役員報酬の変更時期はいつ?役員報酬の変更手順や注意点を解説!

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公開日:2025年2月

更新日:2025年2月19日

役員報酬の金額は、株主総会で決定することが定められており、社長や役員本人が自由に変更することはできません。しかし、業績の悪化や役員の交代、経営方針の見直しなど、さまざまな理由により役員報酬の変更が必要になる場合があります。その際、適切な変更時期を見極め、適法な手続きを踏むことが重要です。

役員報酬を変更する際には、損金として計上できるかどうかが法人税の負担に大きく影響します。そのため、役員報酬の変更時期を適切に設定し、必要な手続きを正しく理解しておくことが求められます。

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ここでは、役員報酬を変更できる具体的なタイミングや変更時の注意点、必要な手続きについて詳しく解説します。

目次

  1. 役員報酬の変更時期はいつ?
    1. 役員報酬の変更時期はいつまで?
    2. 役員報酬と定期同額給与の関係
    3. 役員報酬の変更時期と影響
  2. 変更時期を超えて役員報酬が変更できるケース
    1. 例外の変更時期①:役員が新たに就任した場合の役員報酬の変更
    2. 例外の変更時期②:役員の地位が上がった場合の役員報酬の変更
  3. 役員報酬の変更手順
    1. 役員報酬の変更手順①:役員報酬の金額および変更時期を決定する
    2. 役員報酬の変更手順②:株主へ株主総会招集通知を行う
    3. 役員報酬の変更手順③:株主総会を開催し、役員報酬の変更を決議する
    4. 役員報酬の変更手順④:株主総会議事録の作成と保管
    5. 役員報酬の変更手順⑤:取締役会の開催(取締役が3名以上いる場合)
  4. 役員報酬を変更する際の金額の決め方
    1. 役員報酬を変更する際の金額の決め方①:会社の健全な経営を阻害しない役員報酬の金額と変更時期
    2. 役員報酬を変更する際の金額の決め方②:世間の相場と合った役員報酬の金額と変更時期
    3. 役員報酬を変更する際の金額の決め方③:損金算入が認められる役員報酬の金額と変更時期
    4. 役員報酬を変更する際の金額の決め方④:税金対策として有効な役員報酬の金額と変更時期
  5. 役員報酬を変更する際の注意点 
    1. 注意点①:役員報酬を増額する場合
    2. 注意点②:役員報酬を減額する場合
  6. まとめ 

役員報酬の変更時期はいつ?

役員報酬額には法律上の上限はありませんが、役員報酬を損金として算入できるための変更時期には制限があります。適切な時期に役員報酬を変更しないと、損金として計上できず、法人税の負担が増える可能性があります。

役員報酬の変更時期はいつまで?

役員報酬の変更は、原則として事業年度の期首から3ヶ月以内に決定する必要があります。通常、この変更時期は定時株主総会のタイミングと一致することが多く、この期間内に変更すれば役員報酬の全額を損金として算入することが可能です。

役員報酬と定期同額給与の関係

損金算入が認められる役員報酬は、定期同額給与など一定の条件を満たす必要があります。定期同額給与とは、毎月1回、同額で支給される役員報酬のことであり、原則として1年間変更することができません。ただし、一定の例外や翌年度であれば、役員報酬の額を変更することは可能です。

役員報酬の変更時期と影響

定期同額給与として役員報酬を変更できるのは、期首から3ヶ月以内です。ただし、3ヶ月を超えてからであっても役員報酬の変更自体は可能ですが、その場合、損金として算入できるかどうかに影響が出ます。

3ヶ月を超えて役員報酬を増額した場合

期首から3ヶ月を超えて役員報酬を増額した場合、増額前の報酬額のみが定期同額給与の基準となります。つまり、増額分は損金算入できず、法人税の課税対象となってしまうため、役員報酬の変更時期には細心の注意を払う必要があります。

3ヶ月を超えて役員報酬を減額した場合

期首から3ヶ月を超えて役員報酬を減額した場合、減額後の報酬額が定期同額給与の基準となります。この場合、減額前と減額後の差額は損金算入できなくなるため、期中での役員報酬の減額を避けるためにも、あらかじめ適切な変更時期に役員報酬を決定することが重要です。

