フレックスタイム制とは?メリットやデメリット、フレックスタイム制が普及しない理由を解説
近年、多様な働き方が注目される中で「フレックスタイム制」は大きな注目を集めています。フレックスタイム制のメリットとしては、従業員自身が始業時間や終業時間を柔軟に決められることによって、ワークライフバランスの向上や通勤ストレスの軽減、育児や介護との両立のしやすさなどが挙げられます。企業にとっても、従業員のモチベーション向上や生産性の向上など、導入するメリットは多岐にわたります。
一方で、フレックスタイム制のデメリットも見逃せません。勤怠管理の煩雑化、社内コミュニケーションの不足、業務連携の難しさ、そして顧客対応の遅れなど、制度の運用にともなう課題も数多く存在します。これらのデメリットが、制度の導入をためらう企業にとっての障壁となっています。
特に日本では、欧米諸国と比較してフレックスタイム制の普及率が低く、その背景には「制度の運用ノウハウの不足」や「労働時間管理への不安」、「従来の働き方に対するこだわり」など、さまざまな要因が絡み合っています。フレックスタイム制が普及しない理由を理解するには、制度のメリットとデメリットを正しく把握し、それぞれの企業文化や業種に合った導入のあり方を検討する必要があります。

「フレックスタイム制のメリットとデメリット」編集部
本記事では、フレックスタイム制の定義や仕組みから、導入することで得られるメリット、直面する可能性のあるデメリット、そして制度がなぜ日本で普及しないのかまでを、わかりやすく解説します。
目次
フレックスタイム制とは?基本的な仕組みを解説
フレックスタイム制とは、企業が設定した一定期間の総労働時間の範囲内で、労働者が始業時間・終業時間を柔軟に決められる制度です。決まった日数・時刻に縛られないため、自身のスケジュールやライフスタイルに合わせて働くことができます。
たとえば、1か月の総労働時間が160時間であれば、ある日は10時間、別の日は5時間というように、1日ごとの勤務時間にバラつきがあっても問題ありません。このように働き方の自由度が高まることが、フレックスタイム制の大きなメリットとされています。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関するおすすめ記事

フレックスタイム制の導入に伴うメリットとデメリットに関して、以下の記事も参考になるでしょう。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関する参考記事:「フレックスタイム制とは? 目的・仕組みからメリット・デメリットまで解説」
フレックスタイム制の基本構造:「コアタイム」と「フレキシブルタイム」
フレックスタイム制では、企業側が「コアタイム」と呼ばれる全従業員が必ず勤務する時間帯を設定することが一般的です。この時間帯は、会議や打ち合わせ、チームでの情報共有など、業務を円滑に進めるために欠かせないものです。
一方で、「フレキシブルタイム」では、労働者が出勤・退勤時間を自由に設定できるため、プライベートの予定に応じて働き方を調整できます。

画像引用:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」
より自由な形として、コアタイムすら設けない「スーパーフレックスタイム制」を導入している企業もあり、これは完全に労働者の裁量に任せた形です。
このように柔軟性が高いことはフレックスタイム制の代表的なメリットですが、同時に勤務時間管理や業務連携の面でのデメリットも存在します。
フレックスタイム制の目的とは?

フレックスタイム制の目的は、労働者の事情やライフスタイルに応じた働き方を実現することで、仕事とプライベートの両立を支援することにあります。
出勤時間を早めて子どもの迎えに間に合わせたり、通院や勉強の予定に合わせて退勤時間を調整したりすることも可能です。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関する参考記事:「フレックスタイム制とは?メリット・デメリット、注意点について解説」
また、社員のモチベーションが上がり、生産性向上にもつながります。企業としても、優秀な人材の確保・定着率の向上というメリットが期待できます。
さらには、通勤ラッシュの回避や無駄な残業の削減といった点も、企業と従業員の双方にとって有益なメリットとなります。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関するポイント!

