マイクロ法人は家賃も経費にできる?経費計上する方法や注意点を解説!
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公開日:2025年8月
更新日:2025年7月31日
マイクロ法人を運営していると、「自宅や社宅の家賃も経費にできたらいいのに」と考えることはありませんか?
実は、一定の条件を満たせば、マイクロ法人でも家賃を経費として計上することが可能です。とくに、自宅兼オフィスや借り上げ社宅などを上手く活用すれば、節税効果を高めながら事業のコスト管理にもつながります。
本記事では、マイクロ法人が家賃を経費にできる仕組みや具体的な方法、経費計上できる項目、そして実際に家賃を経費にする際のメリットや注意点まで、網羅的に解説します。
「家賃を経費にできるかどうか」でお悩みのマイクロ法人の方は、ぜひ最後までご覧ください。
家賃は経費にできる?

事業運営において「家賃」は大きな支出のひとつ。これを「経費」として処理できれば、マイクロ法人にとっても大きな節税効果が期待できます。実際、マイクロ法人でも家賃を経費にできる可能性はありますが、一定の条件を満たす必要があります。本章では、マイクロ法人と個人事業主のそれぞれのケースで、家賃を経費にできる条件や注意点を紹介します。
マイクロ法人の場合
マイクロ法人が家賃を経費として計上することには、大きな節税メリットがあります。とくに、自宅や賃貸物件を社宅や事務所として使うことで、実質的に家賃の大部分を経費にすることが可能です。
マイクロ法人で家賃を経費にできる主なケースは、以下の2つです。
- 役員の個人名義で賃貸契約をしている場合
- マイクロ法人名義で賃貸契約をしている場合
役員が個人名義で契約している場合、自宅の一部を事業利用していれば、その面積割合に応じて家賃を「家事按分」し、経費として処理できます。たとえば、自宅の床面積の30%を事業に使っている場合は、家賃の30%を経費にできます。
一方で、マイクロ法人名義で契約した物件を社宅として活用する場合、法人が支払う家賃の50%以上を経費にできることもあります。社宅制度を活用すれば、70〜80%が経費として認められるケースもあり、節税効果はさらに高まります。
マイクロ法人が家賃を経費にする際に気をつけておきたい注意点

ただし、マイクロ法人で家賃を経費にする際には、契約内容や社宅規定の整備など、形式的な要件も重要です。大家との法人契約が可能かどうか、あらかじめ確認しておく必要があります。
個人事業主の場合
個人事業主も家賃の一部を経費にすることは可能ですが、マイクロ法人に比べると制約が多く、計上できる割合も限られます。
個人事業主が家賃を経費にできる主なケースは以下の通りです。
- 自宅を事務所として使っている場合
- 自宅と別の場所で併用して仕事をしている場合
- 自宅の一部を事業用倉庫などに使っている場合
マイクロ法人が家賃を経費にする方法に関するおすすめ記事
これらの場合でも、家賃のすべてを経費にすることはできません。実際に仕事で使用している床面積の割合をもとに「家事按分」を行い、その範囲内でのみ経費にできます。たとえば、全体のうち20〜30%程度が事業用という実態であれば、その割合のみが経費として認められる可能性が高いです。
また、按分の根拠が不明確だったり、過剰な割合で経費計上していると、税務調査で否認されるリスクもあるため注意が必要です。
マイクロ法人が家賃を経費にする方法

マイクロ法人では、条件を満たせば自宅の家賃も経費として計上できます。方法によって手続きや必要書類が異なるため、それぞれのポイントを押さえておくことが重要です。ここでは、マイクロ法人が家賃を経費化する2つの代表的な方法をご紹介します。
マイクロ法人が家賃を経費にする方法①:個人契約の自宅をマイクロ法人に貸す
1つ目は、自宅が役員個人の名義になっている場合に、その一部をマイクロ法人へ貸し出して家賃を経費にする方法です。この場合、転貸借契約書を作成し、法人が個人から事業スペースを借りている形を整えます。
マイクロ法人が家賃を経費にする際はここがポイント!

