役員報酬で節税するには?税金の負担を軽減する具体的な要件と注意点を解説!

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公開日:2024年9月

更新日:2024年11月23日

会社経営において、法人税や所得税、住民税などさまざまな税金が課されます。そのため、税金負担の高さや節税方法について悩む経営者は少なくありません。もし税金を節税したいと考えているなら、役員報酬の見直しに着目してみましょう。

この記事では、役員報酬を活用した節税対策について詳しく解説します。経営者として税金の負担を軽減したいと考えている方は、ぜひご参考にしてください。

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役員報酬の基礎知識

役員報酬を増やすことで、会社の利益を圧縮し、節税効果を期待することができます。ただし、確実に節税できるわけではありません。効果的な節税対策を行うためにも、まずは役員報酬の基本について理解しておくことが重要です。

そもそも役員報酬とは?

役員報酬とは、会社の経営に重要な役割を担う役員に支払われる報酬です。役員には、取締役、執行役、監査役、会計参与などが該当します。

会社が支払うお金には、役員報酬以外に従業員に対する給与もあります。従業員は雇用契約に基づき給与を受け取りますが、役員は雇用契約を結ばないため、役員報酬という形式で支給されます。

役員報酬には、税務上の不正を防ぐために厳しいルールが設けられており、その主な規則は以下のとおりです。

  • 毎月定額で支払うこと
  • 会社設立後3カ月以内に役員報酬を決定すること
  • 役員報酬の変更は事業年度開始から3カ月以内に行うこと
  • 賞与を支給する場合は、事前に税務署に届出をすること

役員報酬の決定方法

役員報酬の金額は、役員が自由に決められるものではなく、会社の定款や株主総会で決議されます。多くの会社では、定款に詳細が記載されておらず、株主総会で役員報酬の総額を決定するケースが一般的です。

税金の負担を軽減するにあたって、役員報酬を損金算入するためには、株主総会や取締役会の議事録が必要です。この議事録は税務調査で確認されるため、必ず保管しておくことが重要です。

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役員報酬の相場

2020年の国税庁「民間給与実態統計調査」によると、役員報酬の相場は資本金により異なり、以下の通りです。

資本金 男性の平均役員報酬 女性の平均役員報酬
2,000万円未満 667万円 375万円
2,000万円以上 972万円 493万円
5,000万円以上 1,177万円 634万円
1億円以上 1,397万円 635万円
10億円以上 1,502万円 608万円

女性の役員報酬が少ない背景として、しばしば社長の配偶者が役員報酬を受け取るケースが考えられます。なお、役員報酬が過度に高額になると、税務署から損金として認められない場合があるため注意が必要です。

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役員報酬と各種税金

企業に課される税金には、法人税、所得税、住民税など様々な税金があります。役員報酬の額はこれらの税金に影響を与えるため、税金を軽減したい場合は、役員報酬と各種税金とのバランスを考慮する必要があります。

役員報酬と法人税のバランス

各種税金の中でも、法人税は「税引前当期純利益 × 法人税率」で計算されます。役員報酬が多いと利益が圧縮され、結果として法人税が軽減されますが、逆に役員報酬が少ないと法人税の負担が増える仕組みです。資本金1億円以下の法人に適用される法人税率は以下の通りです。

税金の種類 標準税率
法人税 23.4%
地方法人税 4.4%
法人住民税 12.9%
事業税 9.59%

役員報酬と所得税・住民税のバランス

役員報酬は所得として扱われるため、所得税が課せられます。各種税金の中でも、所得税の税率は累進課税制度に基づき、5%から45%まで7段階に分かれています。

課税所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円以上330万円以下 10% 9万7,500円
330万円以上695万円以下 20% 42万7,500円
695万円以上900万円以下 23% 63万6,000円
900万円以上1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円以上4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

SoVa税理士お探しガイド編集部

役員報酬が低ければ、所得税の負担も軽減されます。

役員報酬と社会保険料のバランス

社会保険料も、役員報酬の額に比例して増加します。役員報酬の額を減らせば社会保険料の負担も軽減できます。保険料は「標準報酬月額 × 保険料率」で計算され、標準報酬月額は5万8,000円から139万円まで50段階に分けられています。

各種税金とのバランスを考えずに役員報酬を決定すると、税金の負担を軽減するどころか、総合的には税金や保険料の負担が増えてしまうケースもあるので、役員報酬を決める際には注意が必要です。

