決算賞与にかかる社会保険料の計算方法は? 支給する際の注意点も解説!
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公開日:2025年2月
更新日:2025年2月5日
「決算賞与」とは、企業の業績に応じて支給される賞与の一種です。決算賞与は、すべての企業が支給するものではなく、通常の賞与とは異なる特徴があります。そのため、「決算賞与についてよく知らない」という方も少なくありません。
今回は、決算賞与の支給を検討する企業に向けて、「決算賞与とは何か」「決算賞与と社会保険料の関係や計算方法」「損金算入するための要件と適切な支給時期」について詳しく解説します。
目次
そもそも決算賞与とは?
決算賞与とは、企業がその年度の業績に応じて支給する臨時の賞与であり、社会保険料の負担額にも影響を与えます。一方、通常の賞与(以下ボーナス)は、決算賞与とは異なり、企業の慣習として夏と冬に支給されることが一般的です。決算賞与とボーナスには、支給基準や支給時期、社会保険料の取り扱いなど、さまざまな違いがあります。
決算賞与とボーナスの違い
項目 | 決算賞与 | ボーナス |
---|---|---|
支給基準と義務 | 支給義務はなく、企業の業績に応じて判断される。社会保険料の負担額を考慮して支給額を決定することもある。 | 支給義務はないが、日本企業では慣習的に夏と冬の2回支給する企業が多い。 |
支給時期 | 決算後1ヶ月以内に支給することが多く、損金算入の要件としても重要。 | 夏と冬の年2回が一般的。 |
支給対象者 | 正社員が中心だが、一部の企業ではパートやアルバイトにも支給される場合がある。 | 正社員が中心で、パートやアルバイトへの支給は企業ごとに異なる。 |
支給額の基準 | 企業の業績に応じて変動し、年度ごとに支給の有無や金額が異なる。社会保険料の負担を考慮して決定することもある。 | 基本給の○ヶ月分など、給与を基準に支給額を決定するケースが多い。 |
決算賞与は、企業の業績が良い場合に支給されるケースが多く、損金算入を目的に支給されることもあります。一方、ボーナスは業績に関係なく支給する企業も多いですが、業績悪化時には減額や支給見送りが行われることもあります。また、社会保険料の計算においても、決算賞与は通常のボーナスと同様に取り扱われ、支給額が増えることで企業と従業員の負担が増加する点にも注意が必要です。
支給時期については、決算賞与が決算後1ヶ月以内に支給されるのに対し、ボーナスは夏と冬の2回に分けて支給されることが一般的です。企業は決算賞与を支給する際に、社会保険料の負担や税務上の取り扱いを考慮しながら、最適な支給方法を検討することが重要です。
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決算賞与から社会保険料が控除されるようになった背景
社会保険料は、給与だけでなく決算賞与や賞与からも徴収されます。 その背景には、「特別保険料の廃止」と「決算賞与や賞与を含む報酬全体での社会保険料負担の公平化」があります。
かつては、社会保険料は給与からのみ徴収されていましたが、決算賞与や賞与には「特別保険料」として厚生年金の1%(企業・従業員で折半)が控除されていました。しかし、この特別保険料は従業員の年金には反映されず、高齢者の年金支払いに充てられていたため、不公平との声が上がり、2000年の法改正で廃止されました。
ここがポイント!
これにより、決算賞与や賞与も含めた「総報酬制」が導入され、給与と賞与の合計額を基に社会保険料が計算されるようになりました。
また、当時は企業が給与を抑えて決算賞与や賞与を増やすことで、社会保険料の負担を回避する節税対策が一般的でした。しかし、こうした企業間の負担格差が問題視され、「総報酬制」の導入と同時に給与にかかる社会保険料が引き下げられ、意図的な決算賞与の増額による社会保険料の回避が難しくなりました。
現在では、決算賞与も通常の賞与と同様に社会保険料の計算対象となるため、企業と従業員の双方に負担が発生します。
SoVa税理士お探しガイド編集部
決算賞与を支給する際は、社会保険料の影響を考慮し、適切な支給額を決めることが重要です。
決算賞与の社会保険料に関するおすすめ記事:賞与(ボーナス)にかかる社会保険料の計算方法は? ミスなく業務を進める方法も紹介
決算賞与にかかる4つの社会保険料とそれぞれの計算方法
決算賞与から控除される社会保険料には、以下の4つがあります。
- 健康保険料
- 介護保険料(40歳以上65歳未満のみ)
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
決算賞与にかかる社会保険料は、通常の給与から天引きされる保険料とは異なり、標準報酬月額の対象にはなりません。その代わり、標準賞与額に対して各保険料率を乗じて計算されます。
標準賞与額とは、支給された決算賞与額から1,000円未満を切り捨てた金額を指します。
気をつけておきたい注意点
ただし、雇用保険料に関しては1,000円未満を切り捨てず、決算賞与の支給額全額を基に計算する点に注意が必要です。
決算賞与にかかる社会保険料の計算式①:健康保険料
計算式:標準賞与額 × 健康保険料率 × 1/2
