合同会社を設立するメリット・デメリットは?株式会社との違いも解説
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公開日:2024年5月
更新日:2024年11月23日
合同会社とは?
合同会社は、2006年に施行された会社法によって導入された比較的新しい形式の会社です。この合同会社は、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルにしています。
合同会社は、出資者がそのまま会社の所有者(経営者)となるため、所有と経営が一致している点が特徴です。出資者全員が社員(株式会社でいう役員)となり、原則として、出資額に関わらず平等に決定権を持ちます。内部の意思決定に関しては、定款により多数決に依らない方法を設定することも可能です。
さらに、合同会社の社員は全員有限責任を負うため、会社が倒産した場合の責任は出資額を限度に負うことになります。
合同会社についてもっと詳しく知りたい方におすすめの記事:合同会社とは?設立のメリット・デメリットや株式会社との違いを解説!
合同会社と株式会社の違い
合同会社が出資者と経営者が同一であるのに対して、出資者と経営者が別々になっている会社を株式会社と呼びます。
株式会社では、市場で誰でも株式を購入し出資者になることができます。株式会社の最終的な意思決定権は、取締役会や株主総会などの機関にあります。議決権は保有する株式の数に比例するため、株式を多く持つ株主ほど多くの権限を持つことになります。
一方、合同会社は出資者が直接経営を担うため、所有と経営が一致しており、株主総会などを経ることなく迅速に意思決定が行えます。
SoVa税理士お探しガイド編集部
株式会社と合同会社の違いや、株式会社・合同会社のそれぞれのメリット・デメリットについては、以下の記事でも解説しています。これから会社設立を検討している方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。
参考記事:株式会社と合同会社の違いとは?それぞれのメリット・デメリットも解説
以下の表では、株式会社と合同会社のそれぞれの違いをご紹介しています。株式会社と合同会社でそれぞれのどのような点が異なるのかについて以下の表を参考に理解を深めておきましょう。
合同会社 | 株式会社 | |
意思決定 | 社員総会 | 株主総会 |
会社の所有者 | 各社員 | 株主 |
会社の経営 | 業務執行社員(選任しない場合は社員全員) | 取締役 |
所有者と経営者の関係 | 所有と経営は一致 | 所有と経営は分離 |
役員の任期 | 任期なし | 通常2年、最長10年 |
監査役の人数 | 不要 | 1人以上 |
会社の代表者 | 各社員(代表社員を定めることも可能) | 代表取締役 |
決算公告 | 不要 | 必要 |
定款 | 作成する必要はあるが、認証は不要 | 認証が必要 |
利益配分 | 出資割合に関係なく、定款で自由に規定できる | 出資割合に応じて配分 |
設立手続きの費用 | 約6万円~ | 約18万円~ |
資金調達 | 株式発行ができない | 株式など資金調達方法の幅が広い |
合同会社と株式会社の違いについてもっと詳しく知りたい方におすすめの記事:株式会社と合同会社の違いは?特徴とメリット・デメリットを解説
合同会社のメリット
合同会社のメリット①:設立費用が安い
合同会社の最大のメリットは、「設立コストが株式会社よりも低い」という点にあります。 会社設立時の費用比較は以下の通りです。
費用 | 合同会社 | 株式会社 |
定款認証印紙代 | 40,000円 | 40,000円 |
定款認証手数料 | 不要 | 32,000円 |
登録免許税 | 60,000円 | 150,000円 |
合計 | 100,000円 | 222,000円 |
株式会社の場合、会社の定款を役所で確認してもらう「定款認証」という手続きが必要です。このため、「定款認証手数料」として32,000円がかかります。一方、合同会社はこの手続きが不要なため、その分費用が抑えられるメリットがあります。さらに、会社設立の事実を国に登録するための「登録免許税」については、株式会社の場合15万円かかりますが、合同会社では6万円で済みます。
このように、合同会社の設立にかかる総費用はおよそ10万円となり、株式会社に比べて大幅にコストを削減できます。
SoVa税理士お探しガイド編集部
合同会社の大きなメリットの1つに「設立費用が安いこと」が挙げられますが、以下の記事では株式会社と合同会社の設立費用の違いについて、より詳しく解説しています。
合わせて読みたい「株式会社と合同会社の設立費用の違い」に関するおすすめ記事
合同会社と株式会社の設立費用の違いとは?設立後に必要な費用も解説
合同会社のメリット②:経営の自由度が高い
合同会社では、会社を所有する人が経営も行うため、「経営の自由度が高い」というメリットがあります。
株式会社の場合、会社の所有者は株主であり、経営者とは別であることが多いため、経営者が「こうしたい」と思っても、株主から反対されれば断念せざるを得ないことがあります。しかし、合同会社では「出資した人自身が経営を行う」という仕組みで、所有者と経営者が同一であるため、このような問題が生じにくい点が合同会社の大きなメリットです。
