役員賞与を活用した社会保険料の節税術とは?具体的な手続き方法やデメリットを解説!
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公開日:2024年11月
更新日:2024年11月29日
この記事を読んでいる方の中には、役員賞与をうまく活用して社会保険料の負担も適切に管理しながら、会社の財務状況を健全に保ちたいとお考えの方もいるかと思います。また、節税方法に法的な問題点がないか不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。
結論から言うと、役員賞与は適切な条件を満たすことで経費として認められます。
SoVa税理士ガイド編集部
本記事では、役員賞与を役員報酬の一部として計上し、適切に節税するための方法を解説します。
目次
役員賞与とは
役員賞与とは、会社が役員に対して毎月の給与(役員報酬)とは別に支給する一時金を指します。会社法上、役員賞与は役員報酬の一部として扱われるため、その支給や処理には特別な手続きが必要です。
一般的な会社員に支払われるボーナスに相当するもので、役員賞与の支給は会社の業績や役員の職務内容、貢献度などに基づき決定されます。また、社会保険料にも影響を及ぼすため、その金額設定や支給時期には慎重な計画が求められます。
役員賞与の決定と手続き
役員賞与を支給するには、原則として株主総会での承認が必要です。支給金額は役員ごとに決定することも可能ですが、株主総会では総額のみを定め、取締役会や代表取締役に役員ごとの金額設定を一任することもできます。
重要なのは、役員賞与を支給する場合、税務処理や社会保険料の負担にどのような影響があるかを理解することです。役員賞与の支給額が増えると、役員本人と会社の双方で負担する社会保険料も増加するため、トータルでのコストを把握することが大切です。
役員報酬と役員賞与の違い
役員報酬とは、役員に対して定期的に支払われる給与のことです。これに対し、役員賞与は臨時的に支払われるボーナスであり、税務処理や社会保険料の計算方法も異なります。
会社法上は役員賞与も役員報酬の一部として扱いますが、税務上は両者を区別する必要があります。税務面での大きな違いは、損金算入の可否です。役員報酬は要件を満たせば損金算入可能ですが、役員賞与は原則として損金算入できません。
気をつけておきたい注意点
ただし、一定の条件を満たした場合に限り、役員賞与も損金算入が可能です。この条件を適切に理解し、税務処理を行うことが節税に直結します。
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役員賞与を活用した社会保険料の節税術とは?
毎月支給される給与は「標準報酬月額」、ボーナスに該当する一時金である役員賞与は「標準賞与額」として扱われ、それぞれに基づいて社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の負担額が決まります。しかし、これらには上限が設けられており、この上限を活用することで社会保険料の負担をコントロールすることが可能です。
役員賞与にかかる社会保険料は以下のように設定されています。
- 健康保険料の上限:年間573万円
- 厚生年金保険料の上限:1回の支給につき150万円
つまり、役員賞与の支給額がこれらの上限を超えた部分については、健康保険料や厚生年金保険料がかからない仕組みになっています。これにより、役員賞与の額や支給タイミングを調整することで、会社と役員が負担する社会保険料を大幅に削減できる可能性があるのです。
SoVa税理士ガイド編集部
例えば、支給回数を増やして1回あたりの金額を抑えることで、厚生年金保険料の上限内に収めることができるかもしれません。
また、年間を通じて役員賞与の総額が健康保険料の上限を超えないように調整することで、会社全体の社会保険料負担を削減できます。この工夫により、役員賞与を有効活用しながら会社の経費を抑えることが可能になります。
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社会保険料を節税するために重要な手続きとポイント
役員賞与が損金として認められるためには、以下の重要な手続きが必要です。また、役員賞与には社会保険料の負担も発生するため、適切な計画が欠かせません。
重要な手続き①:株主総会での決議
最初に、株主総会を開催し、役員賞与の支給額と支給時期について正式に決議を行います。この際、役員賞与に関連する社会保険料負担額についても考慮しておくことが重要です。特に、社会保険料は役員賞与額に基づいて算出されるため、決定内容が後々の会社の財務負担に影響を与える可能性があります。株主総会の議事録を適切に作成し、記録を残しておくことが必要不可欠です。
重要な手続き②:事前確定届出給与に関する届出
次に、「事前確定届出給与に関する届出」を税務署に提出します。この手続きは、役員賞与を適切に損金算入するための必須条件であり、届け出る内容には支給日と支給額が含まれます。加えて、役員賞与にかかる社会保険料の負担額も事前に試算しておくと、会社の資金計画がスムーズになります。
SoVa税理士お探しガイド編集部
役員賞与を計画的に支給するには、以下の3つのポイントに注意が必要です。
