年末調整の書き方は?必要書類もわかりやすく解説!

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公開日:2024年10月

更新日:2024年10月18日

年末調整に関連する書類は、従業員が年に一度提出しなければなりません。これは確定申告の代わりとして機能し、従業員が正しい税額を納付したり、過剰に支払った税金を取り戻したりするために重要です。年末調整は年に一度の実施のため、書き方を忘れてしまう方もいるかと思います。

ここでは、年末調整の必要性や年末調整に必要な書類、各書類の書き方について詳しく解説します。

年末調整はなぜ必要?

年末調整を行う主な目的は、「正確な所得税額(源泉徴収税額)の計算」です。

企業は、従業員の給与から「源泉徴収」として、その年度に納めるべき所得税をあらかじめ差し引いて支給します。この流れに従い、従業員には税金や各種社会保険料を差し引いた後の手取り額が振り込まれるのが一般的です。

しかしながら、源泉徴収はあくまでも「推定の所得税額」であり、実際の税額とは異なる場合があります。たとえば、従業員の扶養家族の増加や昇進、転職などの変化があれば、実際に支払うべき所得税額は変動します。

このため、企業は「年末調整」を実施します。年末調整では、1年間の正しい給与額や各種控除を考慮に入れた上で、実際の源泉徴収額を算出します。

その後、毎月の源泉徴収額の合計と比較し、過剰に徴収していた場合は差額を還付し、不足分がある場合はその分を徴収するのが年末調整の目的です。

納税は国民の義務であり、これは従業員だけでなく企業にとっても同様です。企業は従業員から源泉徴収した所得税を国に代わって納付する責任があるため、正しい税額を算出し、過不足を解消する年末調整は不可欠です。

年末調整の対象者は?

年末調整の対象となるのは、「企業などに年間を通じて雇用されている従業員(パートやアルバイトを含む)」です。年末調整の条件に該当する従業員は、企業から配布された年末調整の書類の書き方に従い、正しく書類を記入して、年末調整を受けることになります。また、退職した場合でも、以下の条件に当てはまる従業員は年末調整の対象です。

年末調整の対象となる人

  • 12月の給与を受け取った後に退職した人
  • 心身の不調により退職し、本年度中の再就職が見込めない人
  • 死亡により退職した人

一方、年末調整の対象外となる人もいます。

年末調整の対象外となる人

  • 2ヶ所以上で雇用され、ダブルワークをしている人
  • 日雇い労働者
  • 個人事業主や経営者などの非給与所得者
  • 災害減免法の適用を受けていて、控除を受けている人
  • 非居住者(リモート勤務で日本に住んでいない従業員や外国人)
  • 当年度の給与所得が2,000万円を超える人
  • 死亡や心身の著しい障害以外の理由で、年の途中で退職した人
  • 退職したが、年間の所得が103万円以下で源泉徴収されていなかった人
  • 12月分の給与を受け取っていない人
  • 退職後に何らかの形で収入を得た人

たとえば、2ヶ所以上で雇用され、ダブルワークをしている場合、主な事業所では年末調整を受けられますが、2ヶ所目の事業所では年末調整は受けられません。このため、2ヶ所目から得た所得は別途確定申告をする必要があります。このような場合は、正しい年末調整の書き方や提出方法について事前に職場に確認しておくと安心です。

年末調整の書き方に関するおすすめ記事:年末調整の書き方まとめ!書類別に記入例をわかりやすく解説

年末調整で提出する申告書の種類

年末調整の際には、以下の6種類の申告書を提出する必要があります。事前にこれらの年末調整の申告書の概要を理解し、提出時に書き方のミスがないように注意しましょう。

年末調整で使用する申告書の種類

1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

2. 給与所得者の基礎控除申告書

3. 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書

4. 所得金額調整控除申告書

5. 給与所得者の保険料控除申告書

6. 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書

この中で、2〜4の書類は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」として一つの書類に統合されています

SoVa税理士お探しガイド編集部

以下に年末調整に必要な各提出書類の詳細を紹介します。

年末調整の提出書類①:給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の概要

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、申告者が扶養している配偶者や親族の情報をまとめるための書類です。この申告書を勤務先に提出することで、以下の5つの控除が適用されます。

扶養控除等(異動)申告書で申告可能な控除

  • 扶養控除
  • 障害者控除
  • 勤労学生控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除

この申告書は、扶養控除の適用有無にかかわらず、年末調整を受ける全ての給与所得者が提出する必要があります。

年末調整の提出書類②:給与所得者の基礎控除申告書の概要

「給与所得者の基礎控除申告書」には、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の記入欄が含まれています。この書類は、給与所得者が基礎控除を受けるために記入し、勤務先に提出します。