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変更時期を超えて役員報酬が変更できるケース

前述の通り、役員報酬を損金として計上するためには、事業年度開始(期首)から3か月以内に役員報酬の金額を決定する必要があります。しかし、やむを得ない正当な理由がある場合には、事業年度の途中であっても役員報酬の変更が認められることがあります。これに該当する場合、例外的に変更後の役員報酬を損金計上することが可能です。

以下のようなケースでは、役員報酬の変更時期が期首から3か月を超えていても、例外として損金計上が可能です。

例外の変更時期①:役員が新たに就任した場合の役員報酬の変更

事業年度の途中で新たに役員が増えた場合、その役員に対して支給される役員報酬が毎月一定であれば、定期同額給与とみなされ、損金計上が認められます。役員報酬は従業員の給与とは異なり、日割り計算は行われません。仮に月の途中で就任した場合でも、役員報酬の変更時期に関わらず、同額を支給することが重要です。

役員報酬の変更時期に関する注意点

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同額でないと、定期同額給与として認められない可能性があるため注意しましょう。

例外の変更時期②:役員の地位が上がった場合の役員報酬の変更

役員の地位が上がり、責任が増したり、職務内容が変わったりした場合には、臨時改定事由として役員報酬の変更が認められます。この場合、事業年度の途中でも役員報酬の増額が可能です。

例えば、社長が急逝し、副社長が社長に昇格してその職務を引き継ぐケースが挙げられます。

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ただし、名目上の昇格で職務内容に実質的な変化がない場合は、税務署に不正と判断される可能性があるため注意が必要です。

例外の変更時期③:業績悪化による役員報酬の減額

会社の経営状況が著しく悪化した場合、役員報酬の減額が認められます。ただし、単なる一時的な売上減少ではなく、株主や債権者、取引先などの利害関係者に影響を及ぼすほどの深刻な経営状況であることが客観的に認められる必要があります。

例えば、以下のようなケースでは役員報酬の変更が可能です。

  • 新型コロナウイルス感染症など外部環境の影響で売上が急減した場合
  • 会社や役員が不祥事を起こし、行政処分を受けた結果、役員報酬を減額する必要が生じた場合

なお、役員賞与(ボーナス)に該当する「事前確定届出給与」も、業績悪化を理由に減額することが可能ですが、変更時期に関わらず、所轄の税務署への届出が必要です。

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役員報酬の変更手順

役員報酬の変更を行うためには、会社法および法人税法の両面から適切な手続きを踏む必要があり、特に株主総会の開催と議事録の作成が重要です。役員報酬の変更時期を適切に設定し、変更手続きを正しく行うことが、税務上のリスクを回避するポイントとなります。

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ここでは、役員報酬の変更時期ごとに必要な株主総会の手続きや流れについて詳しく説明します。

役員報酬の変更手順①:役員報酬の金額および変更時期を決定する

まず、役員報酬の金額を決定し、変更時期を確定します。

  • 役員報酬を増額・減額する場合
    → 変更時期を考慮し、適切な手続きを進める必要があります。特に、法人税法上、事業年度開始(期首)から3か月以内の変更であれば損金算入が認められるため、変更時期の設定が重要です。
  • 前期と同額で変更しない場合
    → 役員報酬の変更がない場合でも、「変更しない」ことを明確にするための議事録が必要です。

この決定は、株主総会の普通決議によって承認されます。

役員報酬の変更手順②:株主へ株主総会招集通知を行う

役員報酬の変更時期が決まったら、株主に対してその変更内容を承認してもらう必要があります。そのため、株主総会を開催するための招集通知を行います。

  • 招集通知の期限
    → 株主総会の2週間前までに実施しなければなりません。
  • 通知に記載する内容
    → 開催日時、場所、株主総会の目的(役員報酬の変更議題)を明記します。

また、WEBでの議決権行使やオンライン開催の場合には、開催方法や参加方法の詳細を資料として同封します。

役員報酬の変更に関するポイント!

