一人社長が経費にできるものは?個人事業主との違いや節税ポイントについても解説!
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公開日:2025年6月
更新日:2025年6月25日
一人社長としてビジネスをスタートしたばかりの方にとって、日々の支出をどこまで経費として計上できるのかは非常に重要なポイントです。特に、一人で経営から実務まですべてを担う一人社長の場合、プライベートとビジネスの境界があいまいになりやすく、「これって経費にできるの?」と悩む場面も多いのではないでしょうか。この記事では、一人社長が把握しておきたい経費の基本から、節税につながる経費の活用術、注意すべきポイントまでをわかりやすく解説します。正しい知識を身につけて、健全かつ効率的な経営を目指しましょう。
そもそも経費とは

経費とは、事業活動を行ううえで必要な支出を指し、「経常費用」とも呼ばれます。一人社長をはじめとする法人経営者にとって、経費は法人税の課税対象となる所得を圧縮できる大きな要素であり、適切な経費計上は節税対策の第一歩です。
法人税法では「損金」として定義され、益金(売上等の収入)から差し引くことで課税所得を減らせる仕組みです。一人社長でも、経費にできるのは事業に必要な支出に限られます。プライベートな支出との線引きを明確にし、正しい経費処理を行うことが重要です。
会計上の経費
会計上の利益は、「収益-費用」で算出されます。この費用部分が、会計上の経費に該当します。一人社長が行う会計処理も、企業会計原則や簿記のルールに基づいて進める必要があります。
会計上の経費は原則として全額を費用として計上可能ですが、それが税務上も同じように扱われるとは限りません。

SoVa税理士ガイド編集部
特に一人社長の場合、自身の判断で支出を行うことが多いため、税法上の経費として認められるかを常に意識する必要があります。
税法上の経費(損金)
税法上の経費は「損金」と呼ばれ、会計上の経費とは異なる考え方です。損金は法人税の課税所得を算出する際に差し引かれるため、一人社長の法人にとっては納税額を左右する重要な項目です。
ただし、損金として認められるのは税法で定められた要件を満たす支出のみです。一人社長がよく利用する接待交際費や役員報酬なども、条件を満たさなければ損金にできない場合があります。経費と損金の違いを理解したうえで、正しく処理しましょう。
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すべての支出が経費で落とせるとは限らない
一人社長にとって注意すべきなのは、すべての支出が経費として認められるわけではないという点です。会計上の経費として処理できても、税法上の損金にはならない場合があります。
こうした損金不算入に該当するケースには、要件を満たしていない役員報酬や一部の接待交際費などがあります。これらの支出は法人の利益に関係なく、課税所得が発生して法人税を支払うことにつながるため、一人社長こそ慎重な経費判断が求められます。
一人社長ができる節税対策

ここでは、一人社長になったことで実現できる節税メリットについて詳しく紹介していきます。
一人社長として会社を設立すると、個人事業主のときには活用できなかった制度や、経費計上の幅が広がることで、より柔軟に節税対策を講じることが可能になります。一人社長が活用できる主な節税方法は以下の6つです。
一人社長ができる節税対策①:給与所得控除による節税
一人社長になると、会社から自身に「役員報酬」という形で給与を支払うことができます。これにより、給与所得控除が適用され、所得税の負担を軽減できます。
一人社長の節税対策はここがポイント!

個人事業主のままだと、「青色申告特別控除」は最大65万円(電子申告または電子帳簿保存による)ですが、給与所得控除では最大195万円まで控除可能です。
これは、一人社長としての大きな節税メリットのひとつです。
一人社長ができる節税対策②:所得分散による税率の軽減
一人社長は、個人と法人に所得を分散できる点も強みです。日本の所得税は累進課税制度を採用しており、収入が多いほど税率も高くなります。
個人事業主では分散ができませんが、一人社長であれば、法人で得た利益から役員報酬を支給することで所得を分散し、全体の所得税率を抑えることができます。

