役員報酬の改定時期に決まりはある?改定時期を過ぎても改定できるケースについても解説!
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公開日:2025年6月
更新日:2025年6月28日
役員報酬の見直しを検討する際に、気になるのが「役員報酬の改定時期に決まりはあるのか?」という点です。実は、役員報酬の改定には税法上のタイムリミットが存在し、これを過ぎると損金として扱われない可能性があります。とくに、法人税法上で損金算入が認められる「定期同額給与」としての条件を満たすには、改定時期が事業年度開始から3か月以内であることが求められます。
ただし、一定の要件を満たす場合には、この改定時期を過ぎても役員報酬を変更できる例外的なケースも存在します。本記事では、役員報酬の改定時期に関する基本的なルールから、例外ケース、具体的な手順や注意点まで詳しく解説します。
役員報酬の改定時期について

役員報酬の改定時期には明確なルールがあり、原則として事業年度の開始(期首)から3か月以内に決定しなければなりません。これは起業1年目であれば会社設立日から3か月以内が基準となります。このタイミングを過ぎると、役員報酬の変更を行っても損金計上が認められないため、法人税の負担が増えるおそれがあります。
損金とは、会社の利益から差し引くことのできる経費のことで、損金算入可能な役員報酬を設定できるかどうかは、節税に直結します。
役員報酬の改定には株主総会の決議が必要
役員報酬の金額を変更する際には、改定時期を含めて株主総会での決議と議事録の作成が必要です。役員報酬は基本的に事業年度を通じて一定額で支給される「定期同額給与」が原則であり、自由に増減できるものではありません。
また、従業員の給与と異なり、役員報酬を損金として扱うには一定の要件を満たす必要があります。税務上、損金算入が認められる役員報酬には以下の3種類があります。
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損金計上できる役員報酬の種類と特徴
役員報酬の種類 | 特徴 |
---|---|
定期同額給与 | 毎月同じ金額で支払われる報酬。最も一般的な形式。事前届出不要。 |
事前確定届出給与 | 特定の期日に支給する賞与タイプ。所轄税務署へ事前に届出書が必要。 |
業績連動給与 | 業績に応じた支給。上場企業でのみ適用可。非上場企業は対象外。 |
改定時期が3か月を超えると損金不算入の可能性も
役員報酬の改定時期が事業年度開始から3か月を超えた場合でも、株主総会での決議を経れば金額の変更は可能です。

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ただしこの場合、増減された金額については損金として計上できない部分が発生する点に注意が必要です。
例:月額100万円の役員報酬を4か月目から月額120万円に増額した場合、増額分の20万円は定期同額給与と認められず、法人税の対象となることがあります。
逆に、役員報酬を減額したケースでも、減額後の金額が新たな定期同額給与とみなされるため、既に支払った高額部分との「差額」は損金不算入となる可能性があります。
改定時期の制限は不正な税金対策を防ぐため
役員報酬の改定時期に制限があるのは、利益操作や不正な節税を防止するためです。たとえば、会社の利益が多く出た年だけ役員報酬を高く設定して法人税を減らすといった行為は、税務上問題視されます。
税務調査では、役員報酬の改定時期や増減理由、金額の妥当性が確認されることがあるため、変更時は必ず株主総会の議事録を残しておきましょう。
役員報酬の改定時期に関するおすすめ記事:役員報酬の変更タイミングは?手続きや改定の時期について解説
役員報酬の改定時期を過ぎても損金計上できるケース

通常、役員報酬の改定は事業年度開始から3か月以内に行わなければ損金計上が認められません。しかし、改定時期が事業年度開始から4か月を超えた場合でも、一定の要件を満たせば、役員報酬の変更が損金算入可能な特例的ケースが存在します。以下に、その代表的な3つのケースを紹介します。
改定時期を過ぎても損金計上が認められるケース①:新たに役員が就任した場合
新任の役員が追加された場合、事業年度の途中でも役員報酬の新規設定が可能です。役員報酬の改定時期が4か月以降であっても、その報酬額は適切な手続きを経れば損金として認められることがあります。
これは、事前の予算や計画に存在しなかった役員の登用が、事業拡大や組織再編によるものであるため、通常の役員報酬改定とは異なる扱いとされるからです。