フレックスタイム制のメリットは、従業員が自分の生活リズムや家庭環境に合わせた働き方を選べる点にあります。

「フレックスタイム制のメリットとデメリット」編集部
運用には正確な勤怠管理や社内連携の工夫が必要なため、一定のデメリットもある制度です。
フレックスタイム制と裁量労働制の違い
働き方改革が進む中で、「フレックスタイム制」や「裁量労働制」といった柔軟な労働制度に注目が集まっています。どちらも時間に縛られない働き方を実現できる制度ですが、フレックスタイム制のメリット・デメリットと、裁量労働制のメリット・デメリットには大きな違いがあります。
比較項目 | フレックスタイム制 | 裁量労働制 |
---|---|---|
労働時間の決定方法 | 従業員自身が日ごとの労働時間を調整 (清算期間内で調整) |
労使協定で決めた「みなし労働時間」で一律計算 |
メリット | 出退勤時間を柔軟に調整できる 残業削減 ストレス軽減 |
裁量に基づいた働き方 勤務時間に縛られない |
デメリット | 勤怠管理が煩雑 連携不足 顧客対応のズレ 時間外労働の管理が難しい |
労働時間の実態把握が困難 サービス残業のリスク 導入手続きが煩雑 |
導入対象職種 | 制限なし (一般社員~管理職まで適用可能) |
限定的 (研究、開発、企画など特定の職種に限る) |
残業代の扱い | 清算期間を超えた時間は残業扱い (時間外手当あり) |
法定労働時間を超えると残業代が発生 (深夜・休日は割増) |
労基署への届け出 | 清算期間が1か月超の場合に届け出が必要 | 労使委員会決議と労基署への届け出が必須 |
フレックスタイム制の最大のメリットは、労働者が始業時間や終業時間を自由に決められる点にあります。これにより、家庭との両立やワークライフバランスの実現がしやすくなり、ストレスの少ない働き方が可能になります。また、無駄な残業の削減や、ライフスタイルに合わせた効率的な勤務ができる点も、フレックスタイム制の大きなメリットといえるでしょう。
しかしながら、フレックスタイム制にはデメリットも存在します。勤務時間がバラバラになることで、社内のコミュニケーションやチーム連携が取りづらくなる可能性があり、業務の効率が下がることもあります。また、勤怠管理が煩雑になりやすく、時間外労働の計算が複雑になる点も、フレックスタイム制のデメリットとして注意が必要です。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関するおすすめ記事

フレックスタイム制の導入に伴うメリットとデメリットに関して、以下の記事も参考になるでしょう。
「フレックスタイム制とは?メリット・デメリットや導入手順・注意点を解説」
一方で、裁量労働制はフレックスタイム制と異なり、あらかじめ定めた「みなし労働時間」で賃金を計算します。これは、労働時間の実績に関係なく一定時間を働いたとみなす制度で、研究職やクリエイティブ職など、一定の職種に限って適用されるのが特徴です。
裁量労働制のメリットは、自分の裁量で業務を進められる自由度の高さにあります。ただし、裁量労働制にもデメリットはあります。例えば、労働時間の可視化が難しいため、過重労働やサービス残業を招きやすい点には注意が必要です。
フレックスタイム制のメリット
近年、柔軟な働き方が求められる中で注目を集めているのが「フレックスタイム制」です。従来の固定的な勤務時間とは異なり、フレックスタイム制を導入することで得られるメリットは、企業・従業員の両方に多岐にわたる恩恵をもたらします。

「フレックスタイム制のメリットとデメリット」編集部
ここでは、フレックスタイム制のメリットを視点別に詳しく紹介し、その活用方法や導入効果について深掘りしていきます。
フレックスタイム制のメリット①
フレックスタイム制の最大のメリットは「時間の自由」
フレックスタイム制の最大のメリットは、働く人が自身の生活スタイルに合わせて出社・退社の時間を選べることです。これは、育児・介護・自己啓発など、ライフスタイルの多様化に伴う個別のニーズに応える働き方として、非常に大きなメリットです。
「朝の通勤ラッシュを避けたい」「午後に家族の通院付き添いがある」「朝型の生活で午前中に集中したい」といった、個々の希望に対応できる点は、まさにフレックスタイム制の大きなメリットといえるでしょう。

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フレックスタイム制のメリット②
メリットを活かせば従業員満足度と生産性が向上
フレックスタイム制のメリットとして、生産性の向上も見逃せません。集中しやすい時間帯を自ら選んで働けるため、パフォーマンスが最大限に引き出され、結果として業務効率が大幅に向上します。これは企業側にとっても大きなメリットです。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関する参考記事:「フレックスタイム制のメリット・デメリットとは?注意点や導入フローをあわせて解説」
また、フレックスタイム制の導入は、従業員のストレス軽減や離職防止にもつながるメリットがあります。決まった時間に縛られず働けることで、心理的な余裕が生まれ、ワークライフバランスの改善にも直結します。

フレックスタイム制のメリット③
採用競争力の向上というフレックスタイム制のメリット
柔軟な勤務体系を提供することにより、企業の採用競争力も高まります。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関するポイント!