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なお、同族会社の場合は、事前に口頭で日程調整が行われることが多く、実際に召集通知を発行しないケースもありますが、役員報酬の変更がある場合は適切な手続きを踏むことが推奨されます。

役員報酬の変更手順③:株主総会を開催し、役員報酬の変更を決議する

株主総会を開催し、役員報酬の変更内容や変更時期を正式に決定します。

  • 株主総会の開催日は、法人税の申告書に記載する「決算確定日」と一致することが重要です。
  • 役員報酬の変更は、普通決議で可決されれば正式に決定します。

役員報酬の変更手順④:株主総会議事録の作成と保管

役員報酬の変更が可決された場合、株主総会の議事録を作成する必要があります。

  • 会社法上のポイント
    → 株主総会の議事録が適切に作成されていることが求められます。
  • 法人税法上のポイント
    → 決算確定日と株主総会開催日が一致していることが税務上の要件となります。

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議事録は10年間会社に保管し、必要に応じて株主や債権者が閲覧できる状態にしておく必要があります。

役員報酬の変更手順⑤:取締役会の開催(取締役が3名以上いる場合)

取締役が3名以上いる場合、役員報酬の変更時期や変更内容を取締役会でも決議する必要があります。この場合、取締役会の議事録も作成しなければなりません。

取締役会では、次の事項について決議が行われます。

  1. 株主総会の招集
  2. 取締役の競業取引の承認
  3. 取締役の利益相反取引の承認
  4. 計算書類等の承認
  5. その他、重要な各種契約締結の承認

取締役会を経ることで、役員報酬の変更手続きをより適正に進めることができます。

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役員報酬を変更する際の金額の決め方

役員報酬を変更する際、どのような金額に設定するかは、会社の経営戦略に直結する重要な判断となります。
役員報酬の変更時期に合わせて適切な金額を決定することで、企業の財務健全性を維持し、税務上のメリットを最大限に活用することが可能になります。

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ここでは、役員報酬の変更時期を考慮しながら、金額を決定する際の4つのポイントについて解説します。

役員報酬を変更する際の金額の決め方①:会社の健全な経営を阻害しない役員報酬の金額と変更時期

最初に考えるべきポイントは、「会社の健全な経営を阻害しない役員報酬の金額」です。

  • 役員報酬の変更時期を適切に設定しないと、過剰な役員報酬が会社の資金繰りを悪化させる可能性があります。
  • 過度な役員報酬の増額によって投資機会を失うリスクも考慮しなければなりません。
  • 役員報酬の変更は原則として事業年度の開始(期首)から3か月以内に行う必要があり、それ以降の変更には制約があるため、慎重な判断が求められます。

事業年度の途中で役員報酬を変更する場合は、臨時改定事由や業績悪化改定事由に該当するかを検討し、適法な変更時期を選定することが不可欠です。

役員報酬を変更する際の金額の決め方②:世間の相場と合った役員報酬の金額と変更時期

2つめのポイントは、「世間の相場と合った役員報酬の金額」を設定することです。

  • 役員報酬の変更時期を検討する際には、役職に応じた適正な報酬額を参考にすることが重要です。
  • 特に、複数の役員がいる場合には、役職ごとの報酬バランスが適切であるかを確認する必要があります。
  • 過度に低い役員報酬では優秀な人材の確保が困難になり、企業の成長を妨げる要因となるため、市場の相場に基づいた適正な変更を行いましょう。

役員報酬の変更に関するポイント!