ポイント①:届出の提出時期
事前確定届出給与に関する届出の提出時期は、
(a) 株主総会で役員賞与の決議を行った日から1ヵ月以内
(b) 会計期間開始日から4ヵ月以内
の「早いほう」に設定されています。
たとえば、3月決算の会社が5月25日に定時株主総会を開催して役員賞与について決議を行った場合、(a)では6月25日、(b)では7月31日となります。この場合、提出期限は6月25日となり、それまでに届け出を行う必要があります。役員賞与の金額が社会保険料の負担額に影響するため、この時点で計画を十分に練ることが重要です。
ポイント②:支払い時期と金額の厳守
届け出た役員賞与の支給時期と支給額を厳守する必要があります。たとえば、税務署に「役員賞与100万円」と届け出ていた場合、150万円を支給すると全額が損金不算入となります。逆に70万円を支払った場合も、支給額の全額が損金不算入となるため、注意が必要です。さらに、役員賞与額の変更に伴い、社会保険料負担額も変動するため、慎重な対応が求められます。
ポイント③:支払いを取り消す場合の変更届出
業績悪化などの理由で、事前に届け出た役員賞与を支給しない場合には、「事前確定届出給与に関する変更届出」を提出する必要があります。この場合も、株主総会で役員賞与不支給について決議を行い、その議事録を添付する必要があります。また、社会保険料負担が大幅に軽減されることを考慮して、不支給に伴う全体的な財務計画を見直すことが求められます。
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【シミュレーション】役員賞与額による社会保険料の違い
役員賞与を増額し、毎月の役員報酬を調整することで、年間の社会保険料負担を大幅に削減することが可能です。ここでは、役員報酬と役員賞与のバランスを見直すことで、社会保険料をどのように節約できるかを具体的なシミュレーションを通じて解説します。
前提条件
- 年間の総報酬額:1,200万円
- 健康保険料率:9.98%
- 厚生年金保険料率:18.3%
- 健康保険料の上限:年間573万円
- 厚生年金保険料の上限:1回の支給につき150万円
全国健康保険協会が提供する健康保険・厚生年金保険の保険料額表を基に計算しています。
役員賞与に係る社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)には、それぞれ上限額が定められています。たとえば、健康保険料の上限は年間573万円、厚生年金保険料の上限は1回の支給額に対して150万円です。
ここがポイント!
役員賞与の設定を工夫し、この上限額を超えない形で報酬を分割することにより、社会保険料の負担を効果的に軽減することが可能です
ケース1:役員賞与が0円で、月々の役員報酬を均等に支給する場合
- 毎月の役員報酬:100万円
- 年間役員報酬:1,200万円
社会保険料の計算
- 健康保険料:100万円 × 9.98% = 99,800円/月
- 厚生年金保険料:100万円 × 18.3% = 183,000円/月
- 年間の社会保険料: (99,800円 + 183,000円) × 12ヶ月 = 3,388,800円
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ケース2:役員報酬を少額に設定し、役員賞与を増額する場合
- 毎月の役員報酬:10万円
- 役員賞与:1,080万円
- 年間役員報酬+賞与:1,200万円
毎月の役員報酬にかかる社会保険料の計算
- 健康保険料:10万円 × 9.98% = 9,980円/月
- 厚生年金保険料:10万円 × 18.3% = 18,300円/月
- 年間の毎月の社会保険料: (9,980円 + 18,300円) × 12ヶ月 = 338,160円
役員賞与にかかる社会保険料の計算
- 健康保険料:573万円 × 9.98% = 571,854円
- 厚生年金保険料:150万円 × 18.3% = 274,500円
- 役員賞与にかかる社会保険料合計:846,354円
年間社会保険料合計
- 毎月の社会保険料+役員賞与にかかる社会保険料 = 338,160円 + 846,354円 = 1,184,514円
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比較結果
- ケース1の年間社会保険料:3,388,800円
- ケース2の年間社会保険料:1,184,514円
- 節約額:3,388,800円 – 1,184,514円 = 2,204,286円
このシミュレーションから明らかなように、役員賞与を増額して役員報酬を抑える方法を採用することで、年間の社会保険料を約220万円節約することが可能です。役員賞与にかかる社会保険料には上限が設定されているため、これを有効活用することで、役員報酬全体の税務効率を高められます。
気をつけておきたい注意点
ただし、この方法を採用する場合には、税務上のリスクや法的な制約を十分に理解し、適切な手続きを行う必要があります。専門家の意見を求めながら、慎重に運用を検討することが重要です。
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役員賞与と上限規定
