【ケース別シミュレーション付き!】マイクロ法人を設立するメリットとは?

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公開日:2025年7月

更新日:2025年7月29日

「節税対策としてマイクロ法人を活用したいけれど、本当にメリットがあるのか分からない」──そんな悩みを抱える個人事業主や副業を行うサラリーマンに注目されているのが、マイクロ法人の設立です。特に「個人事業主×マイクロ法人」の二刀流運用は、税金や社会保険料の負担を軽減できる可能性がある方法として知られています。

本記事では、マイクロ法人を設立するメリットや、個人事業主との併用による節税効果について、具体的なシミュレーションを交えながら徹底解説。役員報酬の金額設定や設立の目安、さらには運用時の注意点まで、ケース別にわかりやすく紹介します。

「マイクロ法人の設立が自分にとって本当にお得なのか?」を判断したい方は、ぜひ本記事のシミュレーションを参考にしてください。

マイクロ法人を設立するメリット

マイクロ法人を設立するメリットはさまざまですが、特に次の3つのポイントは多くの方にとって魅力的です。各項目について、マイクロ法人を活用した場合のシミュレーションを交えながら解説します。

マイクロ法人を設立するメリット①:所得税や住民税の節税ができる

マイクロ法人を設立すると、所得税や住民税の節税につながる可能性があります。個人事業では事業所得として課税されますが、マイクロ法人を設立して役員報酬として受け取ると給与所得扱いとなり、課税方法が異なるためです。

たとえば、マイクロ法人から年間100万円の役員報酬を受け取るケースをシミュレーションすると、給与所得控除の最低65万円が適用され、課税所得は35万円に圧縮されます。これにより所得税・住民税の負担が軽減される可能性があります。

給与所得控除は収入金額に応じて変動するため、マイクロ法人における報酬設計のシミュレーションを行うことで、最適な節税方法を見出すことができます。

マイクロ法人を設立するメリット②:社会保険料の節約が可能になる

個人事業主は、所得に応じて国民健康保険と国民年金の保険料を負担します。一方、マイクロ法人では、健康保険と厚生年金に加入することになり、保険料は役員報酬に基づいて決まります。

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マイクロ法人では役員報酬額を自由に設定できるため、たとえば報酬を月額5万円に設定するシミュレーションをすると、健康保険料・厚生年金保険料の支払額を大幅に抑えることができます。

個人事業を法人化してマイクロ法人を設立し、社会保険制度を切り替えることで、保険料の節約が期待できます。なお、同一事業での法人化の場合は個人事業の廃業届を出す必要があり、この点も事前にシミュレーションしておくと安心です。

また、個人事業を続けつつ別事業でマイクロ法人を設立する「二刀流」の場合、個人事業主として社会保険に加入しなくてよくなるため、保険料の節約という観点でのメリットがさらに高まります。

マイクロ法人を設立するメリット③:消費税の免税事業者になれる可能性がある

マイクロ法人を設立することで、消費税の免税事業者となる可能性があります。個人事業主として売上が1,000万円を超えると課税事業者となりますが、一部の事業をマイクロ法人に分離して売上を分散することで、免税要件を満たすことができます。

たとえば、不動産収入700万円とEC収入400万円を得ている個人事業主が、EC事業をマイクロ法人に移管するシミュレーションでは、個人事業・法人のいずれも年間売上が1,000万円以下となり、両方とも免税事業者になる可能性があります。

マイクロ法人設立で気をつけておきたい注意点

税理士
        _依頼_おすすめの注意点

ただし、インボイス制度の開始により、消費税免税の恩恵が受けにくくなるケースもあります。

適格請求書発行事業者として登録するかどうかは、マイクロ法人での取引先との関係や収支のシミュレーションを基に慎重に検討することが重要です。

マイクロ法人と個人事業主を二刀流するメリット

個人事業をマイクロ法人として法人化するだけでも、社会保険料を節約できるというメリットがあります。しかし、社会保険料の支払いを最も安く抑えるには、単なるマイクロ法人の設立だけでは不十分です。もっとも効果的なのは、個人事業主を継続しながらマイクロ法人も並行して運営する「二刀流」の形態です。

マイクロ法人における社会保険料は、役員報酬の金額に連動して決まります。したがって、マイクロ法人のみで高い報酬を得ると、その分社会保険料も高額になります。収入を確保しつつ、社会保険料を最小限に抑えたいというニーズに応えるのが、個人事業とマイクロ法人の併用による二刀流です。

SoVa税理士お探しガイド編集部

マイクロ法人を設立するメリットについてシミュレーション付きでさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:フリーランスエンジニアがマイクロ法人と二刀流する適切なタイミングを税理士が解説

たとえば、生活資金の大部分を個人事業からの収入で賄い、マイクロ法人からの役員報酬を月額5万円などの低額に設定するシミュレーションを行うことで、健康保険料や厚生年金保険料の支払いを最小限に抑えることが可能です。このようなシミュレーションを通じて、最適な報酬設計を検討することが節約の鍵になります。