ただし、不動産会社との契約内容に「転貸禁止」や「商用利用禁止」が含まれていないか、事前確認が必要です。
経費にできるのは、家の総面積のうち実際に事業に使っている部分の割合のみ。たとえば、100㎡のうち20㎡をオフィスとして使っているなら、家賃の20%がマイクロ法人の経費になります。家賃15万円なら、その2割である3万円が毎月の経費対象です。
割合を大きく見積もりすぎると、税務調査で否認される可能性があるため、実態に合った適正な按分を心がけましょう。
マイクロ法人が家賃を経費にする方法②:法人契約で自宅を社宅として使う
2つ目は、自宅をマイクロ法人名義で賃貸契約し、社宅として利用する方法です。こちらはより多くの家賃を経費にできる可能性があります。
この方法では、固定資産評価証明書を取得し、国税庁の計算式に従って「賃貸料相当額」を算出します。これは、役員個人が最低限支払うべき家賃であり、それを超える金額はマイクロ法人の経費となります。
たとえば、建物・土地それぞれの課税標準額が1,000万円で、床面積が100㎡の物件なら、賃貸料相当額は次の通りです。
- 建物分:1,000万円 × 0.2% = 20,000円
- 面積分:12円 ×(100㎡ ÷ 3.3)= 約364円
- 土地分:1,000万円 × 0.22% = 22,000円
- 合計:42,364円

SoVa税理士ガイド編集部
マイクロ法人が家賃を経費にする方法についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
関東での100㎡の家賃相場が約16万円とすると、そのうち約12万円をマイクロ法人の経費として計上できる計算になります(7割以上の経費化が可能)。
証明書は持ち家なら市区町村で取得できます。賃貸の場合は、管理会社や大家に法人契約が可能か相談してみましょう。
マイクロ法人における家賃関連の経費計上可否

マイクロ法人を自宅で運営している場合、「家賃」「光熱費」「通信費」などの支出をどこまで経費にできるかは大きなポイントです。
マイクロ法人では、事業用と私用をしっかり分けて(=按分して)経費処理することが重要です。
マイクロ法人における経費按分の3つの方法
マイクロ法人で家賃や光熱費を経費化するには、「どれだけ業務に使っているか」を数値で示すことが必要です。以下の3つが代表的な按分方法です。
按分方法 | 内容 | 家賃・経費の例 |
---|---|---|
面積按分 | 自宅のうち事業用スペースの割合に応じて家賃などを按分 | 自宅50㎡のうち10㎡が事業用なら、家賃の20%を経費にできる |
時間按分 | 1日のうち事業に使う時間割合で按分 | 8時間/24時間 = 約33%を経費にできる |
用途按分 | 特定の部屋を完全に事業用にしている場合、全額を経費化可能 | 事業専用の一室の家賃は全額経費、共用部分は面積や時間で按分 |
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家賃以外にマイクロ法人で経費にできる主な費用とポイント
家賃以外にも、住まいや通信に関わる支出の中で、マイクロ法人の経費にできるものがあります。

SoVa税理士ガイド編集部
ただし、私用との境界を明確にする必要があります。
項目 | 経費計上の可否 | ポイント・注意点 |
---|---|---|
家賃 | 〇 | 面積・時間・用途で按分 |
住宅ローン(利息) | 〇 | 元本部分は対象外、利息のみ按分可 |
住宅ローン(元本) | × | 経費計上不可 |
引越費用 | △ | 事業目的であれば一部経費化可 |
敷金・礼金 | 〇 | 家賃の経費割合に応じて按分 |
光熱費 | 〇 | 使用スペースや時間で按分 |
インターネット費用 | 〇 | 業務利用分のみ経費にできる |
固定資産税 | 〇 | 面積・時間で按分(持ち家の場合) |
火災保険料 | 〇 | 使用割合に応じて経費化可 |
修繕費 | △ | 事業に関係する部分のみ経費可 |
通信費(電話代) | 〇 | 事業用分のみを明確に区分して計上 |
マイクロ法人が家賃を経費にするメリット

