自分で決算申告を行うときの手順は?決算申告を自分で行う際のメリット・デメリットも紹介!
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公開日:2024年8月
更新日:2024年8月29日
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法人決算(決算申告)とは、事業年度ごとに貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの決算書類を作成するプロセスです。これらの書類を通じて、法人の経営状況や信用力を客観的に把握することができます。
会社法や法人税法に基づき、法人は決算書類の作成が義務付けられていますが、税理士や会計士に依頼せず、自分で決算申告を行うことも可能です。
この記事では、法人決算の概要から、具体的な手順、そして税理士や会計士に頼らず、自分で決算申告を行う際のメリットや注意点について解説します。
参考:「法人決算を自分1人で完結させるには?流れや必要書類について解説」
決算申告とは
決算申告を自分で行う際のメリットやデメリット、決算申告を行う手順を解説する前に、そもそも決算申告とはなんでしょうか?
決算申告とは、企業が1年間の事業活動から得た収益に基づいて、納めるべき税金を計算し、税務署に申告する手続きのことです。企業は事業年度の終わりに、収支を確定し決算書を作成します。この決算書をもとに、法人税などの納税額を算出し、決算日から2ヶ月以内に申告と納税を行います。
まず、企業は決算作業で収益や費用を計算し、その年度の経営状況や財務状態を明確にします。決算書は株主や投資家への業績報告にも使われますが、最も重要なのは、これをもとに法人税などを計算し、適切な税務申告を行うことです。
この手続きは「決算申告」と呼ばれ、企業が正しく納税するための重要なプロセスです。特に青色申告を行う場合、正確な帳簿や決算書の作成が求められ、手続きが複雑になることがあります。そのため、税理士に依頼して専門的な支援を受けることは有益です。なぜなら、税理士は決算書の作成や税務申告のサポートを通じて、企業の負担を軽減し、正確な申告を助けてくれます。
決算申告を正確に行うことは、企業の財務状況の透明性を保ち、適正な納税を実現するために非常に重要です。専門家のサポートを活用することで、スムーズな申告と納税が可能になります。
自分で行う決算申告に関連するおすすめ記事
決算申告や青色申告の詳細に関しては是非こちらの記事を参考にしてください。
「法人の青色申告や決算申告ってなに?税理士に依頼するメリットまで解説!」
自分で決算申告を行うメリット
自分で決算申告を行うことによるメリットは幾つかあります。
ここでは、決算申告を自分で行った際のメリットを中心に解説していきます。
自分で決算申告を行うメリット① 費用を抑えられる
税理士に決算申告を依頼する際、まず気になるのがその費用です。現在、税理士の報酬は以前のように法律で厳格に定められているわけではなく、各税理士が自由に料金を設定しています。そのため、依頼する前に費用の相場を理解しておくことが大切です。
一般的に、決算申告だけを税理士に頼む場合の相場は15万円から25万円程度です。
「自分で決算申告」解説部
また、記帳代行や税務相談といった決算申告以外のサービスを追加で依頼すると、別途料金がかかる点も考慮する必要があります。
もし費用を抑えたい場合は、自分で決算申告を行う選択肢もあります。
自分で行う決算申告に関連するおすすめ記事
決算申告を自分で行った際の費用と、税理士に決算のみを依頼した方が良い会社の特徴を紹介している以下の記事がおすすめです。
「税理士に決算申告のみを依頼する場合の費用相場について解説」
自分で決算申告を行うメリット② 自分で決算を行うことで経営や会計の知識が身につく
自分で決算申告を行うことで、会社の財務状況をより深く理解できるようになります。貸借対照表や損益計算書を自ら作成する経験を通じて、会計や税務の知識が自然に身についていきます。これにより、今後の経営判断がより的確になるでしょう。
また、決算申告を自分で行うことで、法人税や消費税の仕組みについて理解が深まります。したがって、税法の基礎を知ることにより、将来的に節税策を講じたり、税務リスクを避ける手段を身につけることができるでしょう。
