役員報酬を減額するにはどうしたらいい?減額する際の手順や注意点を解説!

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公開日:2025年2月

更新日:2025年2月19日

会社経営が順調な場合には役員報酬の増額を、経営状態が悪化した場合には役員報酬の減額を検討することがあります。しかし、役員報酬の増額や減額を行う際には、税法上のルールに従って適切に変更しなければなりません。

特に、役員報酬の減額は経営悪化によるやむを得ない事情が認められた場合に限り、損金算入が認められる可能性があります。事業年度途中での減額を誤った手順で実施すると、税務上の問題が生じ、損金不算入となるリスクがあるため注意が必要です。

そこで今回は、役員報酬の減額を含む変更手続きの具体的な方法や流れ、税法上の注意点について詳しく解説します。

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役員報酬の変更を適切に行い、会社の経営に影響を与えないためのポイントを押さえておきましょう。

役員報酬は途中で減額できる? 

役員報酬は、原則として事業年度の途中で変更することは認められていません。これは、安易に役員報酬を増減させることで利益調整が可能となり、公平な課税が損なわれる恐れがあるためです。

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そのため、税務署が役員報酬の損金算入を認めないケースも少なくありません。

しかし、赤字経営や財務状況の悪化など、特定の事情がある場合には、例外的に役員報酬の減額が認められることがあります。ただし、役員報酬の減額を適切な手続きなしに行うと、税法上の損金算入が認められないリスクがあるため、慎重な対応が求められます。

役員報酬を減額したい場合の期限

定期同額給与として支給される役員報酬の変更期限は、事業年度開始時から3ヶ月以内と定められています。そのため、3月末決算の企業であれば、役員報酬の増額や減額を行う場合は、6月末までに役員報酬変更の手続きを完了させる必要があります。

特に役員報酬の減額を検討する際には、税務上の適用要件を満たすことが重要です。例えば、経営状況の悪化により役員報酬を減額する場合でも、事業年度開始から3ヶ月以内に変更が行われなければ、損金算入が認められない可能性があります。

また、株主総会が5月頃に開催され、役員報酬の金額が確定している場合は、5月からの役員報酬の変更でも6月からの変更でも問題はありません。

役員報酬の減額に関する気をつけておきたい注意点

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        _依頼_おすすめの注意点

ただし、役員報酬の減額を行う際には、変更時期と手続きを適切に管理し、税務上のリスクを回避することが求められます。

事業年度途中でも役員報酬の減額が認められるケース 

役員報酬の減額は、要件を満たさなくても実施することは可能です。しかし、要件を満たさない場合には、損金算入が認められず、結果として法人税の負担が増大するデメリットがあります。そのため、役員報酬の減額を適用するための条件や例外規定を事前に理解しておくことが重要です。

役員報酬の減額が認められるケース①:役員の増減に伴う変更

事業年度の途中で役員の人数が増える場合もあれば、減る場合もあります。

  • 役員が増えた場合
    事業年度の途中で新たに役員が就任すると、その役員の報酬を設定する必要があります。この場合、役員報酬の増額は損金算入の対象となるため、問題なく変更が可能です。
  • 役員が減った場合
    役員が辞任や解任により減少した場合には、既存の役員報酬の減額措置が可能となります。ただし、減額の理由が明確でない場合や税務上の合理的な根拠がない場合には、損金算入が認められないこともあるため注意が必要です。

役員報酬の減額が認められるケース②:役員の昇格・降格による変更

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役員の職制上の地位が変更された場合、役員報酬の増額や減額が認められるケースがあります。

  • 昇格による役員報酬の増額
    例えば、副社長が社長へ昇格する場合、責任の増大や業務範囲の拡大に応じて役員報酬の増額が行われるのが一般的です。このようなケースでは、税務調査が入ったとしても合理的な理由として認められ、損金算入が可能となります。
  • 降格による役員報酬の減額
    役員が降格し、取締役から執行役員や一般社員へ変更された場合、役員報酬の減額措置を適用することができます。このような場合、役員としての職務がなくなるため、報酬水準を引き下げることは妥当な判断とされます。

