法人化のメリット・デメリットとは?法人化の適切なタイミングについても解説!
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公開日:2025年7月
更新日:2025年7月8日
個人事業主として事業を続けていると、「そろそろ法人化したほうがいいのだろうか」と考える場面が訪れます。法人化には、節税や社会的信用度の向上など多くのメリットがある一方で、設立費用や事務負担の増加といったデメリットも存在します。法人化のメリットとデメリットを正しく理解し、どのタイミングで法人化するのがベストなのかを知ることが、後悔しない法人成りの第一歩です。
この記事では、そもそも法人化とは何かをおさらいしつつ、法人化することで得られるメリットと気をつけたいデメリットを具体的に解説します。さらに、法人化を検討すべきタイミングや、法人化する際におすすめの会社形態についても詳しくご紹介しますので、ぜひ最後まで参考にしてください。
法人化とは

法人化とは、個人で事業を営んでいる方が会社を設立し、事業を法人として引き継ぐことを指します。個人事業主としての事業形態と法人化後の事業形態では、手続きの方法、税金の取り扱い、社会的な立場などにさまざまな違いがあります。

SoVa税理士ガイド編集部
たとえば、個人事業主は税務署に開業届を提出するだけで手続きが完了しますが、法人化をする場合は会社の登記や定款の作成など、必要な手続きが増えるため、一定の準備期間と費用が必要です。
また、法人化することで、事業の形態が「個人」から「法人」に変わるため、法的な位置づけや対外的な信頼性などが個人事業主とは異なります。
このように、法人化には事業の進め方に大きな影響を与える特徴があります。具体的にどのようなメリットやデメリットがあるのか、どのタイミングで法人化を検討すべきかは、次の章で詳しく解説していきます。
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法人化するメリット

法人化には、税金面でのメリットや社会的信用度の向上、資金調達の幅が広がるなど、個人事業主では得にくい多くのメリットがあります。ここでは、法人化を検討する際に知っておきたい代表的なメリットを、わかりやすく解説します。
法人化するメリット①:節税対策ができる
個人事業主が法人化する最大のメリットの一つが、節税対策になることです。個人事業主の場合、所得税は超過累進税率のため、所得が増えるほど税率が高くなり税負担が増えるデメリットがあります。しかし、法人化すると法人税は基本的に一定の税率で計算されるため、所得が多い場合は法人化のメリットを受けやすくなります。また、法人化することで役員報酬や退職金を損金に算入できる点も大きなメリットです。
法人化するメリットに関するここがポイント!

さらに、法人化で消費税の免税期間を最大2年間確保できたり、個人名義の生命保険を法人名義にして損金算入するなど、法人化による多様な節税メリットがあります。
法人化するメリット②:社会的信用度が高まる
法人化のメリットとして、社会的信用度が高まることも挙げられます。個人事業主に比べて法人化された企業の方が、取引先や金融機関から信用を得やすくなるのがメリットです。仕入先との掛取引や銀行融資、ファクタリング会社への債権譲渡など、法人化することで有利になる場面は多いです。ただし、法人化によって維持コストが発生するデメリットもあるため、信用度向上とコスト面のデメリットを比較して判断することが大切です。
法人化するメリット③:欠損金を10年間繰越できる
法人化のもう一つのメリットは、欠損金の繰越期間が長くなる点です。青色申告の個人事業主の場合、純損失は3年間の繰越が可能ですが、法人化した場合は欠損金を10年間繰越できるメリットがあります。これにより、赤字が出ても翌年度以降の利益と相殺でき、節税につながるのが法人化のメリットです。一方で、法人化すると毎期決算書の作成が必須になるデメリットもあるため注意が必要です。
法人化するメリット④:有限責任でリスクを抑えられる
法人化のメリットには、出資者の責任が有限責任になる点もあります。株式会社や合同会社などの法人化をすると、役員が保証した債務などを除き、債権者に対する責任は出資額に限定されます。これは、万が一事業が失敗した場合でも、個人資産まで責任を負わずに済む大きなメリットです。ただし、役員の故意や重大な過失による責任は免除されない点は法人化のデメリットとして把握しておきましょう。

