対応をしたい場合には、役員退職金の支給を検討することが有効です。役員退職金は、税法上「役員報酬」に該当せず、金額が過大でなければ全額を損金に算入することが可能です。日割りで役員報酬を調整するよりも、税務上のハードルがむしろ低く、合理的な方法といえます。

SoVa税理士お探しガイド編集部

役員報酬は日割り計算できるかについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:役員報酬は日割りできない!就任・退任時はどうする?

たとえば、役員としての任期を終えて会社に残る場合、形式的には退職していないものの、実質的に役員としての職務を終えていれば役員退職金として支給することが検討可能です。

「形式上は退任していないが実質退職」な場合も支給可能?

役員報酬を日割りで支払いたいという背景には、今後も会社に関わり続けるような信頼関係があることが多いでしょう。そのような場合は、形式上は退任していなくても、役員退職金を支給して精算するケースがあります。

たとえば、次のような「分掌変更」に該当するケースでは、実質退職したと認められ、役員退職金を支給することが認められる可能性があります(法人税法基本通達9-2-32)。

  • 常勤役員が非常勤役員になった
  • 取締役が監査役になった
  • 給与が50%以上減少した

このようなケースでは、日割りで役員報酬を計算して支払うよりも、退職金として一括で処理したほうが税務上有利となることがあります。

役員報酬の日割り計算可否おける気をつけておきたい注意点

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ただし、この場合における役員退職金の支給は、未払金で処理すると損金に算入できないため、実際の支払が必要です。

役員報酬の日割りではなく「臨時改定」で対応できる可能性も

退任の予定があるものの、理由が一時的な体調不良や業務離脱といった場合には、役員報酬の減額による「臨時改定」で対応できる可能性もあります。この場合、日割り支給ではなく、臨時的に支給額を変更することで会社側の柔軟な対応が可能になります。

ただし、臨時改定による減額は、その内容によって損金不算入となるリスクが高くなるため注意が必要です。とくに、減額幅が大きいほどリスクは高くなります。

そのため、「職制上の地位の変更」に該当するかどうかを含めて、役員報酬の改定や日割りの代替措置については、必ず税理士などの専門家に相談することが重要です。

月の途中で就任・退任した場合の役員報酬の支払い方法

それでは、役員報酬の支給において、定期同額給与の原則に従った場合、月の途中で役員が就任・退任した際に、役員報酬をどのように支払うべきかについて見ていきましょう。

まず前提として、会社法第330条により、役員と会社の関係は民法第648条の「委任契約」に準拠することが定められています。

SoVa税理士ガイド編集部

この条文では、受任者(役員)は、委任された業務を履行した後でなければ報酬を請求できない(民法648条2項)とされています。つまり、役員報酬は「後払い」であるという点が重要です。

月の途中で役員に就任した場合

仮に、ある役員が月の半ば、たとえば15日に新たに就任したとします。このときの役員報酬の支払い方法として、「日割り」で対応すべきかが検討されますが、実務上は以下のいずれかの対応となるのが一般的です。

まず一つは、その月の役員報酬を全額支給するという方法です。たとえ月の半分しか職務に就いていなくても、1か月分として満額の役員報酬を支払う対応です。

もう一つは、その月は役員報酬を支給せず、翌月分から支払いを開始するという方法です。これは、定期同額給与の要件を維持するために、就任初月は支給対象外とするケースです。

このいずれかを選ぶ必要があり、役員報酬を日割りで支給することは、定期同額給与の原則に反する可能性が高く、法人税上の損金不算入リスクを伴うため、避けるのが通例です。

SoVa税理士ガイド編集部

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また、従業員からの昇格により役員に就任した場合、従業員時代の給与は日割りで精算されることが多い一方で、役員に就任した以降の役員報酬については、日割り支給が認められていない点に注意が必要です。

なお、会社内の異動であっても、従業員から役員になる場合には、

  • 従業員としては退職し、
  • 新たに役員として委任契約を結ぶ

という法的な流れになります。したがって、従業員給与(=日割り可)と役員報酬(=日割り不可)を明確に区別し、退職金の支払いや契約の切り替えについても適切に処理することが求められます。

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月の途中で役員を退任した場合

役員が健康上の理由や経営判断によって月の途中で退任するケースも珍しくありません。このような場合にも、役員報酬は日割りで支給することはできず、次のいずれかの方法で処理するのが通例です。

一つは、その月の役員報酬を全額支給する方法です。たとえ半月のみの在任であっても、1か月分として満額を支給する対応です。

もう一つは、その月の役員報酬は支給せず、前月分で支払いを終了するという方法です。

たとえば12月15日に退任した場合は、12月分を満額支給するか、11月分までで支給を打ち切るかのいずれかの選択となります。ここでも日割り支給は原則として認められておらず、定期同額給与のルールに沿った処理が必要です。

このように、役員報酬においては「日割り計算」という概念が基本的に存在せず、月ごとの定額支給が損金算入の前提とされています。役員の就任・退任が月途中であったとしても、「満額支給」または「不支給」のいずれかを選び、税務上のリスクを避ける対応が求められます。

まとめ

役員報酬は、業務への包括的な対価として支給されるものであり、従業員給与のように日割り計算を行うことは原則として認められていません。とくに、日割りで役員報酬を支給すると、「定期同額給与」と見なされず、法人税上の損金不算入となるリスクが生じます。

役員報酬の日割り計算に関するここがポイント!

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やむを得ず柔軟な支給を検討する場合には、役員退職金や臨時改定といった代替手段の活用も視野に入れることが重要です。

月途中の就任・退任時にも、役員報酬は日割りではなく、「全額支給する」または「支給しない」のいずれかで対応するのが基本です。

役員報酬の取り扱いは、会社の税務やコンプライアンスにも直結するため、日割り支給を検討する際は、必ず専門家に相談し、適切な判断を行いましょう。

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