役員報酬の減額が認められるケース③:役員の職務内容に重大な変更があった場合の変更

役員の職務内容が大きく変わる場合、例外的に役員報酬の変更が認められることがあります。

  • 病気や怪我による休職
    役員が長期休職を余儀なくされる場合、業務遂行が困難となるため、役員報酬を大幅に減額することが可能です。反対に、休職していた役員が復職する場合には、役員報酬の増額が認められるケースもあります。ただし、損金算入を希望する場合は、職務内容の変更が著しく、報酬変更がやむを得ない状況であることを明確にする必要があります。
  • 組織再編に伴う役員報酬の変更
    企業の合併や経営統合によって、役員の職務範囲が大きく変わることがあります。このような場合、役員報酬の変更が認められることがあり、合理的な範囲内で増額や減額を行うことが可能です。

役員報酬の減額が認められるケース④:会社の業績悪化による変更

業績の悪化により会社の経営が厳しくなった場合、役員報酬を減額することで会社の財務負担を軽減することができます。ただし、役員報酬の減額が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 大幅な業績悪化の事実があること
    前年度と比較して売上や利益が著しく減少し、経営状況が深刻であることを証明する必要があります。収益がわずかに減少しただけでは、役員報酬の減額が認められない可能性があります。
  • 第三者に影響が及ぶレベルの経営悪化であること
    業績悪化により、株主や債権者、取引先などの第三者に影響が及ぶ状況であれば、役員報酬の減額が認められるケースがあります。特に、金融機関との交渉においてリスケジュール(返済条件の変更)を求める場合、役員報酬の減額は重要な要素とされます。
  • 法的・契約上の制限がないこと
    役員報酬の金額が株主総会で決議されている場合や、契約で具体的な金額が定められている場合には、減額が認められないこともあります。そのため、事前に契約内容を確認し、適切な手続きを踏むことが求められます。

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役員報酬を減額した際の影響

役員報酬を減額することで、会社にはさまざまな影響があります。役員報酬の減額は、社会保険料の負担軽減や会社資金の確保につながる一方で、個人の税負担や将来の年金受給額にも影響を及ぼすため、慎重に判断する必要があります。

役員報酬を減額した際の影響①:社会保険料の負担軽減

役員報酬を減額すると、それに比例して会社が負担する社会保険料も減少します。特に、経営が厳しい時期には、役員報酬の減額によって社会保険料の支出を抑え、会社の財務負担を軽くすることができます。

役員報酬を減額した際の影響②:会社の資金繰りの改善

役員報酬を減額した分、会社に資金を残すことが可能になります。資金繰りが厳しい場合や成長投資に回したい場合など、役員報酬を減額することで会社の財務状況を改善することができます。

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極端な例では、役員報酬を0円にすれば、個人の所得税・住民税・社会保険料も0円となり、会社の負担も最小限になります。

役員報酬を減額した際の影響③:役員報酬の減額による個人の負担軽減

役員報酬を減額することで、役員個人の所得税や住民税の負担も軽くなります。特に、高額な役員報酬を受け取っている場合、減額することで税負担が大幅に減少し、会社としての税務対策にもつながります。

役員報酬を減額した際の影響④:役員の生活費や年金受給額の減少

一方で、役員報酬の減額には注意すべき点もあります。

  • 生活費への影響
    役員報酬を極端に減額すると、役員個人の生活費に影響を与える可能性があります。特に、長期間にわたって役員報酬を減額すると、家計のバランスを崩す要因となるため、慎重な判断が必要です。
  • 年金受給額の減少
    役員報酬を減額すると、それに応じて社会保険料の支払いも減少します。社会保険料の納付額が減ると、将来受け取る年金の額が少なくなる可能性があるため、長期的な視点で役員報酬の設定を考慮することが重要です。

会社が安定して収益を上げるまでの間、役員報酬を意図的に減額する経営者も少なくありません。

役員報酬の減額に関するポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

特に、創業間もない企業や財務状況が不安定な企業では、役員報酬を低く設定し、その分を会社の成長資金として活用する戦略が取られることがあります。

役員報酬の減額に関するおすすめ記事:役員報酬を事業年度の途中で増額・減額する場合

役員報酬を減額する場合の手順 

役員報酬を減額する場合も、増額する場合と同様に、まず株主総会などの正式な場で決議する必要があります。この決定を正式な記録として残すため、「株主総会議事録」を作成しなければなりません。