マイクロ法人と個人事業主を二刀流する際に気をつけておきたい注意点

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        _依頼_おすすめの注意点

ただし、マイクロ法人と個人事業を二刀流で運営する場合には、両者の業種を明確に分ける必要があります。もし同一の業種で運営した場合、個人の所得を法人に分散させて節税を図ったと見なされ、所得税法第12条に抵触するおそれがあります。

たとえば、「個人事業主はITコンサルタント」「マイクロ法人はアフィリエイト運営」といったように、異なる業種で区別して運営するのが理想です。この点もシミュレーションの段階で十分に検討し、適法かつ最適な構成を目指しましょう。

【シミュレーション付き】マイクロ法人の設立目安

額面給与1,000万円のサラリーマンが、副業をマイクロ法人として法人化した場合と、個人事業として継続した場合で、納税額にどのような違いが出るのかを具体的にシミュレーションします。ここでは、副業所得(事業所得)が年400万円の場合と年1,000万円の場合の2ケースに分けて、マイクロ法人設立のメリットを検証します。

マイクロ法人シミュレーションの前提|給与収入1,000万円の課税モデル

まずは給与収入1,000万円に対する課税のベースラインをシミュレーションしておきます。

給与所得者の場合、課税所得は以下の控除を差し引いて算出されます。

  • 給与所得控除:195万円
  • 社会保険料控除:約120万円
  • 基礎控除:38万円

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これらの控除を差し引くと、課税所得は約647万円となります。この場合、所得税が約87万円、住民税が約65万円で、合計納税額は約152万円です。

副業所得が400万円の場合のシミュレーション

マイクロ法人を作らない場合

副業所得が400万円で、マイクロ法人を設立せず個人の事業所得として申告するケースをシミュレーションします。給与所得647万円に副業所得400万円を加えると、総所得は1,047万円になります。

この場合の税負担は以下のとおりです。

  • 所得税:約192万円
  • 住民税:約105万円
  • 合計納税額:約297万円

マイクロ法人を設立した場合

副業部分をマイクロ法人として法人化し、役員報酬をゼロに設定するシミュレーションを行います。

  • 個人の税金:約152万円(給与分のみ)
  • マイクロ法人の法人税:400万円 × 実効税率21% ≒ 84万円
  • 合計納税額:152万円 + 84万円 = 約236万円

このシミュレーションでは、法人化によって納税額を約62万円削減できる結果となりました。

SoVa税理士ガイド編集部

ただし、マイクロ法人の設立には初期費用や維持コストが数十万円かかるため、この段階では大きな節税効果とは言い切れない点もシミュレーション結果として押さえておきましょう。

副業所得が1,000万円の場合のシミュレーション

マイクロ法人を作らない場合

副業所得が1,000万円あり、マイクロ法人を設立しないケースでは、給与所得647万円と合わせて総所得は1,647万円となります。

この場合の納税額は以下のとおりです。

  • 所得税:約390万円
  • 住民税:約165万円
  • 合計納税額:約555万円

マイクロ法人を設立した場合

副業の1,000万円をすべてマイクロ法人で計上した場合の納税額をシミュレーションすると以下のようになります。

  • 法人税:
    • 最初の400万円:21% → 約84万円
    • 次の400万円:23% → 約92万円
    • 残り200万円:34% → 約68万円
    • 合計法人税:約244万円
  • 個人の税金(給与分のみ):約152万円
  • 合計納税額:244万円 + 152万円 = 約396万円

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このマイクロ法人活用シミュレーションでは、納税額を約159万円削減できることになります。副業の所得が大きくなるほど、マイクロ法人を通じた節税効果はシミュレーション上も明確に表れます。

【シミュレーション付き】節税におすすめの役員報酬額は?

マイクロ法人を活用して節税を図る際、社会保険料の負担を最小限に抑えるには、役員報酬を最小額にシミュレーションして設定することが重要です。役員報酬とは、マイクロ法人が自らに支払う給与のことであり、その金額次第で保険料や税金の額が大きく変動します。

一般的な法人では、生活費を賄うために一定額の役員報酬が支払われますが、マイクロ法人においては社会保険料や所得税の最小化を目的とした金額設計が可能です。

マイクロ法人の役員報酬は月額45,000円以下にシミュレーション

社会保険料と所得税を最小限に抑えるためには、役員報酬を月額11,411円〜45,000円の間で設定するのが、マイクロ法人運用の基本シミュレーションです。

東京都を例にすると、役員報酬が月額63,000円以下であれば、社会保険料は最安水準に抑えられます。ただし、月額11,411円未満だと社会保険料の徴収ができず、マイクロ法人の役員として保険に加入できなくなるため注意が必要です。

さらに、年間の役員報酬を55万円未満に設定すれば、所得税もゼロにできます。これは、給与所得控除の最低額が55万円であるためであり、これを活用すれば、マイクロ法人からの役員報酬に対する税金も発生しないシミュレーションが成立します。

