一人法人の役員報酬はどう決めればいい？決め方のポイントや注意点を解説！
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公開日：2025年8月
更新日：2025年8月13日
一人法人を設立すると、代表者であるひとり社長は、自身の役員報酬を自由に設定できるようになります。しかし、役員報酬の金額は、法人税・所得税・社会保険料などの負担に大きく関わるため、適当に決めてしまうと「思ったより手取りが少ない」「法人に税金がかかりすぎた」といった失敗につながりかねません。
とくに一人法人では、役員報酬の設計ひとつで、法人と個人のどちらの資金繰りにも大きな影響が出ます。本記事では、一人法人の給与（役員報酬）とは何かという基本から、経費にするための条件、決め方のポイントや注意点、そして所得税や社会保険料を最安に抑える方法まで、初心者でもわかりやすく解説します。
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一人法人の給与とは
一人法人の代表者は、個人事業主と似たような働き方をするケースもありますが、法律上の扱いはまったく異なります。個人事業主は法人格を持たない個人ですが、一人法人は法人格を持ち、事業の責任は法人に帰属します。つまり、一人法人における事業活動は、あくまで「法人」が主体であり、その代表者は法人の業務執行を担う「役員」としての立場になります。
一人法人としての立場を正しく理解するには、まずは「役員報酬」という仕組みを押さえておくことが大切です。
一人法人の給与＝役員報酬
一人法人では、いわゆる「給与」として支給されるものは、正確には「役員報酬」と呼ばれます。役員報酬とは、会社の取締役などの役員に対して支払われる報酬であり、労働契約に基づく給与とは異なります。
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一人法人においては、法人の代表者である一人社長が自分の役員報酬を決定することになります。ただし、この役員報酬も適切な手続き（たとえば株主総会での決議など）を経て、毎月一定額を支給する必要があります。
SoVa税理士お探しガイド編集部
会社法や法人税法上も、この役員報酬の取り扱いには特別なルールが設けられており、単なる給与と混同しないように注意が必要です。
一般の給与と役員報酬の違い
一人法人における報酬設計では、「一般の給与」と「役員報酬」の違いを理解しておくことが不可欠です。以下に主な違いを整理します。
| 項目 | 個人事業主・一般の給与 | 一人法人・役員報酬 |
|---|---|---|
| 法的立場 | 法人格を持たない個人 | 法人格を持つ法人の代表（役員） |
| 事業責任の所在 | 本人に直接帰属 | 法人に帰属（代表者は業務執行） |
| 給与の名称 | 給与 | 役員報酬 |
| 契約形態 | 雇用契約 | 委任契約 |
| 給与の決定方法 | 勤務条件や成果に応じて変動 | 株主総会の決議により年額決定 |
| 金額変更 | 月ごとに変動可能 | 会計年度の途中での変更は原則不可 |
| 社会保険の適用 | 健康保険・厚生年金・雇用保険あり | 健康保険・厚生年金あり（雇用保険は対象外） |
| 税務上の扱い | 所得税・住民税が源泉徴収され、損金算入可能 | 損金算入には定期同額などの条件が必要 |
| 報酬の調整自由度 | 高い（柔軟に調整可能） | 低い（原則固定で厳格なルールあり） |
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一人法人の役員報酬を経費にする条件
一人法人では、代表者に支払う役員報酬を法人の経費（損金）として計上することで、法人税の負担を軽減できます。ただし、役員報酬が自動的に経費になるわけではなく、法人税法上の厳格な条件を満たす必要があります。
この章では、一人法人が役員報酬を経費として認められるために押さえておくべき4つの条件をわかりやすく解説します。
一人法人の役員報酬を経費にする条件①：1年間変更しないこと
役員報酬は、事業年度の開始から3ヶ月以内に決定し、その後1年間は金額の変更が原則できません。期末の利益調整などを防ぐためのルールで、変更には定時株主総会での決議が必要です。
SoVa税理士お探しガイド編集部
一人法人の役員報酬の決め方についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
おすすめ記事：結局、一番得する社長の役員報酬額はいくらなのか！？
一人法人の役員報酬を経費にする条件②：定期同額給与であること
毎月同じ日に、同じ金額で支給される「定期同額給与」であることが損金算入の条件です。業務量や体調に関わらず、金額が一定でなければなりません。例外的に、役職変更や経営悪化などによる減額は認められることがあります。
一人法人の役員報酬を経費にする条件③：事前確定届出給与を税務署に提出すること
支給スケジュールや金額を事前に税務署に届け出る「事前確定届出給与」も経費計上が可能な方法のひとつです。
一人法人の役員報酬に関する気をつけておきたい注意点