役員賞与に関連する社会保険料は、基本的には社会保険料率を基に算出されます。そのため、月額報酬と役員賞与の支給額の割り振りを調整しても、一般的には社会保険料に大きな変動は生じません。ただし、役員賞与や報酬額が高額な場合、社会保険料には控除時の「上限」が定められているため、結果的に社会保険料率で計算される金額よりも低い金額の徴収となるケースがあります。
SoVa税理士お探しガイド編集部
以下に、役員賞与および報酬に関連する社会保険料の「上限」について詳しく説明します。
1.月額報酬に係る健康保険料の上限
(健康保険法第四十条)
月額報酬が1,355,000円以上の場合、健康保険料は上限額となります。役員報酬がこの範囲に該当する場合、健康保険料の増加を抑えつつ適正な役員賞与の配分を計画することが重要です。
2.月額報酬に係る厚生年金保険料の上限
(厚生年金保険法第二十条、および厚生年金保険法の標準報酬月額の等級区分の改定等に関する政令第一条)
月額報酬が635,000円以上の場合、厚生年金保険料も上限額が適用されます。役員賞与を含む報酬の構成を最適化することで、社会保険料負担を効率的に管理できます。
3.賞与(役員賞与)に係る健康保険料の上限
(健康保険法第四十五条)
年間役員賞与が累計573万円を超える場合、健康保険料には上限が設定されます。たとえば、役員賞与を800万円支給する場合、573万円を超える部分に対して健康保険料は課されません。これにより、役員賞与を増額する際の社会保険料負担の見通しを立てやすくなります。
4.賞与(役員賞与)に係る厚生年金保険料の上限
(厚生年金保険法第二十四条の四)
役員賞与のうち、1回の支給額が150万円を超える部分については、厚生年金保険料の対象外となります。厚生年金保険料の上限を考慮しながら、役員賞与を分割して支給するなどの計画が有効です。また、賞与が年間で4回以上支給される場合、その金額は月額報酬計算に含まれるため、3回以内に抑えることが一般的です。
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役員賞与を活用した社会保険料の節税術のデメリット
事前確定届出給与に関する届出を行うことによって、役員賞与を増額することが可能となります。この役員賞与の増額と、毎月の役員報酬を適切に調整することで、会社全体で支払う社会保険料の負担を効果的に節約することができます。
しかし、役員賞与を増額し社会保険料を抑える方法には、以下のようなデメリットも存在します。
デメリット①:不当に高額な役員賞与は損金に算入できない
たとえ事前確定届出給与に関する届出を適切に行っていたとしても、社会的に見て不当に高額な役員賞与は損金として認められません。たとえば、役員の職務内容、会社の収益状況、支払う社会保険料の総額、さらには同業他社の役員賞与額などを基準に、「妥当性」が判断されます。この基準に合わない場合、会社が役員賞与を損金計上できず、結果的に法人税負担が増加するリスクがあります。
デメリット②:毎月の役員報酬を減らすことで生活が苦しくなる可能性
役員賞与を増額する一方で、毎月の役員報酬を減額する場合、役員本人の生活に影響を及ぼす可能性があります。たとえば、社会保険料を抑えるために月々の役員報酬を低く設定しても、生活費をカバーするだけの貯蓄がなければ、日常生活が苦しくなるかもしれません。
さらに、事前確定届出給与制度では、届出た役員賞与を支給日や金額を変更することができません。そのため、分割払いなどの柔軟な対応ができず、計画的な支出管理が求められます。
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デメリット③:会社の業績が赤字になるリスク
役員賞与を増額することで社会保険料を節約できたとしても、その結果として会社の業績が悪化する可能性があります。たとえば、役員賞与を一括で高額支給した場合、会社の利益が大幅に減少し、最悪の場合には決算が赤字になるリスクが生じます。赤字決算となった場合、社会保険料削減の効果が帳消しになるだけでなく、会社の信用にも影響を及ぼす可能性があります。
デメリット④:退職金の経費算入可能額が減る可能性
役員賞与を増額し、毎月の報酬を減額することで、結果的に役員退職金の経費算入可能額が減少する可能性も考えられます。役員退職金は役員報酬と密接に関係しており、報酬の水準が低ければ、退職金として計上できる金額も制限されるため、将来の経済的メリットが減少するリスクがあるのです。
役員賞与を増額して社会保険料を節約する手法には、多くのメリットがありますが、それに伴うリスクやデメリットを十分に理解し、慎重に計画することが重要です。
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まとめ
役員賞与と社会保険料を上手に管理することで、会社全体の節税効果を高めることが可能です。そのためには、役員賞与を経費にする条件を理解し、手続きを確実に進めることが重要です。
今回解説した要点を参考に、役員賞与や社会保険料の支払いを見直すことで、これまで以上に経費を増やし、節税効果を実現できる可能性があります。ぜひ取り組んでみてください。
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