現代の求職者は「働きやすさ」や「ライフスタイルとの両立」を重視しており、フレックスタイム制を導入している企業は、その点で明確なメリットを持っています。
特に子育て世代や介護中の人材にとって、フレックスタイム制のメリットは大きく、応募動機にも直結します。これにより、優秀な人材が集まりやすくなるというのも、企業側にとってのフレックスタイム制の大きなメリットです。
フレックスタイム制のメリット④
無駄な残業削減もフレックスタイム制の重要なメリット
フレックスタイム制の導入によるメリットの一つとして、残業の削減も挙げられます。業務のピーク時間に合わせて働くことができるため、不要な待機時間や、定時に縛られた非効率な労働が減少します。これにより、従業員の働き方が合理化されるメリットが生まれ、同時に企業の人件費負担の軽減にもつながります。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関するおすすめ記事

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フレックスタイム制のメリットとデメリットに関する参考記事:「フレックスタイム制とは?企業側のデメリット・対策やメリットを紹介」
フレックスタイム制のメリット⑤
通勤ストレスの軽減というメリット
フレックスタイム制のメリットには、通勤ストレスの軽減も含まれます。満員電車や通勤ラッシュを避けた時間に出社できるため、心身の負担が大きく軽減されます。これにより、従業員の体調管理や健康維持にも良い影響を与え、企業にとっても健康経営の観点からメリットがある制度と言えるでしょう。
フレックスタイム制のデメリット
柔軟な働き方の一環として注目されているフレックスタイム制ですが、すべての企業や職種にとってメリットばかりとは限りません。むしろ、導入後に発生するデメリットによって、業務効率や職場環境に悪影響を及ぼす可能性もあります。

「フレックスタイム制のメリットとデメリット」編集部
ここでは、フレックスタイム制のデメリットをより具体的に、わかりやすく整理してご紹介します。
フレックスタイム制のデメリット①
自己管理が難しい従業員には逆効果
フレックスタイム制のデメリットとして最初に挙げられるのが、従業員の自己管理能力に差が出ることです。出勤や退勤の時間が自由になることで、時間管理に自信のある人にとっては生産性向上というメリットがありますが、自己管理が苦手な人にとっては、むしろ業務のペースが乱れ、生産性が低下するというデメリットが顕著になります。特に若手社員や新入社員の場合は、一定のリズムがあったほうが業務に集中しやすく、フレックスタイム制の自由さが働きづらさというデメリットになりかねません。
フレックスタイム制のデメリット②
社内の連携が取りづらくなる

フレックスタイム制のもう一つの大きなデメリットは、社内コミュニケーションの不足です。勤務時間が社員ごとにバラバラになるため、会議や情報共有のタイミングが合わせにくく、チームワークが崩れるおそれがあります。
このようなフレックスタイム制のデメリットは、プロジェクト単位で業務を進める企業にとって深刻な問題となるでしょう。

「フレックスタイム制のメリットとデメリット」編集部
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関して、以下のサイトも是非ご覧ください。
「フレックスタイム制を導入する5大デメリット!メリットも解説」
結果的に、「自由に働ける」というフレックスタイム制のメリットが、「意思疎通のズレによる業務遅延」というデメリットに転じるケースも少なくありません。
フレックスタイム制のデメリット③
顧客対応や外部との連絡に支障が出る
フレックスタイム制を導入するデメリットには、顧客や取引先への対応面の問題もあります。例えば、担当者が午後から出勤する勤務スタイルの場合、午前中に顧客から連絡があっても対応できないというケースが発生します。これは顧客満足度の低下につながる重大なデメリットです。
フレックスタイム制の自由さが、顧客や外部との時間的ギャップを生み出し、信頼性を損なうというデメリットを引き起こす可能性がある点には注意が必要です。

