役員報酬をゼロに設定することは可能?メリット・デメリットについて解説!
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公開日:2024年11月
更新日:2024年11月22日
起業時に多くの人が直面するのが、役員報酬をどう設定するかという問題です。創業時は事業が不安定なケースも多く、しばらくの間役員報酬をゼロにすることを検討する人は少なくありません。
役員報酬をゼロにすることは、会社にとって一定のメリットをもたらします。例えば、事業資金を優先的に運用できるため、初期の資金繰りに余裕を持たせることができます。しかし一方で、社長個人にとってはデメリットも存在します。役員報酬がゼロである間は、生活費を別の収入や貯蓄で賄う必要があり、長期的には負担が大きくなる可能性があります。
また、役員報酬をゼロに設定することで、社会保険への加入義務や税金面での扱いに影響を及ぼす場合もあります。このようなリスクを理解した上で、適切な役員報酬の額を決めることが重要です。
SoVa税理士お探しガイド編集部
今回は、役員報酬をゼロにする場合のメリットとデメリット、さらに報酬額をどう決定すべきかについて詳しく解説します。適切な役員報酬の設定は、会社の成長と社長自身の経済的安定を両立させる鍵となります。
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役員報酬をゼロに設定することは可能?
法人を設立して社長になった場合、受け取る報酬は給与所得として扱われますが、役員報酬をゼロに設定することも可能です。役員は労働基準法で定められた労働者に該当しないため、役員報酬がゼロであっても法的には特に問題ありません。
役員報酬は、法人設立後3か月以内に決定する必要があります。設立直後は経営が不安定なケースが多く、資金を会社に残すために役員報酬をゼロに設定する選択をする経営者も少なくありません。
気をつけておきたい注意点
ただし、役員報酬は一度決定すると、自由に変更することはできず、次に変更できるタイミングは事業年度の開始時となります。
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ついて解説
役員報酬をの変更を考えている人はぜひ一度ご覧ください。
例えば、事業年度を4月1日から翌年3月31日までと設定している場合、役員報酬の変更が可能なのは、原則として6月30日までです。この期間を過ぎた場合、次に変更できるのは翌年度の4月1日以降となります。そのため、役員報酬をゼロにする場合でも、慎重に検討することが求められます。
役員報酬をどのように設定するかは、会社の資金繰りや将来の成長計画に大きく影響する重要な要素です。特に、役員報酬をゼロにする場合は、会社の利益や経営の安定性を十分に考慮した上で決定することが重要です。
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役員報酬をゼロにした場合の社会保険はどうなる?
法人を設立した場合、多くの人が気にするのが社会保険の問題です。基本的に法人設立後は社会保険に加入する義務がありますが、役員報酬がゼロであれば、支払い対象となる報酬がないため、社会保険への加入義務は発生せず、社会保険料もゼロとなります。
一方で、副業として法人を設立し、役員報酬を受け取る場合は、その報酬額に応じて社会保険料が算出されます。この場合、本業に法人設立を内緒にしている人は特に注意が必要です。2社以上で社会保険に加入する場合、年金事務所に報告する必要があり、役員報酬を含む新たな保険料が算出されることになります。
年金事務所は、本業での給与と設立した会社での役員報酬を按分して新しい社会保険料を計算し、その金額を本業の会社にも通知します。この仕組みのため、本業に法人設立が知られてしまうリスクが生じます。このような事態を避けるために、あえて役員報酬をゼロに設定することで、本業への影響を防いでいる会社員も少なくありません。
役員報酬をゼロにする選択肢は、社会保険料の負担や本業との兼ね合いを考えた上での一つの戦略と言えます。ただし、役員報酬の設定には慎重な検討が求められるため、専門家に相談することが推奨されます。
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役員報酬をゼロにするメリット