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役員報酬の変更時期に応じて、相場データを活用しながら、適切な報酬額を設定することが望ましいです。

役員報酬を変更する際の金額の決め方③:損金算入が認められる役員報酬の金額と変更時期

3つめのポイントは、「損金算入が認められる役員報酬の金額」を考慮することです。

  • 法人税法では、役員報酬のうち「不相当に高額な部分」は損金算入が認められないため、適切な変更時期と金額の設定が必要です。
  • 事業年度開始(期首)から3か月以内に決定された役員報酬であれば、定期同額給与として損金算入が可能です。
  • 変更時期を誤ると、損金算入が認められず、税務上の負担が増加する可能性があるため注意が必要です。

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役員報酬の変更時期を適切に選び、損金算入が認められる範囲内で適正な金額を設定することが重要です。

役員報酬を変更する際の金額の決め方④:税金対策として有効な役員報酬の金額と変更時期

最後のポイントは、「税金対策として有効な役員報酬の金額」です。

  • 役員報酬の変更時期に応じて、法人税の負担を最適化することが可能です。
  • 例えば、法人税の軽減税率(中小法人の場合、所得800万円以下の部分に対して税率15%が適用)を考慮し、役員報酬の金額を調整することで、会社全体の税負担を抑えることができるでしょう。
  • 過度に役員報酬を下げると、法人税の負担が増加する一方で、過度に高く設定すると損金算入が制限される可能性があるため、バランスを考慮した変更が必要です。

役員報酬の変更時期を事業年度の開始3か月以内に設定し、税金対策として有効な範囲で調整することが推奨されます。

役員報酬を変更する際の注意点 

役員報酬を変更する際には、変更時期や税務上のルールに注意する必要があります。ここでは、役員報酬の増額・減額に関する重要なポイントを解説します。

注意点①:役員報酬を増額する場合

役員報酬の増額は「3ヶ月以内」が原則

役員報酬を増額する場合、原則として事業年度開始日から3ヶ月以内に変更する必要があります。この期間内に変更すれば、問題なく損金算入が可能です。

3ヶ月を過ぎると損金算入できない

事業年度開始から3ヶ月を超えて役員報酬を増額する場合、原則として増額分は損金に算入できません。これは、利益操作を防ぐための措置です。

ただし、損金算入を目的としない場合には、3ヶ月を過ぎても役員報酬を増額することは可能です。

注意点②:役員報酬を減額する場合

役員報酬の減額には例外が認められる

役員報酬を減額する場合、事業年度開始日から3ヶ月以内という原則とは異なり、一定の例外が認められることがあります。

国税庁は、「経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員報酬を減額せざるを得ない事情が生じた場合」に限り、3ヶ月を過ぎた後でも減額を認めています。

減額が認められるための2つの要件

役員報酬の減額が認められるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 経営状況の悪化:会社の業績や財務状況が悪化していること。
  2. 第三者である利害関係者との関係性:株主、債権者、取引先などの第三者との関係上、減額が必要とされること。

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この2つの要件を満たさない場合、たとえ業績が悪化していても、役員報酬の変更時期にかかわらず、減額が認められない可能性があります。

具体的な減額事由(業績悪化改定事由)

国税庁の「役員給与に関するQ&A」(平成24年4月改定)では、以下のような具体例が挙げられています。

  1. 株主との関係:業績悪化に伴い、株主に対する経営責任を示すために役員報酬を減額する場合。
  2. 取引銀行との関係:借入金返済のリスケジュール協議において、銀行側の要求により役員報酬を減額する場合。
  3. 取引先との関係:資金繰りの悪化により、取引先や債権者の信用を維持・確保するために、経営改善計画の一環として役員報酬を減額する場合。

引用:役員給与に関するQ&A|国税庁

役員報酬を減額する際のポイント

役員報酬を減額する際には、第三者である利害関係者との関係が重要な要素となるため、事前に協議を行い、合意を得ることが重要です。変更時期に関わらず、適切な手続きを踏むことで、トラブルを防ぐことができます。

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まとめ 

役員報酬の変更時期については、原則として事業年度開始(期首)から3か月以内に行う必要がありますが、例外として「やむを得ない理由」が認められる場合には、3か月を超えて変更しても損金計上が可能です。

ただし、この「やむを得ない理由」が何に該当するかについては、最終的に税務署の判断となります。単に業績が悪化したという理由だけで自己判断で役員報酬を変更すると、後に損金算入が認められないリスクがあるため注意が必要です。

役員報酬の変更時期を適切に決定するためには、税理士などの専門家に相談し、税務上のリスクを十分に考慮したうえで進めることが重要です。

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