合同会社のメリット③:意思決定のスピードが速い
合同会社には、株主総会を開く必要がないため、「意思決定のスピードが速い」というメリットがあります。
通常、株式会社では重要な意思決定を行う際に株主を集めて議案への承認を得なければなりません。しかし、合同会社では組織内で合意が取れればよいため、「競合に対応して事業展開の方針を変更する」や「損失が大きくなる前に撤退を決定する」といったスピーディな意思決定が可能です。
実際、動画配信サービスで有名なDMM.comは、「意思決定の迅速化」や「事業推進の効率化」を目的として、2018年に株式会社から合同会社へ移行しています。このように、合同会社には迅速な意思決定ができるという大きなメリットがあります。
合同会社のメリット④:決算公告の義務がない
「決算公告の義務がない」という点も、合同会社のメリットです。決算公告とは、株主や債権者などに会社の決算状況を公開することを指します。決算公告には以下の3つの方法があり、株式会社の場合は以下のいずれかの方法で毎年決算内容を公開する義務があります。
決算公告の方法
- 国の機関紙である「官報」に掲載する
- 日刊の新聞に掲載する
- 自社のWebサイトなどに掲載する
しかし、合同会社にはこの決算公告の義務がないため、費用や手間を省くことができるというメリットがあります。
1の場合は約7万円、2の場合は新聞の種類によりますが数十万円の費用がかかります。さらに、費用だけでなく「不特定多数の人に会社の財政状況を知られる」というデメリットもあります。財政状況をオープンにしないことで、取引を有利に進めることができる場合もあるため、決算公告の義務がないことは、合同会社の大きなメリットのひとつと言えます。
合同会社のメリット⑤:役員任期の更新がいらない
合同会社には「役員任期の更新がいらない」というメリットもあります。株式会社の場合、役員の任期は通常2年で、満了時には役員変更の登記を申請しなければなりません(非公開の株式会社の場合は最長10年まで延長可能です)。この手続きには約1万円の費用がかかり、忘れると100万円以下の罰金が科される恐れもあります。
ここがポイント!
しかし、合同会社ではこの手続きが不要です。このため、コストを抑えられるだけでなく、法務局への登記申請などの手間も省け、本業に集中できるというメリットがあります。
合同会社のメリット⑥:好きな時に株式会社へ移行できる
合同会社を最初に設立し、後で株式会社に変更する方が、約2.5万円ものコストを節約できます。再度の登記手続きが必要なため、少し手間はかかりますが、いつでも株式会社にスムーズに移行できるという安心感があります。
合同会社を株式会社に変更するときの費用
費用 | |
最初に合同会社設立にかかった費用 | 100,000円 |
株式会社の設立登記にかかる登録免許税 | 30,000円 |
合同会社の解散登記にかかる登録免許税 | 30,000円 |
官報公告にかかる費用 | 35,000円 |
合計 | 195,000円 |
SoVa税理士お探しガイド編集部
前述のとおり、合同会社から株式会社へ組織変更を行う際には様々な手続きを行う必要があります。以下の記事では、合同会社から株式会社への組織変更を行う場合の手続きや流れについても解説しているので、合同会社の設立を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
参考記事:合同会社の作り方や合同会社から株式会社へ組織変更する方法も解説
合同会社のメリットについてもっと詳しく知りたい方におすすめの記事:合同会社のメリット7つを徹底深掘り!株式会社と比べたデメリットも
合同会社のデメリット
合同会社のデメリット①:株式会社に比べて社会的な信頼性が低い
合同会社は決算公告の義務がなく、小規模で閉鎖的な会社形態が中心であるため、株式会社に比べて信頼性が低く、認知度も劣るというデメリットがあります。
このため、特にBtoBの取引では合同会社が不利になる可能性があり、採用においても良い人材を確保することが難しいといったデメリットが懸念されます。
一方で、BtoCの事業においては、サービスや店舗を利用する消費者にとって、会社の規模や形態が決定的な要素になることは少なく、影響は限定的です。
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また、最近ではAppleやGoogle、Amazon、ユー・エス・ジェイ、ワーナー ブラザース ジャパンなどの大手有名企業も合同会社という形態を採用しているため、日本でも合同会社の認知度が徐々に上昇していると言えます。
おすすめ参考記事:合同会社は怪しくない!巨大有名企業も多数ある合同会社が人気の理由とは
合同会社のデメリット②:資金調達の手段が限られている
株式会社は株式の増資によって資金調達が可能ですが、合同会社にはその手段がないため、国や自治体の補助金や助成金、借入(融資)が主要な資金調達方法となります。このため、株式会社に比べて合同会社の資金調達の範囲は限定されるというデメリットがあります。
さらに、合同会社は社債を発行することができますが、株式とは異なり負債として扱われます。社債を発行する場合、債権者に対する弁済義務が生じるため、償還のための積み立ても必要となる点にも注意が必要です。これも合同会社のデメリットの一つです。
ここがポイント!
