給与を支給した際の仕訳方法は?仕訳例と注意点も解説!
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公開日:2025年5月
更新日:2025年5月23日
給与を支給した際には、正確な仕訳処理が欠かせません。給与仕訳は、給与手当や交通費などの支給項目だけでなく、源泉所得税や社会保険料、住民税などの控除項目も含めて処理する必要があります。特に給与の仕訳は、使用する勘定科目や従業員の雇用形態によって処理方法が異なるため、間違いが起きやすいポイントです。
本記事では、給与支給時の仕訳方法を中心に、具体的な給与仕訳例や勘定科目の選び方、控除項目の取り扱い、給与仕訳で注意すべき点について詳しく解説します。これから給与仕訳を学ぶ方や、実務で仕訳処理を担当している経理担当者の方にとって、役立つ情報を網羅しています。
給与計算の仕訳方法

給与計算が完了した後は、給与支給に伴う一連の仕訳処理を行う必要があります。給与に関する仕訳では、支給総額だけでなく、社会保険料や源泉所得税、住民税などの控除項目も正確に計上する必要があります。

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これらはすべて給与仕訳の一部として扱われ、仕訳ミスが発生すると納付漏れや帳簿不備につながるため注意が必要です。
ここでは正社員の給与を例に、給与の仕訳を項目ごとに解説します。
給与の計上時の仕訳
給与を計上するタイミングでは、以下のような仕訳を行います。給与手当を借方に計上し、控除額と支払額をそれぞれ仕訳することで、給与の実態に合った会計処理が可能になります。
仕訳例:給与の計上
借方(支出) | 金額 | 貸方(負債・支払予定) | 金額 |
給与手当 | 300,000円 | 未払費用 | 242,500円 |
預り金(社会保険料) | 42,255円 | ||
預り金(源泉所得税) | 5,140円 | ||
預り金(住民税) | 10,000円 | ||
法定福利費 | 105円 |
給与仕訳において、社会保険料や税金の控除分は「預り金」として仕訳処理します。補助科目を用いて社会保険料の内訳(健康保険、厚生年金、介護保険など)を明確にしておくと、仕訳後の管理が容易になります。
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会社負担分の社会保険料の仕訳
給与仕訳とは別に、会社側が負担する社会保険料も仕訳が必要です。給与の仕訳と混在させず、以下のように別途計上しましょう。
仕訳例:会社負担分の社会保険料
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
法定福利費 | 42,255円 | 未払費用 | 42,255円 |
ここでも、給与仕訳との二重計上に注意し、正確な仕訳を行うことが大切です。
給与支払時の仕訳
給与の支給日には、未払費用として仕訳済みの金額を実際に支払う仕訳を行います。振込や現金払いなど、支給方法に応じた仕訳をします。
仕訳例:給与の支払
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
未払費用 | 242,500円 | 普通預金 | 242,500円 |
社会保険料の納付仕訳
毎月月末までに社会保険料を納付する際にも仕訳が必要です。納付額の半分は従業員の給与から控除された預り金で、残りは会社負担分として既に仕訳済みです。
仕訳例:社会保険料の納付
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
未払費用 | 42,255円 | 普通預金 | 84,510円 |
預り金 | 42,255円 |

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給与を支給した際の仕訳方法についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
実際の納付額と仕訳との間に差額が出た場合、その差は「法定福利費」で調整します。
源泉所得税の納付仕訳
毎月10日までに、給与から控除した源泉所得税を税務署へ納付する必要があります。納付時にも正確な仕訳処理が必要です。
仕訳例:源泉所得税の納付
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
預り金 | 5,140円 | 現金預金 | 5,140円 |
源泉所得税は給与仕訳の一部として預り金で処理し、納期の特例を適用する場合は6ヶ月ごとの納付が可能です。
住民税の納付仕訳
同様に、住民税も給与仕訳において預り金として処理し、毎月10日までに市区町村へ納付します。
仕訳例:住民税の納付
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
預り金 | 10,000円 | 現金預金 | 10,000円 |
住民税の納付先は従業員ごとに異なることもありますが、仕訳処理は合計金額で問題ありません。
給与の勘定科目

