社会保険と国民健康保険の違いは?切り替え時の手続きについて解説!
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公開日:2025年2月
更新日:2025年2月20日
社会保険(健康保険)とは、企業勤めの会社員や、条件を満たす短時間労働者(アルバイト・パートなど)が加入する社会保険の一種です。一方で、国民健康保険とは、自営業者や年金受給者などが加入する社会保険制度の一つであり、社会保険に加入できない人が対象となります。
日本には「国民皆保険制度」があり、この制度を支えているのが「社会保険(健康保険)」と「国民健康保険」の2つの社会保険制度です。社会保険(健康保険)に加入している人は、会社を退職した際などに国民健康保険へ切り替える必要があります。
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SoVa税理士お探しガイド編集部
本記事では、社会保険(健康保険)と国民健康保険の概要、それぞれの社会保険制度の違い、国民健康保険への切り替えが必要なタイミングや社会保険から国民健康保険への手続きを詳しく解説します。
目次
社会保険と国民健康保険の違いとは?
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日本では「国民皆保険制度」により、すべての人が何らかの公的医療保険に加入する必要があります。公的医療保険には「社会保険(健康保険)」と「国民健康保険」があり、加入対象や負担額、給付内容が異なります。
社会保険とは?
社会保険とは、企業に雇用される従業員が加入する公的な保険制度で、病気・ケガ・死亡・出産・失業などの際に利用できる仕組みです。
社会保険の種類
保険の種類 | 対象 | 主な給付内容 |
---|---|---|
健康保険 | 会社員・公務員など | 医療費の負担軽減 傷病手当金 出産手当金 出産育児一時金 葬祭費など |
厚生年金保険 | 会社員・公務員など | 老齢年金 障害年金 遺族年金 |
雇用保険 | 会社員・アルバイト | 失業手当 育児休業給付金 介護休業給付金 |
労災保険 | 労働者全員 | 業務中の事故 病気に対する補償 |
社会保険(健康保険)の特徴
- 企業が加入義務を負う:従業員は自動的に加入
- 扶養家族も保険適用:一定条件のもと、家族も無料で加入可能
- 給付が充実:傷病手当金・出産手当金などの給付が手厚い
加入先は勤務先によって異なり、以下のように分類されます。
加入先 | 対象 |
---|---|
健康保険組合 | 大企業の社員 |
全国健康保険協会(協会けんぽ) | 中小企業の社員 |
共済組合 | 公務員・私立学校の教職員 |
国民健康保険とは?
国民健康保険は、市区町村が運営する医療保険制度で、社会保険(健康保険)に加入できない人が対象となります。
国民健康保険の特徴
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 自営業者 フリーランス 無職の人など |
運営主体 | 各市区町村 |
保険料負担 | 加入者が全額負担(会社負担なし) |
扶養制度 | なし(家族ごとに加入し、それぞれ保険料を支払う) |
主な給付 | 医療費の負担軽減 出産育児一時金 葬祭費(傷病手当金・出産手当金はなし) |
社会保険(健康保険)と国民健康保険の比較
比較項目 | 社会保険(健康保険) | 国民健康保険 |
---|---|---|
対象者 | 会社員、公務員 | 自営業者、フリーランス、無職の人 |
保険料 | 会社と折半 | 全額自己負担 |
扶養家族 | 無料で加入可能 | 扶養の概念なし(家族も個別加入) |
傷病手当金 | あり | なし |
出産手当金 | あり | なし |
加入手続き | 会社が手続き | 本人が市区町村で手続き |
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社会保険から国民健康保険へ切り替える手続き方法
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社会保険の適用事業所から退職した場合や、扶養から外れる必要があるが、会社の社会保険に加入できない場合、国民健康保険へ加入することになります。社会保険から国民健康保険への切り替えは、会社の社会保険へ自動的に加入するケースとは異なり、従業員自身が責任を持って国民健康保険の加入手続きを行わなければならない点が重要です。
【社会保険から国民健康保険】雇用主側の手続き
従業員が退職した場合、雇用主は退職日の翌日から5日以内に、「社会保険被保険者資格喪失届」を日本年金機構に提出する必要があります。その際、従業員本人の社会保険(健康保険)証と、世帯主として扶養している家族がいる場合は、その扶養家族の社会保険(健康保険)証も返却します。
また、従業員から希望があった場合には「社会保険喪失証明書」を作成し、従業員に渡しましょう。
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SoVa税理士お探しガイド編集部
これは義務ではありませんが、従業員が国民健康保険への加入手続きをスムーズに進めるために役立つため、作成するのが親切でしょう。
【社会保険から国民健康保険】従業員側の手続き
従業員は、市区町村の窓口で国民健康保険の加入手続きを行います。国民健康保険への加入には、会社から発行される「社会保険喪失証明書」が必要となります。社会保険(健康保険)から国民健康保険へ切り替えた場合、国民健康保険の保険料は、社会保険の資格を喪失する退職日の翌日から発生し、その月の分から納める必要があります。そのため、退職した日の証明ができる書類を持参することが求められます。
