売掛金の回収時の仕訳方法は?仕訳例や回収のポイントについても解説!

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公開日:2025年5月

更新日:2025年5月30日

企業活動において、商品やサービスを提供した際に即時で現金を受け取るのではなく、後日まとめて支払いを受ける「掛取引」は一般的です。このような取引で発生するのが「売掛金」であり、売掛金は企業の資産として正しく仕訳処理を行い、確実に回収することが重要です。

売掛金の仕訳を誤ると、会計帳簿が不正確になるだけでなく、回収遅延や資金繰り悪化といった経営リスクにつながる可能性もあります。そこで本記事では、売掛金の基礎知識から仕訳の流れ、具体的な仕訳例、売掛金を回収できない場合の対応、そしてスムーズな回収のためのポイントまで、実務で役立つ情報を詳しく解説します。

売掛金とは

売掛金とは、売掛債権の一種で、商品やサービスを提供した際に、将来的に代金を受け取る権利を指します。売掛金は、信用取引(掛取引)において重要な勘定科目であり、仕訳の際に用いられます。

ビジネス上の取引では、現金で即時に代金を受け取るのではなく、売掛金として後日まとめて回収するケースが一般的です。これは、毎回の取引で支払いを受けていると、仕訳や請求、入金処理が煩雑になるうえ、振込手数料などのコストも増加するためです。

このように、商品・サービスを先に提供し、代金は後で売掛金として処理・回収する取引方法を信用取引または掛取引といいます。卸売業、製造業、建設業、サービス業などでは、売掛金の発生とその回収管理が特に重要です。

売掛金の仕訳方法と回収のポイントに関するおすすめ記事

信用取引では、売上発生時に「売掛金/売上」といった仕訳を行い、入金があった際には「普通預金/売掛金」などの仕訳で売掛金の回収処理を行います。売掛金の入金が確認されたら、売掛金残高と照合する「入金消込(売掛金消込)」作業が必要です。

SoVa税理士お探しガイド編集部

なお、売掛金が回収不能となった場合には、「貸倒損失/売掛金」といった仕訳で処理を行います。売掛金の回収状況を正確に管理することは、健全な資金繰りのためにも不可欠です。

売掛金の仕訳方法の流れ

信用取引で商品やサービスを販売した場合には、売掛金の計上から回収、売掛金の消込、定期的な残高管理まで一連の流れに従って仕訳を行うことが重要です。

売掛金の仕訳の流れ①:売掛金の計上仕訳を行う

売掛金の仕訳は、商品の引き渡しやサービス提供が完了したタイミングで行うのが原則です。実務では、納品書の発行や請求書の送付時点で売掛金を計上することが一般的です。売掛金を計上することで、将来の代金回収に備えた管理が可能となります。

仕訳例:取引先に10万円の商品を掛け取引で販売した場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
売掛金 100,000円 売上高 100,000円

売掛金の仕訳の流れ②:売掛金の入金を確認して回収管理

売掛金の入金予定日になったら、実際に回収が行われているか確認します。複数の売掛金がまとめて入金されるケースもあるため、入金内容がどの取引に対応するのかを突き合わせる必要があります。

請求額と入金額に差異がある場合は、値引き・返品・振込手数料や源泉徴収などが影響していないか、売掛金の回収差異の原因を調査しましょう。問題が判明しない場合は、取引先に直接確認することも大切です。

SoVa税理士ガイド編集部

売掛金の仕訳方法と回収のポイントについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:売掛金とは?仕訳方法や似ている勘定科目、管理・回収時の注意点を解説

売掛金の仕訳の流れ③:売掛金の入金仕訳・消込処理を行う

売掛金の入金が確認できたら、売掛金の消込を行いましょう。仕訳によって売掛金を貸方に記帳することで、売掛金残高から該当分が消去され、回収済みとして処理されます。

仕訳例:取引先から10万円が普通預金口座に入金された場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 100,000円 売掛金 100,000円

売掛金の仕訳の流れ④:売掛金の定期的な残高確認で回収漏れを防止

売掛金の回収状況を適切に把握するため、売掛金の残高を月ごとに定期的に確認することが重要です。売掛金の回収が予定通り行われているか、未回収の売掛金が残っていないか、入金金額とのずれがないかをチェックしましょう。

