役員報酬とは?給与との違いや決め方について解説!
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公開日:2025年6月
更新日:2025年6月26日
会社経営において欠かせないのが、役員報酬の正しい理解と設定です。特に役員報酬と給与の違いは、税務や会計の取り扱いに大きな影響を与えるため、経営者や経理担当者が押さえておくべき重要なポイントです。
役員報酬は従業員に支給する給与とは違いがあり、損金算入の可否や支給タイミングにも注意が必要です。また、「使用人兼務役員」のように、役員でありながら一部給与が支給されるケースもあり、その役員報酬と給与の違いを明確に理解することで、適切な報酬設計や節税対策につながります。
本記事では、役員報酬の基本的な仕組みから給与との違い、決め方や併用の可否まで、分かりやすく解説していきます。
目次
役員報酬とは

役員報酬とは、会社の「役員」に該当する者に対して支給される報酬であり、通常の従業員に支払われる「給与」とは明確な違いがあります。
ここで言う「役員」とは、単に業務を行う従業員ではなく、企業の経営方針の決定や執行を担う立場にある人を指します。そのため、役員に支払う報酬は「給与」ではなく「役員報酬」として取り扱われます。

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この違いは、税務上の取り扱いや経費算入の条件にも大きく影響します。
たとえば、社内において同じように働いていたとしても、その立場が役員か従業員かによって、支払う金銭が「給与」か「役員報酬」かに分かれます。また、支給頻度が少ない場合でも、役員に対して支払われるのであれば、それは役員報酬に該当します。このように、役員報酬と給与の違いを理解しておくことは、会社経営や税務処理において非常に重要です。
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役員報酬の対象となる役員には、以下のような職種が含まれます。
- 取締役
- 会計参与
- 監査役
- 執行役または会計監査人
- 理事
- 監事(公益法人や協同組合など)
これらは、いずれも法人の経営に従事している立場であり、従業員とは異なる責任と権限を持っています。会社法第423条では、取締役・会計参与・監査役・執行役・会計監査人などが役員として規定されています。また、理事や監事といった役職は、主にNPO法人や公益法人、協同組合などで用いられますが、いずれも役員報酬の対象となる点では変わりありません。
役員報酬と給与の違いを正しく理解し、それぞれに応じた処理を行うことが、企業運営における適正な財務管理につながります。
役員報酬と給与との違い

役員報酬は、わかりやすくいえば役員に対して支払われる給与の一種ですが、従業員に支給される通常の給与とは多くの点で違いがあります。この「役員報酬」と「給与」の違いを正しく理解することは、経営や税務において非常に重要です。

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役員報酬と給与との違いについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
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まず、役員報酬は税務上の取り扱いや決定方法が、従業員の給与とは違います。役員報酬は原則として毎月同額で、年度を通じて一定でなければならず、変更する場合は原則として株主総会での決議が必要です。一方で、従業員の給与は、会社の人事権に基づいて柔軟に変更することが可能です。このような決め方の違いも、役員報酬と給与の大きな違いの一つです。
また、税務上の損金処理においても、役員報酬と給与では違いがあります。従業員の給与は基本的に全額を損金(経費)として計上できますが、役員報酬を損金に算入するには、定期同額給与など一定の要件を満たす必要があります。役員報酬が損金として認められれば、その分法人税を減らすことができますが、役員報酬を過度に増やすと、今度は役員個人の所得税が増えることになり、結果的に税負担が増加するケースもあるため、税理士など専門家と相談しながら適正な金額設定を行うことが望ましいです。

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さらに、会社が役員個人のために支出する資産の提供や生命保険料など、金銭以外の利益も「非金銭報酬」として役員報酬に含まれる場合があります。この点も、役員報酬特有の取り扱いとして違いがあります。
以下の表では、役員報酬と従業員給与の違いを項目別にまとめています。
項目 | 役員報酬 | 従業員給与 |
---|---|---|
支払いに必要な条件 | 株主総会などでの決議が必要 | 勤務実績や契約内容による |
割増賃金(残業代) | 適用なし | 適用あり |
健康保険・厚生年金保険 | 適用あり(※1) | 適用あり(※2) |
雇用保険・労災保険 | 原則適用なし | 適用あり |
最低賃金 | 適用なし | 適用あり |
日割り計算 | できない | できる |
※1:非常勤役員には加入義務がない場合があります。
※2:パートタイマー・アルバイトでも、1日または1週間の労働時間が通常の労働者の4分の3以上であれば加入義務があります。
役員報酬と使用人兼役員の給与の違い

通常の役員報酬と給与には明確な違いがあり、特に「使用人兼務役員」の場合には、役員報酬と給与が併存する点が特徴です。使用人兼務役員における報酬は、「役員としての役員報酬部分」と「使用人(従業員)としての給与部分」に分かれており、それぞれに違いがあります。以下に、役員報酬と給与の違いを整理して解説します。
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給与の支給額の変更に関する違い
通常の役員には、役員報酬として毎月同額を支給する「定期同額給与」のルールが適用され、事業年度を通じて変更することは原則できません。一方、使用人兼務役員の場合、役員報酬部分は定額のままでも、給与部分については従業員と同様に月ごとの変動が可能です。
たとえば、使用人兼務役員に対しては、時間外手当や歩合給の支給、途中での昇給などを従業員と同じ基準で行うことができます。これは、給与部分には通常の役員報酬とは異なる柔軟な運用が許されているためです。
役員報酬と給与との違いに関するおすすめ記事:いまさら聞けない「役員報酬」とは? 税制上のメリットを最大化するために押さえるべきポイント
賞与(ボーナス)の支給に関する違い
一般の役員が役員報酬とは別に賞与を受け取る場合、税務署への「事前確定届出給与」による申告が必要であり、実務上のハードルが高くなっています。しかし、使用人兼務役員の給与部分に対する賞与であれば、事前届出なしに支給でき、しかもその金額は損金として計上(経費化)可能です。
役員報酬と給与の違いに関するここがポイント!