役員報酬をゼロにすることは、会社のためとはいえ、役員にとって大きな決断です。しかし、この選択にはさまざまなメリットがあるため、慎重に検討する価値があります。以下では、役員報酬ゼロのメリットについて詳しく考察します。
役員報酬ゼロにするメリット①:会社の収益増加
創業当初は売上が安定しないことが多く、会社の出費を極力抑える必要があります。その中で、役員報酬ゼロという選択は、会社の支出を削減し、運転資金を確保するための有効な手段です。
特に創業1期目で黒字決算を達成できれば、金融機関や取引先からの信用が向上し、融資が受けやすくなります。結果として、資金繰りの安定が期待でき、会社の未来を支える財務基盤を強化することが可能です。
役員報酬ゼロにするメリット②:個人の税金・社会保険料負担の軽減
役員報酬ゼロにすると、役員個人の税金や社会保険料の負担を大幅に抑えることができます。通常、役員報酬が発生すると社会保険への加入義務が生じ、報酬額に比例して保険料も増加します。また、所得税や住民税も報酬額に応じて高くなります。
一方で、役員報酬ゼロの場合、社会保険の加入要件を満たさないため、会社として役員分の社会保険料を負担する必要がなくなります。その結果、会社に残る資金が増え、運営に余裕が生まれます。
気をつけておきたい注意点
ただし、役員個人としては国民健康保険や国民年金への加入が必要となり、その分の負担は発生します。
役員報酬ゼロにするメリット③:会社の将来のために資金を確保
役員報酬ゼロによる資金繰りの安定化により、会社に残るお金を増やすことができます。この資金を活用して、会社や従業員に還元するための投資を行うことで、経営の安定化や成長を目指すことが可能です。
以下は、会社の資金を有効活用する具体的な方法です。
- 中小企業退職金共済制度(中退共)
従業員の退職金積立制度。事業主が掛金を拠出し、従業員の退職時に退職金が直接支払われる仕組みです。国の補助があるため、会社にとって負担が軽減されます。 - 倒産防止共済
取引先が倒産した場合に備える共済制度。無担保・無保証人で掛金の最大10倍まで借り入れが可能で、経営のリスクを軽減します。 - 生命保険への加入
役員に万が一のことがあった場合の資金確保として、生命保険に加入することが有益です。解約返戻金を活用することで、退職金や設備投資資金として利用することも可能です。
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役員報酬をゼロにするデメリット
役員報酬をゼロにすることには、メリットだけでなく注意すべきデメリットも存在します。ここでは、役員報酬ゼロの主なデメリットについて詳しく解説します。
役員報酬をゼロにするデメリット①:金融機関や取引先の信用を失うリスク
役員報酬ゼロは、第三者にネガティブな印象を与える可能性があります。特に金融機関から融資を受けたい場合、この点は重要です。
融資の際には決算書を提出しますが、金融機関の担当者が役員報酬ゼロの状況を確認すると、「どのように生活しているのか」「役員報酬をゼロにしなければならないほど経営が厳しいのではないか」などと疑念を抱かれる恐れがあります。このような印象は、融資審査にマイナスの影響を与える可能性があります。
また、取引先からも安定性のある会社と見なされることが取引継続の条件です。信用調査会社による調査結果においても、役員報酬ゼロは好印象を与えにくいため、取引の妨げになることがあります。
役員報酬をゼロにするデメリット②:社会保険に加入できない
役員報酬ゼロにすることで、税負担や社会保険料負担が軽減される一方で、社会保険に加入できなくなる点は大きなデメリットです。
社会保険に加入しない場合、役員は国民健康保険と国民年金に加入することになります。健康保険については社会保険との保障内容に大差はありませんが、年金に関しては違いが顕著です。
日本の年金制度は「1階部分(国民年金)」と「2階部分(厚生年金)」で構成されています。役員報酬ゼロの場合、厚生年金には加入できないため、支給事由(老齢や障害など)が発生した際に受け取れるのは1階部分(国民年金)のみです。これにより、社会保険に加入している場合と比較して将来的な保障内容が薄くなる点は見逃せません。
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役員報酬をゼロにするデメリット③:法人税負担の増加の可能性