ただし、実際の支給内容にズレがあると、その年度の役員報酬全体が損金不算入となるため、取り扱いには注意が必要です。
一人法人の役員報酬を経費にする条件④：ストックオプションや役員退職金も対象
月額の役員報酬だけでなく、退職金やストックオプションも一定条件のもとで経費にできます。将来の事業計画や資金繰りを見据え、報酬の形やタイミングを柔軟に設計することが一人法人の節税対策として有効です。
一人法人の役員報酬を決める際のポイント
一人法人を運営するうえで、「役員報酬の金額設定」は法人税・所得税・社会保険料のバランスに直結する重要な判断事項です。適切な役員報酬の設定によって、法人・個人のどちらにも無理のない節税が可能になります。この章では、一人法人が役員報酬を決める際に考慮すべき代表的な3つの観点を解説します。
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一人法人の役員報酬を決める際のポイント①：所得税・住民税とのバランスを考慮する
一人法人における役員報酬の金額は、個人の所得税・住民税に直接影響します。役員報酬を多く設定すれば、その分法人に残る利益が減るため法人税は抑えられますが、個人側では所得税や住民税が増加します。
逆に、役員報酬を抑えすぎると、個人の所得税・住民税の負担は減る一方で、一人法人に多くの利益が残ることとなり、法人税の負担が大きくなります。
SoVa税理士ガイド編集部
したがって、一人法人を経営する際は、「法人税」と「個人の税金」の両方を見ながら、トータルでの税負担を抑えるためのバランス設計が不可欠です。
最適な役員報酬額を設定することで、節税効果を最大化することが可能になります。
一人法人の役員報酬を決める際のポイント②：社会保険料の負担を見据える
一人法人の役員報酬は、社会保険料にも大きく関わります。役員報酬の額が高くなるほど、健康保険・厚生年金の保険料も上昇し、個人・法人の両方に保険料の負担が発生します。
一方で、社会保険料は一定の年収を超えると増加幅が鈍化し、相対的な負担割合は低くなっていきます。つまり、一人法人が高収益となる場合には、ある程度の役員報酬を設定しても、保険料の「比率」で見れば負担は軽く感じられるケースもあります。
そのため、役員報酬をむやみに高くしたり低くしたりするのではなく、「社会保険料の金額」だけでなく「相対的な負担割合」にも目を向けることが、一人法人にとって重要な視点です。
一人法人の役員報酬を決める際のポイント③：法人利益と法人税率を踏まえて設計する
「役員報酬の決め方」編集部
マイクロ法人の場合の役員報酬の決め方は、【マイクロ法人の役員報酬はどう決めたらいい？社会保険料の節約方法についても解説！】の記事も是非ご覧ください。
一人法人の利益には、段階的に異なる法人実効税率が課されます。利益が400万円以下であれば約20％、400万円超～800万円以下の部分は約25％、800万円を超える部分には約34％というように、利益額が増えるにつれて法人税率も上昇します。
つまり、一人法人に多くの利益を残すと、法人税の税率が段階的に高くなり、税負担も増加していきます。そのため、役員報酬を適切に設定して法人利益を圧縮することで、法人税率の高いゾーンに入らないように調整することも、税務戦略として有効です。
一人法人の役員報酬の決め方に関するおすすめ記事
一人法人では、役員報酬の設計ひとつで法人税と個人税のバランスを大きくコントロールできます。節税の最適解を導くには、利益の見込みと税率構造を踏まえたうえで、綿密なシミュレーションを行いましょう。
一人法人の社長の所得税・社会保険料を最安にする方法
一人法人を活用する上で大きなポイントとなるのが、「役員報酬の金額をどう設定するか」です。役員報酬の額は、個人の所得税や住民税、社会保険料、さらには法人にかかる法人税までに影響を及ぼします。とくに節税を意識するひとり社長にとっては、役員報酬の設定がダイレクトに手元資金の多寡を左右する重要な判断材料です。
この章では、一人法人において所得税や社会保険料の負担を最安に抑えるための具体的な役員報酬の水準について、わかりやすく解説します。どのように報酬額を調整すれば、節税効果を最大化できるのかを確認していきましょう。
一人法人・ひとり社長の所得税を最安にするには
一人法人を運営するひとり社長が受け取る役員報酬は、「給与所得」として所得税の課税対象になります。所得税は、役員報酬の額面金額から給与所得控除を差し引いた金額に、さらに基礎控除や扶養控除などの所得控除を適用した上で、課税が行われます。
所得控除の内容は個人によって異なりますが、誰にでも適用される基礎控除や給与所得控除を前提とした場合、所得税を完全にゼロにするには、年間の役員報酬が給与所得控除の最低区分である55万円未満である必要があります。
この55万円という年収上限を月額に換算すると、月額役員報酬は45,000円以下に設定する必要があります。
SoVa税理士お探しガイド編集部
つまり、一人法人のひとり社長が所得税を完全に回避したい場合、役員報酬は月額45,000円以下が最適な水準となります。
一人法人・ひとり社長の社会保険料を最安にするには