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フレックスタイム制のデメリット④
勤怠管理が複雑化し、制度疲労が生じやすい
フレックスタイム制のデメリットの中でも見落とされがちなのが、勤怠管理の煩雑化です。定時勤務であれば、出退勤の把握や残業時間の管理はシンプルですが、フレックスタイム制では各従業員の就業パターンが異なるため、管理部門の負担が増大するデメリットがあります。時間外労働の管理や給与計算が複雑になり、人事・労務部門では対応コストや人的ミスのリスクも高まります。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関する気をつけておきたい注意点

システム変更が必要になるというデメリットも考慮しなければなりません。
フレックスタイム制のデメリット⑤
オフィス運営コストが増加する可能性も
一見すると関係なさそうに思えるかもしれませんが、フレックスタイム制の導入には光熱費などのコスト増加というデメリットもあります。従業員が常に誰かしらオフィスにいる状態になることで、照明や空調の稼働時間が延び、電気代などの間接コストが増加するデメリットが生じます。とくに中小企業では、少しの固定費の上昇も経営に直結するため、フレックスタイム制のコスト面でのデメリットは見逃せない問題です。
フレックスタイム制の導入前にはデメリットの把握が不可欠
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関するおすすめ記事

フレックスタイム制の導入に伴うメリットとデメリットに関して、以下の記事も参考になるでしょう。
「フレックスタイム制の導入で実現する柔軟な働き方とは?メリット・デメリットを徹底解説!」
フレックスタイム制は、「柔軟で働きやすい職場づくり」という観点で一定のメリットがある一方、実際の運用では多くのデメリットが浮き彫りになります。とくに普及が進まない背景には、こうしたフレックスタイム制のデメリットを現場が受け入れきれないという事情も関係しています。
導入に際しては、業務内容や社風、顧客対応の必要性などを踏まえて、フレックスタイム制のデメリットを最小限に抑える工夫が必要です。
フレックスタイム制が普及しない理由
柔軟な働き方として注目されるフレックスタイム制ですが、日本ではなかなか普及しない現実があります。フレックスタイム制には多くのメリットがあるものの、その導入が進まず普及しない背景には、企業や制度上のさまざまな課題が存在しています。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関する参考記事:「フレックスタイム制とは?メリット・導入の流れ・企業の成功事例を解説」

「フレックスタイム制のメリットとデメリット」編集部
この章では、フレックスタイム制が普及しない理由について、企業側の視点や制度整備の負担、そしてコミュニケーションへの影響など、具体的な側面から詳しく解説します。
フレックスタイム制が普及しない理由①
企業側の運用の難しさが、フレックスタイム制が普及しない一因
フレックスタイム制のメリットは、従業員が始業・終業時間を柔軟に調整できる点ですが、その運用は企業にとって大きな負担となることがあります。勤務時間を社員ごとに把握し、適切に勤怠管理を行う必要があるため、従来の固定時間制と比べて運用が複雑になります。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関する気をつけておきたい注意点

また、従業員による自己管理が前提となるため、生産性にばらつきが出やすくなり、業務効率の低下というデメリットを招くおそれもあります。
このような理由から、フレックスタイム制は普及しないという判断をする企業も少なくありません。

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この記事では、アルバイトやパートに対する有給付与の詳細や、有給休暇取得時の賃金計算方法、さらに有給付与に関する注意点について詳しく解説します。アルバイトの有給付与に関する正しい知識を身につけ、適切な運用を行いましょう。
フレックスタイム制が普及しない理由②
労使協定・就業規則の整備が必要な背景

「フレックスタイム制のメリットとデメリット」編集部
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関して、以下のサイトも是非ご覧ください。
「フレックスタイム制とは?メリット・デメリットや導入の注意点をわかりやすく解説!」
日本の企業がフレックスタイム制を普及しないもう一つの要因は、制度導入に必要な労使協定や就業規則の整備がハードルになっている点です。フレックスタイム制を法的に導入するには、清算期間の設定や労働時間の規定などを明記した労使協定の締結が不可欠です。
特に中小企業では、制度設計に必要な人員や知識が不足しているケースも多く、「制度は魅力的だが導入の手間が大きすぎる」と判断され、結果としてフレックスタイム制が普及しない傾向に拍車をかけています。整備が必要な条件の多さが、導入を妨げているとも言えます。
フレックスタイム制が普及しない理由③
コミュニケーション不足がもたらす影響