もし、「社会保険喪失証明書」が発行されなかった場合は、「離職票」や「退職証明書」を持参するようにしましょう。また、社会保険(健康保険)証に全国健康保険協会(協会けんぽ)の表記がある場合は、最寄りの年金事務所で「健康保険資格喪失証明書」を発行してもらえる可能性があります。
国民健康保険への切り替えは、退職日の翌日から14日以内に行う必要があります。そのため、できる限り早急に社会保険(健康保険)から国民健康保険への切り替えを完了させることが重要です。
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国民健康保険から社会保険に切り替える手続き方法
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ここでは、国民健康保険から社会保険へ切り替える際の手続きについて、雇用主側と従業員側に分けて紹介します。社会保険が適用される事業所に正社員として勤務し始める場合、国民健康保険から社会保険への切り替えが必要です。
また、アルバイトやパートタイムの雇用であっても、労働時間や労働日数が一定の条件を満たせば、社会保険に加入する義務が生じるため、雇用形態にかかわらず社会保険の加入手続きについて理解しておきましょう。
【国民健康保険から社会保険】雇用主側の手続き
新しく雇用した従業員がいる場合、会社は社会保険の加入手続きを行う必要があります。事業主は社会保険の適用事業所として、責任をもって申請を行わなければならず、入社日から5日以内に手続きを完了させることが求められます。
期限内に、「被保険者資格取得届」を所轄の年金事務所または事務センターに提出しましょう。また、従業員に扶養家族がいる場合には、「健康保険被扶養者(異動)届」もあわせて提出する必要があります。
社会保険・国民健康保険に関するここがポイント!
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提出後に従業員側で訂正が必要となる可能性もあるため、社会保険の申請は余裕をもって進めることが望ましいでしょう。
【国民健康保険から社会保険】従業員側の手続き
従業員は入社する企業に対し、年金手帳(基礎年金番号通知書)やマイナンバーが記載された書類の写しを提出する必要があります。社会保険の加入手続きは入社から5日以内と期限が厳しいため、求められた書類は速やかに準備し、提出しましょう。
特に、マイナンバーが記載された書類は、役所で発行手続きが必要な場合があるため、事前に準備しておくとスムーズに社会保険の手続きを進めることができます。
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SoVa税理士お探しガイド編集部
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社会保険から国民健康保険への切り替える際の注意点
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社会保険から国民健康保険へ切り替える際の注意点について詳しく見ていきましょう。
注意点①:14日以内に国民健康保険への切り替え手続きを忘れてしまった場合
社会保険の資格を喪失した後、国民健康保険への切り替えを行わずにいると、保険証がないために医療機関での診療費を全額自己負担(100%)する必要があります。病気やケガをした際に大きな負担となるため、国民健康保険への速やかな加入が重要です。
社会保険・国民健康保険に関する注意点
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国民健康保険に加入していれば、自己負担割合は就学前の子どもは2割、就学後から70歳未満は3割、70歳以上は2割(現役並み所得者は3割)となります。社会保険からの切り替えを忘れると、こうした公的医療保険の恩恵を受けられません。
また、市区町村によっては、国民健康保険の保険証を即日発行する場合と、郵送で交付する場合があります。
社会保険の資格喪失後にすぐ医療機関を受診する可能性もあるため、早めの切り替え手続きを従業員に周知しておくことが重要です。
注意点②:国民健康保険への切り替え手続きが期限内に間に合わない場合
社会保険の資格喪失後、すぐに国民健康保険へ加入できないケースもあります。たとえば、
- 健康保険資格喪失証明書の発行が遅れる
- 社会保険や雇用保険の資格喪失手続きが遅れる
このような場合でも、国民健康保険の加入手続きはできるだけ早く行う必要があります。
日本の医療保険制度は「国民皆保険」が原則です。そのため、仮に切り替えが遅れた場合でも、社会保険を喪失した翌日に国民健康保険にさかのぼって加入することになり、その期間の保険料も請求されます。
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SoVa税理士お探しガイド編集部
手続きの遅れによっては、延滞金が発生する可能性があるため注意が必要です。
注意点③:社会保険から国民健康保険への切り替えを行わなかった場合
社会保険の資格喪失後、国民健康保険への切り替えを行わないと、最長2年間にわたって保険料をさかのぼって請求されます。さらに、その間は無保険状態となるため、医療機関を受診する際の費用は全額自己負担(100%)となります。
また、国民健康保険の届け出をしないことにより、10万円以下の過料が科される可能性や、保険料未納による財産差し押さえといったリスクも発生します。したがって、社会保険から国民健康保険への適切な切り替えを怠らないようにしましょう。
注意点④:退職時には健康保険証を必ず回収する
従業員が退職する際には、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格喪失手続きが必要です。事業主は、社会保険の加入機関(協会けんぽや健康保険組合)または管轄の年金事務所へ必要書類を提出しなければなりません。その際、退職した従業員から本人および扶養家族の健康保険証を回収し、資格喪失届に添付して提出する必要があります。