役員報酬を減額する場合の手順①:株主総会議事録の作成

株主総会議事録には以下の内容を明記する必要があります。

  • 開催日時・会場
  • 出席者の氏名・発行済株式総数
  • 役員報酬の減額対象者の氏名
  • 減額後の役員報酬額とその理由
  • 出席者の署名・捺印

合同会社の場合は議事録の作成義務はありませんが、「同意書」を作成し、変更内容を記載した書類を用意する必要があります。この場合も、出席者の署名・捺印が必要です。

役員報酬を減額する場合の手順②:役員報酬減額の証明と税務調査への対応

株主総会議事録や同意書がないと、税務調査時に役員報酬の減額が正式に決定された証明ができず、税務署に損金算入を否認されるリスクがあります。その場合、企業は追加の法人税を支払う必要が生じ、追徴課税の対象となる可能性があります。役員報酬の減額を正しく実施するためにも、これらの書類は適切に保管しておきましょう。

役員報酬を減額する場合の手順③:社会保険料への影響と届出

役員報酬を減額することで、「標準報酬月額」が2等級以上減額される場合、日本年金機構へ「被保険者報酬月額変更届」を提出する必要があります。

また、標準報酬月額が5等級以上減額された場合であっても、提出書類の要件は緩和されていますが、事業所調査の際には以下の書類を求められることがあります。

  • 株主総会議事録または同意書
  • 所得税源泉徴収簿または賃金台帳の写し
  • 固定的賃金変動月の前月からの賃金台帳や源泉徴収簿

役員報酬の減額後に税務署や年金機構からの調査が入る可能性を考慮し、これらの書類は常に提出できるように適切に保存しておくことが重要です。

役員報酬の減額に関するおすすめ記事:役員給与の決め方と増額・減額する時の注意点

役員報酬の減額をする際の注意点 

役員報酬を減額する場合も、自由に変更できるわけではなく、税法上の厳格なルールが設けられています。役員報酬の減額が認められるのは、「事業年度開始から3カ月以内」や、「職制上の地位の変更に伴う減額」といったケースに限られます。

さらに、役員報酬の減額が特別に認められる要件として、「業績悪化改定事由」が挙げられます。これは、法人の経営状況が著しく悪化し、やむを得ず役員報酬を減額せざるを得ない事情がある場合に適用されます。

業績悪化改定事由とは?

法人税法基本通達9-2-13によると、業績悪化改定事由に該当するのは、経営状況が著しく悪化し、役員報酬を減額せざるを得ない状態である場合です。ただし、次のようなケースは業績悪化改定事由として認められません。

  • 一時的な資金繰りの都合で役員報酬を減額する場合
  • 会社の業績目標値に達しなかったことを理由に減額する場合

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つまり、単に「赤字である」や「資金繰りの都合が悪く、一度だけ役員報酬の支給を見送る」といった対応では、税務上の損金算入は認められません。

適正な役員報酬の減額とは?

国税庁の指針によると、業績悪化による役員報酬の減額が適正とされるのは、経営の悪化により従業員の賞与を一律カットせざるを得ないような深刻な状況である場合です。役員報酬の減額が適用されるかどうかは、個別の状況によって判断されるため、慎重に対応する必要があります。

役員報酬の減額を行う際には、税務上のリスクを避けるために、正当な理由が必要です。特に、業績悪化改定事由に該当しない単なる赤字や資金繰りの悪化では、損金算入が認められない可能性が高いため注意しましょう。

役員報酬の減額に関するポイント!

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役員報酬の減額を検討する際には、事前に税理士などの専門家と相談し、適切な手続きを踏むことが重要です。

まとめ 

会社の業績が悪化し、赤字に転落した場合には、役員報酬の減額を検討することができます。ただし、役員報酬の減額を行う際には、税法上のルールに従った適切な手順を踏まなければなりません。適切な手続きを行わないと、法人税の損金算入が認められず、法人税額が増加する可能性があります。

役員報酬の減額を実施する際には、まず減額する金額の決定を行い、その後株主総会の開催や議事録の作成、税務署への届出など、必要な手続きを確実に進めることが重要です。

今回ご紹介した役員報酬の減額手順を参考にしながら、適切な形で減額を行い、税務リスクを回避しましょう。

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