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役員報酬で税金を節税するための要件

役員報酬は、一定の条件を満たす支払い方法であれば、経費として認められ、損金に算入できます。これによって税金の負担を軽減することができる可能性があります。しかし、一般的には役員報酬は従業員の給与のように経費扱いされず、損金に含まれないことが原則です。

会社の所得は、売上や資産の売却から得た利益に対して、売上原価や販売費などの損金を差し引いた額であり、法人税を計算する基礎となるものです。したがって、役員報酬が損金として認められると、損金が増えて所得が減少し、節税効果が得られます。

気をつけておきたい注意点

税理士
        _依頼_おすすめの注意点

逆に、役員報酬が損金に含まれない場合、支出は実際に行われているにもかかわらず経費として計上されないため、税金の負担が増加する可能性があるので注意が必要です。

損金算入の定義

税法上の損金算入とは、経費として認められることを意味します。経費とは、事業活動に関連して支出された費用であり、法人税を算出する際に税法上の経費として認められるものを損金と呼びます。

会計上では、事業に必要な支出は基本的に経費とされます。しかし、税法上では、実際に事業に使ったとしても課税の公平性を保つために、経費とみなされないものもあります。

役員報酬は、会計上は経費として扱われても、税法上は損金と認められない場合があります。仮に役員報酬が無条件で損金に算入できると、経営者が節税対策で役員報酬を自由に調整し、法人税額を不当に低く抑えることが可能となるため、これを防ぐための要件が設けられています。

損金算入可能な役員報酬の支払い方法

税法上、損金として認められる役員報酬には以下の3種類があり、それぞれの条件を満たす場合にのみ損金算入が認められます。役員報酬で税金の負担を軽減したい場合には、以下の支払い方法を選択するようにしましょう。

定期同額給与

定期同額給与とは、役員に対して毎月同じ金額を一定の期間ごとに支給する給与のことです。これは、一般的な従業員の給与に似ていますが、事業年度内は毎月の支給額を変えることは原則として認められていません。そのため、たとえ残業が発生しても、支給額を増やすことはできません。

事前確定届出給与

役員が受け取るボーナスなどの臨時的な収入は、原則として経費には含まれません。しかし、事前に支給額と支給日を税務署に届け出ることで、これを経費として損金に計上することが可能です。

業績連動給与

業績連動給与は、上場企業でよく見られる役員報酬の制度で、企業の業績や株価に応じて役員報酬を支給します。これにより、役員が企業の成長に貢献するインセンティブを持つことを目的としています。

役員報酬の節税に関する注意点

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        _依頼_おすすめの注意点

ただし、同族会社ではこの業績連動給与を経費として損金に算入することが認められていないため、注意が必要です。

役員報酬で税金を節税する方法に関するおすすめ記事:役員報酬で節税する方法とは?シミュレーションや注意点も解説!

役員報酬を経費(損金)算入できるかの基準

役員報酬が適切であれば、株主総会の決議などにより金額に制限はありません。しかし、税務調査で過大と判断された場合は、損金算入が認められないことがあります。その基準には以下の2つがあります。

実質基準

実質基準では、役員の職務内容や会社の状況を基に、役員報酬が適切かどうかが判断されます。同業他社と比較して極端に高い場合、損金不算入となる可能性があります。主に次の4点が比較されます。

  • 役員の職務内容
  • 会社の収益状況
  • 社内での従業員の給与支給状況
  • 同業・同規模の他社での役員報酬の状況

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形式基準

形式基準では、定款や株主総会の決議内容に基づき役員報酬が判断されます。例えば、定款や総会で定められた役員報酬の総額を超えている場合、超過分は過大とされ損金不算入となります。

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役員報酬で税金を節税するためのテクニック

節税方法を検討していても、どのように実行すればよいか悩む方もいるでしょう。節税にはいくつかの手法があります。以下の例を参考にしながら、税金の負担を軽減する工夫を実践してみてください。

税金を節税するためのテクニック①:配偶者を役員にする

節税の代表的な方法の一つが、配偶者を役員に任命することです。所得税は累進課税制で、所得が増えるほど税率が高くなります。したがって、1人に高額な役員報酬を支払うより、配偶者と収入を分けた方が税率を低く抑えることができます。

