敷金の勘定科目は?敷金の具体的な仕訳例や仕訳時の注意点も解説!

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公開日:2025年6月

更新日:2025年6月3日

賃貸借契約においてよく登場する「敷金」ですが、会計処理の場面ではどのように仕訳すればよいか迷うことも多いのではないでしょうか。敷金は単なる預け金ではなく、契約内容や償却条件に応じて、適切な勘定科目を使って仕訳を行う必要があります。特に、敷金を「支払う側」と「受け取る側」とで仕訳方法が異なるため、注意が必要です。

本記事では、そもそも敷金とは何かという基本から、敷金に関する勘定科目の選び方、具体的な仕訳例、そして仕訳の際に押さえておきたい注意点まで、わかりやすく解説します。敷金に関する仕訳処理で迷わないためにも、ぜひ参考にしてください。

そもそも敷金とは

敷金とは、物件の賃貸借契約時に借主が貸主に対して預けるお金のことを指します。この敷金は、借主が部屋や設備を故意または過失で損傷・汚損した場合、あるいは善管注意義務に違反した場合に、その修繕・原状回復の費用として充当されます。

また、借主が家賃を滞納し、支払不能となった場合には、滞納分の家賃に充てられることもあります。つまり、敷金は貸主にとっての担保的な性格を持つ金銭です。

敷金は返金されるのか?

敷金は、あくまで一時的に預けているお金であり、基本的には解約・退去時に全額返金されることが原則です。ただし、原状回復費用や家賃の未払いがある場合は、その費用を差し引いた残額が返金されます。

原状回復費用の算定は通常貸主が行いますが、金額をめぐってトラブルになるケースも少なくありません。こうしたトラブルを回避するために、契約時に「敷金のうち○か月分は償却」「○年以内の解約は全額償却」といった“敷引き”の条件が設けられることもあります。

敷金の仕訳に関するおすすめ記事:敷金(保証金)の勘定科目とは?不動産賃貸の仕訳例を解説

住居の敷金と駐車場の敷金の違い

敷金にかかる消費税の扱いは、契約内容によって異なります。住居の家賃は非課税であるため、これに付随する敷金も消費税の対象外です。

一方、駐車場を住居とは別契約で借りる場合、駐車場の賃料は課税対象になるため、それに対応する敷金も消費税の対象となる点に注意が必要です。ただし、駐車場代が家賃に含まれている場合は非課税扱いとなります。

敷金と礼金・仲介手数料の違い

敷金は将来的に返還されることを前提とした預り金ですが、礼金や仲介手数料は性質が異なります。

礼金は貸主への謝礼として支払うもので、契約終了後も返金されることはありません。仲介手数料も同様に、不動産会社へ支払うサービス対価であり、返金の対象にはなりません。

敷金の仕訳はここがポイント!

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一方、敷金は修繕や清掃の必要がない場合には全額、または必要費用を差し引いた額が返金されます。この点が、他の初期費用と異なる大きなポイントです。

敷金の勘定科目

敷金は賃貸契約において借主が貸主に預けるお金であり、会計処理では「敷金」または「差入保証金」として資産計上されます。ここでは、敷金に関する仕訳の具体例をご紹介します。

敷金を全額返金された場合の仕訳

たとえば100万円の敷金を預け、契約終了時に全額返金された場合の仕訳は以下のとおりです。

契約時の仕訳

借方 金額 貸方 金額
敷金(差入保証金) 1,000,000円 普通預金 1,000,000円

契約終了時の仕訳

借方 金額 貸方 金額
普通預金 1,000,000円 敷金(差入保証金) 1,000,000円

このように、敷金は契約時に「差入保証金」として資産に計上し、解約・退去時に返金された金額を仕訳で処理します。

敷金の一部が修繕費として差し引かれた場合の仕訳

退去時に原状回復費用として敷金の一部(例:20万円)が差し引かれた場合は、以下のように仕訳を行います。

SoVa税理士ガイド編集部

敷金の仕訳についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:敷金(保証金)の勘定科目は?事務所の賃貸の会計処理や仕訳はどうなる!

契約終了時の仕訳(一部返金)

借方 金額 貸方 金額
普通預金 800,000円 敷金(差入保証金) 1,000,000円
修繕費 200,000円

敷金の仕訳はここがポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

敷金のうち、返金されない部分については「修繕費」として費用処理する必要があります。

敷金を支払った際の仕訳例

SoVa税理士ガイド編集部

賃貸物件を借りる際、借主が貸主に支払う敷金の仕訳処理は、契約内容や償却条件に応じて異なります。

ここでは、敷金の仕訳処理について、代表的なケースを仕訳付きで具体的に解説します。

償却額が決まっていない敷金の仕訳

敷金の返還が契約で明記されていない場合でも、返還の可能性がある場合は「敷金」として資産に計上し、仕訳を行います。

【契約時】敷金10万円を支払った(2年契約)

借方 金額 貸方 金額
敷金 100,000円 現預金 100,000円

【期末時】

償却額が明確でない敷金については、期末時に仕訳処理は不要です。

【退去時】敷金10万円が全額返金された

借方 金額 貸方 金額
現預金 100,000円 敷金 100,000円

償却額が20万円未満の場合の敷金仕訳

敷金のうち返還されないことが契約で定められている場合、その金額が20万円未満であれば「支払手数料」として一括償却が可能です(法人税法施行令第134条より)。

【契約時】敷金50万円のうち15万円が償却対象

借方 金額 貸方 金額
敷金 350,000円 現預金 500,000円
支払手数料 150,000円

【期末時】

償却済みの敷金は、期末仕訳の必要はありません。

【退去時】敷金返金額30万円、5万円は修繕費に充当

借方 金額 貸方 金額
現預金 300,000円 敷金 350,000円
修繕費 50,000円

敷金の仕訳に関するおすすめ記事:敷金・礼金の勘定科目とは?仕訳方法や20万円以上のケース等について解説

償却額が20万円以上の場合の敷金仕訳

20万円以上の償却が契約で定められている場合、「長期前払費用」として処理し、契約期間に応じて分割して償却します。

【契約時】敷金100万円のうち30万円が償却(契約期間4年)