基礎控除申告書で申告可能な控除

  • 基礎控除

基礎控除は多くの給与所得者が受けることができるため、基本的にすべての給与所得者が提出することになります。ただし、年間の合計所得金額が2,500万円を超える方は基礎控除を受けることができません。

年末調整の提出書類③:給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書の概要

「給与所得者の配偶者控除等申告書」は、同じく「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の記入欄があります。この書類は、給与所得者が配偶者控除または配偶者特別控除の適用を申告する際に使用します。

配偶者控除等申告書で申告できる控除

  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除

年末調整の提出書類④:所得金額調整控除申告書の概要

「所得金額調整控除申告書」は、所得金額調整控除を受けるために提出する書類であり、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に記入欄が設けられています。

所得金額調整控除申告書で申告できる控除

  • 所得金額調整控除

この控除には「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」と「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」の2種類があります。

年末調整の提出書類⑤:給与所得者の保険料控除申告書の概要

「給与所得者の保険料控除申告書」は、給与所得者が生命保険料や地震保険料などの保険料控除を受けるために提出する書類です。この申告書で申告できる所得控除は以下の通りです。

保険料控除申告書で申告できる所得控除

  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除

給与所得者の場合、社会保険料は給与や賞与から天引きされており、会社がその額を把握しているため、年末調整での申告は不要です。保険料控除の欄の書き方は、天引きされた社会保険料以外に、個人で支払った社会保険料や生計を共にする親族の社会保険料を記入すれば問題ありません。

iDeCoに加入している場合は、「小規模企業共済等掛金控除」の欄に必要事項を記入して提出します。

年末調整の提出書類⑥:給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書の概要

「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」は、住宅ローンを利用してマイホームの新築、取得、増改築を行った場合に、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けるために必要な書類です。

住宅借入金等特別控除申告書で申告できる控除

  • 住宅借入金等特別控除

給与所得者は、住宅ローン控除を受ける初年度には確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で申告可能です。

「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」は税務署から直接送付されるため、勤務先からは配布されません。手元に届いた書類に必要事項を記入し、勤務先に提出します。

SoVa税理士お探しガイド編集部

年末調整の必要書類の書き方に関しては以下の記事もおすすめです。

年末調整の書き方に関するおすすめ記事:年末調整の書き方をわかりやすく解説! 対象者や必要な書類も知っておこう

年末調整の各申告書の書き方

次に、年末調整に関する各申告書の書き方について解説します。

書き方のポイント①:「扶養控除等申告書」の書き方

扶養控除等申告書は、扶養控除や障害者控除、勤労学生控除などを申告するための書類です。たとえ適用される控除がない場合でも、必ず提出する必要があります。

出典:国税庁「令和6年分扶養控除等(異動)申告書」

源泉控除対象配偶者および控除対象扶養親族の書き方

出典:国税庁「《記載例》令和6年分扶養控除等申告書」

ここで、「源泉控除対象配偶者」は、申告者と同じ生計を立てている配偶者で、その年の所得見積額が95万円以下の方を指します。

また、「控除対象扶養親族」は、申告者と同じ生計を維持している16歳以上の扶養親族で、その年の合計所得の見積額が48万円以下の人です。

該当する配偶者や扶養親族がいる場合の書き方としては、まず氏名や個人番号などを記入します。さらに、扶養親族が「老人扶養親族」「特定扶養親族」「非居住者」である場合は、該当欄にチェックを入れます。

障害者、寡婦、ひとり親または勤労学生の書き方

出典:国税庁「《記載例》令和6年分扶養控除等申告書」

申告者本人や同一生計の配偶者・扶養親族が障害者、寡婦、ひとり親、または勤労学生に該当する場合の書き方としては、まず該当項目にチェックを入れます。扶養親族の中に該当者がいる場合は、括弧内に人数を記入してください。障害者や勤労学生に該当する場合は、その事実や勤労学生の氏名を記載します。

住民税に関する事項の書き方

出典:国税庁「《記載例》令和6年分扶養控除等申告書」

16歳未満の扶養親族についての書き方としては、まず氏名、個人番号、続柄などを記入します。退職所得を除く合計所得金額の見積額が133万円以下の配偶者または扶養親族に、源泉徴収された退職所得があった場合は各欄に記入します。

書き方のポイント②:「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」の書き方

「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」は、基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、所得金額調整控除を受けるための申告書で、これらの3種類の申告書が1つにまとめられています。基礎控除はすべての納税者が対象となるため、必ず提出しなければなりません。

