スタートアップ企業の役員報酬はどう決めればいい?役員報酬の相場や決め方を解説!

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公開日:2024年11月

更新日:2024年11月29日

スタートアップは、革新的なアイデアや技術を活用し、急速な成長を目指す新興企業を指します。これらのスタートアップ企業は、従来のビジネスモデルを打ち破り、市場に新たな価値を創出することを目標としています。しかし、その道のりでは、資金調達や人材確保といった課題に直面することが少なくありません。

特に、スタートアップの成功において鍵となるのが、役員報酬の適切な設定です。優秀な人材を引きつけ、その能力を最大限に引き出すためには、役員報酬を戦略的に設計することが不可欠です。適切な役員報酬体系は、役員のモチベーションを高めるだけでなく、スタートアップの持続的な成長にも大きく貢献します。

一方で、限られた資金をどのように配分し、役員報酬を設定するかはスタートアップ特有の大きな課題でもあります。また、企業規模が拡大するにつれて、役員報酬体系をどのように変化させていくべきかも重要なポイントとなります。

SoVa税理士ガイド編集部

そこで今回は、スタートアップにおける役員報酬に関する基礎知識や、成長段階に応じた報酬体系の構築について詳しく考察します。

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そもそもスタートアップとは?

スタートアップとは、IT企業が集まるアメリカ・シリコンバレーで使われ始めた言葉で、革新的なビジネスモデルを基盤に新たな市場を開拓し、短期間での急成長を目指す企業を指します。スタートアップの成功には、成長スピードの速さと斬新な発想が重要な要素となるため、資金調達や役員報酬の設計が経営戦略の鍵を握ります。

経済産業省の「平成30年度地方創生に向けたスタートアップエコシステム整備推進に関する調査事業報告書」(2019年)では、スタートアップの特徴として次の3つが挙げられています。

  • 成長スピードが速い
  • ビジネスに斬新さがあり、革新や社会貢献を意識している
  • 出口戦略(イグジット)を検討している

スタートアップと役員報酬の関係性

スタートアップでは、限られた資金を効率的に活用する必要があるため、役員報酬の設計が非常に重要です。役員報酬を適切に設定することで、優秀な人材を確保し、経営陣のモチベーションを高めることが可能です。また、役員報酬の金額は投資家の信頼を得るうえでも影響を与えるため、慎重な検討が求められます。

スタートアップの経営者は、初期投資のリスクを抱える一方、短期的な急成長を目指すために、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家からの資金調達を重視します。

気をつけておきたい注意点

税理士
        _依頼_おすすめの注意点

その際、役員報酬の水準を適切に設定することで、事業価値を高めつつ、キャッシュフローの健全性を維持することが求められます。

ベンチャーやスモールビジネスとの違い

スタートアップとベンチャーの違いは、ビジネスモデルの革新性にあります。スタートアップは斬新なビジネスモデルを追求し、急速な成長を目指すのに対し、ベンチャー企業は既存のモデルを基盤にした中長期的な成長を目指します。ベンチャー企業では、大規模な投資を受けるよりも、金融機関からの融資や助成金の利用が一般的で、役員報酬の設定も比較的安定した水準にとどまることが多いです。

スモールビジネスはさらに異なり、リスクを抑え、長期的な経営を目指す点が特徴です。スタートアップが短期的な成長と高いリスクを前提とするのに対し、スモールビジネスは堅実な運営を重視し、役員報酬も経営の安定性を基準に設定される傾向があります。

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役員報酬とは?

スタートアップにおける役員報酬は、経営の透明性を確保しつつ、成長を支える重要な要素です。役員報酬とは、会社の取締役や監査役など役員に対して支払われる報酬のことを指し、会社法第329条に基づき定義されています。スタートアップ企業では特に、役員報酬の適切な設定が企業運営の効率性や資金繰りに大きく影響します。

役員報酬は、従業員の給与とは異なる点が多く、税法上の取り扱いや決定方法に独自のルールが存在します。特にスタートアップでは、資金調達の進捗や収益状況に応じて役員報酬を慎重に設定することが求められます。

SoVa税理士お探しガイド編集部

役員報酬は、従業員の給与と似ていますが、以下のような違いがあります。

従業員給与と役員報酬の違い①:役員報酬は原則として年度を通じて一定

スタートアップでも役員報酬を増減する際は株主総会での決議が必要です。一方、従業員の給与は業績や勤務実績に応じて柔軟に変更が可能です。

従業員給与と役員報酬の違い②:税務上の損金計上ルールの違い

従業員の給与は全額損金として認められる一方で、役員報酬を損金計上するには、「定期同額給与」や「事前確定届出給与」といった条件を満たす必要があります。スタートアップでは、税負担を最適化するためにも、役員報酬を慎重に計画する必要があります。

従業員給与と役員報酬の違い③:残業代の適用がない

役員報酬には残業代の適用がなく、基本報酬のみで構成されます。この点は、柔軟な働き方を追求するスタートアップで特に重要なポイントとなります。

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スタートアップの役員報酬相場

スタートアップを創業する際、役員報酬の設定は重要な課題です。他の企業の役員報酬相場は、スタートアップの創業者が役員報酬の水準を決定する際の参考材料となります。

世界的な調査(COMPASS社)によると、スタートアップ創業者の約71%が年収500万円以下に役員報酬を設定しており、1,000万円を超える役員報酬を受けている創業者はわずか11%程度です。