SoVa税理士ガイド編集部

したがって、役員報酬を月額45,000円以下に設定すれば、社会保険料・所得税の両方を最小限に抑える理想的なマイクロ法人運用が可能となります。

マイクロ法人の年収は支出と同額にシミュレーション

マイクロ法人の年収は、役員報酬や法人税、社会保険料などの支出と同額程度に抑えることが理想です。これは、収入が支出を上回ると、その分課税所得が増え、法人税などの負担が増加してしまうためです。

SoVa税理士ガイド編集部

マイクロ法人を設立するメリットについてシミュレーション付きでさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:マイクロ法人とは?作り方やメリット・デメリットなどわかりやすく解説

マイクロ法人を維持するうえで最低限必要な支出をシミュレーションすると、以下のようになります。

項目 支出
役員報酬(月額45,000円) 54万円
会社負担の社会保険料 約14万円
決算申告の依頼費用 約10万円
その他経費(通信費・事務用品など) 約5万円
法人住民税(均等割) 7万円
合計 約90万円

このシミュレーションをもとに、マイクロ法人の年収を90万円前後に設定すれば、支出と収入をバランスさせ、課税所得をゼロ近くに抑えることができます。たとえば、役員社宅や出張旅費、固定資産税、税理士顧問料などの追加経費が発生した場合も、同様に年収を調整することでトータルの税負担を最小化できます。

マイクロ法人と個人事業主の二刀流をする際の注意点

マイクロ法人と個人事業の「二刀流」は節税対策として注目されていますが、その一方で見落とされがちな注意点も存在します。ここでは、実際の運用にあたって押さえておくべき3つのポイントを、シミュレーションを交えて解説します。

注意点①:マイクロ法人の運営には手続き負担が増える

マイクロ法人を設立し、個人事業と並行運営する「二刀流」では、税務上のシミュレーションでは節税効果が期待できる一方で、手続き面の負担が大きくなります。

たとえば、以下のような業務が発生します。

  • マイクロ法人専用の銀行口座・クレジットカードの管理
  • 取引記録や経費の明確な区分管理
  • 法人税申告・決算書作成・議事録作成
  • 給与支払いをする場合は給与明細発行や年末調整

特にマイクロ法人では、法人住民税均等割(最低年7万円)や、毎年の申告・届出義務が発生し、個人事業のみの運営と比較して手間が大幅に増加します。

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手続きを怠ると税務署からの指摘やペナルティにつながるリスクもあるため、事前に運用シミュレーションを行い、自分にとって現実的な負担かを見極めましょう。

注意点②:マイクロ法人の運用は税務リスクと隣り合わせ

マイクロ法人と個人事業を併用する場合、節税目的の構成であっても、税務署に不自然な取引と判断されると調査対象になる可能性があります。

特に以下のような点は、税務リスクの要因となります。

リスク要因 回避策
不自然な給与設定 市場水準を参考にした適正な役員報酬にする
経費の過剰計上 マイクロ法人と個人で帳簿を分け、領収書を整理保管
確定申告のミス 税理士に定期的に相談し、申告内容をチェック

このようなリスクを回避するためには、マイクロ法人と個人事業それぞれの収支・契約を明確にし、定期的な見直しや税務シミュレーションを行うことが重要です。

注意点③:すべてのケースで節税効果があるわけではない

マイクロ法人と個人事業の二刀流が必ずしも節税につながるとは限りません。シミュレーションを通じて明らかになるように、次のようなケースではむしろデメリットとなることがあります。

  • 法人設立費用(登録免許税・定款認証費用など)が大きい
  • 年間収入が少なく、給与所得控除の恩恵が小さい
  • 社会保険料の負担増により、結果的にコスト増になる

SoVa税理士お探しガイド編集部

たとえば、マイクロ法人から給与を出すことで所得を分散させても、健康保険や厚生年金などの社会保険料負担が増え、最終的に手取りが減ることもあります。

このような結果を避けるためには、法人設立前に税理士など専門家に相談し、税務・社会保険の両面からシミュレーションを行うことが不可欠です。収入規模や費用構造をもとに、自分にとって本当にマイクロ法人の設立が有益なのかを慎重に判断しましょう。

まとめ

マイクロ法人は、設立や維持に一定の手間とコストがかかるものの、シミュレーションをしっかり行えば大きな節税効果を生む可能性があります。特に、個人事業主とマイクロ法人の二刀流運用によって、社会保険料や所得税の負担を最小限に抑える戦略は、収入のある個人にとって非常に有効です。

ただし、制度の仕組みを正しく理解しないまま運用を始めてしまうと、かえって税務リスクが増えるケースもあります。今回紹介したケース別シミュレーションや注意点をもとに、自分にとって本当にマイクロ法人が適しているのかを見極めましょう。

最終的には、専門家に相談しながらシミュレーションを重ねることが、無理なく・効果的にマイクロ法人を活用するための近道です。

【ケース別シミュレーション付き!】マイクロ法人を設立するメリットに関するおすすめ記事: マイクロ法人設立でどのくらい節税できる?節税額をシミュレーションしてみた。

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