役員報酬と給与は両方もらえる? 給与との違いや役員報酬の決め方を解説!

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公開日:2024年7月

更新日:2024年11月1日

役員報酬と給与を両方もらえるケースとは?

基本的に役員報酬と給与を両方もらえることはありません。ただし、「使用人兼務役員」の場合は、例外で役員報酬と給与を両方もらえるケースがあります。使用人兼務役員とは、「取締役営業部長」や「取締役総務部長」など、役員でありながら従業員としての役割も兼ねるポジションのことを指します。

このような使用人兼務役員は、給与と役員報酬を両方もらえることに加え、会社にとってはその役員報酬が税法上の規定を満たしている場合、役員報酬を損金として計上できるため、法人税の節税対策として有効です。したがって、経営者の立場から見ても、使用人兼務役員の導入には多くのメリットがあります。ただし、使用人兼務役員は役員報酬と給与を両方もらえるポジションであるため、単なる節税対策として導入するのではなく、これまでの業績をしっかり評価し、優秀な従業員を選ぶことが重要です。

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役員報酬と給与の違いは?

そもそも役員報酬とは、取締役や会計参与、監査役など経営陣と呼ばれる役員に支払われる報酬のことを指します。役員報酬は毎月給与のように支給されますが、その性質は従業員の給与とは異なります。

以下の表は、役員報酬と従業員給与の主な違いです。

ポイント役員報酬従業員給与
報酬額の決定方法定款・株主総会企業の査定
支払い条件特になし勤務実績
残業代なしあり
健康保険・厚生年金保険あり(非常勤役員はなし)あり
雇用保険・労災保険なしあり
最低賃金なしあり
最低賃金ありなし

特に大きな違いとして、役員報酬の額は株主総会で決定される点が挙げられます。そのため、自分が株主であるオーナー系企業の役員は、自身の役員報酬を自ら決定することができます。

また、給与は会社と直接の雇用契約を結んでいる従業員に対して支給される一方、役員には雇用契約が存在しないため、役員報酬という形で支払われます。このため、原則として役員報酬と給与を両方もらえることはありません。しかし、先ほど述べたように使用人兼務役員の場合であれば、役員報酬と給与を両方もらえるケースもあります。

SoVa税理士お探しガイド編集部

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役員報酬と給与を両方もらえる使用人兼務役員の判定基準

基本的には、役員報酬と給与を両方もらえることはありませんが、例外としてお伝えした役員報酬と給与を両方もらえる使用人兼務役員になるためには、どのような判定基準があるのでしょうか。

使用人兼務役員の判定基準は、使用人としての職制上の地位にあるかどうかです。たとえば、役員に就任しても仕事内容が従業員だった時と変わらず、役員としての業務が追加されるだけの場合は、使用人兼務役員とみなされる可能性が高いです。

しかし、以下の役職に就いている場合、従業員としての業務を行っていたとしても使用人兼務役員にはなることは出来ず、役員報酬と給与を両方もらえることはありません。

  • 代表取締役、代表執行役、代表理事および清算人
  • 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
  • 合名会社、合資会社および合同会社の業務執行社員
  • 委員会設置会社の取締役、会計参与および監査役並びに監事
  • その他、同族会社の役員のうち所有割合によって判定した結果、一定の要件を満たす役員

また、使用人兼務役員には、役員報酬と給与を両方もらえる他にも、以下のようなメリットもあります。

  • 給与支給額を調整でき、賞与も経費として計上できる
  • 役員であっても雇用保険に加入できる
  • 中退共に加入できる

使用人兼務役員になることによるデメリットは基本的にはありませんが、企業側から見ると、毎月の給与支給額の調整や従業員としての賞与や残業代が損金として計上されるため、企業にとってはデメリットになる可能性があります。

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使用人兼務役員における給与や役員報酬の計算方法は?

