合同会社の会社設立に必要な定款作成上の注意点とは?

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公開日:2024年7月

更新日:2024年8月15日

会社設立時に必要な合同会社と株式会社の定款の違いは?

定款とは、会社を経営していくためのルールをまとめた書類で、会社の憲法のようなものです。合同会社も株式会社も、会社設立するときには必ず定款を作成しなければなりません。定款には、商号(社名)や事業目的、本店所在地などの会社設立に必要な基本情報をはじめ、さまざまな事項を記載しますが、その内容は合同会社や株式会社など会社形態によって違います。

例えば、会社設立で必要になる合同会社と株式会社における定款の大きな違いとして、合同会社の定款は公証役場での認証が不要であることが挙げられます。株式会社の定款は作成した定款を公証役場に提出し、認証の手続きが必要です。この定款認証手続きでは、手数料が3万から5万円程度かかります。

一方、合同会社は定款の認証手続きが不要で認証手続きの費用もかかりません。さらに合同会社には株式の概念がないため、株式会社のような株主構成や株式譲渡制限などの記載事項が少ない分、株式会社よりも合同会社のほうが比較的簡単に定款が作成できるといわれています

ただし、定款の作成は会社設立手続きの中でも時間がかかる作業の1つですので、余裕を持って準備することが大切です。

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会社設立にあたって定款はいつ作成するべき?

合同会社の定款は、出資金の払い込み前に作成します。出資金の払い込みが完了した後、法務局で登記申請を行います。定款は法務局での登記申請に必要な書類の一つなので、申請前に作成しておく必要があります。

以下に、合同会社設立の流れをまとめました。この流れを理解すると、定款作成のタイミングが明確になります。

合同会社設立の流れ

  1. 会社の基本事項を決める
  2. 会社の実印を作成する
  3. 合同会社の定款を作成する
  4. 出資金を払い込む
  5. 法務局で登記申請を行う

最初に、社名(商号)、所在地、資本金などの会社の基本事項を決定します。これらの情報は定款や登記書類に記載されるため、最初に決める必要があります。

会社名が決まったら、会社名を基に実印を作成します。実印の作成には時間がかかることが多いため、定款作成前に余裕を持って依頼することをおすすめします

実印の作成依頼を終えたら、次に合同会社の定款を作成します。その後、資本金の払い込みを終えたら、法務局へ行き、作成した定款を他の必要書類とともに提出してください。

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会社設立時以外に定款の写しが必要になるタイミング

合同会社の定款は会社設立時だけでなく、以下のような状況でも必要になります。事業開始をスムーズに進めるために、定款の写しを準備しておきましょう。

金融機関との取引時

法人口座の開設や大口取引を行う際、多くの金融機関では定款の提出を求められます。法人口座は開設時の審査に時間がかかることがあるため、会社設立登記後すぐに開設手続きを行うことをおすすめします。

税務署や自治体への提出時

合同会社を設立した後、税務署や自治体に「法人設立届出書」を提出する必要があります。これは法人税や法人住民税などの税金を納めるためです。この際、会社設立と概要を知らせるために、定款の写しが必要となります。

許認可や補助金・助成金の申請時

業種によっては会社設立時に許認可が必要ですが、その際にも定款の写しが求められます。また、会社設立にあたって助成金や補助金の申請する場合にも多くの場合、定款の写しが必要です。

SoVa税理士お探しガイド編集部

合同会社の会社設立時に必要な定款の記載事項については以下の記事もおすすめです。

合同会社の定款とは?株式会社の定款との違いも解説します

会社設立時に合同会社の定款に記載する事項

会社設立に必要な合同会社の定款に記載する事項は、「絶対的記載事項」、「相対的記載事項」、「任意的記載事項」の3つに大別されます。以下に、それぞれの内容について説明します。

定款の記載事項①:絶対的記載事項

定款の絶対的記載事項は「定款に必ず記載しなければならない内容」であり、これを欠いた定款は無効となります。以下の6つが該当します。

1.商号

合同会社は、定款に商号(会社名)を記載します。記載の際のルールとして、商号の最初または最後に「合同会社」を含めることや、同一商号かつ同一本店所在地の会社が存在しないことなどが求められます。また、不正目的で既存の有名企業を連想させる商号は禁止されており、特定の記号やローマ数字も使用できません。ただし、アンド(&)やコンマ(,)、ハイフン(-)などは字句を区切るために使用可能です。

2.目的

合同会社が行う事業の内容を記載します。これを記載しないとその事業は合同会社の業務とは見なされません。特に許認可が必要な事業については、記載が必須です。

3.本店の所在地

本店の所在地を最小行政区画まで記載します。詳細な住所(ビル名やマンション名)も記載できますが、定款を変更する手間を省くため、最小限の記載に留めることが一般的です。