健康保険料は、都道府県ごとに設定される健康保険料率に基づいて計算されます。健康保険料率は毎年改定されるため、最新の料率を確認する必要があります。
決算賞与にかかる社会保険料の計算式②:介護保険料(40歳以上65歳未満のみ)
計算式:標準賞与額 × 介護保険料率 × 1/2
介護保険料は、健康保険と同様に都道府県ごとの料率に基づいて算出され、40歳以上65歳未満の従業員に対して適用されます。
SoVa税理士お探しガイド編集部
健康保険と同じく、毎年料率が変更されるため、最新の情報を確認しましょう。
決算賞与にかかる社会保険料の計算式③:厚生年金保険料
計算式:標準賞与額 × 厚生年金保険料率 × 1/2
厚生年金保険料の保険料率は、現在18.3%で固定されています。決算賞与に対する控除も、この固定率に基づいて行われます。
決算賞与にかかる社会保険料の計算式④:雇用保険料
計算式:決算賞与支給額 × 雇用保険料率
雇用保険料は、業種ごとに企業負担と従業員負担の料率が異なりますが、基本的に企業が半分以上を負担します。毎年料率が変更されるため、最新の雇用保険料率を確認することが重要です。
決算賞与を支給する際は、社会保険料の控除額をあらかじめ考慮し、支給後の手取り額にも影響があることを従業員に周知しておくことが望ましいでしょう。社会保険料負担を考慮した決算賞与の適切な決め方を検討することで、企業と従業員双方にとってメリットのある運用が可能になります。
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社会保険料以外に賞与にかかるものは?
決算賞与からは、社会保険料と所得税が差し引かれます。 ただし、源泉徴収される所得税は見込み額であり、年末調整で過不足を精算する必要があります。
所得税の計算では、前月の給与から社会保険料を差し引いた金額と扶養親族等の人数を基に、「賞与に対する源泉徴収額の算出率の表」を用いて税率を算出します。 これにより、決算賞与にかかる所得税の控除額が決まります。
一方、住民税は前年の支払実績をもとに当年度の支払額が確定するため、決算賞与には適用されず、控除の対象外となります。
SoVa税理士お探しガイド編集部
決算賞与の社会保険料に関しては以下の記事もおすすめです。
【税理士監修】決算賞与とは?支給時期やメリット、決算賞与を経費計上するための要件を解説
決算賞与にかかる社会保険料の計算での注意点
決算賞与は原則として社会保険料の対象となりますが、特定の条件下では免除される場合があります。 例えば、「産前産後・育児休業中に決算賞与を支給する場合」や「決算賞与の支給月が資格喪失月に該当する場合」 には、社会保険料が徴収されません。
決算賞与に社会保険料がかからないケース
- 産前産後・育児休業中の決算賞与
産前産後休業や育児休業中の従業員は、決算賞与を含む社会保険料が免除される制度の対象となります。 例えば、決算賞与を支給した月に従業員が産前産後休業を取得している場合、その月の社会保険料が免除されることがあります。ただし、月末までに復帰した場合は、通常どおり決算賞与に対する社会保険料を徴収する必要があります。 - 資格喪失月の決算賞与
退職者が決算賞与を受け取る場合、資格喪失月(退職月)に該当すると、その決算賞与に対する社会保険料がかからない可能性があります。 退職日が月末より前であれば、その月の社会保険料は発生しませんが、月末に退職する場合は決算賞与も社会保険料の対象となるため注意が必要です。
決算賞与の標準賞与額には上限がある
社会保険料の計算には「標準賞与額」が用いられ、決算賞与にも上限が設定されています。
- 健康保険・介護保険:年度(4月1日〜翌3月31日)の累計額 573万円 が上限
- 厚生年金保険:1ヵ月あたり 150万円 が上限(同月に複数回支給した場合は合算)
また、転職者の決算賞与については、同一の健康保険組合であれば転職前の標準賞与額も合算して計算する必要があるため、累計額の管理に注意が必要です。累計額が上限を超えた場合は「基準賞与額累計申出書」を提出する必要があります。
決算賞与は従業員のモチベーション向上や業績への貢献に報いるために有効ですが、社会保険料の負担額を含めた慎重な決定が必要です。 支給のタイミングや回数によって、企業と従業員の社会保険料負担が大きく変わるため、事前に制度をよく理解した上で適切に運用しましょう。
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まとめ
決算賞与は、企業が年次決算の業績に応じて支給を決定できる賞与であり、支給の可否や金額は企業の判断に委ねられます。 しかし、決算賞与を損金算入するには一定の条件があり、特に決算賞与にかかる社会保険料を適切に損金計上するためには、支給時期を厳守する必要があります。
また、決算賞与の税務処理には細かいルールが定められており、社会保険料の負担額や計算方法にも影響を及ぼします。
SoVa税理士お探しガイド編集部
そのため、決算賞与の支給を検討する際は、税務リスクを回避し適切に処理できるよう、事前に税理士へ相談することが重要です。
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