社会保険の加入手続き方法は?加入要件や必要書類についても解説!
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公開日:2025年6月
更新日:2025年6月27日
社会保険は、健康保険や厚生年金保険などの公的保険制度を指し、従業員の生活を支える重要な仕組みです。会社を設立したり、従業員を雇用したりする場合には、事業主として社会保険の加入手続きが必要になります。
社会保険の加入手続きには、要件の確認、提出書類の準備、年金事務所や事務センターへの申請など、正確な対応が求められます。特に、加入対象となる事業所や従業員の範囲、そして加入手続きの期限を把握しておくことは、法令遵守だけでなく従業員との信頼関係を築くうえでも大切です。
この記事では、社会保険の基本的な概要から、加入手続きが必要な事業者・従業員の条件、具体的な手続きの流れや必要書類、そして注意点まで詳しく解説します。これから社会保険の加入手続きを行う方は、ぜひ最後までご覧ください。
社会保険とは

社会保険とは、健康保険・厚生年金保険・介護保険・労災保険・雇用保険の5つの保険を総称した制度で、一定の条件を満たす事業所とその従業員が社会保険への加入手続きを行うことが義務付けられています。

SoVa税理士ガイド編集部
社会保険の加入手続きは、原則として事業所が行い、従業員を雇用した際には速やかに所定の手続きが必要となります。
なお、文脈によっては、健康保険(および介護保険)と厚生年金保険のみを「社会保険」とし、労災保険・雇用保険を「労働保険」と分類することもあります。しかし、いずれも社会保険制度の一環として、加入手続きや保険料の納付が重要な役割を果たします。
社会保険の加入手続きに関するおすすめ記事
ここでは、社会保険を構成する5つの保険と、それぞれの特徴を確認していきましょう。
- 健康保険:病気やケガで医療機関を受診した際、治療費や薬代の一部を負担してくれる社会保険です。加入手続きは、従業員の採用時に会社を通じて行われます。
- 厚生年金保険:老後の年金受給、障害時の障害年金、死亡時の遺族年金などを支給する社会保険です。健康保険と同様に、加入手続きは会社が一括して行います。
- 介護保険:40歳以上の加入者が対象となり、要介護認定を受けた場合に介護サービスを受けられる社会保険です。健康保険と連動して加入手続きを行います。
- 労災保険:業務中や通勤中の事故や病気による医療費や休業補償を行う社会保険です。加入手続きは事業主が行い、すべての労働者が対象となります。
- 雇用保険:失業した場合や出産・育児・介護によって働けなくなったときに給付が受けられる社会保険で、採用時の加入手続きが必要です。
社会保険の加入手続きが必要な事業者

すべての法人の事業所(企業)は、社会保険への加入手続きが法律で義務付けられています。社会保険の加入対象は、法人単位ではなく事業所ごとに適用される仕組みとなっており、各事業所が個別に社会保険の加入手続きを行う必要があります。
社会保険への加入手続きは原則として必須ですが、個人事業主の場合は業種や雇用人数によって任意加入となることもあります。これらの違いを明確にするため、社会保険の適用範囲は「適用事業所」と呼ばれ、さらに「強制適用事業所」と「任意適用事業所」に分類されます。

SoVa税理士ガイド編集部
社会保険の加入手続きについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
社会保険の適用事業所の分類
社会保険の加入手続きが必要な事業所の分類は以下の通りです。
事業形態 | 社会保険の適用区分 |
---|---|
法人 | 強制適用事業所(加入手続きが必須) |
個人事業(適用業種) | 常時5人以上の従業員を雇用している場合は強制適用(加入手続きが必要) |
個人事業(適用業種以外)※農林水産業・飲食業・サービス業など | 任意適用事業所(加入手続きは希望に応じて) |
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強制適用事業所における社会保険の加入手続き
強制適用事業所とは、従業員数や業種に関係なく、法律により社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入手続きが義務付けられている事業所です。
以下のいずれかに該当する場合、社会保険の加入手続きを行い、所定の保険料を納付しなければなりません。
- 法人である事業所(常時1人以上の従業員を雇用している)
- 常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所(ただし、飲食店・理美容業・農林漁業など一部の業種を除く)
- 国・地方公共団体の事業所
該当する場合は、健康保険と厚生年金保険の社会保険加入手続きを速やかに行う必要があります。
社会保険の加入手続きに関するおすすめ記事:社会保険の手続きってどれくらいあるの? 担当者が知っておくべき手続きを社会保険労務士が解説します。
任意適用事業所における社会保険の加入手続き
任意適用事業所とは、社会保険の加入義務がない事業所のうち、条件を満たせば希望に応じて加入手続きを行うことができる事業所です。たとえば、以下のようなケースが該当します。
- 飲食業、サービス業、農業などの個人事業で、従業員が5人未満
- 従業員の過半数が社会保険への加入に同意している場合

