寡婦控除とは?適用条件や申告方法、ひとり親控除との違いについても解説!
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公開日:2025年6月
更新日:2025年6月12日
寡婦控除は、所得税や住民税の負担を軽減するための所得控除の一つです。夫と離婚または死別した後、再婚していない女性で一定の条件を満たす場合、この寡婦控除の適用を受けることで、所得から控除額が差し引かれ、税額を抑えることができます。似た制度としてひとり親控除もありますが、対象や控除額には違いがあるため、正しく理解しておくことが重要です。
この記事では、寡婦控除の基本的な仕組みや適用条件、ひとり親控除との違い、申告の方法、さらに寡婦控除を適用する際の注意点まで、わかりやすく解説します。寡婦控除の利用を検討している方や、年末調整・確定申告で正確に申請したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
寡婦控除とは

寡婦控除は、控除のひとつであり、夫と離婚または死別した後に再婚していない女性が一定の要件を満たすことで受けられる所得控除です。寡婦控除を適用することで、所得から所定の金額を控除でき、結果として所得税や住民税といった税負担を軽減することが可能です。
控除とは、所得税や住民税の課税対象となる所得金額から一定額を差し引く制度であり、所得控除として15種類の控除項目があります。控除の対象になることで課税所得が減少し、税金の負担が軽くなります。寡婦控除を受けられる場合、所得税では27万円、住民税では26万円の控除が認められており、控除額によって大きな節税効果が期待できます。
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なお、かつては離婚または死別した男性を対象とした「寡夫控除」も存在していましたが、2020年に性別を問わず適用される「ひとり親控除」が創設されたことにより、寡夫控除は廃止されました。

SoVa税理士ガイド編集部
現在は、寡婦控除とひとり親控除の要件を確認し、それぞれの控除の対象となるかどうかを慎重に判断する必要があります。
寡婦控除の適用条件

寡婦控除は、所得控除のひとつで、一定の条件に該当する女性が利用できます。申告する年の12月31日時点の状況で、以下のすべての条件を満たしているか確認しましょう。
寡婦控除の適用条件①:ひとり親控除の対象ではない
ひとり親控除の対象となる場合、寡婦控除は適用されません。ひとり親控除も所得控除の一種で、控除額は寡婦控除より大きく、所得税35万円・住民税30万円です。扶養する子がいるなど、ひとり親控除の要件に該当する場合は、そちらを優先して申告してください。
寡婦控除の適用条件②:過去に婚姻歴があり、現在は再婚していない
寡婦控除の対象となるには、過去に法律上の婚姻関係があったことが必要です。夫と離婚・死別、または夫の生死が不明であり、現在再婚していない場合に該当します。
寡婦控除を受ける際に気をつけておきたい注意点

現在「事実婚とみなされる相手」がいる場合は、寡婦控除は受けられません。
寡婦控除の適用条件③:合計所得金額が500万円以下
その年の合計所得金額が500万円以下である必要があります。合計所得金額には、給与所得・事業所得・不動産所得などすべての所得が含まれますが、遺族年金は非課税のため含まれません。

SoVa税理士ガイド編集部
寡婦控除の適用条件や申告方法についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
寡婦控除の適用条件④:離婚の場合は扶養親族がいる
離婚によって寡婦となった場合、控除を受けるには扶養親族が必要です。扶養親族とは、合計所得48万円以下で生計を一にする親・兄弟姉妹・祖父母などが該当します。ただし、離婚により姻族関係は終了するため、元配偶者側の親族は扶養親族にはなりません。
寡婦控除とひとり親控除との違い

ひとり親控除は、2020年に新たに導入された所得控除制度であり、従来の寡婦控除とは控除対象や控除額に違いがあります。特に、ひとり親控除は未婚の方も対象となるなど、寡婦控除よりも適用範囲が広く、控除額も高めに設定されています。
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以下に、寡婦控除とひとり親控除の主な違いをまとめました。
要件 | 寡婦控除 | ひとり親控除 |
---|---|---|
性別 | 女性のみ適用 | 男女どちらも適用可能 |
婚姻歴 | 法律上の婚姻歴あり(離婚・死別・夫の生死不明など) | 婚姻歴は問わず、未婚でも適用可 |
事実婚 | 控除対象外 | 控除対象外 |
扶養の条件 | 離婚の場合は扶養親族が必要。死別の場合は不要 | 生計を一にする子どもが必要。子どもの所得が48万円以下 |
所得要件 | 合計所得金額が500万円以下であることが寡婦控除の条件 | 合計所得金額が500万円以下であることがひとり親控除の条件 |
控除額 | 所得税:27万円/住民税:26万円 | 所得税:35万円/住民税:30万円(寡婦控除より高額) |
寡婦控除とひとり親控除に関するここがポイント!