マイクロ法人において、家賃を経費として処理することで得られるメリットは非常に多くあります。とくに社宅制度を活用すれば、家賃だけでなく周辺費用もマイクロ法人の経費にでき、節税や資産形成につながります。
ここでは、マイクロ法人が家賃を経費にすることで得られる主な4つのメリットについて詳しく解説します。
マイクロ法人が家賃を経費にするメリット①:社宅に関する幅広い費用を経費にできる
マイクロ法人が社宅を活用する場合、単に家賃だけでなく、社宅に関連するさまざまな費用も経費として処理することができます。これにより、法人としての課税所得を減らし、大きな節税効果が期待できます。
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たとえば、以下のような費用がマイクロ法人の経費として認められる可能性があります。
- 修繕費
- 固定資産税
- 家具や設備に関する費用
- 不動産取得税
- 登記費用
- 仲介手数料
- 借入金の利息(※元本部分は経費対象外)
このように、マイクロ法人が社宅として家賃を経費計上することで、多くの関連支出もあわせて経費にできるのが大きな魅力です。
マイクロ法人が家賃を経費にするメリット②:社宅購入で資産形成と減価償却が可能
マイクロ法人が社宅を購入した場合、その社宅は法人の資産として計上されます。購入費用は「減価償却費」として分割し、毎年の経費として処理できるため、長期的な節税効果をもたらします。
また、万が一マイクロ法人が解散・倒産することになっても、資産として保有している社宅は売却可能であり、換金性の高さも魅力です。資産としての価値がある社宅をマイクロ法人名義で保有することで、経費処理と資産形成の両立が図れます。
マイクロ法人が家賃を経費にする方法に関するおすすめ記事:役員社宅節税とは
マイクロ法人が家賃を経費にするメリット③:借り上げ社宅の家賃も経費にできる
マイクロ法人が社宅として住宅を借り上げ、法人名義で家賃を支払う場合、その家賃は経費として全額計上できます。とくに家賃は月々の支出額が大きいため、経費化することで法人税の削減効果が高くなります。
個人事業主の場合、家賃の一部を面積や時間で按分して経費計上するのが一般的ですが、マイクロ法人であれば、一定のルールに従えば自宅の家賃全体を経費にできる可能性があります。
また、マイクロ法人では、役員の居住用であっても、社宅としての要件を満たせばプライベート利用分を含めて経費にできる点が特徴です。これは法人だからこそ可能な節税手段といえます。
マイクロ法人が家賃を経費にするメリット④:所得税・住民税の負担を軽減できる
マイクロ法人が家賃を経費として計上し、役員や従業員が社宅に住む場合、所得税や住民税の負担を軽減できるメリットもあります。
その理由は、「賃貸料相当額」を役員から徴収することで、その家賃分が給与課税されない扱いになるためです。つまり、社宅を提供された役員や従業員は、通常の家賃負担よりも少ない税負担で住居を利用できることになります。

SoVa税理士お探しガイド編集部
さらに、マイクロ法人自体も家賃を経費として処理することで法人税を圧縮でき、法人代表者個人と法人の双方で税金を抑える効果が期待できます。
マイクロ法人が家賃を経費にする際の注意点

マイクロ法人で社宅の家賃を経費に計上する場合、節税効果が大きい反面、正しい手順を踏まないと否認されるリスクもあります。とくに税務上の要件や社内の整備体制が不十分だと、家賃をマイクロ法人の経費として認めてもらえないことがあります。
ここでは、マイクロ法人が家賃を経費として計上する際に注意すべき4つのポイントを解説します。
マイクロ法人が家賃を経費に計上する際の注意点①:賃貸借契約は法人名義で結ぶ
マイクロ法人が社宅の家賃を経費として計上するためには、物件の賃貸借契約をマイクロ法人の名義で締結することが必須です。役員個人の名義で契約している場合、その家賃は法人の経費として認められません。

