一人法人におすすめの節税対策は?一人法人のメリットと注意点を解説!
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公開日:2025年8月
更新日:2025年8月6日
個人事業主やフリーランスとして一定の収入を得ている方の間で注目されているのが、「一人法人」の設立です。一人法人とは、従業員を雇わず、代表者1人で運営する法人のことを指し、上手に活用することで大きな節税メリットを得られる可能性があります。
たとえば、役員報酬や社宅制度の活用、法人契約の保険料を経費として計上できるなど、個人事業主時代には使えなかった節税対策を活用できる点が魅力です。しかしその一方で、一人法人ならではのコストや注意点も存在します。
この記事では、「一人法人とは何か」という基本から、一人法人の節税メリット、経費にできるもの、さらなる節税効果を高める方法、注意点まで、実践的に解説します。節税を意識した法人化を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
一人法人とは

一人法人とは、従業員を雇わず、代表者自身が1人で事業を運営する法人のことを指します。個人事業主やフリーランスが、節税や社会保険料の負担軽減を目的として一人法人を設立するケースが増えています。
一人法人と一般的な法人との違い
一人法人と、従業員や株主を持つ一般的な法人との主な違いは以下の通りです。
区分 | 一人法人 | 一般的な法人 |
---|---|---|
外部株主の有無 | なし(代表者一人) | あり |
従業員の有無 | なし(代表者一人) | あり |
主な設立目的 | 節税や社会保険料の節約 | 事業拡大や社会的信用度の向上 |
登記の有無 | あり | あり |
一人法人には外部株主や従業員が存在せず、すべての業務を代表者一人で担います。一般的な法人では、出資者から資金を集め、役員や従業員とともに規模の大きな事業を展開することが多いですが、一人法人は主に節税や保険料負担の軽減を目的としています。
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なお、一人法人も会社法に基づく法人であるため、設立にあたっては法務局での登記が必要です。
一人法人と個人事業主との違い
一人法人と個人事業主では、課税される税金の種類や事業開始時の手続きに明確な違いがあります。
区分 | 一人法人 | 個人事業主 |
---|---|---|
課税される主な税金 | ・法人税 ・法人住民税 ・法人事業税 |
・所得税 ・住民税 ・個人事業税 |
事業開始時の手続き | ・定款の作成 ・法務局での登記 ・税務署への開業届の提出 |
・税務署への開業届の提出のみ |
税金の種類によって、同じ所得でも税額に差が出ることがあります。

SoVa税理士ガイド編集部
一人法人は、所得の分散や経費計上の自由度の高さなどから、節税面で有利なケースがあるため、一定以上の収入があるフリーランスや個人事業主にとって有効な選択肢となります。
また、個人事業主が簡単な手続きで事業を始められるのに対し、一人法人の設立には定款作成や登記など、所定の手続きが必要となります。
一人法人の節税メリット

一人法人には、個人事業主にはないさまざまな節税メリットがあります。法人税率の低さや給与所得控除の適用、経費の幅の広さなど、一人法人ならではの仕組みを活用することで、税負担を大きく抑えることが可能です。
ここでは、一人法人が活用できる代表的な節税メリットを6つ紹介します。法人化を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
一人法人の節税メリット①:所得税の税率が下がる可能性がある
一人法人にすることで、税制上のメリットが多数得られます。中でも大きいのが、税率の違いによる節税効果です。
個人事業主は所得税が累進課税となっており、所得が増えるほど最大45%まで税率が上がります。一方、一人法人になると法人税が適用され、定率課税となるため、高所得者にとっては税率が抑えられる可能性があります。特に中小企業の一人法人であれば、年800万円以下の所得部分に15%の軽減税率が適用されるため、節税に直結します。
一人法人の節税メリットはここがポイント!

概ね年収800〜900万円以上であれば、一人法人化することで節税効果が見込めます。
一人法人の節税メリット②:給与所得控除が使えるようになる
一人法人では、法人から自分自身に役員報酬を支払う形式を取るため、「給与所得控除」が適用されます。個人事業主には給与という概念がないため、同じ金額を得ても控除の有無で節税額に差が生じます。
たとえば、年収1,625,000円までは一律55万円が給与所得控除として差し引かれ、それ以上の収入に対しても段階的に控除額が増える仕組みです。これにより、課税所得を抑えることができ、結果的に所得税・住民税の節税につながります。
一人法人の節税メリット③:経費にできる範囲が広がる
一人法人にすると、個人事業主のときよりも経費として計上できる項目が増えます。これにより、法人の利益を圧縮し、節税に貢献します。
項目 | 内容 |
---|---|
役員報酬 | 自分に支払う報酬を経費にできる(個人事業では不可) |
社宅費用 | 法人名義での賃貸契約により家賃の一部を経費処理可能 |
出張日当 | 実費とは別に支給した日当も法人の経費として処理可(規定要) |
退職金 | 役員退職時に支給する退職金を経費にできる |
保険料 | 法人契約の一部保険料(生命保険・医療保険等)は損金算入可 |
福利厚生費 | 忘年会・健康診断などの福利厚生も条件を満たせば経費化可能 |
設立費用 | 登記費用や定款作成費用も繰延資産として償却処理できる |