その年の12月31日時点で、寡婦控除とひとり親控除の両方の条件を満たす場合、控除額が高いひとり親控除が優先されます。ひとり親控除は、寡婦控除とは異なり、男性でも適用されるのが特徴です。
なお、2020年以前に存在した「寡夫控除(男性向けの寡婦控除に類似した制度)」は廃止され、代わって男性も対象となるひとり親控除が導入されました。そのため、現在では、子どもを扶養している単身の男性も控除を受けられるようになっています。
寡婦控除を受けるための申告方法

寡婦控除は、所得控除の一種であり、要件に該当していても控除を受けるためには申告が必須です。寡婦控除を適用するには、年末調整または確定申告で正しく申告手続きを行う必要があります。申告を忘れると控除は反映されないため、注意しましょう。
年末調整で寡婦控除を申告する方法
会社員やパート、アルバイトなど給与所得者の場合、寡婦控除は年末調整を通じて申告できます。勤務先に提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」内の「C 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」欄にある「寡婦」項目にチェックを入れることで、寡婦控除の申告が完了します。
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万が一、年末調整で寡婦控除の申告を忘れた場合でも、後から確定申告で控除申請を行えば、寡婦控除を適用することが可能です。
確定申告で寡婦控除を申告する方法

SoVa税理士お探しガイド編集部
確定申告で寡婦控除を申告する際は、控除対象であることを示すために、確定申告書の第一表と第二表の両方に記載する必要があります。
- 第一表の記載方法
「所得から差し引かれる金額」欄の中にある「寡婦、ひとり親控除」欄に、寡婦控除の控除額27万円(270000)を記入します。この控除額は所得税の計算に反映されます。 - 第二表の記載方法
「本人に関する事項」欄の「寡婦」に〇を付け、寡婦となった事由として該当するもの(「死別・離婚・生死不明・未帰還」)にチェックを入れて控除の対象であることを明示します。
寡婦控除を受ける際の注意点

寡婦控除を適用するには、控除の対象となる条件を正しく把握し、適用可否を判断することが重要です。控除対象かどうかは、離婚や死別の時期、再婚の有無、扶養親族の状況などによって変わるため、寡婦控除の仕組みを正確に理解しておく必要があります。以下は、寡婦控除の適用を判断する際に注意すべき代表的なケースです。
注意点①:離婚・死別・再婚のタイミングによって控除の可否が変わる
寡婦控除の控除要件は、その年の12月31日時点の状況で判断されます。そのため、たとえ年の途中で離婚や死別をしていても、12月31日時点で再婚しておらず、その他の寡婦控除の条件を満たしていれば、控除の適用を受けることが可能です。

SoVa税理士ガイド編集部
ただし、控除対象の要件をすべて満たしていても、年内に再婚してしまった場合は、寡婦控除の対象外となります。
控除の可否は年末時点の婚姻状況に左右されるため、離婚や死別のタイミングとあわせて、再婚の有無にも注意が必要です。
注意点②:別居していても生計を一にしていれば寡婦控除の対象になる
寡婦控除の控除対象となるには、「生計を一にする扶養親族」が必要となる場合があります。たとえば、離婚後に親族と別居している場合でも、生活費や療養費、学資金などを定期的に仕送りしていれば「生計を一にしている」と認められ、寡婦控除の控除要件を満たすことができます。
寡婦控除に関するここがポイント!

控除の適用判断では、同居かどうかではなく、「実質的に生活を支えているかどうか」が重要です。誤って控除を受け損ねないよう、生計の実態に基づいて寡婦控除の申請を行いましょう。
注意点③:扶養親族の所得が48万円を超えると寡婦控除の対象外になる
寡婦控除の控除要件として、扶養親族の年間所得が48万円以下であることが条件です。たとえば、離婚後に兄弟姉妹を扶養している場合でも、アルバイトやパート収入が103万円を超えると所得金額が48万円を上回ることとなり、寡婦控除の控除対象から外れてしまいます。

SoVa税理士ガイド編集部
寡婦控除の適用条件や申告方法についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
親族の収入状況は、寡婦控除の適用可否を大きく左右します。扶養親族がいる場合は、控除対象になるかどうかを事前に確認しておくことが重要です。
なお、夫と死別(または生死不明)のケースでは、寡婦控除の控除要件として扶養親族の有無は問われません。この点も控除の重要なポイントとなりますので、間違えないようにしましょう。
まとめ

寡婦控除は、特定の条件を満たす女性にとって、所得控除を受ける大きなメリットがあります。寡婦控除の適用条件や控除額、申告方法を正しく理解し、制度を有効に活用することで、税負担を軽減することが可能です。

SoVa税理士ガイド編集部
また、ひとり親控除との違いや扶養親族の要件など、細かい控除条件にも注意を払うことが重要です。
申告を忘れたり、要件を誤って判断したりすると控除が受けられなくなる恐れもあります。年末調整や確定申告の際は、自分が寡婦控除の対象になるかどうかをしっかり確認し、適切に控除を申請しましょう。
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