一人法人では、たとえ従業員が自分一人であっても、原則として健康保険と厚生年金への加入が必要です。社会保険料は、役員報酬の支給額（報酬月額）に応じて「等級（1～50等級）」で区分され、保険料が決定されます。
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この等級のうち、最も安く設定されているのが1等級（報酬月額63,000円未満）です。
SoVa税理士お探しガイド編集部
したがって、一人法人の社会保険料を最安に抑えるには、役員報酬の月額を63,000円未満、年間では75万円未満にする必要があります。
なお、社会保険料は会社と個人の両方で折半するため、役員報酬を高く設定すればするほど、法人としても個人としても負担が増加します。一人法人のコスト管理においては、社会保険料を抑えるための役員報酬の設計が非常に重要です。
一人法人の役員報酬の決め方に関するおすすめ記事
一人法人の役員報酬で社会保険料と所得税を同時に最安にするには
ここまでの内容をふまえると、一人法人の役員報酬を最も節税効果の高い水準に抑えるには、月額45,000円以下に設定することがベストであることが分かります。これにより、以下の効果が同時に得られます。
- 所得税が非課税（給与所得控除55万円未満）
- 社会保険料が最安等級（報酬月額63,000円未満）
SoVa税理士お探しガイド編集部
つまり、一人法人の役員報酬を月額45,000円以下に設定することで、所得税・社会保険料の両方を最安水準に抑えることが可能です。
ただし注意すべきは、役員報酬を極端に抑えすぎると、法人に利益が残りすぎて法人税の負担が増えるという点です。一人法人を経営する際は、法人税・所得税・社会保険料の三者のバランスを見ながら、最も手元にお金が残るように設計することが求められます。
一人法人の役員報酬を決める際の注意点
この章では、一人法人の役員報酬を設定する際に注意すべき3つの視点についてわかりやすく解説します。長期的に安定した経営を実現するための基礎として、しっかり押さえておきましょう。
一人法人の役員報酬設定に関する注意点①：柔軟に報酬を調整する姿勢が重要
一人法人の代表者であるひとり社長が役員報酬を設定する際、税負担や社会保険料の軽減を目的に、報酬額を抑えるケースが多く見られます。たしかに、役員報酬を最小限にすれば、社会保険料や所得税を削減できるメリットがあります。
しかし、役員報酬を極端に抑えすぎると、一人法人に利益が過度に残り、法人税の負担が増える可能性があります。
一人法人の役員報酬はここがポイント！
つまり、一人法人の役員報酬は、法人税と個人の税・保険料負担とのバランスを考慮しながら、柔軟に調整する必要があるのです。
一人法人の役員報酬設定に関する注意点②：報酬は計画的に設定する必要がある
一人法人では、役員報酬の金額は会計期首から3ヶ月以内に確定しなければならず、法人税法上の「定期同額給与」の要件を満たす必要があります。このタイミングでは、事業年度全体の利益や法人税額はまだ不確定であることが多いため、将来の利益見込みをもとに、計画的な報酬設計が求められます。
一人法人のひとり社長が安定した経営を行うには、期末に向けた利益予測を含めて、報酬額を戦略的に決定することが重要です。適切な報酬設定により、法人のキャッシュフローも健全に保ちやすくなります。
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一人法人の役員報酬設定に関する注意点③：法人と個人の視点を統合して考える
一人法人を経営する場合、法人としての利益確保と、代表者である個人の生活資金・資産形成の両立が求められます。そのため、役員報酬の設定は、法人と個人の資金全体を俯瞰してバランスをとることが不可欠です。
SoVa税理士ガイド編集部
一人法人の役員報酬の決め方についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
たとえば、法人に過剰な利益を残しすぎれば法人税の負担が増え、逆に個人側の報酬が少なすぎると、生活資金や老後の備えに不安が残る可能性があります。一人法人では、役員報酬の金額を「法人と個人の両視点」で調整することが、持続的な経営とライフプラン実現の鍵となります。
まとめ
一人法人における役員報酬の決定は、税負担や資金繰りに直結する極めて重要な経営判断です。報酬額を高くすれば所得税や社会保険料の負担が増え、低くしすぎれば法人に利益が残りすぎて法人税が増えるなど、バランスを誤るとトータルの税負担が重くなるリスクがあります。
一人法人では、「経費として損金算入できるかどうか」といった形式的な条件もふまえながら、法人と個人の両面から見た最適な役員報酬の金額を設計することが大切です。節税と資金管理の両立を目指し、将来の事業計画や生活設計に合わせて、賢く役員報酬を決めていきましょう。
一人法人の役員報酬の決め方に関するおすすめ記事：一人社長の給与（役員報酬）はいくらが正解？決め方と注意点を徹底解説
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