SoVa税理士お探しガイド編集部
法人化のメリット・デメリットについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
法人化するメリット⑤:決算期を自由に設定できる
法人化には決算期を自由に設定できるメリットもあります。個人事業主の場合、決算日は必ず12月31日ですが、法人化すると自社の繁忙期を避けて決算期を設定できるメリットがあります。このように、事業の状況に合わせて柔軟に決算期を決められるのも法人化の特徴です。ただし、決算や申告の事務手続きが増えるデメリットも忘れないようにしましょう。
法人化するメリット⑥:社会保険に加入できる
社会保険に加入できることも法人化の大きなメリットです。個人事業主やフリーランスは国民健康保険に加入しますが、法人化して会社の役員になると社会保険(健康保険)に加入できます。社会保険に加入すると家族を扶養に入れることができ、保険料の負担が軽減される場合があるのも法人化のメリットです。ただし、法人化で社会保険料の負担が増えるケースもあり、これがデメリットになることもあるため、法人化の前にシミュレーションしておくことが重要です。
法人化するデメリット

ここからは、個人事業主が法人化することによるデメリットについて、法人化のメリットと比較しながら解説します。法人化には多くのメリットがある一方で、手続き費用や維持コストなどのデメリットも理解しておくことが重要です。
法人化するデメリット①:手続きに費用が発生する
法人化する際は、会社を設立するための手続きに費用がかかる点が大きなデメリットです。個人事業主の場合は開業届を提出するだけで済むのに対して、法人化では定款作成・定款認証・登記など、複数の手続きを行う必要があります。法人化のメリットである信用度アップや節税効果を得るためには、この初期費用を負担しなければならない点をデメリットとして把握しておきましょう。
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以下は、専門家に依頼せず自分で法人化した場合の費用の目安です。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
定款作成手数料・印紙代 | 4万円 | 4万円 |
定款認証 | 3.2万円 | 0円 |
登録免許税 | 15万円 | 6万円 |
合計 | 22.2万円 | 10万円 |
法人化するデメリット②:赤字でも法人住民税の支払いが必要
法人化のデメリットとして、赤字でも必ず法人住民税の均等割を支払う義務がある点も見逃せません。個人事業主の場合、所得がなければ所得税は発生しませんが、法人化すると赤字でも毎年最低限の法人住民税がかかります。これは、法人化のメリットである節税効果を活かしても避けられないデメリットです。
均等割の標準税率は資本金や従業者数によって異なり、以下のとおりです。
資本金等の額 | 都道府県民税均等割 | 市町村民税均等割 (従業者数50人超) | 市町村民税均等割 (従業者数50人以下) |
---|---|---|---|
1,000万円以下 | 20,000円 | 120,000円 | 50,000円 |
1,000万円超1億円以下 | 50,000円 | 150,000円 | 130,000円 |
1億円超10億円以下 | 130,000円 | 400,000円 | 160,000円 |
10億円超50億円以下 | 540,000円 | 1,750,000円 | 410,000円 |
50億円超 | 800,000円 | 3,000,000円 | 410,000円 |

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つまり、法人化すると赤字でも毎年最低70,000円以上の均等割を負担するデメリットがあります。
法人化のメリットと比較して慎重に検討しましょう。
法人化するデメリット③:事務作業に手間がかかる
法人化は、事務作業の負担が増えるというデメリットもあります。個人事業主に比べ、法人化すると税務申告が複雑になり、専門知識が必要です。そのため、法人化のタイミングで顧問税理士をつけるなどの追加コストが発生するケースもあります。さらに、株式会社として法人化した場合は、株主総会の開催や議事録作成など、運営上の事務作業が増えるのもデメリットです。これらのデメリットと、法人化によるメリットのバランスを見極めて進めることが大切です。
法人化を検討すべきタイミング

法人化にはさまざまなメリットがありますが、そのメリットを最大限に活かすためには、法人化するタイミングを見極めることが重要です。一方で、法人化にはデメリットもあるため、メリットとデメリットを比較して法人化のタイミングを判断しましょう。一般的に、法人化を検討すべきタイミングとしては、次のようなポイントがあります。
法人化を検討すべきタイミング①:2年前の売上が1,000万円以上のとき
個人事業主のままでは、年間売上が1,000万円を超えると、その2年後から課税事業者となり、消費税の納付義務が発生するデメリットがあります。しかし、法人化することで会社設立後2年間は消費税の納付が免除されるメリットを受けられます。これは、法人化の大きな節税メリットのひとつです。

SoVa税理士お探しガイド編集部
法人化のメリット・デメリットについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
したがって、2年前の年間売上が1,000万円を超えている場合、課税事業者になる前に法人化を検討することは、節税というメリットを活かすうえで重要です。ただし、法人化に伴う設立費用や維持費などのデメリットも合わせて検討しましょう。
法人化を検討すべきタイミング②:前年の前半6か月の売上が1,000万円を超えたとき
2年前の売上が1,000万円以下でも、前年の前半6か月(個人事業主の場合1月1日~6月30日)の売上が1,000万円を超え、かつ人件費(役員報酬を含む)が1,000万円を超える場合、その年から課税事業者となるため、消費税の負担が増えるデメリットがあります。
しかし、法人化を活用すれば、例えば3月決算の会社を9月1日に設立し、1期目を7か月にすると、2期分の消費税が免除されるメリットがあります。
法人化するタイミングを検討する際はここがポイント!