たとえば、社長1人に1,500万円の報酬を支払うと、税金や保険料で約554万円の負担が必要です。しかし、配偶者と報酬を分け、社長に900万円、配偶者に600万円支払うと、合計で税金や保険料は約320万円の負担となり、約233万円の節税が可能になります。結婚している場合は、配偶者を役員にすることで節税効果が見込めるでしょう。

税金を節税するためのテクニック②:親族を役員に任命する

さらに節税効果を得るためには、子どもを役員にする方法もあります。たとえば、社長1人に2,000万円の役員報酬を支払うと、税金や保険料で約751万円の支払いが必要です。しかし、社長に1,100万円、配偶者と子ども2人にそれぞれ300万円を支払うと、税金や保険料の負担は約506万円に減少し、245万円の節税効果が得られます。この方法は、兄弟や親戚にも適用できる場合があります。

税金を節税するためのテクニック③:通勤手当を役員報酬とは別に支給する

手軽にできる節税対策として、通勤手当の支給があります。役員であっても、従業員と同様に通勤手当を支給できるため、節税につながります。たとえば、50万円の役員報酬から2万円の通勤手当を差し引き、48万円に変更することで、所得税や住民税などの税金を減らすことが可能です。

SoVa税理士お探しガイド編集部

公共交通機関や自家用車で通勤している場合は、ぜひ活用してみると節税効果を見込めるでしょう。

税金を節税するためのテクニック④:住居の契約を会社名義に変更する

役員社宅制度を利用して節税を図るのも有効な方法です。役員が住む住居を会社名義に変更することで、毎月の賃料相当額を役員報酬から差し引くことができ、節税効果を得られます。ただし、住居の大きさによっては節税効果が薄れる場合があるため、面積にも注意が必要です。

税金を節税するためのテクニック⑤:倒産防止共済(経営セーフティ共済)の活用

倒産防止共済は、経営のリスクに備えるための制度で、年間240万円まで損金算入が可能です。掛金は5,000円から20万円まで自由に設定でき、総額800万円まで積み立てられます。共済金と同額を役員報酬から差し引くことで、税金の負担を軽減できます。万が一に備えるためにも、加入を検討してみてください。ただし、事業開始から1年未満の企業は加入できません。

税金を節税するためのテクニック⑥:小規模企業共済の利用

小規模企業共済は、役員や個人事業主のための退職金制度で、年間84万円まで所得控除が可能です。掛金は1,000円から7万円の範囲で設定でき、業績に応じて増減が可能です。退職や廃業時に共済金が支給され、掛金の範囲内で貸付制度も利用できるため、節税対策はもちろん、資金繰りにも役立ちます。

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役員報酬で税金を節税したいときの注意点

節税にあたって役員報酬を決定する際には、以下の3点に注意しましょう。

節税にあたっての注意点①:法人と個人の税負担バランスを考慮する

法人税や法人事業税、個人の所得税など、税金の負担は法人と個人のバランスを見ながら決めることが重要です。役員報酬を増やすと法人の税金負担は減る一方、個人の所得税が増えるため、両者のバランスをよく考えて役員報酬を設定しましょう。

節税にあたっての注意点②:急激な売上増加による税金の負担増を想定する

売上が急増すると、税金の納税額も増加します。年度途中で役員報酬の変更はできないため、事業年度開始から3カ月以内に役員報酬の額を決定する必要があります。正確な資金計画を立て、急な売上変動にも備えておきましょう。

節税にあたっての注意点③:高額報酬が経費として認められない場合

役員報酬が過剰に高いと、形式基準や実質基準によって経費として認められない場合があります。損金算入されないと税金の負担が増えるため、節税効果が得られないばかりか、さらなるコスト増の原因となるので注意が必要です。

気をつけておきたい注意点

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        _依頼_おすすめの注意点

税金の負担を軽減するにあたって、役員報酬を決定する際には上記の注意点を参考に、慎重に検討するようにしましょう。

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まとめ

役員報酬を決める際には各種税金とのバランスを考慮したり、配偶者や親族を役員に就任させるなどすることで、節税効果が見込めます。

しかし、万が一損金算入ができなければ税金の負担が多くなり、生活に支障が出る恐れもあります。また、役員報酬は適正な水準で設定する必要があり、正しい知識を持つことが大切です。

本記事の節税するための方法や税金の負担を軽減するにあたっての注意点を参考に、自社にあった役員報酬の設定、または見直しをおすすめします。

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