給与に関する仕訳を行う際は、雇用形態ごとに適切な給与の勘定科目を選択する必要があります。給与に関する仕訳では、役員、正社員、アルバイトといった雇用形態に応じた給与勘定科目を使用し、基本給のほか時間外手当や家族手当なども含めて給与仕訳を正確に行います。
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役員の給与仕訳
役員に支給する給与は「役員報酬」という勘定科目で仕訳します。仕訳では、給与の総支給額から、役員本人が負担すべき源泉所得税、住民税、社会保険料などを控除し、差引支給額を記録します。役員報酬の仕訳は、経理処理上も税務上も重要な意味を持ちます。
正社員の給与仕訳
正社員への給与は、「給料」や「給与」、「給与手当」といった勘定科目で仕訳します。給与の仕訳にあたっては、基本給だけでなく通勤手当や住宅手当なども含め、給与総額を仕訳したうえで、控除項目(源泉所得税・住民税・社会保険料)を預り金として仕訳する必要があります。給与の仕訳は、正社員の処遇に直結するため、ミスのない記帳が求められます。
アルバイト等の給与仕訳
アルバイトやパートタイマー、日雇い、臨時職員に支払う給与は、「雑給」という勘定科目を使用して仕訳します。給与仕訳の方法は、正社員や役員と同様で、支給額から源泉所得税や社会保険料を控除して仕訳処理します。アルバイトの給与も、給与仕訳の一環として正確に記録しなければなりません。
給与仕訳と表示区分の違い
原則として、給与の勘定科目による仕訳は、損益計算書の「販売費及び一般管理費」の区分に表示されます。しかし、製造業のように製造原価報告書を作成する企業では、給与仕訳の対象となる従業員の所属部門に応じて表示が分かれます。
たとえば、製造部門に所属する正社員やアルバイトの給与は「労務費」として製造原価に仕訳し、役員や管理部門の社員の給与は従来通り「販売費及び一般管理費」に仕訳します。

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このように、給与仕訳は所属部門によって勘定科目が異なるため、部門別に異なる勘定科目コードを使用して仕訳を行うことが一般的です。
給与から控除するお金

給与から控除され、仕訳上「預り金」として処理される項目にはさまざまな種類があります。これらの金額は給与仕訳の際に正確に記録し、後の納付や精算に備える必要があります。以下では、給与から天引きされる代表的な控除項目と、それに関連する給与仕訳の考え方について解説します。
源泉所得税の仕訳と給与控除
源泉所得税は、従業員の所得に応じて計算され、給与から控除された後、仕訳では「預り金(源泉所得税)」として記録されます。給与仕訳の中で非常に重要な要素のひとつです。この預り金は、後日、税務署に納付する義務があるため、給与支払時の仕訳で正しく反映させる必要があります。
なお、給与所得者については年末調整を通じて納め過ぎた税額が還付される場合もあり、その際も仕訳処理が必要になります。
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社会保険料の仕訳と給与控除
社会保険料(労働保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険、介護保険)は、対象となる従業員の給与から天引きし、給与仕訳において「預り金(社会保険料)」として仕訳します。このとき、各保険料の内訳を補助科目で管理することで、仕訳帳や給与明細の透明性を高めることができます。
給与の仕訳に関するここがポイント!

保険料の徴収対象となる条件は、労働時間や年齢などにより規定されており、給与計算と仕訳処理の前提として理解しておくべきポイントです。
住民税の給与仕訳と天引き処理
住民税は、前年の所得に基づき計算される地方税で、原則として給与から天引きされ、会社が本人に代わって市区町村へ納付します。このときの給与仕訳では、「預り金(住民税)」を使用して処理します。給与仕訳においても、住民税の取り扱いは税務上の重要事項のひとつです。
なお、転職などで会社による特別徴収が一時的に行われないケースでは、本人が普通徴収として直接納付することもあり、その場合は給与仕訳とは別の処理になります。
財形貯蓄や社内積立金の給与仕訳
給与から控除される項目には、法定控除以外に、財形貯蓄や社内旅行などの積立金もあり、これらも給与仕訳で「預り金」として計上します。企業によって積立内容は異なりますが、給与から天引きする以上、仕訳での処理が必要です。
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また、社宅使用料や寮費などが従業員の給与から控除される場合もあり、このときも「預り金(社宅費等)」として給与仕訳に反映されます。
給与の仕訳例