SoVa税理士お探しガイド編集部
一人法人ができる節税対策についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
これらの経費を上手に活用することで、一人法人は大幅な節税効果を得られます。
一人法人の節税メリット④:赤字の繰越期間が長い
個人事業主は赤字を最大3年間しか繰り越せませんが、一人法人であれば最大10年間繰り越すことができます。創業期や売上の波がある事業にとっては、大きな節税メリットです。
黒字になった年度に、過去の赤字と相殺できれば、法人税の負担を大きく軽減できます。焦らず長期的な視点で利益調整ができるのも、一人法人の強みです。
一人法人の節税メリット⑤:法人契約の保険で節税と将来備えを両立できる
一人法人が法人名義で保険や共済に加入することで、保険料を損金(経費)として処理できます。節税しながら、将来の備えもできるのが大きな魅力です。
保険・共済の種類 | 節税効果の概要 |
---|---|
生命保険 | 役員を被保険者とし、一定条件下で損金算入可 |
医療・がん保険 | 福利厚生費として経費処理可能(契約内容に依存) |
損害保険 | 事業リスクに備えた保険料を一部経費化 |
経営セーフティ共済 | 掛金最大800万円まで全額損金算入可能 |
ただし、返戻金のある保険は解約時に課税されるため、「節税の繰り延べ」であることを理解しておく必要があります。
一人法人ができる節税対策に関するおすすめ記事:一人社長が経費で落とせるもの一覧|制限があるもの・落とせないものも解説
一人法人の節税メリット⑥:消費税の免税が最長2年受けられる
一人法人を新たに設立すると、一定条件のもとで最長2年間の消費税免税が受けられます。個人事業主から一人法人へ切り替えることで、売上が1,000万円を超える規模でも、設立初年度とその翌年度は消費税の納税義務が免除されるケースがあります。
ただし、資本金が1,000万円以上だったり、インボイス登録を行った場合は免税措置が適用されないので注意が必要です。また、2期目の前半6ヶ月間の売上や給与総額が1,000万円以下である必要があります。
一人法人が経費に計上できるもの

個人事業主と比較して、一人法人では経費として認められる範囲が大きく広がります。

SoVa税理士ガイド編集部
特に、一人法人の代表者は、自身への役員報酬や法人名義の保険料など、個人事業では認められにくい支出も経費として処理できるため、節税効果を高めることが可能です。
以下は、一人法人で経費計上が可能な代表的な費用の例です。
- 地代家賃(自宅兼事務所の按分や社宅制度の活用も可能)
- 通信費(スマートフォンやインターネット回線など)
- 交通費(電車・バス・タクシー代など)
- 旅行交通費(出張に関わる交通・宿泊費用)
- 接待交通費(取引先との打合せ・飲食にかかる交通費)
- 会議費(カフェでの打合せなども条件次第で対象)
- 広告宣伝費(チラシ・ウェブ広告・SNS広告など)
- 外注工費(フリーランスへの業務委託報酬など)
- 支払報酬(士業への報酬等)
- 役員報酬(一人法人なら自分自身への報酬も経費にできる)
- 福利厚生費(健康診断、慶弔見舞金など)
- 給料賃金(従業員を雇用した場合の人件費)
- 損害補償料(業務上の事故やトラブルへの備え)
- 租税公課(法人住民税や自動車税など)
- 消耗品(文具・備品・コピー用紙など)
- 減価償却費(パソコンやカメラなど高額資産の計上)
- 修繕費(設備や備品の修理費)
- 雑費(その他業務に関わる支出)
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これらの支出を正しく経費として処理することで、一人法人は利益を圧縮し、法人税を抑えることが可能です。結果として、個人事業主よりも高い節税効果を実現できるのが、一人法人の大きな魅力と言えるでしょう。
一人法人がより節税効果を高める方法