使用人兼務役員であれば役員報酬と給与を両方もらえるケースがあることはお伝えしてきましたが、そもそも両方もらえる使用人兼務役員における報酬の計算方法はどのような仕組みになっているのでしょうか。

まず、使用人兼務役員に対する給与は、「役員」としての給与(報酬)「使用人」としての給与が混在しています。

(1)使用人部分の給与

使用人部分の給与は以下の計算式で算出することができます。

適正使用人部分給与 = 支給金額 – 役員報酬

適正使用人部分給与とは、「類似する職務を行う使用人に支払われる給与」を参考に設定されます。たとえば、役員と経理部長を兼務している場合、その給与は経理部長の給与体系を基に適正使用人部分給与が算出されます。

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(2)役員部分の給与(役員報酬)

役員報酬は次の計算式で算出できます。

役員報酬 = 支給金額 – 適正使用人部分給与

適正使用人部分給与が確定すれば、支給金額からそれを差し引いた金額が役員報酬となります。このように算出することで、使用人兼務役員は給与と役員報酬を両方もらえるケースがあります。

(3)賞与の支給時期

使用人兼務役員の賞与は、他の従業員と同じタイミングで支給する必要があります。異なる時期に支給すると、損金として認められません。使用人兼務役員だけ別の時期に支給すると、それは従業員の賞与とは見なされません。

賞与の支給時期に未払金として処理し、他の役員への給与の支給時期に支払った場合も、損金として認められません。使用人部分の賞与についても、毎月の給与と同じように、客観的に適正な金額を支給することが重要です。

また、役員としての給与(役員報酬)と使用人としての給与は明確に区分する必要があります。役員としての給与部分は、「株主総会議事録」として記録しておくことをおすすめします。また、使用人としての給与は高額に設定できません。その職務内容や同様の業務を行う使用人の給与額、役員になる直前に受けていた給与などを基に、合理的に決める必要があります。

役員報酬を設定する際に作成する「株主総会議事録」については、以下の記事でも詳しく解説しています。以下の記事では、役員報酬を設定する際に必要な株主総会議事録の作成方法を記載例も交えながら分かりやすく解説しています。役員報酬の設定ではじめて株主総会議事録を作成する方は、ぜひ参考にしてみてください。

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SoVa税理士お探しガイド編集部

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役員報酬における勘定科目と法人税の関係

役員報酬の勘定科目は、基本的に「販売費及び一般管理費」の中の「役員報酬」として計上されます。計上する時期は、実際に役員報酬を支払った時点です。ただし、製造部門の役員に対して支払われる報酬については、製造原価の「役員報酬」として計上することもあるため、その点に注意が必要です。

一方で、従業員に対する給与は「給料賃金」や「給与手当」といった勘定科目で計上します。これらは会計上で明確に区別する必要があります。

法人税法では役員報酬を損金算入するために特定の要件を設けています。この要件を満たす役員報酬は原則として損金に算入でき、これにより法人税の課税対象となる所得金額を減少させることができます

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役員報酬を損金として算入するには

そもそも損金とは、会社の利益から差し引くことができる経費のようなもので、役員報酬を損金として計上することで法人税を減らすことができます。ただし、法人税を節税するために役員報酬を増やすと、役員個人の所得税が増加し、結果的に総納税額が増える可能性があります。そのため、役員報酬の適正な金額は、税理士などの専門家と相談して決定するのがおすすめです。

役員報酬には税法上の規定があり、損金計上が認められる役員報酬の種類は次の3つに限定されています。ただし、これらの要件を満たしていても、役員の役割や職務内容に対して不相当に高額な部分については損金算入できない点に注意が必要です。

ここで解説する役員報酬を損金(経費)として算入するためのルールをしっかりと守ることで、法人税の削減などの節税に繋げることが可能です。役員報酬を経費にするための方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みいただくことで、役員報酬を経費にする方法についてより詳しく知れると思いますので、以下の記事も参考にしてみてください。

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役員報酬を経費にする方法とは?役員報酬を経費にするための要件を徹底解説!