SoVa税理士ガイド編集部
一人社長が経費にできるものについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
一人社長ができる節税対策③:欠損金の繰越期間が長くなる
一人社長として法人化すると、赤字(欠損金)を最大10年間繰り越すことができ、将来の利益と相殺して法人税を節税できます。
個人事業主の繰越期間が3年間に対し、法人は最大10年(平成30年4月1日以降の欠損金)まで繰越可能です。これにより、初期費用がかかった年の損失を長期的に活かせる点は一人社長の強みといえます。
一人社長ができる節税対策④:消費税の納税が最長4年間免除
一人社長として法人成りした場合、消費税の納税義務が最大4年間免除される可能性があります。
個人事業主が売上1,000万円を超えると2年後には消費税の課税対象になりますが、法人化のタイミングを工夫することで、会社設立から最長2年間、一定の条件下ではさらに2年間の計4年間、消費税が免除されます。
一人社長ができる節税対策⑤:出張日当を経費として計上可能
一人社長になると、出張旅費規程を整備することで、出張日当を経費として計上することができます。
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個人事業主の場合、出張費は実費しか経費にできませんが、一人社長であれば、たとえば宿泊費を3万円と定めておけば、実費がそれ未満であっても3万円全額を経費として処理できます。これは一人社長ならではの大きな経費活用術です。
一人社長ができる節税対策⑥:社宅制度を活用して家賃を経費に
一人社長の節税メリットとして見逃せないのが役員社宅制度の活用です。会社名義で借りた社宅を自身(社長)に貸し出す形をとることで、家賃の大部分を会社の経費として処理することができます。

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この際、役員が負担すべき金額は国税庁の規定により定められており、小規模な住宅であれば下記の3項目の合計額が基準となります。
- 建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%
- 12円 × 総床面積(平方メートル) ÷ 3.3
- 敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%
このように一人社長として社宅制度を取り入れることで、日常的な住居費を実質的に経費化することができるのです。
一人社長が経費にできるもの

一人社長として事業を運営する際、税金の負担を抑える最大のポイントは「経費」のもれない計上です。所得税の課税対象となる「所得」は、シンプルに言えば「売上-経費-所得控除」で算出されます。
つまり、一人社長が計上する経費が増えれば増えるほど、課税所得が減少し、結果的に税金を節約できるのです。以下では、一人社長が活用できる主要な経費項目について詳しく解説していきます。
地代家賃
地代家賃は、オフィスや事務所、駐車場などを借りた際に発生する賃料であり、一人社長が事業用に利用しているスペースであれば経費として計上可能です。
たとえば、自宅を事務所として兼用している一人社長の場合、その家賃のうち事業に使用する割合に応じて家事按分し、経費処理が可能です。私的利用分は「事業主貸」で処理します。
旅費交通費
一人社長が打ち合わせや出張、現地調査などで発生した交通費・宿泊費・出張日当は経費に計上できます。経費として認められるのは事業に直接関連する移動費用に限られ、私的な移動にかかる費用は除外対象です。
タクシー代やICカード利用時も、使用用途の明記と領収書の保管が重要です。チャージした時点ではなく、利用した金額をベースに経費計上を行いましょう。
材料費・消耗品費
事業活動に必要な文具、トナー、PC周辺機器などの消耗品や資材の購入費用は経費として処理できます。購入金額が高額で耐用年数が1年以上の場合、「工具器具備品」や「資産」として扱い、減価償却の対象になることも。
一人社長は、少額の備品も漏れなく経費処理することで、利益を圧縮し、節税につなげることができます。
水道光熱費
電気代や水道代、ガス代などの水道光熱費も経費計上が可能です。自宅兼事務所であれば、仕事で使っている時間やスペースに応じて家事按分を行いましょう。
一人社長は「使用時間」や「使用日数」の記録をつけておくと、経費計上時の説明責任を果たしやすくなります。
通信費
仕事で使用する固定電話代・携帯電話代・インターネット通信費などは、通信費として経費処理可能です。自宅で事業を営んでいる一人社長は、通信に使う割合を明確にして家事按分しましょう。
ホームページの維持費やWeb会議用アプリのサブスクリプション費用も、立派な経費となります。
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車両費
業務用に使用している車両のガソリン代・駐車場代・整備費用・保険料などは、すべて車両費として経費計上が可能です。ただし、私的利用との混在がある場合は、利用割合に応じた按分が必要です。
一人社長であっても、日々の車両の利用記録を取っておくことで、経費として認められる確率が高くなります。
接待交際費
取引先との関係構築のための懇親会費用・お土産・飲食代などは、接待交際費として計上できます。一人社長でも、事業に関係する支出であることが明確であれば、経費として計上可能です。
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一人社長の経費に関する注意点

ただし、私的な交際費との線引きが曖昧になると税務署から指摘を受けやすいため、内容の記録・領収書の管理が必須です。
組合費
一人社長として労災保険に特別加入する場合、その組合への加入費や保険料は経費として処理できます。自営業者である一人社長は雇用保険に加入できないため、こうした制度の活用はリスク回避にも役立ちます。
これらの費用はすべて、事業用口座からの支払いで記録を残すようにしましょう。
専従者給与
家族(配偶者や親族)に事業を手伝ってもらっている場合、その対価としての給与は、一定条件を満たすことで専従者給与として経費に計上可能です。