4.社員(出資者)の氏名または名称および住所

合同会社は株主・株式がないため、出資者の情報を記載します。氏名や住所、出資の価額および責任(有限責任社員である旨)を記載します。

5.社員全員が有限責任社員である旨

合同会社の出資者は全員が有限責任社員であることを記載します。有限責任とは、出資の範囲内で責任を負うことを意味します。

6.社員の出資する目的およびその価額または評価の基準

出資金額は1円から可能で、現金だけでなく土地などの現物での出資も可能です。現物出資の場合、適正な評価を行って価額を算出する必要があります。

定款の記載事項②:相対的記載事項

定款の相対的記載事項は、定款に記載しないと効力を発揮しない事項です。合同会社のルールとして定めたいことがある場合に記載します。具体的には以下のような事項です。

  • 業務を行う社員の定め
  • 代表社員の定め(社員が複数いる場合)
  • 利益の配当に関する事項
  • 社員の退社に関する定め(出資金の払い戻しルール)
  • 持分の相続に関する定め(社員が亡くなった場合のルールなど)
  • 解散の事由
  • 残余財産の分配の割合(解散時の残存財産の配分)

SoVa税理士お探しガイド編集部

代表社員を定めることにより、合同会社の意思決定のスムーズ化が図れます。

定款の記載事項③:任意的記載事項

定款の任意的記載事項は、定款以外でルールとして定めることもできますが、定款に記載することで合同会社の規則を明確化できます。代表的なものは「事業年度に関する定め」です。一度定款に記載すると、会社設立後は容易に変更できない点では他の記載事項と同様です。

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合同会社の定款作成上の注意点

会社設立で合同会社の定款を作成する際には、以下の3つのポイントに注意しましょう。

定款作成時のポイント①:変更・修正には全社員の決議や変更登記が必要 

会社設立時に作成した定款は、会社設立後でも変更・修正が可能ですが、直接修正することはできません。基本的に、定款の変更には全社員の合意が必要です。

SoVa税理士お探しガイド編集部

また、変更した内容については変更登記を行わなければなりません。

定款作成時のポイント②:解釈の違いが生じないようにする 

合同会社の定款を作成する際は、内容だけでなく表現や記載方法にも注意が必要です。些細な表現の違いが大きな問題に発展することがあります。社員の氏名や住所は印鑑登録証明書と一致させ、番地なども省略せず正確に記載します。また、「または」や「および」の使用には注意が必要です。

「または」は選択可能な場合に、「および」は両方が必要な場合に使います。句読点や用語選びにも細心の注意を払いましょう。

定款作成時のポイント③:定款の修正が無いように細心の注意を払う 

合同会社は公証人の認証が不要ですが、これは認証を受けられないという意味ではありません。公証役場は中立の立場で公的な証書の作成や認証を行う機関であり、法律の専門家がトラブルを防ぐためにサポートしてくれます。

問題のない定款を作成するために、公証人の活用を検討するのも一つの方法です。にサポートしてくれます。問題のない定款を作成するために、公証人の活用を検討するのも一つの方法です。

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定款を変更・修正する際の注意点

合同会社の会社設立後に定款の内容を変更・修正することは可能ですが、以下の点に注意が必要です。

定款の変更・修正時の注意点①:全社員の承認を得る

会社設立後の定款の変更・修正には、定款に特別な定めがない限り、全社員の同意が必要です。変更内容に対して全社員の同意を取り、同意書を作成します。この同意書を原始定款(会社設立時に作成した元の定款)とともに保管することで、定款の変更が完了します。

ただし、変更内容が登記に関わる場合は、法務局に同意書を提出し、該当箇所の変更登記を行う必要があります

なお、現行定款を任意で作成することも可能です。この場合、変更を反映した定款を印刷し、末尾に「〇年〇月〇日第〇条改定」と記載し、原始定款と同意書とともに保管します。

定款の変更・修正時の注意点②:法務局への変更登記の申請が必要

前述のとおり、会社設立後に定款の登記に関わる部分を変更・修正する場合は、法務局に変更登記を申請する必要があります。変更登記の種類に応じて以下の登録免許税がかかります。

変更登記の種類登録免許税
会社の商号、事業目的3万円
本店・支店の所在地の変更1ヶ所につき3万円
資本金の変更増資金額の1,000分の7(3万円未満の場合は3万円)
代表社員の変更1万円(資本金が1億円を超える場合は3万円)
代表社員の氏名、住所を変更1万円(資本金が1億円を超える場合は3万円)

出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」

SoVa税理士お探しガイド編集部

会社設立後に定款を変更・修正をする際にはこれらの注意点を踏まえるようにしましょう。

合同会社の会社設立時に必要な定款作成に関するおすすめ記事:合同会社の定款のひな形と作成方法の解説

まとめ

合同会社の会社設立時に必要な定款作成について解説しました。定款は会社設立時に必ず作成する必要がある、いわば会社の憲法のようなものです。株式会社と異なり、合同会社の定款は最低限の基本を押さえれば、他の部分は比較的自由にルールを設定できます。

また、一般的には株式会社よりも合同会社のほうが会社設立の手続きは容易であり、会社設立にかかる費用を抑えることもできます。合同会社の会社設立時は、定款は出資金の払い込み前に作成することでスムーズに会社設立の手続きをすすめることができるでしょう。定款の作成は会社設立手続きの中でも時間がかかる作業の1つですので、余裕を持って準備することが重要です。

会社設立後に作成した定款を変更することも可能ですが、定款の変更・修正には手間や費用がかかるため、会社設立時には定款修正が不要なように慎重に作成することが重要です。

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SoVa税理士お探しガイド編集部

また、はじめての会社設立で定款作成に不安がある場合は、税理士などの専門家に頼ることも選択肢のひとつです。

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