こちらの記事では、役員報酬を経費にするための方法について詳しく解説しています。これから役員報酬をはじめて設定する方や、役員報酬を適切に決定して節税に繋げたいと考えている方は、ぜひこちらの記事もあわせて参考にしてみてください。

役員報酬を損金として算入する方法①:定期同額給与

定期同額給与とは、毎月一定額を支給する給与のことで、各事業年度の支給時期における支給額が同額であるものを指します。定期同額給与は、最も基本的な役員報酬の形態であり、支給額は通常、株主総会などで決定されます(会社設立時に定款で定めることも可能です)。また、定期同額給与の変更は、事業年度開始の日から3か月以内に行う必要があり、それ以外の時期の変更は特別な事情がない限り認められません。

たとえば、12月決算の会社で1月から10月まで50万円ずつ支給し、11月と12月に80万円を支給した場合、11月と12月に支給された80万円のうち30万円(80万円-50万円)は定期同額給与に該当せず、損金算入できません。したがって、この60万円(30万円×2か月分)は法人税の計算時に別表四で加算調整する必要があります。

役員報酬を損金として算入する方法②:事前確定届出給与

役員に対する賞与(ボーナス)は原則として損金不算入ですが、事前に税務署に届け出た一定額を所定の時期に支給する「事前確定届出給与」は損金計上が認められます。ただし、事前に届け出た金額や支給日時を変更することはできず、届出期限や手続きも厳格であるため、導入の際は税理士や公認会計士に相談することをお勧めします。

役員報酬を損金として算入する方法③:業績連動給与

業績連動給与とは、利益や株価などの法人の業績指標を基に支給額が決定される役員報酬です。この業績連動給与が損金算入されるのは、上場企業など有価証券報告書を作成している会社に限られます。したがって、一般の中小企業の役員報酬は、定期同額給与と事前確定届出給与に限定されます。

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役員報酬の決め方

使用人兼務役員であれば役員報酬と給与を両方もらえるケースもありますが、役員報酬の決定には法律による制約があり、必要に応じて専門家とも相談し、慎重に決めることをおすすめします。

役員報酬の決め方や、役員報酬を決める際に税理士に相談するポイントについては、以下の記事でも詳しく解説しています。役員報酬を決める際にどのように決めていくべきかよく分かっていないという方は、ぜひ以下の記事も参考にしてみてください。

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役員報酬の決め方は税理士に相談する?役員報酬の基礎知識から決め方のポイント

こちらの記事では、役員報酬の決め方や決める際の注意点をはじめ、役員報酬を決める際に税理士に相談するメリットについても解説しています。役員報酬の決め方があまり分かっていない方は、ぜひこちらの記事もあわせて参考にしてください。

役員報酬の具体的な決め方

役員報酬は会社法により、定款または株主総会の決議を通じて決められます。定款で定める場合は、役員報酬の金額が変更されるたびに定款を変更する必要があり、そのためには株主総会の特別決議が必要です。そのため通常は、株主総会の決議によって役員報酬が決定されます。

役員報酬の決定後に必要な手続き

定期同額給与の場合、税務署への届出は不要です。しかし、社会保険に加入する際には、健康保険組合や年金事務所への届出が必要です。

役員報酬を決めるタイミング

役員報酬を決定する際には、金額や支給時期だけでなく、以下の点にも注意が必要です。

  • 期首から3か月以内に決定:会社設立初年度の場合、役員報酬は会社設立日から「3か月以内」に決定しなければなりません。また、2年目以降に役員報酬の金額を変更する際には、期首から3か月以内に変更する必要があります。
  • 基本的に1年間は変更できない:通常、役員報酬の金額を変更すると損金算入できない金額が発生するため、役員報酬は実質的に1年間固定されることになります。