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青色申告事業者として、一人社長が正式に「青色事業専従者給与」の届出を出していれば、税務上も認められた経費扱いになります。
一人社長が経費にできないもの

一人社長として法人を運営している場合でも、企業と同様に新年会・忘年会の費用や慶弔見舞金といった支出を、福利厚生費として経費計上できるかどうかは注意が必要です。
一人社長の経費に関する気をつけておきたい注意点

福利厚生費は本来、従業員全体の福利や生活の安定を目的とした支出に該当するため、従業員を雇用していない一人社長のみの法人では、これらの費用を経費として処理することは基本的に認められていません。
仮に家族を従業員として雇っていたとしても、その場合は「専従者」としての扱いとなり、福利厚生費を経費として計上することは原則不可です。一人社長が自分自身のために福利厚生費を使おうとする場合、それが私的な支出とみなされ、経費として否認されるリスクが高まります。

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ただし、一人社長でも将来的に事業を拡大し、従業員を正式に雇用する予定がある場合には、福利厚生費を経費化できる余地が出てきます。
たとえば、健康診断費用を経費処理したい場合は、すべての従業員が平等に受けられるような制度であり、社会通念上妥当な金額であることが必要です。特定の役員や一部の社員だけを対象にした支出は、福利厚生費としては認められません。
また、高額すぎる福利厚生費は経費として不自然と判断され、税務調査で指摘される可能性もあるため、一般的な水準の範囲内で経費計上することが求められます。一人社長は、福利厚生費の取り扱いについて特に慎重になり、制度の趣旨と税務上のルールに即した形で経費処理を行うことが重要です。
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一人社長と個人事業主における経費対象の違い

一人社長(法人化した個人)と個人事業主では、経費として認められる支出の範囲や計上方法に明確な違いがあります。節税の観点から見ると、一人社長の方が経費計上の自由度が高く、税制上のメリットが多いといえるでしょう。
ただし、制度の違いを正しく理解しておかないと、せっかくの節税効果を最大化できない可能性もあります。ここでは、一人社長と個人事業主の間で異なる代表的な経費処理のポイントについて解説します。
一人社長と個人事業主で大きく異なる「給与の扱い」
最大の違いは「給与」に関する経費処理です。
個人事業主の場合、自身の働きによる報酬を「給与」として扱うことができません。売上から必要経費を差し引いた残りが「所得」となり、そのまま所得税の課税対象となります。
一方、一人社長の場合は、法人から自分(代表取締役)に対して「役員報酬」として給与を支払うことができます。この役員報酬は、法人側から見れば経費として処理可能であり、所得税と法人税のバランスを調整することで節税効果が期待できます。
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さらに、法人化して一人社長になることで、賞与や退職金も要件を満たせば経費として計上可能となり、将来的な資産形成にも有利な仕組みが活用できます。
一人社長ならではの経費メリットとは?
個人事業主では経費にできなかった項目でも、一人社長になることで経費として認められるケースが増えます。例えば以下のようなものがその代表です。
- 法人契約の生命保険料:節税目的で設計された保険商品は、法人名義で加入することで経費として処理できます。
- 自宅家賃の一部または社宅化:法人として契約し、社宅制度を活用すれば、家賃の大部分を経費にできます。
- 自動車関連費用の減価償却:法人名義で購入すれば、より明確に事業用として経費処理が可能になります。

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これらの支出は、個人事業主であっても家事按分により一部を経費化することは可能ですが、その割合や判断基準は曖昧であり、税務調査で否認されるリスクが高くなります。
一方、一人社長として法人契約・法人名義で管理していれば、事業用であることの客観的証明がしやすく、経費処理における信頼性も高まります。
まとめ

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一人社長として経営を続けていく上で、「何を経費として計上できるか」を正しく理解することは、節税や資金管理の面でも大きなメリットとなります。業務に必要な支出であれば、適切なルールに則って経費処理することで、法人としての強みを最大限に活かすことが可能です。

SoVa税理士ガイド編集部
ただし、私的な支出との線引きを誤ると、税務調査でのリスクも高まるため注意が必要です。
経費の取り扱いを正しく行い、一人社長としての経営基盤をより強固なものにしていきましょう。
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