売掛金の仕訳はここがポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

売掛金の補助科目を取引先ごとに設定しておくことで、売掛金管理がしやすくなります。

売掛金の仕訳例

ここでは、売掛金に関する基本的な仕訳処理や回収時の仕訳、返品時の対応について、実務に即した形で詳しく解説します。

売掛金の仕訳方法と回収のポイントに関するおすすめ記事

売掛金を計上する際の仕訳

売掛金は、実現主義に基づき仕訳を行います。つまり、「取引先に商品を発送した日」「商品が到着した日」「検収が完了した日」のいずれかのタイミングで売掛金を計上し、適切に仕訳を記録する必要があります。

仕訳例:売掛金1,500,000円を計上する場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
売掛金 1,500,000円 売上 1,500,000円

売掛金の回収時の仕訳

売掛金が回収された際は、入金手段に応じて仕訳を行います。

仕訳例:銀行振込で売掛金を回収した場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 1,500,000円 売掛金 1,500,000円

仕訳例:小切手で売掛金を回収した場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
現金 1,500,000円 売掛金 1,500,000円

仕訳例:手形で売掛金を回収した場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
受取手形 1,500,000円 売掛金 1,500,000円

売掛金を一部回収した場合の仕訳

売掛金が全額ではなく一部のみ回収された場合、その回収額に応じて仕訳を行います。

仕訳例:売掛金1,500,000円のうち500,000円を回収した場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 500,000円 売掛金 500,000円

売掛金の仕訳に関するここがポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

摘要欄には「売掛金一部回収」「○月○日売上分」などを記載すると管理しやすくなります。

売掛金に関連する返品処理の仕訳

返品が発生した場合には、該当する売掛金と売上を減額する仕訳を行います。

仕訳例:50,000円分の返品が発生した場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
売上 50,000円 売掛金 50,000円

売掛金を回収できない場合

商売において最も注意すべきなのは、売掛金の回収です。掛取引が発生すると、売上の仕訳と同時に売掛金の仕訳も計上されます。たとえば、売上が1,000,000円であれば、以下のように仕訳されます。

仕訳例:売掛金1,000,000円を計上する場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
売掛金 1,000,000円 売上 1,000,000円

売掛金を計上した時点で会社の収益は発生し、利益が増えることになります。そして、その利益に応じて法人税や消費税の支払いも増加します。

売掛金が回収されないと資金繰りに悪影響

通常であれば売掛金が予定通り回収されれば問題ありませんが、万が一、売掛金の回収が滞った場合には、入金がない状態にもかかわらず、税金や仕入代金などを支払わなければなりません。

このように売掛金の未回収が続くと、資金繰りが悪化し、金融機関からの借入が必要になることもあります。借入をすれば当然ながら利息の支払いが発生します。

さらに、売上があり利益が出ているのに、売掛金の回収ができずに資金が足りなくなる「黒字倒産」に陥るリスクもあるのです。

SoVa税理士ガイド編集部

売掛金の仕訳方法と回収ポイントについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:売掛金とは?回収できない場合の対応や仕訳例などをわかりやすく解説

売掛金回収不能時の対応と貸倒処理の仕訳

売掛金が期日を過ぎても回収できない場合は、まず継続的に請求を行いましょう。それでも売掛金の回収が難しいと判断した場合には、法的手段による回収や、貸倒処理の仕訳を検討します。

ただし、税務上の貸倒仕訳が認められるためには、一定の要件を満たす必要があります。以下に該当する場合、売掛金を損金処理として認めることが可能です。

1. 売掛金が法的に切り捨てられた場合

  • 会社更生法、民事再生法などの規定によって売掛金が切り捨てられた場合
  • 債権者集会で合理的に決定された売掛金の切り捨て
  • 債務者が債務超過状態で、内容証明等で明確に債務免除を通知した場合

このような場合には、以下のように仕訳します。

仕訳例:売掛金が法的に貸倒処理された場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
貸倒損失 xxx円 売掛金 xxx円

2. 売掛金の全額が回収不能と判断された場合

債務者の資産状況や支払い能力から判断して、売掛金の全額が回収不能と明らかになったときは、損金としての貸倒仕訳が可能です。

3. 一定期間取引停止後に弁済がない場合

  • 債務者の状況悪化により取引を停止し、その後1年以上経過しても売掛金の弁済がない場合
  • 売掛金の取立費用の方が高く、実質的に回収不能と判断される場合

売掛金が回収できないからといって、すぐに貸倒仕訳を行うと税務上否認されることがあります。したがって、最も重要なのは、売掛金を確実に回収できる取引先と取引することです。