一人法人で基本的な節税対策を行うだけでも十分効果はありますが、工夫次第でさらに節税効果を高めることが可能です。ここでは、家族を役員にする方法と一人法人と個人事業主の「二刀流」スキームという、実践的な節税テクニックを紹介します。より大きな節税を目指す方はぜひ参考にしてください。
一人法人が節税効果を高める方法①:家族を役員にして所得を分散する
一人法人による節税は、基本的な方法だけでも効果がありますが、さらに工夫することで、より高い節税効果を狙うことが可能です。その一つが、家族を一人法人の役員にする方法です。
家族を役員として登用し、役員報酬を分散することで、世帯全体の課税所得を抑え、節税につなげることができます。
たとえば、一人法人の代表者が1,000万円の報酬を1人で受け取ると、所得税率は最大で33%〜45%に達します。しかし、夫婦2人にそれぞれ500万円ずつ分けることで、所得税率は20%程度に抑えられ、以下のような節税効果が期待できます。
課税所得と人数 | 所得税の目安 |
---|---|
1,000万円 × 1人 | (1,000万 × 33%)− 1,536,000円 = 約1,764,000円 |
500万円 × 2人 | {(500万 × 20%)− 427,500円} × 2人 = 約1,145,000円 |
→ 約60万円の節税効果
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また、家族を一人法人の役員とすることで、以下のような法人の制度も家族全体で活用できます。
- 給与所得控除の活用
- 社宅制度を通じた家賃の節税
- 役員退職金の支給による退職時の節税
ただし、実態のない名義上の役員に報酬を支払うことは、税務上否認されるリスクが高いため、実際に業務を担ってもらう必要があります。役員登用には登記や定款変更などの手続きも伴うため、税理士や行政書士など専門家に事前相談することをおすすめします。
一人法人が節税効果を高める方法②:一人法人と個人事業主の「二刀流」で節税を狙う
近年注目されている節税スキームの一つに、「一人法人」と「個人事業主」を併用する“二刀流”という手法があります。これは、事業内容を一人法人と個人事業主に分けて行うことで、それぞれの所得を分散させ、課税所得を圧縮することを目的としています。
たとえば、安定的な収入や請負業務などは一人法人に、趣味を活かした副業や単発の仕事は個人事業主として行うことで、以下のようなメリットが得られます。
- 一人法人では法人税率が適用され、社会保険対策も可能
- 個人事業主側では青色申告特別控除や基礎控除が活用できる
- 両者の制度をうまく活用することで、全体の節税効率が向上する
ただし、この二刀流スキームには注意点もあります。
- 法人と個人で明確に経理処理を分ける必要がある
- 節税目的の不自然な利益操作は税務調査の対象になりやすい
- 会計・税務の手間が増えるため、一定の知識やサポート体制が必要
一人法人と個人事業主に二刀流での節税はここがポイント!

一人法人と個人事業主の二刀流は、正しく運用すれば強力な節税手段になりますが、誤るとリスクにもなり得るため、必ず専門家と相談しながら設計・運用していくことが重要です。
一人法人が節税対策する際の注意点

一人法人には多くの節税メリットがありますが、注意すべき点も少なくありません。節税に偏りすぎたり、法人特有のコストを見落とすと、かえって経営に悪影響を及ぼす可能性もあります。この章では、一人法人で節税を行う際に押さえておきたい4つの注意点を解説します。
一人法人が節税対策をする際の注意点①:節税しても自由に使えるお金が増えるとは限らない
一人法人による節税は、あくまで法人の税負担を減らすもので、必ずしも経営者個人の手取りが増えるわけではありません。

SoVa税理士お探しガイド編集部
保険料や設備投資を経費にして節税できても、それは法人のお金の支出であり、個人の資産になるわけではない点に注意が必要です。
一人法人が節税対策をする際の注意点②:節税メリットの裏には固定コストがある
一人法人を設立すると、登録免許税や定款認証費、法人住民税(たとえ赤字でも発生)、社会保険料の法人負担など、個人事業主にはなかったコストがかかります。節税メリットだけに目を向けず、これらの負担も踏まえて判断しましょう。
一人法人が節税対策をする際の注意点③:節税ばかりを優先すると本業が疎かになる
節税対策は大切ですが、それ自体が目的になってはいけません。あくまで本業の発展が第一であり、節税はそのための手段です。節税にこだわりすぎると、売上や事業成長の機会を逃してしまう可能性があります。
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一人法人が節税対策をする際の注意点④:税制改正には常にアンテナを張る
節税対策は現行の制度に基づくものですが、税制は毎年変わる可能性があります。退職所得や保険を活用した節税策なども、将来的に使えなくなる可能性があるため、常に最新の情報をチェックし、必要に応じて見直すことが大切です。
まとめ

一人法人は、適切に運用することで節税効果を最大化できる仕組みが豊富に用意されています。法人化によって広がる経費の範囲や税率の変化、役員報酬や保険の活用などは、個人事業主にはない大きなメリットです。
ただし、一人法人の設立や運営には、法人住民税や社会保険料といった固定コストも発生します。また、節税ばかりを意識しすぎると、事業の成長機会を逃してしまう可能性もあるため、バランスの取れた経営が求められます。
これから一人法人を立ち上げようと考えている方は、本記事で紹介した節税対策をうまく活用しながら、健全な法人運営を目指してみてください。
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