このように、役員報酬と給与では賞与の支給においても税務処理や手続きに明確な違いがあり、使用人兼務役員の給与部分には従業員と同様の取り扱いが認められています。
社会保険・雇用保険の取り扱いの違い
通常の役員は、健康保険や厚生年金保険には加入できますが、雇用保険には加入できません。これは、役員が原則として「労働者」に該当しないためです。

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しかし、使用人兼務役員であれば、ハローワークの認定を受けることで雇用保険への加入が可能になります。
これは、使用人兼務役員が「役員」であると同時に「従業員=労働者」としての実態を持っているからです。よって、労働基準法の適用も受け、労働時間の管理や残業代の支払いなども必要となります。役員報酬と給与の違いが、保険制度や労務管理にも大きな影響を及ぼす例です。
役員報酬の決め方

役員報酬の決め方は、給与とは明確に違いがあります。通常、従業員の給与は会社側の裁量で比較的自由に変更や設定が可能ですが、役員報酬は会社法や法人税法に基づいた厳格な手続きを踏む必要があります。この違いを理解しておくことが、正しい税務処理や会社運営につながります。
役員報酬を決める際の流れ
役員報酬の決定は、定款または株主総会の決議によって行うことが法律で定められています。中小企業では、定款に役員報酬に関する明記がないことも多く、その場合は株主総会の決議によって役員報酬を設定するのが一般的です。
まず、株主総会で役員報酬の総額を決定し、その後、取締役会を設置している会社では、取締役会で各役員の報酬の内訳を決めます。取締役会が設置されていない会社では、取締役が個別の役員報酬を決定します。
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この点でも、従業員の給与との違いが際立ちます。従業員の給与は人事部門や経営者の判断で都度変更できるのに対し、役員報酬は会社内部の正式な決議・記録がなければ損金として計上できないため、証拠書類として株主総会や取締役会の議事録をしっかり保存しておく必要があります。
役員報酬を決める時期と注意点
役員報酬の設定時期にも、給与とは違いがあります。役員報酬は、会社設立から3カ月以内に決めなければなりません。もしこの期間を過ぎてしまうと、原則として法人税法上の損金算入が認められなくなります。
つまり、役員報酬が経費として処理できなくなるため、結果的に法人税が増えることになります。

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一方、従業員の給与にはこうした制限はありません。入社後すぐに給与を設定でき、変更や昇給も随時対応可能です。この点においても、役員報酬と給与の違いが明確です。
また、役員報酬は事業年度ごとに定められ、通常は1年間固定で支給することになります。ただし、業績悪化や組織改編などの事情により変更が必要になるケースもあります。その場合も、変更は事業年度の開始日から3カ月以内に行わなければ、損金算入が認められません。給与のように年度途中で自由に変更できない点が、役員報酬と給与の大きな違いです。
役員報酬と給与の両方を支給することはできる?

基本的に、同一人物に対して「役員報酬」と「給与」の両方を支給することは認められていません。これは、役員報酬と従業員給与の税務上の取り扱いに明確な違いがあるためです。しかしながら、一部の例外として「使用人兼務役員」に限り、役員報酬と給与の両方を受け取ることが可能です。
使用人兼務役員とは、「取締役営業部長」や「取締役総務部長」などのように、役員としての立場と、常時勤務する使用人(従業員)としての職務を兼ねている役職者を指します。このような使用人兼務役員に対しては、役員としての報酬は「役員報酬」として支給され、従業員としての業務に対しては「給与」として支給されます。この役員報酬と給与の違いを正しく理解しておくことが必要です。
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さらに、通常の役員には支給できないボーナスについても、使用人としての給与の一部として支給することが可能です。このボーナスは給与に該当するため、損金算入が認められ、法人税の節税につながる場合があります。つまり、使用人兼務役員制度は、役員報酬と給与の仕組みを活用した税務戦略として一定の効果が期待できます。
役員報酬と給与の双方を受けとる上で気をつけておきたい注意点

ただし、役員報酬と給与の両方を支払うことができるからといって、単なる節税目的で使用人兼務役員を形式的に設定することは望ましくありません。
あくまで、経営の実態に即して、役員報酬にふさわしい経営責任と、給与に該当する実務を日常的に担っている優秀な人材を対象に、適切に任命することが重要です。
このように、役員報酬と給与の違いをしっかりと踏まえた上で、使用人兼務役員制度を活用することが、会社経営における大きなメリットにつながります。
まとめ


SoVa税理士お探しガイド編集部
役員報酬と給与の違いは、法的根拠や税務処理の面で明確に定められており、適切に区別しておくことが重要です。
役員報酬は株主総会の決議などを経て設定されるもので、給与のように自由に変更できるものではありません。
一方で、使用人兼務役員であれば、役員報酬と給与を適切に分けて支給することが可能です。こうした違いを正しく理解しておくことで、経営上のトラブルや税務リスクを回避でき、会社にとっても役員にとってもメリットの大きい報酬設計が実現できます。
役員報酬を適正に設定する際は、税理士などの専門家と相談しながら、会社の状況に応じた最適なバランスを見つけましょう。
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