マイクロ法人の赤字経営は大丈夫?赤字になったときの注意点や対処法を解説

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公開日:2024年6月

更新日:2024年11月14日

マイクロ法人で「赤字」「売上なし」は大丈夫?

結論から言うと、マイクロ法人が「赤字」「売上なし」でも問題ありません

東京商互リサーチのデータによると、2021年度の赤字法人率は65.3%でした。これは2023年に国税庁が公表した「国税庁統計法人税表」に基づくものです。赤字自体は多くの企業が経験しているため、設立したマイクロ法人が「売上なし」や「赤字」であることが必ずしも問題とはなりません

事業拡大のために戦略的に赤字を計上する企業も存在します。マイクロ法人を利用する場合、マイクロ法人単体での評価ではなく、個人とマイクロ法人の合計収支で価値を判断しましょう。

問題になるのは、脱税を目的として事業実態がないペーパーカンパニーと税務署に見なされる場合です。

気をつけておきたい注意点

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たとえば、事業を行っていないのに架空の売り上げを作る、経費として認められないものを経費として計上する、などの違法行為には注意してください。

おすすめ記事:【必見】売上なし赤字でもマイクロ法人設立の意味あり!

マイクロ法人が赤字の時に免除される税金・されない税金

マイクロ法人が負担する税金には、赤字の際に免除されるものと、赤字でも支払わなければならないものがあります。赤字の場合にマイクロ法人が支払う税金の義務については、大きく3つのパターンに分けられます。

免除の種類 税の種類
全額免除 法人税
地方法人税
法人事業税
特別法人事業税
一部免除 法人住民税
絶対発生 消費税
源泉所得税
住民税(特別徴収)
印紙税
登録免許税
固定資産税
自動車税

上記のように、全額免除される税金がある一方で、赤字でも発生する税金があるため注意が必要です。マイクロ法人を経営する上で赤字を避けられない場合もあるかと思います。万が一赤字になった場合でも、税負担を軽減するために、赤字時にマイクロ法人に課せられる税金について説明します。

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マイクロ法人が赤字になった場合に全額免除になる税金

マイクロ法人が赤字になった場合に、納税が免除される税金は以下の4種類です。ただし、資本金が1億円を超える法人や電気供給やガス供給などの特定業種は免除されません。

  • 法人税
  • 地方法人税
  • 法人事業税
  • 特別法人事業税

法人税・法人事業税

法人税と法人事業税は、赤字になり利益がなければ発生しません。これらは、会社の利益から費用や控除を差し引いた金額に対して、税率を乗じて算出されるものだからです。

法人税年800万円以下の課税所得部分 × 15%
年800万円超の課税所得部分 × 23.40%
法人事業税課税所得 × 法人事業税率

各課税対象や税率については、それぞれの自治体ページまたは、総務省の情報を確認してみるといいでしょう。

地方法人税・特別法人事業税

地方法人税と特別法人事業税については、発生した法人税・法人事業税に対して、下記の計算で発生する税金です。

地方法人税法人税額 × 10.3%
特別法人事業税法人事業税 × 37%
※普通法人の場合の税率

マイクロ法人が赤字で法人税・法人事業税が発生しない場合は、地方法人税も特別法人事業税も発生しません。

マイクロ法人が赤字になった場合に一部免除になる税金

法人住民税は、たとえマイクロ法人が赤字になった場合でも全額免除にならず、最低でも7万円の税金を支払う必要があります。なぜなら法人住民税は、法人税の金額で変動する「法人税割」と法人税の金額で変動せず、金額がすでに決まっている「均等割」の要素を合計して計算されているからです。

法人税割赤字なら全額免除
均等割赤字でも必ず支払いが発生

法人住民税の均等割は、マイクロ法人の資本金と従業員数によって税額が決まるため、赤字でも税金は変わりません。たとえば、法人住民税の最低額である「資本金が1千万円以下で従業員数が50名以下」の会社が赤字になった場合、7万円の法人住民税がかかります。

気をつけておきたい注意点

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ただし、東京23区に事業所がある場合の特例や、地域によって異なる地域税や森林税が加算されることもあるため、マイクロ法人が所在する自治体に必ず確認してください。

参考:総務省「法人住民税」

マイクロ法人が赤字になった場合でも必ず発生する税金

マイクロ法人に課せられる赤字になっても免除されない税金で代表的なものは、以下のとおりです。

税の種類 課税対象
消費税 仕入れなどで支払った消費税額
源泉所得税 従業員の給与
住民税(特別徴収) 従業員の住民税
印紙税 収入印紙代
登録免許税 不動産登記や商業登記の手続き
固定資産税 住宅や田んぼ・工場や倉庫などの建物・会社の備品や車両など
自動車税 自動車