役員報酬に関する注意点

税理士
        _依頼_おすすめの注意点

役員報酬は勝手に決めて良いというものではなく、ルールに基づいて設定することが要求されます。このルールを守らず設定してしまうと税金の負担が生じてしまうことになるため注意が必要です。

役員報酬の決め方に関するおすすめ記事:役員報酬の決め方とは? 注意点や5つのルール、変更方法を詳しく解説

役員報酬を決める際の注意点

使用人兼務役員は、給与と役員報酬を両方もらえることに加え、会社にとってはその役員報酬が税法上の規定を満たしている場合、役員報酬を損金として計上できるため、法人税の節税対策として有効です。しかし、法人税を節税するために役員報酬を増やすと、役員個人の所得税が増加し、結果的に総納税額が増える可能性があります。

役員報酬を決める際には、以下の4つの点に注意しましょう。

役員報酬を決める際の注意点①:収支予測に基づいて報酬額を設定する

役員報酬の変更は、事業年度開始(期首)から3か月以内に限られます。一度決めた報酬額は基本的に1年間変更できないため、年間の売上や粗利、家賃や従業員給与などの固定費を予測した上で報酬額を決定する必要があります。無理な設定にすると会社の資金繰りが厳しくなるので注意が必要です。

役員報酬を決める際の注意点②:法人と個人の税金のバランスを考慮する

会社には法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税などの税金がかかります。役員報酬を損金として多く計上すると法人税は少なくなりますが、その分役員の所得が増え、個人の所得税や住民税、社会保険料が増えます。法人と個人の納税額のバランスを考えることが重要です。

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役員報酬を決める際の注意点③:同業他社との比較を行う

役員報酬が同業・同規模の他社と比べて極端に高い場合、不相当と見なされ損金計上が認められないことがあります。また、業務をほとんど行っていない役員に高額な役員報酬を支払う場合も注意が必要です。

役員報酬の決める際に不安のある方は、税理士に相談するのも1つの選択肢です。以下の記事では、役員報酬の適正額をはじめ、役員報酬を決める際に税理士に相談するメリットについても解説しているので、これから役員報酬を決めようと思っている方は、ぜひ以下の記事も参考にしてください。税理士と契約を結ぶことで役員報酬だけでなく、会社の経理面を網羅的に相談することができるため、相談する専門家が近くにいてほしい方や、本業に集中したい方は税理士との契約も検討しておきましょう!

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役員報酬の適正額とは?役員報酬について税理士に相談するメリットも解説

以下の記事では、役員報酬の適正額をはじめ、役員報酬を決める際に税理士に相談するメリットについても解説しています。これから役員報酬を初めて決めようと思っている方や、今まで役員報酬を決める際に不安に感じていた方など、ぜひこちらの記事をご覧いただければと思います。

役員報酬を決める際の注意点④:ルールの遵守

役員報酬を損金として計上するためには、一定のルールを守る必要があります。ルールの認識違いやミスによって損金不算入となると、法人税などに大きな影響を及ぼします。特に事前確定届出給与は、期限内に税務署に届出を行わないと損金として認められないため、注意が必要です。

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まとめ

基本的に、役員報酬と給与を両方もらえることはありません。しかし、使用人兼務役員の場合は両方もらえるケースもあります。さらに使用人兼務役員の場合、役員報酬と給与を両方もらえるだけでなく、役員であっても雇用保険や中退共に加入ができたり、給与支給額を調整でき、賞与も経費として計上できるなど嬉しいメリットがたくさんあります。

ただし、役員報酬と給与を両方もらえる使用人兼務役員になることができる役職は限られています。代表取締役や副社長などの場合、両方もらえる使用人兼務役員になることは出来ません。

経営者の立場から見ても、役員報酬と給与を両方もらえる使用人兼務役員の導入には節税対策など多くのメリットがあります。ただし、役員報酬の設定は各種税金とのバランスが大切となるため、役員報酬を決める際の注意点も参考に、慎重に決めることをおすすめします。

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