雇用契約書の書き方とは?2024年の改正についても解説!
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公開日:2024年8月
更新日:2024年8月20日
今回は雇用契約書の書き方について解説しています。
また、この記事では2024年4月からの労働条件明示のルール改正についても雇用契約書の書き方と併せて解説しています。
目次
雇用契約書とは?
雇用契約書の書き方を解説する前に、そもそも雇用契約書とはなんでしょうか?
雇用契約書は、企業と従業員が雇用契約を結んだことを証明する書類です。通常、雇用開始日、契約期間、業務内容、勤務時間などが記載されています。
この契約により、従業員は働く義務を負い、企業はその労働に対して賃金を支払う義務があります。
ただし、雇用契約書の発行は法律で義務付けられているわけではありません。民法第623条には、雇用契約の締結に書面の作成を求める規定はありません。
雇用契約は口頭でも成立しますが、口約束だけでは「言った」「言わない」のトラブルが起こりやすいです。したがって、特別な理由がない限り、雇用契約書を作成することをお勧めします。
雇用契約書の書き方に関連するおすすめ記事
雇用契約書の書き方については以下の記事のおすすめです。
「雇用契約書とは?必要性や記載内容、作成方法を解説」
雇用契約書の法的効力
雇用契約書を締結すると、労働者も企業も契約内容に従う必要があります。
さらに、労働条件通知書としても機能する雇用契約書に記載された労働条件と実際の条件が異なる場合、労働者は即座に契約を解除することができます(労働基準法第15条第2項)。
したがって、雇用契約書を作成する際は、労働基準法、労働協約、就業規則の内容をしっかり確認し、それに基づいた契約内容にすることが重要です。もし、労働契約書の内容が労働基準法や労働協約、就業規則の基準を下回っている場合、その部分は無効となります。労働基準法で定められた最低基準を下回る契約は法的に認められないため、労働者の権利を守るために、これらの基準を厳守する必要があります。
雇用契約書の書き方に関するポイント!
雇用契約書において、労働基準法や労働協約、就業規則よりも労働者に有利な条件を記載する書き方は問題ありません。むしろ、労働者にとって有利な条件を設定することで、企業と労働者の信頼関係を強化することができます。これにより、法的な不備を防ぎ、労働者に不利益を与えないようにすることができます。
雇用契約書の書き方に関連するおすすめ記事
雇用契約書の書き方については以下の記事も参考にしてみましょう。
「労働契約書に必要な項目の書き方【テンプレ有】再発行や電子交付まで解説 !」
①労働基準法に反する内容である場合
契約内容が労働基準法に違反している場合、その部分は無効です(労働基準法第13条)。
たとえば、「1日8時間を超える労働に対して割増賃金を支払わない」という規定は無効です。また、就業規則に記載されている労働条件よりも不利な内容も無効になります(労働契約法第12条)。
雇用契約書の書き方に関連するおすすめ記事
雇用契約書と労働条件通知書との違いは以下の記事を参照してください。
「雇用契約書とは?記載事項や労働条件通知書との違いを解説!」
②労働協約に反する内容である場合
雇用契約書の書き方解説部
「労働協約」とは、労働組合と使用者が行った取り決め、契約のことを指します。
「社労士が解説!労働協約とは?労働協約と労使協定の違いについて」
労働協約は、書面で作成し、両者が署名または押印することで効力を持ちます(労働組合法第14条)。
また、労働協約に反する個別の労働条件は無効となり、協約の内容が適用されます(労働組合法第16条)。
雇用契約書の書き方解説部
協約の定める基準を上回る労働契約との関係でも、同様に、その上回る部分の効力を否定する強行的効力が及ぶのでしょうか。結論は、有利原則を否定する学説が有力と言われています。詳しくはこちらの記事を参照してください。
※労働協約で定めた労働条件を上回る個別の労働契約を許すことを有利原則といいます。
雇用契約書の書き方に関連して気をつけておきたい注意点
ただし、労働協約は基本的に労働組合の組合員にのみ適用され、非組合員には効力がありません。
例えば、労働協約で年末年始に5日間の休暇が認められている場合、労働契約書にその記載がなくても、労働者は協約に基づいて休暇を取得できます。労働協約に従わない契約条項は、労働基準監督署の指導対象となる可能性があります。
③就業規則に反する内容である場合
就業規則に反する個別の雇用契約は、その部分が無効になり、就業規則の内容に修正されます。(労働契約法12条)
雇用契約書の必要性
民法第623条では、雇用契約は当事者の合意だけで成立すると規定されており、雇用契約書の発行は義務付けられていません。そのため、雇用契約書を作成しなくても雇用契約は有効です。
ただし、前述の通り、口頭だけの契約では「言った・言わない」のトラブルが発生しやすいため、雇用契約書を作成することが望ましいとされています。
