社会保険の加入条件とは?手続き方法や提出書類を解説!
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公開日:2024年9月
更新日:2024年11月6日
すべての企業は、社会保険の適用事業所となり、健康保険、厚生年金保険、介護保険といった社会保険への加入が義務付けられています。また、一定の加入条件を満たす従業員を雇用した場合には、必ず社会保険に加入させる必要があります。特に、2024年10月からの法改正に伴い、健康保険と厚生年金保険の適用範囲が拡大されるため、注意が求められます。
この記事では、社会保険の加入条件や適用範囲、そして加入手続きについて詳しく説明します。
目次
事業所の社会保険の加入条件
社会保険への加入条件は、事業所と従業員の両方に基づいて定められています。社会保険が適用される事業所は「適用事業所」と呼ばれ、これには「強制適用事業所」と「任意適用事業所」の2つのタイプがあります。
強制適用事業所の場合
強制適用事業所とは、従業員数や業種、事業の規模にかかわらず、事業主や従業員の意思とは無関係に社会保険への加入が義務付けられている事業所を指します。強制適用事業所として該当する条件は次の通りです。
強制適用事業所の条件
- 国や地方公共団体、または法人の事業所(事業主のみの場合も含まれます)
- 常時5人以上の従業員を雇用している個人の事業所(ただし、農林水産業やサービス業などの非適用業種は除外されます)
株式会社や合同会社などの法人は、従業員数にかかわらず社会保険への加入が強制されます。たとえ社長1人の会社であっても、社会保険に加入する義務があります。また、個人事業主であっても、従業員を常時5人以上雇用している場合は社会保険への加入が必要です。
任意適用事業所の場合
任意適用事業所は、強制適用の条件を満たさない事業所で、事前に厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受けたうえで、健康保険や厚生年金保険の適用を受けることができる事業所を指します。任意適用事業所となるためには、従業員の過半数の同意を得た後、事業主が申請し、厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受ける必要があります。
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従業員の社会保険における加入条件
適用事業所で働く従業員は、特定の条件を満たす場合に、社会保険(健康保険および厚生年金保険)に加入しなければなりません。従業員が社会保険に加入するための加入条件は、次の通りです。
加入条件①:適用事業所に常時雇用されている従業員で、70歳未満(厚生年金)および75歳未満(健康保険)であること
加入条件②:1週間の労働時間および1か月の労働日数が、常勤従業員の4分の3以上であること
また、介護保険については、健康保険に加入している40歳以上の方が対象となります。
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パート・アルバイトの加入条件
所定の労働時間や労働日数がフルタイム従業員の4分の3未満であるパートやアルバイトでも、以下の加入条件をすべて満たす場合、社会保険に加入する必要があります。
パート・アルバイトの社会保険における加入条件
パート・アルバイトの場合、社会保険における加入条件は以下の通りです。
加入条件①:従業員数(被保険者数)が101人以上の事業所に勤務している(2024年10月以降は常時51人以上)
加入条件②:週の労働時間が20時間以上30時間未満
加入条件③所定内賃金が月額8万8,000円以上
加入条件④:2か月を超えて雇用される見込みがある
加入条件⑤:学生でないこと
なお、2024年10月からの法改正により、社会保険の適用範囲が拡大され、上記の加入条件のうち「従業員数が101人以上の事業所」という加入条件が「従業員数51人以上の事業所」に引き下げられます。
気をつけておきたい注意点
これにより、これまで社会保険の加入条件を満たしていなかった従業員数51~100人の事業所で働くパート・アルバイトも、他の加入条件を満たしていれば、2024年10月以降は社会保険に加入することになります。
2024年10月以降の変更点
変更点
- 2022年10月~2024年9月: 従業員数101人以上の事業所
- 2024年10月以降: 従業員数51人以上の事業所
短時間労働者の社会保険における加入条件
加入条件①:週の労働時間が20時間以上30時間未満(変更なし)
加入条件②:月額賃金8万8,000円以上(変更なし)
加入条件③:2か月を超える雇用見込み(変更なし)
加入条件④:学生でないこと(変更なし)
企業は、該当する従業員を必ず社会保険に加入させなければならず、未加入のままだと罰則が科せられる可能性があります。しかし、2024年10月以降、適用範囲が拡大されたことで、パートやアルバイトの中には、「社会保険の扶養内で働きたい」「社会保険料の負担で手取りを減らしたくない」と考える人もいるかもしれません。
ここがポイント!