借方 金額 貸方 金額
敷金 700,000円 現預金 1,000,000円
長期前払費用 300,000円

【期末時】長期前払費用の年次償却(30万円 ÷ 4年)

借方 金額 貸方 金額
支払手数料 75,000円 長期前払費用 75,000円

【退去時】敷金70万円のうち10万円が修繕費に充当

借方 金額 貸方 金額
修繕費 100,000円 敷金 700,000円
現預金 600,000円

敷金契約を途中解約した場合の仕訳

契約期間を満了せず途中で解約した場合、未償却の長期前払費用は「支払手数料」として償却します。

【退去時】4年契約中3年目で退去(15万円の償却残あり)

借方 金額 貸方 金額
現預金 600,000円 敷金 700,000円
修繕費 100,000円 長期前払費用 150,000円
支払手数料 150,000円

敷金を受け取った際の仕訳例

不動産の所有者が物件を貸し出し、借主から敷金を受け取った場合には、「敷金」の返還義務があるため、受け取った敷金は負債として仕訳処理します。

SoVa税理士お探しガイド編集部

仕訳では「預り敷金」という勘定科目を用いるのが一般的です。

以下に具体的な敷金の仕訳処理を紹介します。

償却額が定められていない敷金の仕訳処理

敷金が全額返還される前提の契約の場合、会計処理では「預り敷金」として負債計上し、返還時にこれを取り崩す仕訳を行います。

【契約時】敷金10万円を受け取った場合

借方 金額 貸方 金額
現預金 100,000円 預り敷金 100,000円

【期末時】

期末においては、敷金に関する追加の仕訳処理は不要です。

【退去時】敷金10万円を全額返還した場合

借方 金額 貸方 金額
預り敷金 100,000円 現預金 100,000円

敷金の仕訳に関するおすすめ記事:敷金の勘定科目って何?会計処理について解説します。

償却額が契約で定められている敷金の仕訳処理

返還しない敷金(償却額)が契約で明記されている場合、貸主側ではその金額を収益として処理します。返還する部分は「預り敷金」として処理し、仕訳の際に明確に分ける必要があります。

【契約時】敷金25万円のうち15万円が償却と定められている場合

借方 金額 貸方 金額
預り敷金 250,000円 受取家賃 150,000円
現預金 100,000円

※この仕訳では、受取家賃として15万円を収益計上し、残りの10万円を預り敷金として処理しています。

【期末時】

特段の会計処理は不要ですが、預り敷金の残高管理は必要です。

【退去時】残りの敷金10万円を原状回復に充てた場合の仕訳

借方 金額 貸方 金額
修繕費 100,000円 現預金 100,000円
預り敷金 100,000円 雑収入 100,000円

このように、敷金の全額が返還されない場合には、返還しない金額を「受取家賃」や「雑収入」として適切に仕訳処理することが求められます。

敷金を仕訳する際の注意点

敷金の仕訳は、契約内容や償却額の大きさによって会計処理が異なるため、正確な理解が求められます。以下に、敷金の仕訳を行う際に特に注意したいポイントを、具体的な仕訳例とともに解説します。

SoVa税理士お探しガイド編集部

敷金の仕訳に関する注意点についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:敷金の勘定科目とは?支払から償却まで契約別仕訳方法を紹介

仕訳上の注意点①:敷金の消費税

通常、敷金は「預り金」であるため消費税の対象外です。ただし、事業用物件かつ返還されない敷金(敷引)が契約で明確になっている場合、償却部分には消費税が課税されることがあります。

一方で、居住用物件(借り上げ社宅や社員寮など)の敷金については、返還されない部分であっても消費税は非課税です。

敷金の仕訳はここがポイント!

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仕訳では、消費税の有無に応じて「支払手数料」に課税・非課税の区別を正しく適用し、必要に応じて「仮払消費税」等も併せて記載しましょう。

仕訳上の注意点②:借方・貸方の金額の差異

敷金の仕訳では、借方に「敷金」と「支払手数料」など複数の勘定科目が並ぶことがあります。複数行の仕訳を記載する際は、借方と貸方の合計金額が一致しているかを必ず確認してください。

【誤りが発生しやすい敷金の仕訳例】(確認すべきポイント)

借方 金額 貸方 金額
敷金 400,000円 現金 500,000円
支払手数料 90,000円 雑収入 100,000円

→ 借方合計が490,000円、貸方が500,000円で差額が発生しているため、仕訳ミスです。

【修正後の正しい仕訳】

借方 金額 貸方 金額
敷金 400,000円 現金 500,000円
支払手数料 100,000円 雑収入 100,000円

まとめ

敷金の仕訳は、会計処理において見落としがちなポイントが多く、契約内容や償却額によって適切な勘定科目を使い分ける必要があります。

敷金の仕訳はここがポイント!

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支払う場合は「敷金」や「支払手数料」、受け取る場合は「預り敷金」や「雑収入」など、状況に応じて仕訳の内容を正確に把握することが重要です。

また、敷金の仕訳に関しては、借方・貸方の金額バランスや消費税の取扱いにも注意が必要です。仕訳ミスを防ぐためにも、実際の契約書をよく確認し、正確な会計処理を心がけましょう。この記事で紹介した仕訳例やポイントを参考に、敷金に関する処理を適切に行ってください。

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