また、雇用契約書と似た書類に「労働条件通知書」があります。労働条件通知書は、労働基準法に基づき、賃金や労働時間などの労働条件を明示することが義務付けられた書類です。企業は労働者を採用する際、必ず労働条件通知書を発行しなければなりません。
法的には、労働条件通知書が発行されていれば問題ありませんが、この書類は企業から労働者に一方的に交付されるため、労働条件に関する認識の違いによるトラブルが生じやすいです。こうしたトラブルを避けるため、労働者の同意を得る手段として、雇用契約書を発行することが一般的です。
雇用契約書の書き方
雇用契約書の書き方を理解するうえで、まずは雇用契約書には「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」があることを認識しておきましょう。
絶対的明示事項は、労働基準法第15条で、企業が従業員を雇用する際には一定の労働条件を明示しなければならないと定められています。
引用:「労働条件の明示義務とは?労働条件通知書への記載事項や2024年の改正内容を解説」
相対的明示事項は、絶対的明示事項とは異なり、会社に定めがある場合のみ明示が必要です。 相対的明示事項については、書面の交付を要しません。
引用:「2024年4月から『労働条件明示事項』が法改正!追加される明示事項とは?」
絶対的明示事項 | 相対的明示事項 |
・労働契約期間 ・就業場所 ・従事する業務内容 ・就業時間(始業時間と就業時間) ・残業(所定外労働時間)の有無 ・休憩・交代制勤務の有無 ・休日、休暇 ・賃金や手当、支払日 ・退職に関連する事項 | ・退職手当の定めが適用される労働者の範囲 ・退職手当の計算や支払い方法 ・退職手当の支払い時期 ・安全衛生に関する事項 ・職業訓練制度 ・表彰や制裁の制度 ・休職に関する事項 ・最低賃金額 ・臨時に支払われる賃金、賞与、手当 |
雇用契約書の書き方① 労働契約期間
雇用契約書の書き方として、まず労働契約期間について記載します。
労働契約期間には、契約期間の有無、契約更新の有無、期間満了の時期を明記します。正社員の場合は「なし」と記載し、パートタイム、契約社員、派遣社員などの雇用形態では、契約期間を具体的に記載します。
試用期間がある場合は、正式採用の開始日も明記することで、労働者の不安を解消する証拠となります。
契約期間の更新がある場合は、更新の条件や基準として、仕事の進捗状況、能力、本人の意思などを明記しましょう。曖昧な書き方は、後のトラブルの原因となる可能性がありますので、十分注意してください。
雇用契約書の書き方に関連するおすすめ記事
雇用契約書の書き方の注意点は以下の記事がおすすめです。
「雇用契約書の書き方は?記入例と注意すべきポイントを解説」
雇用契約書の書き方② 就業場所
雇用契約書の書き方として、就業場所についても雇用契約書に記載する必要があります。
業務を行う場所を明確に記載します。また、勤務地が変更される可能性がある場合は、その旨も記載する書き方が求められます。
雇用契約書の書き方解説部
また、「③業務内容」の注意点でも記載しますが、2024年4月以降は、これらに加えて「就業場所・業務の変更の範囲」も明示する必要があることに注意してください。
雇用契約書の書き方③ 業務内容
雇用契約書の書き方として、業務内容も記載することが肝心です。
業務内容には、担当する具体的な仕事内容を明記します。業務範囲が広い場合は、それぞれの業務の詳細を列挙する書き方にしましょう。
雇用契約書の書き方に関連して気をつけておきたい注意点
労働契約を結ぶ際や有期労働契約を更新する際には、すべての労働者に対して労働条件を明示する必要があります。現在は、雇用開始直後の「就業場所」と「業務の内容」を明示すればよいとされていますが、2024年4月以降は、これらに加えて「就業場所・業務の変更の範囲」も明示する必要があります。
雇用契約書の書き方解説部
詳細は「2024年4月から変わる労働条件「就業場所・業務の変更の範囲」の明示ルール」や厚生労働省のホームページを参照してください。
雇用契約書の書き方④ 就業時間
雇用契約書の書き方として、就業時間についても雇用契約書に記載しておく必要があります。
雇用契約書には勤務時間も記載しましょう。
勤務時間には、始業時間、終業時間、そして休憩時間が含まれます。
勤務時間は、法律や就業規則に従い、設定してください。
法定労働時間は1日8時間、週40時間が上限です(【参考】労働基準法第32条1項・2項)。
雇用契約書の書き方⑤ 残業の有無
雇用契約書の書き方の5つ目は、残業の有無についてです。
雇用契約書には、残業や休日出勤などの所定外労働についても記載が必要です。残業や休日出勤がある場合は、その旨を明記しましょう。契約書には、所定外労働の有無を選択する項目を設け、「有」または「無」にチェックを入れる書き方にしておくと便利です。
また、雇用契約書に残業についての記載があるかどうかは、残業代の支払い義務には関係ありません。法律では、会社は残業代を支払う義務があり、雇用契約書にどのように定められていても、この義務は変わりません。
具体的には、労働者が時間外労働、休日労働、または深夜労働を行った場合、会社は法定の割増賃金を支払う必要があります。たとえば、時間外労働の割増賃金は通常の賃金の1.25倍以上、休日労働は1.35倍以上である必要があります。