しかし実は、合同会社でも、株式会社と比べると規模が小さく選択肢が限られるものの、資金調達はできます。日本政策金融公庫の新創業融資制度、信用保証協会保証付融資など、利用できる資金調達方法はあるので以下で詳しく知りたい方は見ていただくのがおすすめです。
おすすめ参考記事:合同会社で資金調達はできる!その手段7つとケース別調達方法を解説
合同会社のデメリット③:上場ができない
株式会社は、株式市場へ上場することでさらなる事業拡大を目指すことができますが、合同会社は上場できないというデメリットがあります。上場を通じてより多くの資金調達や知名度の向上を狙う場合、合同会社ではなく株式会社を選ぶべきです。
株式上場するメリット・デメリットについてさらに知りたい方におすすめの記事:
上場とは?株式上場するメリット・デメリットや非上場との違いについて解説
合同会社のデメリット④:出資者間で意見が対立した際の経営面への影響が大きい
合同会社では、出資比率に関係なく1人1票の議決権を持って意思決定を行うため、出資者である社員同士の意見が対立することで経営に大きな影響を及ぼす可能性があるというデメリットがあります。
代表社員の継承や事業継承、出資者の権利譲渡に関しては、社員全員の同意が必要です。また、経営に関する事項では社員の過半数、業務執行社員がいる場合にはその過半数の同意が求められるため、これらもデメリットとして挙げられます。
さらに、利益配分を決める際にも社員同士で対立する恐れがあります。利益配分を巡るトラブルを未然に防ぐためには、定款に「出資額に応じた利益配分」などを明記しておくとよいでしょう。これにより、合同会社の運営におけるデメリットをある程度軽減できます。
合同会社のデメリットについてもっと詳しく知りたい方におすすめの記事:合同会社とは?特徴や設立するメリット・デメリットについて解説
合同会社に向いているケース
合同会社に向いているケース①:小規模のスタートアップ企業の場合
合同会社は、迅速な意思決定や自由な利益分配が可能であるため、スタートアップにとって多くのメリットがあります。
また、将来的に株式市場への上場を検討している場合でも、合同会社として事業を開始し、事業拡大や大規模な出資が必要になった時点で株式会社に組織変更することができます。これにより、合同会社のメリットを活かしながら、成長に応じて柔軟に対応することが可能です。
おすすめ参考記事:合同会社をスタートアップで設立するメリットとは?
合同会社に向いているケース②:BtoC企業の場合
美容師や介護職などの屋号でビジネスを行う職種や、一般消費者向けのBtoC事業は、合同会社のメリットを活かしやすい傾向があります。こうしたビジネスの場合、株式会社の知名度よりも、個人の知名度や商品・サービスの魅力が重要です。合同会社であることが信用面でデメリットにならない場合、合同会社は非常に適していると言えるでしょう。
合同会社に向いているケース③:取引先がほぼ決まっている場合
起業した時点で取引先がほぼ決まっており、知名度や信用面を強化する必要がない場合、合同会社が適していると言えます。たとえば、個人事業主が法人化して取引先を固定する場合や、副業の範囲で事業を行う場合などが該当します。
合同会社に向いているケースに関するおすすめの記事:合同会社とは?設立するメリット・デメリット、株式会社との違いを解説
合同会社から株式会社に変更する方法とは?
合同会社で会社を設立しても、事業が予想以上に拡大した場合、途中で合同会社から株式会社に変更することも可能です。ここでは、合同会社から株式会社へ移行する際に必要な手続きについて解説します。
STEP①:組織変更計画書の作成
合同会社から株式会社への変更計画を書面にします。主に、次の項目について詳細を記載します。
- 事業内容
- 商号
- 本店所在地
- 発行可能株式総数
- 定款
- 取締役
- 変更後の発行株式数
- 役職割当て
- 効力発効日
組織変更計画書を作成した後は、出資者である社員全員の承認を得ます。
STEP②:債権者保護手続き
売掛債権を有する取引先や、融資債権を保有する金融機関などの債権者に対して、合同会社から株式会社への組織変更を通知して承認を得ます。債権者への通知方法には、次の2つがあります。
- 債権者に個別に連絡する
- 官報に掲載する(最低1カ月以上)
債権者が存在しない場合は、個別に連絡する必要はありませんが、官報への公告が必要です。債権者からの異議申し立てがなければ、合同会社から株式会社への移行が可能です。
STEP③:変更登記申請
合同会社から株式会社への組織変更を行った後、登記上でも株式会社に変更します。
「効力発行日」に基づいて、組織変更計画書に記載された日から2週間以内に、法務局で次の2つの手続きを同時に行います。
- 株式会社の設立登記
- 合同会社の解散登記
申請後、法務局による審査には約1週間かかります。変更登記が完了すると、株式会社の登記簿謄本が取得可能になります。
合同会社から株式会社に変更する方法に関するおすすめの記事:会社設立を合同会社にすべき人とは|メリット・デメリットを総解説
まとめ
会社を設立する際には、事業内容や規模、将来性、人的環境などに応じて、合同会社のメリットとデメリットの重要性が異なります。自身の事業が合同会社に適しているかどうかを検討してみましょう。
また、合同会社から株式会社への移行も可能です。最初は合同会社で設立し、そのメリットを活かしつつ、事業の成長に合わせて株式会社への移行を検討することも有益な選択肢のひとつです。
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