出典:国税庁「令和5年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」

給与所得者の基礎控除申告書の書き方

出典:国税庁「《記載例》令和5年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」

この基礎控除申告書では、年末調整を受ける本人に適用される基礎控除額を申告します。(1)の収入金額欄の書き方ですが、給与明細などに基づいて給与収入の合計を記入するようにしましょう。もしアルバイトなど複数の勤務先から給与を受けている場合の書き方は、合計額を記入してください。所得金額欄には、以下の表を参考にして収入金額から所得金額を算出します。算出した所得金額を基に判定欄にチェックを入れ、表の右側にある控除額を「基礎控除の額」欄に記入します。配偶者控除や配偶者特別控除を受ける場合は、「区分I」欄にも記入が必要です。

給与所得の計算欄

出典:国税庁「《記載例》令和5年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」

給与所得者の配偶者控除等申告書の書き方

出典:国税庁「《記載例》令和5年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」

配偶者控除または配偶者特別控除を受ける場合、配偶者控除等申告書に必要事項を記入します。収入金額欄の書き方は、基礎控除申告書を参考にして配偶者の所得金額を算出し、それぞれの項目に記入するようにしてください。判定欄では、該当する区分Ⅱを記入します。区分Ⅱと基礎控除申告書の区分Iを表に当てはめ、配偶者控除または配偶者特別控除の金額を記入します。

所得金額調整控除申告書の書き方

出典:国税庁「《記載例》令和5年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」

所得金額調整控除のうち、子ども・特別障害者等に関連する所得金額調整控除は年末調整で適用を受けることができます。対象となるのは、その年の給与等の収入金額が850万円を超え、子どもや特別障害者である扶養親族がいる人です。所得金額調整控除を受ける際の書き方としては、要件欄の該当箇所にチェックを入れ、該当項目を記入します。

書き方のポイント③:「保険料控除申告書」の書き方

出典:国税庁「令和5年分保険料控除申告書」

保険料控除申告書は、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模共済等掛金控除を受けるための書類です。

生命保険料控除額の書き方

出典:国税庁「《記載例》令和5年分保険料控除申告書」

生命保険料控除の各明細欄の書き方としては、保険会社から発行される生命保険料控除証明書の内容を転記します。一般の生命保険料と個人年金保険料については、新保険料と旧保険料の合計を分けて記入し、申告書に記載されている手順で計算します。介護医療保険料には新旧の区分はなく、他の保険と同様の書き方で記入します。最終的な生命保険料控除額は、求めた一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の合計(上限12万円)を記入します。

地震保険料控除額の書き方

出典:国税庁「《記載例》令和5年分保険料控除申告書」

地震保険料控除の欄の書き方としては、地震保険料控除と旧長期傷害保険料控除を記入します。まずは保険会社から発行された控除証明書の内容を明細に転記し、保険料の合計額や控除額を申告書の手順に従って計算し、最終的な控除額を右下の欄に記入するようにしましょう。

社会保険料控除および小規模企業共済等掛金控除の書き方

出典:国税庁「《記載例》令和5年分保険料控除申告書」

社会保険料控除欄には、追納した国民年金保険料など、申告者が直接支払った社会保険料を記入します。給与から差し引かれる社会保険料は年末調整の対象外です。また、小規模企業共済等掛金控除欄の書き方については、主にiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金を記入します。該当する場合は、必要な項目をそれぞれの控除欄に記入し、証明書類を添付します。

書き方のポイント④:「住宅借入金等特別控除申告書」の書き方

住宅借入金等特別控除申告書は、住宅を購入し住宅ローン控除を適用したい方が提出する書類です。住宅ローン控除は初年度は確定申告を行い、2年目以降は年末調整で受けられます。申告書は確定申告後に税務署から送付されます。

「住宅借入金等特別控除申告書」の書き方

出典:国税庁「《記載例》給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書の記載例」

基本的な書き方としては、金融機関から送付された年末残高証明書を基に記入します。2024年現在、住宅ローン控除の控除率は複数存在するため、申告書に記載された控除率を確認してから、控除額を計算します。

まとめ

年末調整は、年に一回の手続きのため書き方を忘れてしまう方も多いかもしれません。しかし、年末調整は、各種所得控除や税額控除が正確に適用されるために必要な手続きです。勤務先への提出期限に間に合うように、年末調整の各申告書の書き方を事前に理解しておくことが重要です。

さらに、保険料控除などを受ける際には、保険料や掛金に関する証明書も一緒に提出しなければなりません。保険会社から送られてくる証明書は、年末調整の時期までしっかりと保管しておきましょう。

年末調整は年に一度の作業となるため、記入を終えた書類のコピーを取っておくことで、書き方を忘れてしまったとしても翌年の手続きがよりスムーズに進むでしょう。

年末調整の書き方に関するおすすめ記事:【初心者向け】年末調整の書き方は?申告書の記入例・必要書類もわかりやすく解説!

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