前年の売上と人件費が基準を超えた場合は、法人化を検討し、節税というメリットと法人化に伴うデメリットを比較して判断すると良いでしょう。
法人化を検討すべきタイミング③:事業を拡大したいとき
法人化には、社会的信用度が高まるメリットがあります。取引先や仕入先によっては、法人でなければ契約しない企業もあり、個人事業主だと大規模な取引を断られるデメリットが生じることもあります。法人化によって信用度を高めることで、新たな顧客や取引先の獲得につながり、事業を拡大しやすくなるメリットがあります。
また、法人化すると、法人のみが対象となる助成金や補助金の申請が可能になる点もメリットです。さらに、株式会社の場合は株式発行による増資など、資金調達の選択肢が広がるのも法人化の大きなメリットです。ただし、法人化すると運営コストがかかるなどのデメリットもあるため、事業拡大の計画とあわせて検討することが大切です。
法人化する際におすすめの会社形態

個人事業主の方が法人化を検討する際には、株式会社と合同会社の2つの法人化の形態から選択できます。
それぞれの法人化には異なるメリットとデメリットがあるため、法人化の目的や事業内容に合わせて適切な形態を選ぶことが大切です。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
法人化の設立時にかかる費用 | 約22.2万円 | 約10万円 |
決算公告 | あり | なし |
社会的信用度 | 高い | 低い |
経営の自由度 | 低い | 高い |
利益分配 | 株主 | 出資者 |
意思決定 | 株主総会 | 出資した社員の同意による |
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ここからは、それぞれの法人化の形態について、メリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
株式会社のメリットとデメリット
株式会社として法人化する最大のメリットは、社会的信用度が高いことです。株式会社は合同会社に比べて社会的信用度が高く、大手企業との取引がしやすくなったり、金融機関からの融資を受けやすくなったりするメリットがあります。また、株式会社として法人化すれば株式を発行して資金調達ができる点も大きなメリットです。将来的に多くの資金を集めて事業拡大を目指す方には、株式会社としての法人化は大きなメリットになるでしょう。
一方で、株式会社として法人化するデメリットもあります。合同会社に比べて設立費用が高く、登記や決算公告の義務があり、運営コストがかかるのはデメリットです。さらに、赤字であっても法人住民税の均等割を支払う必要があるなど、税負担のデメリットもあります。株式会社として法人化する場合は、これらのメリットとデメリットを十分に比較して検討することが重要です。

SoVa税理士ガイド編集部
株式会社の法人化は、多くの資金調達を計画している場合や、BtoBビジネスで社会的信用を高めたい場合に適しています。
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合同会社のメリットとデメリット
合同会社として法人化する場合のメリットは、設立時の費用が比較的安く、維持費も抑えやすいことです。株式会社の法人化と比べて、合同会社は約10万円で設立でき、決算公告の義務がないため官報公告にかかる費用も不要です。経営の自由度が高く、利益分配も柔軟に決められるのは合同会社ならではの大きなメリットです。法人化の初期費用や運営コストを抑えたい事業主の方にとっては、合同会社のメリットは魅力的でしょう。
ただし、合同会社として法人化するデメリットもあります。株式会社と比較すると社会的信用度が低く、BtoB取引では不利になる可能性があります。また、合同会社は株式を発行できないため、資金調達の方法が限られる点もデメリットです。融資や補助金などの手段に依存する必要があることは、合同会社の法人化のデメリットとして理解しておくべきです。

SoVa税理士ガイド編集部
合同会社の法人化は、小規模事業や迅速な意思決定を重視する場合、またBtoC事業のように社会的信用度がそれほど求められない業種に向いています。
まとめ

法人化には節税対策や社会的信用度アップ、資金調達の選択肢が増えるなど、多くのメリットがあります。一方で、法人化によって設立費用や維持コストがかかること、事務手続きが煩雑になることなど、避けられないデメリットもあるため注意が必要です。

SoVa税理士ガイド編集部
大切なのは、法人化のメリットだけでなくデメリットも正しく理解し、あなたの事業の規模や将来の展望に合った最適なタイミングで法人化を進めることです。
この記事を参考に、法人化を検討する際はメリット・デメリットを比較し、適切な会社形態を選んで、後悔のない法人成りを目指しましょう。
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