フレックスタイム制のデメリットとしてよく挙げられるのが、社内外のコミュニケーション不足です。社員ごとに出社・退社時間が異なることで、リアルタイムの会話や会議のタイミングを合わせることが難しくなります。
このコミュニケーションの齟齬は、チームワークの低下や意思決定の遅れを招くことになり、企業の生産性にも影響を及ぼします。その結果、「フレックスタイム制のメリットよりもデメリットの方が大きい」と判断されてしまい、制度が普及しない大きな原因のひとつとなっています。
フレックスタイム制が普及しない理由④
フレックスタイム制が普及しないのは、日本独自の企業文化も背景に
そもそも日本では「全員が同じ時間に働くことが望ましい」という企業文化が根強く、変化への抵抗感があることも、フレックスタイム制が普及しない理由です。海外と比較しても導入率が低く、柔軟な働き方の導入に対する慎重な姿勢が目立ちます。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関する気をつけておきたい注意点

制度上の条件をクリアしたとしても、「制度に対する理解不足」や「公平性への懸念」が払拭できなければ、フレックスタイム制は企業全体に普及しないままの状況が続くといえるでしょう。
フレックスタイム制を導入する際の注意点
フレックスタイム制は、働き方の柔軟性を高めるメリットが多く注目されている一方で、制度設計や運用を誤ると法令違反やトラブルの原因となるデメリットも存在します。以下では、フレックスタイム制のメリットをしっかり活かしつつ、デメリットを回避するための注意点を詳しく解説します。
フレックスタイム制を導入する際の注意点①
残業代の取り扱いに注意
フレックスタイム制では、働く時間を従業員自身で柔軟に決められるというメリットがありますが、だからといって残業代の支払い義務がなくなるわけではありません。むしろ、勤務時間が各自バラバラになることによって、労働時間の集計が複雑化しやすく、フレックスタイム制のデメリットとなるポイントです。
特に、清算期間内における総労働時間が法定労働時間(週40時間)を超えた場合、割増賃金の支払い(残業代)が必要です。清算期間を1ヵ月以上に設定する場合は、1ヵ月ごとに週平均50時間を超えると追加の時間外手当が発生します。このように、柔軟な労働時間管理というメリットを持つ反面、勤怠管理や給与計算が煩雑になるというデメリットがある点には十分注意しましょう。
フレックスタイム制を導入する際の注意点②
労働時間の繰越・調整はメリットにもなりうるが、制度設計が重要
フレックスタイム制では、清算期間内に労働時間が不足した場合、次の清算期間でその不足分を補うことが可能です。これにより、給与額に影響を与えることなく労働時間を調整できるというメリットがあります。
しかし、こうした柔軟な働き方のメリットを最大限に活かすには、就業規則や労使協定などに明確なルールを設け、従業員に正しく周知することが欠かせません。制度が曖昧なままだと、未払残業や不公平感といったフレックスタイム制のデメリットが顕在化し、トラブルにつながる可能性もあります。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関する参考記事:「フレックスタイム制とは|メリット・デメリットを徹底解説」
フレックスタイム制を導入する際の注意点③
総労働時間の管理は制度の根幹
フレックスタイム制では、清算期間ごとに適切な総労働時間の設定が求められます。

「フレックスタイム制のメリットとデメリット」編集部
この設定が不適切だと、時間外労働が発生しやすくなり、フレックスタイム制のデメリットを引き起こす要因となります。
たとえば、1ヵ月間の清算期間を設ける場合、法定労働時間の総枠は「40時間 ×(暦日数 ÷ 7日)」で算出され、28日なら160.0時間、31日なら177.1時間となります。この上限を超えないよう、制度を構築する必要があります。さらに、1ヵ月を超える清算期間では、「週平均40時間以内」かつ「月平均で週50時間以内」を厳守しなければなりません。
このように、柔軟な労働時間設定というメリットの裏には、計算や制度設計の正確さが求められるというデメリットがあるため、導入前に専門家のアドバイスを受けるのも一つの方法です。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関するおすすめ記事