売掛金を回収出来なかった場合のポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

特に新規取引先とは、当初は現金取引を行い、取引実績を確認した後に掛取引へ移行するのが安全です。また、売掛金の未回収リスクに備えて、保証金の預かりや契約書による担保の設定も有効です。

売掛金の回収ポイント

売掛金の回収が期日通りに行われず、長期滞留してしまうと、会社は仕入代金や人件費などの支払いができなくなり、資金繰りが逼迫します。

帳簿上は利益が出ていても、現金が手元にない状態では支払いができず、黒字倒産(利益があるのに倒産)に至ることもあります。
だからこそ、売掛金の管理と期日通りの回収、正しい仕訳処理が極めて重要です。

売掛金回収のポイント①:売上債権回転率で売掛金の回収状況を分析

売掛金の回収状況を把握する上で重要なのが「売上債権回転率」です。これは売掛金を含む売上債権がどれだけ効率よく回収されているかを示す指標です。

計算式:
売上債権回転率 = 年間売上高 ÷ 売上債権(売掛金+受取手形など)の平均残高

売掛金の仕訳方法と回収のポイントに関するおすすめ記事

売掛金がスムーズに回収されていればこの指標は高くなり、現金化も早くなります。一方で、売上債権回転率が低い場合は、売掛金が長期間回収できていないリスクを示唆します。

売掛金回収のポイント②:売上債権回転期間で回収までの日数を把握

売上債権回転期間は、売掛金や受取手形などが回収されるまでの平均日数を表す指標です。

計算式:
売上債権回転期間(日)= 365日 ÷ 売上債権回転率

SoVa税理士お探しガイド編集部

この数値が短ければ短いほど、売掛金の回収スピードが速いことを意味し、資金繰りも良好になります。
一般的には中小企業で1〜2か月以内が目安とされます。

売掛金回収のポイント③:与信管理で売掛金の回収不能リスクを防ぐ

売掛金の仕訳を計上する前提として、その売掛金が確実に回収できるかを見極める「与信管理」が重要です。

  • 取引開始前:支払い能力の調査
  • 取引中:売掛金の残高と取引限度額を管理
  • 長期滞留:売掛金の延滞日数や仕訳未処理の滞留分をチェック

これらを定期的に見直すことで、未回収リスクを事前に防止します。

売掛金回収のポイント④:売掛金回収を保証するサービスの活用

正確な与信管理が難しい場合、売掛金の回収を補償するサービスを活用することも有効です。

売掛保証サービス(保証ファクタリング)

金融機関や保証会社が提供しており、取引先の倒産や支払不能時でも、売掛金の一定額が回収保証されます。

例:Misocaの請求書に保証を付ける「Misoca回収保証」では、未回収となった売掛金を一定額補填してくれる仕組みがあります。

取引信用保険制度

保険会社が提供するもので、取引先からの売掛金回収が不能になった際に保険金として補填されます。海外企業との取引では、国際的な支払リスクにも対応可能です。

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売掛金回収のポイント⑤:売掛金の現金化

売掛金を回収できない場合でも、資金を得る方法として以下の手段があります。

売掛金担保ローン

売掛金を担保にして金融機関から資金を借りる方法です。
売掛金が未回収でも、その将来的な回収見込みをもとに資金調達が可能です。

ファクタリング

売掛金を第三者(ファクタリング会社)へ売却し、現金化する方法です。仕訳上は売掛金の消込と同様に「債権譲渡」として処理されます。

まとめ

売掛金の仕訳方法と回収のポイントに関するおすすめ記事

売掛金は企業にとって重要な資産であり、正しい仕訳と確実な回収が健全な経営を支える土台となります。売上が発生した時点での売掛金の仕訳、入金時の消込処理、回収不能時の対応まで、ひとつひとつの処理を正確に行うことで、資金繰りの安定化と財務管理の適正化が図れます。

SoVa税理士ガイド編集部

また、売掛金の回収リスクを軽減するには、与信管理や保証サービスの活用も有効です。

ぜひ本記事で紹介した仕訳方法や回収のポイントを参考に、実務に役立ててみてください。

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