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ただし、新任役員の役員報酬の金額・決定経緯・支払い条件などは、税務署に対して説明責任を果たせるよう透明性が求められます。
改定時期を過ぎても損金計上が認められるケース②:役員の昇格・降格に伴う役員報酬の見直し
役員が昇格または降格したことにより、職責や業務内容が変更され、それに見合った役員報酬の改定が行われた場合も、事業年度開始から4か月を超えていても損金算入が認められる可能性があります。
たとえば、昇格により責任が増した場合には役員報酬を増額し、逆に降格によって責任が軽くなれば減額するという判断は合理的なものです。こうした変更が役員の職務内容に即した正当な理由に基づく場合には、税務上も柔軟に対応されることがあります。
役員報酬の改定時期に関する気をつけておきたい注意点

ただし、役員報酬の改定時期が規定の3か月を過ぎている場合は、その改定理由を明確にし、株主総会での決議・議事録の整備など、税務ガイドラインに沿った手続きが必要です。
改定時期を過ぎても損金計上が認められるケース③:会社の業績が著しく悪化した場合
会社の業績が大きく悪化した際には、経営改善の一環として役員報酬を減額する対応がとられることがあります。このような場合、改定時期が4か月以降であっても、実態に即した減額であれば損金算入が認められる例外扱いとなる可能性があります。

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役員報酬の改定時期についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
おすすめ記事:役員報酬の変更タイミングや定期同額給与の改定時期を解説
役員報酬の減額は、経営責任を取る姿勢を示す意味でも重要であり、特に赤字決算や資金繰り悪化といった明確な背景がある場合には、その変更は妥当とみなされやすくなります。
ただし、役員報酬の改定理由や改定時期が適正であることを説明できるように、株主総会での議決事項として正式に記録し、税務署への対応にも備える必要があります。
役員報酬を改定する際の手順

役員報酬を改定する際には、改定時期を問わず、会社法および法人税法の規定に基づく手続きが必要です。特に、株主総会の開催と議事録の作成は、役員報酬の改定を正当な手続きとして証明するための重要な証拠となります。
ここでは、役員報酬の改定時期に関わる株主総会手続きの流れについて、具体的に説明します。
1. 役員報酬の金額を決定する
まずは、改定時期に応じた役員報酬の金額を決定します。役員報酬を増額・減額する場合はもちろんのこと、「変更なし」とする場合でも、その旨を明記した議事録を作成する必要があります。
役員報酬の金額決定は、株主総会における普通決議によって行います。期首から3か月以内に決定することが原則ですが、特別な理由がある場合には改定時期が遅れても手続きが求められます。
役員報酬の改定時期に関するおすすめ記事:役員報酬の適切な変更時期はいつ?損金算入のルールや変更方法を徹底解説
2. 株主へ株主総会招集通知を送付する
役員報酬の改定時期が迫っている、または改定が必要と判断された場合は、速やかに株主に対して株主総会の招集通知を送付しなければなりません。通知は、原則として総会の2週間前までに行い、開催日時・場所・目的(=役員報酬の改定)などを記載します。
オンライン開催を行う場合は、WEBでの議決権行使方法や参加手順なども案内文に明記します。特に役員報酬の改定に関する決議は、税務上も重要な意味を持つため、資料の整備を怠らないようにしましょう。
なお、同族会社では口頭で日程を調整し、改定時期にあわせて簡易的に手続きを済ませるケースもありますが、正式な議事録作成は省略できません。
3. 株主総会を開催し役員報酬の改定を決議
改定時期に合わせた株主総会の開催が行われ、ここで役員報酬の改定内容を正式に決議します。開催日は、法人税申告書に記載する「決算確定日」と一致することが多く、法人税法上も非常に重要な日付です。
役員報酬の改定時期に関するここがポイント!