SoVa税理士ガイド編集部
これは、マイクロ法人が不動産業者と正式な法人契約を結び、従業員(または役員)に対して「借り上げ社宅」として提供する形式であることが、経費計上の前提条件となっているためです。
すでに個人名義で契約済みの物件を社宅化したい場合は、大家に法人契約への変更が可能か相談し、必要であれば転居も検討しましょう。契約名義の切り替えを怠ると、家賃をマイクロ法人の経費として処理できなくなるおそれがあります。
マイクロ法人が家賃を経費に計上する際の注意点②:賃貸料相当額の50%以上を徴収する
マイクロ法人が家賃を経費にするには、役員や従業員から「賃貸料相当額」の50%以上の家賃を徴収する必要があります。この徴収が不十分だと、家賃分が経済的利益とみなされ、給与課税の対象となってしまいます。
たとえば、役員に社宅を無償提供した場合、その家賃相当額が「給与」として課税され、節税効果どころか税負担が増える可能性もあります。
そのため、マイクロ法人が家賃を経費化する際には、最低でも賃貸料相当額の半額以上をきちんと回収するようにし、帳簿や証拠書類も適切に保管しておきましょう。
マイクロ法人が家賃を経費に計上する際の注意点③:持ち家を社宅とする場合は不動産所得の申告が必要
役員の持ち家をマイクロ法人の社宅として利用し、家賃を経費として計上する場合、役員自身が「不動産所得」の申告を行う必要があります。なぜなら、役員が自分の家をマイクロ法人に貸し出す形になり、法人から家賃収入を得ることになるためです。
この場合、マイクロ法人は役員に家賃を支払い、その分を法人の経費として計上します。一方、役員はその家賃収入を確定申告で「不動産所得」として申告する義務があります。
もし不動産所得の申告を怠ると、追徴課税などのペナルティが科される可能性があるため、経費処理の手続きを進める際には税理士や専門家に相談するのも有効です。
マイクロ法人が家賃を経費に計上する際の注意点④:社宅に関する社内規定を整備しておく
マイクロ法人が家賃を経費にする際、社宅の貸与に関する社内規定を整備しておくことも重要なポイントです。明確なルールがないまま家賃を経費にしていると、税務署から「私的な支出ではないか」と疑われ、否認されるリスクが高まります。

SoVa税理士ガイド編集部
マイクロ法人が家賃を経費にする方法についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
社内規定には以下のような内容を盛り込むとよいでしょう。
- 社宅の貸与対象者(役員・従業員など)
- 家賃の算出方法(賃貸料相当額の設定根拠)
- 家賃の徴収方法(振込日、支払者など)
- 社宅の利用条件(事業への必要性や管理ルール)
こうした規定を事前に整えておけば、家賃の経費処理に関しても社内外に説明がしやすくなり、トラブルの予防や税務調査時のリスク軽減につながります。
まとめ

マイクロ法人において、家賃を経費にできるかどうかは、契約形態や使用実態、社内ルールの整備など、いくつかの条件を満たすことが前提です。
ただし、条件をクリアすれば、家賃だけでなく社宅に関連するさまざまな費用も経費として計上できるようになり、大きな節税効果が期待できます。
マイクロ法人で家賃を経費化する際は、事前に契約内容を見直し、必要な書類や社内規定を整えることが重要です。また、不動産所得の申告など、税務面での義務も発生する可能性があるため、税理士など専門家のアドバイスを受けながら進めるのも安心です。
家賃を経費として活用すれば、マイクロ法人のキャッシュフロー改善や資産形成にもつながります。今回の記事を参考に、ぜひ自社の家賃経費計上を検討してみてください。
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