役員報酬ゼロは、会社にお金を残すための手段として有効に見えますが、結果的に税負担の増加を招くリスクがあります。
役員報酬ゼロにすると、会社の経費として計上できる支出が減り、その分収益が増加します。この増加分が法人税の課税対象となるため、納税額が増える場合があります。一方、役員個人に報酬を支払った場合には、報酬額に応じた所得税と住民税が発生します。
これらをトータルで比較すると、役員報酬ゼロの方が会社と個人の合計税負担が大きくなるケースもあります。このため、法人税と個人所得税のバランスを考慮し、税負担を最小限に抑えるための適切な役員報酬の設定が求められます。
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役員報酬を決める際の注意点
役員報酬をゼロにするデメリットを強く感じる場合、会社設立時にしっかりと役員報酬の金額を決めることが重要です。以下では、役員報酬を決定する時期や方法について詳しくご紹介します。
役員報酬を決める際の注意点①:起業1年目は役員報酬を設立から3カ月以内に決める
起業して1年目は、会社設立日から3カ月以内に役員報酬を決定する必要があります。この期間内に決めなければ、役員報酬を損金として計上できなくなるため注意が必要です。特に、創業時に役員報酬ゼロを検討している場合でも、この期間内にゼロと明記しておくことが求められます。
一度役員報酬の金額を設定すると、原則として1年間は固定されます。ただし、事業年度ごとに金額の変更は可能です。しかし、その変更が認められるのは事業年度開始から3カ月以内に限られます。頻繁に変更ができるわけではないため、創業時点から慎重に検討することが求められます。
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役員報酬を決める際の注意点②:役員報酬は定款または株主総会で決める
会社法では、役員報酬を定款に定めるか、株主総会での決議によって決める必要があります。多くのスタートアップや中小企業では、定款に役員報酬を明記していない場合が一般的で、その場合は株主総会で決定します。
株主総会では役員報酬の総額が決定されることが多く、各役員の具体的な配分は取締役会や取締役の判断に委ねられることがあります。役員報酬ゼロを採用する場合でも、株主総会の議事録にその旨を記載し、適切に保存しておくことが税務調査への対応として重要です。
役員報酬を決める際の注意点③:役員賞与には届け出が必要
役員報酬ゼロの方針を採る場合でも、賞与を支給することは可能です。ただし、賞与を経費として損金計上するには、事業年度開始の2カ月以内に税務署に届け出る必要があります。この手続きがなければ、支給された賞与は損金計上の対象外となり、結果として節税メリットが得られません。
SoVa税理士お探しガイド編集部
役員報酬を適切に経費計上すれば、法人所得が減少し法人税の削減につながります。創業時や想定外の利益が出た場合でも、税務上の不利益を避けるために、事前の計画と手続きが重要です。
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まとめ
今回の記事では、役員報酬をゼロにするにあたってのメリットとデメリットを詳しく解説しました。
役員報酬をゼロに設定することで、会社の運転資金に余裕を持たせ、事業拡大や将来への投資に充てることが可能となります。特に、創業間もない時期や資金繰りが厳しい状況では、役員報酬ゼロは事業を守るための有効な手段と言えるでしょう。
しかし、一方で役員報酬をゼロにすることには注意すべき点もあります。収益が会社に残る分、法人税の増加につながる可能性があるほか、金融機関や取引先から「役員報酬ゼロ」を不安視され、信用面に影響が及ぶ場合も考えられます。
また、役員報酬の金額は一度設定すると、変更には株主総会での決議など煩雑な手続きが必要です。急に状況が変わり、役員報酬ゼロを見直したい場合でも、すぐに対応できないリスクがあります。
役員報酬ゼロを検討する際には、会社の財務状況や成長計画、税金面での影響を十分に考慮しましょう。専門家、特に税理士や経営コンサルタントに相談することで、より適切な判断が可能になります。安易に決定するのではなく、慎重な検討を重ね、会社の状況に合った役員報酬の設定を目指してください。
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