したがって、雇用契約書にこれらの割増率が法定基準よりも低く記載されていたとしても、労働者は法定の割増率に基づいた残業代を請求することができます。たとえ契約書に「残業代は発生しない」という書き方をされていても、会社の支払い義務は消えません。
雇用契約書の書き方に関連するおすすめ記事
雇用契約書の書き方での注意点は以下の記事を参考にしてください。
「雇用契約書(書面等)に残業代についての記載がないから払わないは違法【弁護士監修】」
雇用契約書の書き方⑥ 休憩
雇用契約書の書き方の6つ目は、「休憩」についてです。
雇用契約書には、始業時間・終業時間、残業の有無に加えて、休憩時間の長さも記載しましょう。原則として、労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を取らせる必要があります。
もちろん、法定の時間以上の休憩を設けることも可能です。休憩時間の具体的な時間帯や長さを契約書に明記することで、労働者と雇用主の間で誤解や認識の違いを防ぐことができます。
雇用契約書の書き方に関連するおすすめ記事
雇用契約書の具体的な書き方は以下のものがおすすめです。
「雇用契約書の書き方を徹底解説!作成時の注意点とは?」
雇用契約書の書き方⑦ 交代制勤務の有無
雇用契約書の書き方として、交代制勤務の有無も雇用契約書に記載する必要があります。
交代制勤務がある場合は、その旨を契約書に記載しましょう。また、交代の順序や交代のタイミングなど、社内のルールや規則がある場合は、それも併せて記載しておく書き方にすると良いでしょう。
雇用契約書の書き方⑧ 休日・休暇
雇用契約書の書き方の8つ目は、「休日・休暇」についてです。
休日については、決まった曜日や日付に休む場合は「毎週土・日・祝日」や「年末年始(12月29日~翌年1月3日)」などと記載します。
休日が不定期な場合は、「週に2日」や「月に10日」といった具体的な形で記載しても問題ありません。
年単位で変形労働時間制を導入している場合は、「年間105日」といったように、年間の総休日数を記載することもあります。
休暇については、年次有給休暇の日数とその付与条件を記載するのが一般的です。例えば、「6ヶ月の継続勤務で10日の年次有給休暇を付与し、それ以降は労働基準法に従う」と記載すれば良いでしょう。
また、年次有給休暇以外に慶弔休暇や傷病休暇などがある場合は、その内容も合わせて記載しておくと良いです。
雇用契約書の書き方に関連するおすすめ記事
雇用契約書の雛形はこちらをご覧ください。
「正社員の雇用契約書について解説!内容や書き方【雛形・テンプレートあり】」
雇用契約書の書き方⑨ 賃金・手当・支払日
雇用契約書の書き方の9つ目は、「賃金・手当・支払日」についてです。
賃金の計算方法については、月給制、日給制、時給制などを明記します。また、賃金の支払い方法も「手渡し」や「振り込み」など、具体的な書き方にしましょう。
雇用契約書の書き方に関連するおすすめ記事
雇用契約書の書き方⑩ 退職に関する事項
雇用契約書の書き方として、退職に関する事項も雇用契約書に記載する必要があります。
雇用契約書には、定年退職の年齢、自己都合で退職する場合の通告期限、解雇の理由を記載します。特に有期雇用の社員との契約では、解雇や契約終了のルールを明確にしておくことが重要です。労働契約法の改正により、解雇や契約終了の基準が以前よりも明確に定められたためです。また、有期雇用と無期雇用の労働条件に不合理な違いがないようにするため、契約書を作成する際には法的な問題がないか十分に確認することが求められます。
雇用契約書の書き方⑪ その他
雇用契約書の書き方で、以下のものも注意しましょう。
2024年4月1日から、労働条件に関して新たに明示すべき事項が追加されます。契約社員、パートタイマー、アルバイトなど有期雇用で働く従業員については、以下の情報を明示する必要があります。
まず、契約の更新に関する上限—つまり、契約期間や更新回数の上限について記載する書き方にしておく必要があります。また、無期転換の申し込み機会についても明示し、さらに無期転換後の労働条件についても明確にしておくことが求められます。
これらの新しい明示事項が導入された背景には、有期雇用の従業員の処遇改善を目的とした取り組みがあります。有期契約から無期契約に転換できることを明示する書き方にすることで、雇い止めなどの不当な待遇を防ぐことが期待されています。
雇用契約書の書き方に関連するおすすめ記事
雇用契約書の書き方に関する法改正の詳細は以下の記事を参考にしてください。
「労働条件の明示とは?労働基準法15条で義務づけられた明示事項や法改正の変更点を解説」
まとめ
今回は雇用契約書の書き方について解説しました。2024年4月に労働条件明示のルールが改正されているので、雇用契約書を作成する場合は特に注意が必要です。雇用契約書の書き方や記載項目は法令で定められているため、書き漏れなどがないように気をつけましょう。
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