上記は、たとえマイクロ法人が赤字になったとしても税金を納付する必要があります。

おすすめ記事:税理士監修|法人が赤字の時に免除される・されない税金【節税にも】

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マイクロ法人が赤字になったときの注意点

マイクロ法人は、赤字でも売上なしでも問題はありませんが、先述の通り税金を納めなければなりません。マイクロ法人が赤字になったときは、以下の点に注意しましょう。

赤字になったときの注意点①:赤字でも法人住民税は発生する

マイクロ法人を設立すると、法人住民税の納税義務が生じます。個人事業主の場合、赤字で所得がなければ所得税や住民税は発生しませんが、法人住民税は赤字でも支払う必要があります

赤字になったときの注意点②:保有する資産に税金が発生し得る

マイクロ法人が特定の資産を保有している場合、課税されるケースもあります。例えば、マイクロ法人が所有する不動産には固定資産税がかかります。さらに、課税標準額が150万円以上の機器や設備をマイクロ法人が所有している場合、償却資産税を支払う必要があります。

事業用にマイクロ法人が自動車を所有している場合も、自動車に関する税金に注意が必要です。マイクロ法人が自動車を取得した際には自動車取得税が、毎年自動車税が、そして車検時には自動車重量税がかかるため、さまざまな税金を支払うことになります。

赤字になったときの注意点③:決算申告は必須

売上がない、赤字のマイクロ法人でも、決算申告は必要です。決算申告は、法人が納める税金を確定するための手続きです。期限内に申告しないと、無申告加算税や延滞税が発生し、より多くの税金を支払うことになるので注意しましょう。

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赤字のマイクロ法人にメリットはある?

「赤字」と聞くとネガティブな印象を持つかもしれませんが、マイクロ法人に関しては税制上のメリットがあります。

メリット①:法人税がかからない

マイクロ法人が赤字決算で法人所得がゼロの場合、法人税の支払いもゼロになります。法人税は「法人所得×税率」で計算されるため、赤字で法人所得がゼロであれば法人税は発生しません。

メリット②:10年間赤字繰り越しができる

マイクロ法人での赤字分は翌年度から最大10年間繰り越すことができます。例えば、翌年や数年後に売上が上がって黒字になった場合でも、過去10年以内の赤字分を利用して相殺することが可能です。

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メリット③:前年度分の黒字の法人税を相殺できる

マイクロ法人で前年度に黒字で法人税を支払った場合、当期に赤字になると、前年度に支払った法人税と相殺して還付されます。この制度は、法人の青色申告控除の「欠損金の繰戻しによる還付」というものです。

おすすめ記事:マイクロ法人は「売上なし」「赤字」で大丈夫です

マイクロ法人が赤字になったときの対処法

マイクロ法人が赤字になっても大丈夫だということは分かっても、いざ赤字になったときにどのように対処したらいいかは事前に知っておくと安心ですよね。ここでは、マイクロ法人が赤字になったときの対処法をご紹介します。

赤字になったときの対処法①:赤字の繰越による節税

平成30年4月1日以降に開始する事業年度から、法人は赤字(青色欠損金)を最大10年間繰り越すことができます。赤字を繰り越すことができるため、その期間にマイクロ法人が利益を出したとしても、過去の赤字と相殺することで納税額を減らすことができ、結果的に節税効果が得られます。

赤字が出ることは悪いイメージを持たれるかもしれませんが、その赤字を上手に利用することで節税に繋げることが可能です。

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したがって、マイクロ法人で赤字が発生した場合、青色申告をしているならば、青色欠損金を繰り越すかどうかを慎重に検討する価値があります

おすすめ参考記事:赤字は何年繰り越せますか?

赤字になったときの対処法②:赤字の繰り戻しによる還付

マイクロ法人の多くは、赤字(欠損金)の繰戻還付の対象となる中小企業者等に該当すると考えられます。

この場合、一定の要件を満たせば、前期に納付した法人税の還付が受けられます。前期に多額の法人税を納付している場合、マイクロ法人でもこの手続きを検討する価値があります。

ただし、欠損金の繰戻還付を税務署に請求する際には、税務調査を受ける可能性があるため、慎重に対応する必要があります。

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赤字になったときの対処法③:役員報酬等の見直し

税務上の赤字処理方法に加え、赤字の原因を見直すことも重要です。例えば、マイクロ法人の役員報酬が過大で赤字になったのであれば、役員報酬の見直しが必要です。

また、商売が軌道に乗るまで赤字を許容するかどうかなど、マイクロ法人の赤字をどう評価するかについては、決算ごとに税理士などと相談しながら検討する必要があります。

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まとめ

マイクロ法人は、役員報酬の設定や社会保険の加入によって、個人事業主の所得税や健康保険・年金の保険料を削減できるというメリットがあります。
売上がなくても赤字経営でも設立は可能なので、節税を目的にマイクロ法人の設立を検討する価値があるかもしれません。

ここがポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

ペーパーカンパニーと見なされると脱税を疑われる可能性があるため、マイクロ法人を設立する際には、事業内容を明確にし、しっかりと事業活動に取り組むことが重要です。

おすすめ参考記事:マイクロ法人設立とは?作り方・年収はいくらから?

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