SoVa税理士ガイド編集部
任意適用事業所として社会保険に加入したい場合は、日本年金機構に対して申請書類を提出し、承認を得たうえで加入手続きを進めることになります。
社会保険の一括適用ができる場合と手続き方法
本社が労務管理を一元的に行っている場合には、本社と支社を一つの適用事業所としてまとめる「一括適用」の申請が可能です。これにより、従業員の異動時に社会保険の資格喪失や再取得といった複雑な加入手続きを省略でき、事務作業が大幅に軽減されます。
一括適用を行うには、事前に年金事務所へ社会保険の届出体制や労務管理体制について詳細な説明を提出し、承認を受ける必要があります。この手続きを怠ると、拠点ごとに個別に社会保険の加入手続きを行う必要が生じますので、注意が必要です。
社会保険の加入手続きが必要な従業員

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入手続きは、従業員の雇用形態や労働条件に応じて必要となります。社会保険への加入が必要な基本条件としては、以下のような従業員が対象となります。
- 常時雇用されている正社員
- 週の所定労働時間および月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上である従業員
これらの条件に該当する従業員に対しては、事業所が社会保険の加入手続きを行わなければなりません。加入手続きを怠ると法令違反となる可能性があるため、雇用時には速やかに確認・対応が必要です。
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パート・アルバイトの社会保険加入手続き
社会保険は、正社員だけでなく、パートやアルバイトの従業員であっても、一定の条件を満たせば加入手続きが必要です。特に以下のような条件を満たす場合には、パートやアルバイトでも社会保険の加入対象となります。
- 所定労働時間および所定労働日数が正社員の4分の3以上である
- それ以下の勤務であっても、以下のすべてを満たす場合は加入手続きが必要
・週20時間以上の労働時間
・2カ月以上の雇用見込み
・月額報酬が8.8万円以上
・学生ではない(夜間・定時制・通信制を除く)
・従業員数が101人以上の事業所に所属
社会保険の加入手続きで気をつけておきたい注意点

令和6年10月からは、この加入条件のうち「従業員数101人以上」の要件が「51人以上」へと引き下げられ、より多くのパート・アルバイトに対して社会保険の加入手続きが必要になります。制度改正に伴う手続きの見直しも重要です。
派遣労働者における社会保険の加入手続き
派遣労働者も、社会保険への加入手続きが必要となるケースがあります。派遣元(派遣会社)が雇用主となるため、派遣会社が適切に社会保険の加入手続きを行う必要があります。
派遣労働者が以下の条件を満たす場合、社会保険の加入対象となり、派遣元は加入手続きを行う義務があります。
- フルタイムと同等の労働時間がある場合
- 所定労働時間が正社員の4分の3以上であり、かつ契約期間が2カ月以上である場合
派遣社員は雇用契約の形態上、加入手続きの対象かどうかが見落とされやすいため、契約時に社会保険の加入条件を確認し、適切に手続きを行うことが求められます。
【事業所側】社会保険の加入手続きに必要な書類と提出方法

事業所が行う社会保険の加入手続きは、日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)にてまとめて申請することができます。社会保険の加入手続きにおける提出期限および必要書類は、以下のとおりです。
事業所区分 | 加入手続きの提出期日 | 社会保険の加入手続きに必要な書類 | 提出先 |
---|---|---|---|
強制適用事業所 | 会社設立から5日以内 | ・健康保険・厚生年金保険 新規適用届・健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届・健康保険 被扶養者(異動)届・健康保険・厚生年金保険 保険料口座振替納付申出書・各種添付書類 |
日本年金機構(事務センターまたは年金事務所) |
任意適用事業所 | 従業員の過半数の同意取得後 | ・健康保険・厚生年金保険 任意適用申請書、同意書・健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届・健康保険 被扶養者(異動)届・健康保険・厚生年金保険 保険料口座振替納付申出書・各種添付書類 |
日本年金機構(事務センターまたは年金事務所) |
個人事業(適用業種以外) ※農林水産業・飲食業・サービス業など |
任意適用事業所(加入手続きは希望に応じて) | ||
④合計400万円以上のカード利用でさらに | 40,000ポイント進呈 |
社会保険の加入手続きは、年金事務所や事務センターへの提出のほか、電子申請にも対応しています。加入手続きにかかる負担を軽減できるため、電子申請の活用もおすすめです。
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なお、2020年4月以降、資本金等の額が1億円を超える法人・相互会社・投資法人・特定目的会社に対しては、社会保険の加入手続きに関して電子申請が義務化されています。
社会保険の加入手続きに必要な書類一覧
社会保険の加入手続きを行う際は、強制適用事業所か任意適用事業所かによって、必要な書類が異なります。それぞれのケースで必要となる書類は以下のとおりです。
強制適用事業所に必要な書類
- 健康保険・厚生年金保険 新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
- 健康保険 被扶養者(異動)届
- 健康保険・厚生年金保険 保険料口座振替納付申出書
- 各種添付書類(下表参照)
任意適用事業所に必要な書類
- 健康保険・厚生年金保険 任意適用申請書・同意書
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
- 健康保険 被扶養者(異動)届
- 健康保険・厚生年金保険 保険料口座振替納付申出書
- 各種添付書類(下表参照)
健康保険・厚生年金保険 新規適用届に必要な添付書類
事業所区分 | 添付書類内容 |
---|---|
法人事業所 | ・法人(商業)登記簿謄本(法務局のオンライン交付可) |
法人・国・地方公共団体等 | ・法人番号指定通知書のコピー(国税庁の法人番号サイトから出力可) |
強制適用の個人事業所 | ・事業主の世帯全員の住民票(原本) |
社会保険の加入手続き期限と提出方法