株主総会では、改定された役員報酬の金額、支給開始日(改定時期)、変更理由などを議論・記録し、議事録として残します。
4. 株主総会議事録を作成し保管する
役員報酬の改定時期を明確に記録するためには、株主総会の議事録作成が不可欠です。会社法では、株主総会の議事録は10年間の保管義務が課されています。
また、議事録の作成にあたっては、以下の2点が重要です。
- 会社法上の要件:議事録が作成されていること自体が法的義務
- 法人税法上の要件:決算確定日と株主総会の開催日が一致しているか
役員報酬の改定時期やその金額に関する根拠資料として、議事録の正確性と保管体制は極めて重要です。
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取締役がいる場合は取締役会での決議も必要
会社に取締役が3名以上いる場合は、役員報酬の改定時期にあわせて取締役会の開催も必要となります。ここでも、役員報酬の改定に関する事項は重要議案の一つとして取り扱われます。
取締役会では、以下のような決議事項を取り扱います:
- 株主総会の招集決議(役員報酬改定議案の提出)
- 競業取引や利益相反取引の承認
- 計算書類の承認
- 契約や資金調達に関する重要事項の承認
役員報酬の改定を適切な改定時期で実施するためにも、取締役会・株主総会の手続きを整えることが肝要です。
役員報酬を改定する際の注意点

役員報酬を変更する際には、「改定時期」に関する注意点が2つあります。1つは、法人税法上で損金算入が認められる支給方法である「定期同額給与」に該当するかどうか。もう1つは、会社法に基づく株主総会議事録の作成です。
ここでは、役員報酬の改定時期に関わるルールと、株主総会議事録作成時の注意点について詳しく解説します。
注意点①:役員報酬の改定時期は原則「事業年度開始から3か月以内」
一般的に、役員報酬の改定は事業年度開始から3か月以内に行うことが法人税法上の原則です。これは、役員報酬が「定期同額給与」として損金に算入されるための必須条件となります。
たとえば、3月決算の企業で法人税の申告期限が5月末の場合、役員報酬の改定時期は4月〜6月の間に設定できます。ただし、法人税法と会社法の要件を同時に満たすには、5月末までに株主総会を開催しておく必要がある点に注意が必要です。

SoVa税理士ガイド編集部
役員報酬の改定時期についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
支給開始日が6月であっても、役員報酬の改定に関する株主総会は、申告期限より前に行わなければなりません。このように、役員報酬の改定時期と法人税申告のスケジュールにはズレが生じるため、計画的に準備することが重要です。
注意点②:株主総会議事録は役員報酬の改定時期と連動して作成が必須
会社法上、役員報酬の改定は株主総会の承認を経る必要があり、その証拠として株主総会議事録の作成が必須です。これは、改定時期を法的に証明するための重要な書類でもあります。
また、取締役が3名以上いる場合は、株主総会に加えて取締役会の開催と議事録の作成も求められます。
役員報酬の改定時期に関する気をつけておきたい注意点

株主総会議事録の日付は、法人税申告書に記載する「決算確定日」と一致させる必要があります。役員報酬の改定時期とこの日付がずれていると、法人税法上の要件を満たさない可能性があるため注意が必要です。
まとめ

役員報酬の改定時期に関するおすすめ記事
役員報酬の改定には、原則として事業年度開始から3か月以内という明確な改定時期のルールがあります。この期間内に適切な手続きを踏めば、法人税法上の損金処理が可能となります。

SoVa税理士ガイド編集部
一方で、役員の就任・昇格・業績悪化など、特定の条件を満たす場合には改定時期を過ぎても役員報酬の見直しが認められるケースもあります。
役員報酬の改定を行う際は、株主総会の開催や議事録の整備、改定理由の明確化などが求められ、タイミングを誤ると税務上の不利益が発生することもあるため注意が必要です。制度の理解を深め、適切な改定時期を見極めることで、税務リスクを回避しながら効果的な役員報酬の運用が実現できます。
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