フレックスタイム制の導入に伴うメリットとデメリットに関して、以下の記事も参考になるでしょう。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関する参考記事:「フレックスタイム制とは?メリット・デメリットと導入時の注意点を解説」
フレックスタイム制がITエンジニアに最適な理由
フレックスタイム制のメリットが特に際立つ職種として、代表的なのがITエンジニアです。フレックスタイム制は、労働時間に柔軟性を持たせることで、生産性の向上や従業員満足度の向上につながる制度であり、時間や場所にとらわれずに働けるIT系職種にとって非常に相性が良い働き方です。
パソコンとインターネット環境さえあれば業務が完結できるITエンジニアにとって、フレックスタイム制の導入は業務効率や自己管理能力の向上といった多くのメリットをもたらします。また、働く時間を自分で選べることで、プライベートの充実やライフスタイルに合わせた働き方が可能になる点も大きなメリットです。

「フレックスタイム制のメリットとデメリット」編集部
ここでは、フレックスタイム制のメリットが特に大きいIT関連の3職種を紹介し、それぞれの職種で得られる具体的なメリットを解説します。
システムエンジニアのメリットとフレックスタイム制の相性
システムエンジニアは業務上、要件定義や設計・構築などを一人で進めることが多く、時間に縛られない働き方がしやすいのが特徴です。そのため、フレックスタイム制の導入によるメリットが非常に大きいです。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関するポイント!

たとえば、集中力が高まる時間帯に業務を行えるため、生産性やパフォーマンスが向上し、結果として納品スピードや品質もアップします。
通勤ラッシュを避けてストレスを軽減できる点も、フレックスタイム制の大きなメリットです。
プログラマーが感じるフレックスタイム制のメリット
プログラマーは主にコーディングを中心とした業務を行うため、集中できる時間帯に作業できるかどうかが生産性に直結します。フレックスタイム制により、無理のない時間帯に作業ができることは、クオリティの高いコードを書くうえでの重要なメリットです。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関する参考記事:「フレックスタイム制とは?目的と仕組み、メリット・デメリットを解説」
さらに、育児や副業など他のライフイベントと両立がしやすくなるのも、フレックスタイム制のメリットのひとつです。自分で時間を調整できるため、仕事以外の時間も大切にしたい人にとって理想的な制度と言えるでしょう。

Webデザイナーにとってのフレックスタイム制の魅力
Webデザイナーはクリエイティブな仕事のため、自分の感性やインスピレーションが高まるタイミングで業務を進められることが、成果に大きく影響します。そのため、柔軟な働き方ができるフレックスタイム制との親和性が非常に高く、創造性を発揮しやすい環境を作り出せるメリットがあります。
フレックスタイム制のメリットとデメリットに関するポイント!

また、納期さえ守れれば自由な時間配分が可能になることから、モチベーション維持や仕事への満足度向上にもつながる点も大きなメリットです。
まとめ|フレックスタイム制のメリットとデメリット
フレックスタイム制は、柔軟な働き方を実現する制度として、従業員・企業双方にとって多くのメリットをもたらします。自由な出退勤時間の設定によるワークライフバランスの向上や、残業の削減、通勤ストレスの軽減などは、現代の働き方にマッチした制度といえるでしょう。
しかし一方で、フレックスタイム制のデメリットも存在します。勤怠管理の煩雑さや社内外のコミュニケーションの難しさ、業務効率の低下リスクなど、導入にはしっかりとした制度設計と運用ルールが求められます。こうしたデメリットを放置したまま導入すれば、期待された効果が得られないどころか、職場全体の混乱を招くおそれもあります。
日本でフレックスタイム制が普及しない理由の背景には、こうした運用面での課題や、組織文化の影響が根強く残っていることが挙げられます。制度のメリットを最大限に活かしながら、デメリットへの対応策を講じることが、スムーズな導入と長期的な活用のカギとなります。
フレックスタイム制のメリットとデメリットをしっかりと把握し、自社の業種や組織体制に合った運用方針を検討していきましょう。

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