SoVa税理士ガイド編集部
社会保険の加入手続きは、原則として会社設立の事実が発生してから5日以内に完了する必要があります。提出方法は以下の3通りです。
- 電子申請:管轄の年金事務所を選択して申請
- 郵送提出:事業所所在地の年金事務所または事務センター宛
- 窓口提出:最寄りの年金事務所で直接手続き
社会保険の加入手続きは期限や提出先を誤ると受理されない場合もあるため、事前にしっかり準備しておくことが重要です。
社会保険の加入手続きにおける注意点

社会保険の加入手続きにおいては、資格取得や喪失のタイミング、従業員の属性変更、保険料の計算など、細かな確認が必要です。事業主や社会保険事務担当者が見落としやすいポイントを把握しておくことで、手続き漏れや誤りを防ぐことができます。ここでは、社会保険の加入手続きに関して特に注意すべき代表的なミスとその対策を解説します。
注意点①:退職日と社会保険の資格喪失日を混同しない
社会保険の加入手続きでは、従業員の退職時の「資格喪失日」に関する取り扱いに注意が必要です。社会保険の資格取得日は原則として採用日ですが、資格喪失日は退職日の翌日となります。
たとえば、従業員の退職日が11月30日であれば、社会保険の資格喪失日は12月1日になります。退職日当日ではない点を誤解しやすいため、資格喪失に関する手続きでは日付の取り違えに気をつけましょう。
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注意点②:40歳到達者の介護保険料徴収を忘れない
社会保険の一部である介護保険は、従業員(被保険者)が40歳に達した月から対象になります。このため、40歳を迎えた従業員については、社会保険の加入状況に応じて介護保険料の徴収が必要となります。
加入手続きを行った後も、年齢に応じた保険料区分の変更を見逃さないよう、定期的な確認と社内管理体制の整備が重要です。
注意点③:60歳定年後の再雇用時も社会保険手続きを忘れずに
60歳で定年を迎えた従業員が再雇用される場合にも、社会保険の再加入手続きや保険料の再計算が必要です。再雇用後は給与額が変更になるケースが多いため、標準報酬月額を再設定し、それに応じた社会保険料の見直しを行わなければなりません。
社会保険の加入手続きで気をつけておきたい注意点

再雇用で継続勤務する場合も、社会保険の加入手続きを省略できるわけではないため、初回の給与改定時に必ず確認しましょう。
注意点④:パート・アルバイトの社会保険加入漏れに注意
パート・アルバイトなど短時間労働者の雇用が多い事業所では、社会保険の適用対象拡大によって、これまで未加入だった従業員も加入手続きが必要になることがあります。
社会保険の加入条件(週の所定労働時間や報酬額、雇用見込みなど)に照らして、定期的に対象者を確認し、加入手続き漏れがないようにしましょう。法改正による適用拡大のタイミングでは特に注意が必要です。
社会保険の加入手続きに関するおすすめ記事:事業所が行わなければいけない社会保険の手続きとは?入社や退社などケース別で申請方法を解説
注意点⑤:昇給・降給時の月額変更届を必ず提出する
給与の変動があった場合、標準報酬月額に基づいて社会保険料を変更するためには「月額変更届」の提出が必要です。社会保険の適切な運用のためには、昇給や降給など固定的賃金の変更があった際に、速やかに加入手続き情報を更新しなければなりません。
この手続きが漏れると、保険料の誤徴収が続き、従業員や会社双方に不利益が生じるため、給与改定時の手続き確認を徹底しましょう。
まとめ

社会保険の加入手続きは、会社運営や人材雇用を行う上で避けては通れない重要な業務です。

SoVa税理士ガイド編集部
事業所の種類や従業員の雇用形態によって、社会保険の加入要件や手続き内容が異なるため、正しい知識をもとに対応することが求められます。
また、手続きの遅れや記入ミス、加入漏れなどは、後々のトラブルやペナルティにつながる可能性があります。社会保険の制度や加入手続きの流れをしっかりと理解し、スムーズな申請を行いましょう。
万全な社会保険の加入手続きによって、従業員が安心して働ける環境づくりを進めることができます。事業主や担当者の方は、制度の変更や法改正にも注目しつつ、日々の実務に役立ててください。
社会保険の加入手続きに関するおすすめ記事:社会保険の手続き・届出一覧 – 被保険者と事業所に分けて解説
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