企業は、事前に該当従業員と面談を行い、今後の労働時間や勤務形態について話し合い、従業員の希望に配慮することが重要です。
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社会保険加入に必要な手続きについて
社会保険(厚生年金・健康保険)の加入には、2つの手続きが必要です。1つは事業所自体の手続きで、もう1つは従業員の加入手続きです。ここでは、それぞれの手続きを詳しく説明します。
事業所における社会保険の適用手続き
事業所が社会保険の適用を受けるための手続きは、「強制適用事業所」か「任意適用事業所」かによって異なります。
(1) 強制適用事業所の場合
該当する事実が発生してから5日以内に「新規適用届」を提出する必要があります。法人の場合は「法人登記簿謄本」を、個人事業の場合は「事業主の世帯全員分の住民票」を添付する必要があります。
(2) 任意適用事業所の場合
任意適用事業所として社会保険を適用するためには、以下の書類を準備し、提出します。
- 任意適用申請書
- 任意適用同意書(従業員の半数以上の同意が必要)
- 事業主世帯全員の住民票
- 公租公課の領収書
これらの書類は、電子申請、郵送、または持参によって年金事務所などに提出し、手続きを行います。
従業員における社会保険の適用手続き
従業員を雇用し、健康保険や厚生年金保険に加入する際は、事業主が年金事務所に「被保険者資格取得届」を提出します。また、被保険者に扶養家族の追加や削除、氏名変更などの変更があった場合は、「第3号被保険者関係届」の提出が必要です。
従業員の社会保険加入に共通する事項は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
提出期限 | 加入条件が発生してから5日以内 |
提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
提出方法 | 郵送、持参、電子申請など |
① 一括適用の申請が可能な場合
本社が支社の労務管理も行っている場合、本社と支社を1つの適用事業所として申請する「一括適用」の手続きが可能です。これが承認されると、本社と支社間の人事異動に際して、社会保険の加入・喪失届の提出が不要となり、手続きの効率化が図れます。
② 他の事業所ですでに加入している場合
近年、副業や兼業の普及、社会保険の適用範囲の拡大により、複数の事業所で社会保険に加入するケースが増えています。その場合、被保険者は加入する事業所を1つ選び、「二以上事業所勤務届」を提出します。ただし、選択した事業所の保険に加入する前提として、「被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
「二以上事業所勤務届」の提出ルール
- 提出期限:事案発生から10日以内
- 提出先:事務センターまたは管轄の年金事務所
- 提出方法:郵送、持参、電子申請
保険料は、各事業所の給与に応じて按分され、給与計算時に控除されます。この手続きは被保険者本人が行うため、事業所側は複数の事業所で働く従業員に事前に案内しておくことが望ましいです。
③ 加入対象者が未加入の場合
加入すべき従業員が未加入のままであると、年金事務所から加入指導や立入検査が行われる可能性があります。強制的に加入させられた場合、過去2年分の保険料を遡って納付しなければなりません。
さらに、保険料の未納に関して虚偽の報告など悪質な違反があった場合、事業主には6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。適用条件の拡大に伴い、新たに加入対象となる従業員がいないか、細かく確認するようにしましょう。
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社会保険の加入条件を満たさなくなった場合の対応
ここでは、社会保険の加入条件を満たしていた従業員が、勤務日数や労働時間が条件を下回り、加入条件を満たさなくなった場合に、どのような対応を取るべきかについて説明します。
人事担当者が取るべき対応
加入条件を満たさなくなった場合、人担当者は以下の2点の対応が重要です。
- 対象の従業員が、加入条件を満たしていないことを認識しているか確認する
- 資格喪失の手続きを行う
まず、従業員が加入条件を満たさなくなったことを理解しているか確認し、さらに加入継続を希望しているかどうかも確認することが大切です。事前確認をせずに資格喪失手続きを行うと、従業員との間でトラブルが発生する可能性があります。
SoVa税理士ガイド編集部
従業員が社会保険への加入を継続したい場合は、加入条件を確認しつつ、勤務時間や勤務形態の調整を行います。逆に、社会保険への加入継続を希望しない場合は、資格喪失手続きを進めましょう。
扶養に入る場合の対応
年間収入が130万円未満(60歳以上または一定の障害がある場合は180万円未満)で、被保険者の収入の2分の1未満の場合、従業員は親族や配偶者の扶養に入ることができます。この場合、「健康保険被扶養者(異動)届」および「国民年金第3号被保険者関係届」を提出してもらう必要があります。
さらに、次の書類も添付して提出する必要があります。
- 被保険者の謄本または住民票
- 被扶養者の退職証明書または確定申告書の写し
加入条件を満たさない月がある場合の対応
パート・アルバイトなどの雇用形態では、シフトの変動により毎月の労働時間が異なることがあります。その結果、加入条件を満たす月と加入条件を満たさない月が発生したり、閑散期に一時的に条件を下回ったりすることがあります。
一時的に加入条件を満たさない月がある場合、繁忙期や夏季休暇など例外的に労働時間が変動する月を除いた通常の月の所定労働時間を、52週/12か月で割って計算し、1週間の所定労働時間を基準に社会保険の加入条件を確認します。
一方で、所定労働時間が20時間未満であっても、実際の労働時間が2か月連続して20時間以上となり、今後もその状況が続くと見込まれる場合は、その実際の労働時間が20時間を超えた月から3か月目の初日に社会保険の資格を取得する必要があります。
社会保険の加入条件を一時的に満たさなくなる場合、その都度状況に応じて資格喪失の対応が異なるため、年金事務所に相談することをおすすめします。
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まとめ
社会保険は正社員だけでなく、パートやアルバイトであっても、加入条件を満たしている場合には加入が必要です。さらに、2022年および2024年10月の法改正により、これまで社会保険に加入する義務がなかった従業員も対象となるケースが増えます。
社会保険の加入条件を満たしていた従業員が、勤務日数や労働時間が条件を下回り、加入条件を満たさなくなったケースもあるので、人事担当者は注意が必要です。
社会保険への加入手続きに必要な書類は、法人や事業所ごとに異なり、提出や申請の方法にも条件が設定されています。法人の場合、会社設立から5日以内に加入手続きを行う必要があるため、手続きの遅れがないよう十分に注意しましょう。
社会保険に未加入のままにしておくと罰則が適用される可能性があるため、各従業員の雇用状況をしっかり把握し、適切な手続きを行いましょう。
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