給与の仕訳を正確に行うことは、企業の経理処理において非常に重要です。ここでは、給与仕訳の具体的な例を用いて、状況に応じた仕訳の処理方法を紹介します。
なお、「給料手当」は雇用形態により、「役員報酬」や「雑給」などの勘定科目に置き換えて給与仕訳を行うこともあります。
仕訳例①:給与を未払費用として仕訳する場合
給与を支払日に先立って未払計上する際の給与仕訳は以下の通りです。
仕訳例:パートの給与3万円+交通費2,000円を未払計上
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
給料手当 | 30,000円 | 未払費用 | 32,000円 |
旅費交通費 | 2,000円 |
このように給与と交通費を合わせて未払計上し、給与仕訳を正確に記録します。
仕訳例②:給与の支払時(現金手渡し)の仕訳
支払日に現金で給与を支払う場合の給与仕訳です。
仕訳例:未払給与32,000円を現金で支払
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
未払費用 | 32,000円 | 現金 | 32,000円 |
この仕訳により、未払となっていた給与債務が解消されます。
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仕訳例③:給与の計上と支払が同時の仕訳
給与支給と同時に費用として計上する場合の給与仕訳です。
仕訳例:アルバイト給与5万円を締め日当日に振込で支払
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
給料手当 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
この給与仕訳は、支払と同時に費用認識される一般的な形です。
仕訳例④:預り金を差し引いて給与を未払計上する場合の仕訳
源泉所得税や社会保険料などを控除して支給する給与仕訳です。
仕訳例:給与総額20万円のうち、各種控除を差引き未払計上
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
給料手当 | 200,000円 | 未払費用 | 140,000円 |
預り金(源泉所得税) | 20,000円 | ||
預り金(住民税) | 10,000円 | ||
預り金(社会保険料) | 30,000円 |
給与仕訳では、控除額を「預り金」として処理し、後日の納付に備えます。
仕訳例⑤:給与の支払時(振込)の仕訳
控除後の給与を振込で支払うときの仕訳です。
仕訳例:未払給与140,000円を振込で支給
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
未払費用 | 140,000円 | 普通預金 | 140,000円 |
仕訳例⑥:個人事業主の私的引出し(給与仕訳には含まない)
個人事業主が生活費を事業資金から引き出す際は、給与としての仕訳にはなりませんが、参考までに紹介します。
仕訳例:生活費として10万円を出金
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
事業主貸 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 |
仕訳例⑦:給与の前貸しに関する仕訳
給与の前貸しを行った場合と、その回収に関する給与仕訳です。
仕訳例1:給与前貸し3万円を現金で支給
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
立替金 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 |
仕訳例2:前貸金3万円を現金で回収
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
現金 | 30,000円 | 立替金 | 30,000円 |
仕訳例3:給与5万円から前貸し3万円を天引きして振込
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
給料手当 | 50,000円 | 立替金 | 30,000円 |
普通預金 | 20,000円 |

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このように、給与仕訳では前貸金の処理も適切に行い、正確な帳簿管理を徹底することが重要です。
給与の仕訳をする際の注意点

給与の仕訳を正しく処理することは、企業の財務管理において非常に重要な役割を担っています。給与に関する仕訳は、会計帳簿の正確性だけでなく、税務対応や労務管理にも影響するため、慎重に行う必要があります。ここでは、給与仕訳を行う際に注意すべき具体的なポイントを解説します。
注意点①:記載ミス・入力ミスを防ぐための仕訳対策
給与仕訳において最も注意すべき点は、仕訳内容の記載ミスや入力ミスを防ぐことです。給与計算は、基本給、各種手当、社会保険料、源泉所得税、住民税など多数の要素が含まれる複雑な作業であり、給与仕訳の段階でも同様にミスが発生しやすい業務のひとつです。

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特に給与仕訳時に給与金額や控除額を誤って入力してしまうと、未払給与や過大計上といった誤解を招き、企業の財務状況の正確な把握が困難になります。
そのため、給与に関する仕訳処理は、1人の担当者だけでなく、ダブルチェック体制や会計ソフトによる自動仕訳機能を活用するのがおすすめです。
万が一、給与仕訳に誤りがあった場合は、速やかに仕訳を修正し、関係部署に正確な情報を共有しましょう。
注意点②:勘定科目ルールに基づく給与仕訳の実務
給与仕訳を行う際には、勘定科目の選定ルールを理解しておくことが重要です。雇用形態によって給与仕訳に使用する勘定科目は異なり、それぞれ適切な仕訳を行わなければなりません。
たとえば、正社員に支払う給与は「給与手当」または「給与」などの科目で仕訳されるのが一般的です。一方で、役員に対する給与は「役員給与」または「役員報酬」として別途仕訳します。アルバイトやパートタイマーへの給与も「給与手当」で仕訳して差し支えありませんが、短期や日雇いなどの場合は「雑給」として仕訳する方がより明確です。
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また、給与仕訳の対象外である派遣社員に対しては、給与を直接支給するわけではなく、派遣会社への支払いとして「人材派遣費」「外注費」「支払手数料」など別の勘定科目で仕訳を行います。給与仕訳との混同を避けるためにも、仕訳科目の使い分けを明確にしておくことが大切です。
まとめ

給与に関する仕訳は、企業の経理処理の中でも特に慎重さが求められる業務のひとつです。

SoVa税理士ガイド編集部
給与の仕訳を行う際は、正しい勘定科目の選定、源泉所得税や社会保険料などの預り金の計上、そして未払費用の管理など、複数の要素をバランスよく処理する必要があります。
誤った給与仕訳は、税務調査や従業員とのトラブルの原因にもなりかねません。
本記事で紹介した仕訳例や注意点を参考に、日々の給与仕訳業務をより正確に行っていきましょう。給与仕訳の基礎を押さえることが、信頼される経理担当者への第一歩です。
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