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もし、協会けんぽの社会保険に加入していた従業員の健康保険証を回収できなかった場合は、「健康保険被保険者証回収不能届」を追加で提出する必要があります。
万が一、従業員が退職後に健康保険証を使用してしまうと、社会保険や医療機関から医療費の返還請求を受けることになります。その場合、従業員は後から国民健康保険に加入し、市区町村を通じて療養費支給の手続きを行わなければなりませんが、手続きが複雑で時間もかかるため、こうしたトラブルを避けるためにも健康保険証の回収は確実に行いましょう。
社会保険から国民健康保険に切り替えない場合
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社会保険(健康保険)に加入していた会社を退職した場合でも、必ずしも国民健康保険に加入しなければならないわけではありません。
社会保険(健康保険)は、退職後も一定の条件を満たせば、国民健康保険へ切り替えずに社会保険を任意継続することができます。具体的には、社会保険の資格喪失日から起算して、継続して2カ月以上加入していた場合、国民健康保険ではなく社会保険を選択することが可能です。
全国健康保険協会(協会けんぽ)における任意継続制度
社会保険を任意継続した場合、在職中と同様の保険給付が受けられます。ただし、退職日までに継続して1年以上被保険者であり、かつ退職日時点で傷病手当金や出産手当金を受給している、または受給要件を満たしている場合を除き、これらの手当は受け取ることができません。
また、社会保険を継続するには、退職日の翌日から20日以内に任意継続の申請を行う必要があります。社会保険の任意継続が認められる期間は、退職日の翌日から最長2年間です。
社会保険の任意継続の保険料と国民健康保険との比較
社会保険(健康保険)の保険料は、在職中は事業主と被保険者が折半して負担していました。しかし、社会保険の任意継続では、退職後は被保険者が全額負担する必要があります。保険料は退職時の標準報酬月額(上限30万円)を基準に決定されます。
一方、国民健康保険の保険料は所得に応じて算出されるため、退職後の収入が減少した場合、社会保険の任意継続よりも国民健康保険の方が保険料負担が軽くなる可能性があります。そのため、退職後の生活スタイルに応じて、どちらを選択するか慎重に検討することが重要です。
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SoVa税理士お探しガイド編集部
また、社会保険の任意継続を選択した場合、配偶者や子どもなどの被扶養者も継続することになります。
2022年1月の健康保険法改正と国民健康保険への切り替え
以前は、社会保険の任意継続を選択すると2年間継続しなければならず、たとえば退職後にフリーランスとして収入が減り、国民健康保険の方が保険料が安くなった場合でも、社会保険の任意継続から国民健康保険へ切り替えることはできませんでした。
しかし、2022年1月の健康保険法改正により、任意継続の資格喪失を自己都合で行うことが可能になりました。これにより、状況に応じて社会保険から国民健康保険へ切り替える選択肢が広がりました。
2022年1月以降の社会保険任意継続資格喪失条件
以下のいずれかに該当すると、社会保険の任意継続を終了し、国民健康保険へ切り替えることができます。
- 任意継続の被保険者となった日から2年を経過
- 被保険者が死亡
- 被保険者が保険料を未納
- 再就職し、新たに社会保険(健康保険)の被保険者となった
- 後期高齢者医療制度の被保険者となった
- 自己都合で資格喪失を希望し、国民健康保険へ切り替えたい場合
社会保険の任意継続の資格を喪失したい場合は、加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)の都道府県支部で「資格喪失申出書」を提出する必要があります。
社会保険組合と国民健康保険の違いに注意
注意点として、全国健康保険協会(協会けんぽ)の社会保険任意継続は、途中で資格喪失が可能ですが、健康保険組合の任意継続を選択した場合、自己都合による資格喪失はできません。
会社を退職してフリーランスや個人事業主になる場合は、勤めていた会社が全国健康保険協会に加入していたのか、それとも健康保険組合に加入していたのかを事前に確認することが重要です。各健康保険組合によって、社会保険の任意継続や途中での資格喪失要件が異なるため、加入先の規定をよく調べましょう。
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まとめ
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社会保険(健康保険)と国民健康保険は、どちらも公的医療保険ですが、加入できる対象者や加入団体、さらには社会保険料や国民健康保険料の計算方法が異なります。
会社員であれば、基本的に社会保険に加入することになります。しかし、退職後に個人事業主として働く場合、必ずしもすぐに国民健康保険へ切り替えなければならないわけではありません。
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SoVa税理士お探しガイド編集部
退職後も、社会保険を最大2年間継続できる社会保険の任意継続制度を利用することが可能です。
退職後のライフスタイルや社会保険料と国民健康保険料の負担を考慮し、国民健康保険へ切り替えるか、それとも社会保険の任意継続を選択するか、慎重に検討しましょう。
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