国内においては、国税庁の調査データを基にした役員報酬の平均額は以下の通りです。

  • 資本金2000万円未満の企業: 平均約566万円
  • 資本金2000万~5000万円未満の企業: 平均約796万円
  • 資本金5000万円以上の企業: 平均約979万円

これらの統計は、スタートアップが成長するに従い、役員報酬が段階的に増加していく傾向を示しています。創業初期の役員報酬は一般的な会社員の平均年収(約433万円、令和2年)とほぼ同程度ですが、企業の成長とともに役員報酬が引き上げられることが多いといえます。

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スタートアップの役員報酬の決める際のポイント

スタートアップにおいて、役員報酬を決める際に注意すべきポイントを解説します。スタートアップは限られた資金で効率的な運営を求められるため、年間の業績や社会保険料とのバランスを考慮した上で、適切な役員報酬を設計することが重要です。以下のポイントを参考にしてください。

役員報酬を決める際のポイント①:スタートアップの財務状況との兼ね合い

役員報酬は、スタートアップのキャッシュフローや資金状況に大きく影響します。成長初期段階では、資金を事業拡大に優先的に投入するため、役員報酬を抑えることが多いです。一方で、一定の利益が見込まれるようになれば、役員報酬を適切に増やすことで創業者や経営陣のモチベーションを維持できます。役員報酬が財務状況を圧迫しないよう慎重に判断することが不可欠です。

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役員報酬や基本給の変更をすると、『月額変更届』という役所手続きを行うケースが多くあり、給与計算代行をしている税理士でも、5,000円~8,000円程度の別途料金(1人)がかかることがあります。

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役員報酬を決める際のポイント②:税金・社会保険料とのバランス

スタートアップの役員報酬を決める際には、税金や社会保険料の影響を考える必要があります。役員報酬を増やすと法人の利益が減り、法人税や会社負担の健康保険料が軽減される一方、個人側の所得税や社会保険料が増加します。

気をつけておきたい注意点

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スタートアップでは、このバランスを見極め、事業成長を妨げない役員報酬額を設定することが重要です。

役員報酬を決める際のポイント③:業界水準との比較

スタートアップの役員報酬は、同業界や同規模の他社と比較して適切な水準に設定する必要があります。役員報酬が高すぎる場合、税務署から損金算入が否認されるリスクがあります。一方で、低すぎる報酬では役員のモチベーションを損なう可能性があります。そのため、競合他社の役員報酬と比較し、合理的かつ適正な水準を目指しましょう。

役員報酬を決める際のポイント④:損金計上可能な支払い方法の選択

税法上、スタートアップが役員報酬を損金に計上するためには、以下の3種類のいずれかに該当する必要があります:

  • 定期同額給与:毎月一定額で支払われる給与。
  • 事前確定届出給与:あらかじめ決定・届出された一定額の賞与。
  • 業績連動給与:企業業績に連動して変動する給与(主に大企業向け)。

スタートアップでは、定期同額給与が主に採用される傾向がありますが、事業成長に応じて役員報酬の形式を柔軟に見直すことも検討すると良いでしょう。

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スタートアップの役員報酬を決める際の注意点

スタートアップでも、役員報酬を年収1,000万円以上に設定するケースはあります。ただし、以下の2つの点に留意が必要です。

スタートアップの役員報酬に関するおすすめ記事:スタートアップの年収はどれくらい?社長・役員・社員の年収や相場を解説

役員報酬を決める際の注意点①:税金や社会保険料の増加

役員報酬を高額に設定すると、税金や社会保険料の負担が大きくなります。具体的には以下の2つに注意しましょう。

  • 所得税の増加:高額な役員報酬により累進課税の影響で個人の税負担が増えます。
  • 社会保険料の増加:社会保険料は年収に比例して計算されるため、役員報酬が高いほど個人と企業の負担が増大します。これにより、スタートアップの資金繰りが悪化するリスクがあります。

役員報酬を決める際の注意点②:税務署からの調査リスク

役員報酬を損金として計上することで法人税を節約できますが、不適切な金額設定には注意が必要です。税務署が「役員報酬が不相当に高額」と判断した場合、その部分が損金として認められない可能性があります。これは、スタートアップが限られた資金を有効活用する上で大きなリスクとなります。

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まとめ

今回は、スタートアップにおける役員報酬の相場や決め方について確認しました。スタートアップの初期段階では、限られた資金を効率的に活用する必要があるため、役員報酬は比較的低めに設定されることが一般的です。また、この段階では現金給与の割合が少なく、株式オプションやその他のインセンティブが役員報酬の主要な構成要素となるケースが多く見られます。

一方、スタートアップが成長し、資金調達や収益の増加に伴って企業規模が拡大するにつれ、役員報酬も見直され、増額される傾向があります。特に、企業の業績や成長目標に応じて役員報酬を変動させる仕組みを取り入れることで、役員のモチベーションを高めると同時に、企業全体の成長を促進する効果が期待できます。

スタートアップにおける役員報酬の適切な設計は、資金繰りや成長戦略とのバランスが重要です。適切な役員報酬の設定に悩んだ際には、同業界のスタートアップ企業を担当している税理士に相談するのもおすすめです。

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