自分で行う決算申告に関連するおすすめ記事
自分で決算申告を行うメリット・デメリットがまとめられている記事は以下のものが参考になるでしょう。
「法人決算を自分でやるメリット・デメリットと判断基準・手順を解説」
さらには、自分で決算申告を行うことで、会社の財務状況をより深く理解できるようになります。貸借対照表や損益計算書を自ら作成する経験を通じて、会計や税務の知識が自然に身についていきます。これにより、今後の経営判断がより的確になることもあります。
自分で決算申告を行うデメリット
自分で決算申告を行うデメリット① 正確な知識が必要
法人決算を税理士に頼らず自分で行うには、一定の専門知識が不可欠です。会計ソフトの導入で帳簿作成は以前より簡単になっていますが、決算を進めるには基本的な簿記の知識が必要です。専門的な知識が不足していると、ミスが起こる可能性も高くなってしまいます。
参考:「法人決算を自分でするメリット・デメリット」
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自分で決算申告を行うデメリット② 自分のリソースを決算申告に割く必要がある
自分で行う決算申告に関連するおすすめ記事
自分で法人決算を行うデメリットについては、以下の記事も参考にしてみましょう。
「税理士なしで決算を行うメリットとデメリットとは?」
法人の決算申告を自分で行う場合、慣れていないと疑問点が多く、その都度調べながら進める必要があります。結果として、多くの時間と労力を費やすことになりがちです。決算申告期間中は、決算業務に集中せざるを得ないため、通常の業務に影響が出る可能性があります。そのため、営業活動が後回しになり、売上が減少するリスクが発生するかもしれません。
税務署への相談は助けになりますが、時間や労力、そしてミスのリスクを完全に防ぐわけではありません。税務署ではメールでの相談を受け付けておらず、電話での対応も一般的な質問に限られます。個別の案件に関しては、事前に予約をして直接税務署に出向く必要があります。
「自分で決算申告」解説部
記帳の知識はないが、どうしても自分で決算申告を行いたい方は、税務署が開催している記帳方法などの説明会に参加してみるのも良いかもしれません。詳しくは、国税庁のホームページをご覧ください。
ただし、何度も税務署に行くのは現実的ではない場合もあります。しかし、もし決算申告を自分で行う際に、税務に関する知識が十分であれば、税務署とのやりとりを通じて進めることが可能かもしれません。
自分で決算申告を行うデメリット③ 節税対策を行うのが難しくなる
自分で決算申告を行う際のデメリットの一つとして、十分な節税対策ができない可能性があります。税理士に依頼しないと、節税に関する専門的なアドバイスを受けることができません。法人には個人事業主よりも多くの節税メリットがあるものの、節税の知識がなければその対策を講じることは難しくなります。
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自分で行う決算申告に関連するおすすめ記事
決算申告を自分で行う際の方法は以下の記事がおすすめです。
「法人決算を自分で行うには?税理士なしで進める方法などを解説」
法人税の仕組みは非常に複雑であり、さらに頻繁に税制改正が行われるため、専門知識がない状態で自分ですべての情報を把握するのは困難です。その結果、適切な節税ができず、余計な税負担が増えるリスクがあります。
自分で決算申告を行うデメリット④ 税務調査の対応に困る可能性がある。
自分で決算申告を行う際には、ミスや見落とし、誤解が原因で税務調査の対象になるリスクがあります。税理士を使わずに法人決算を自力で進めた場合、税務調査が行われた際にも自分で対応しなければなりません。税の知識が不足していると、準備や対応に膨大な時間がかかり、根拠ある説明ができないことで納得できない結果になることも考えられます。その結果、追徴課税が発生し、罰金や利息も加算されてしまうこともあります。
また、税務調査時にのみ税理士に依頼しようとしても、その税理士が決算申告に関わっていない場合、会社の状況を十分に理解していないため、スムーズな対応が難しくなることがあるので注意が必要です。
自分で行う決算申告に関連するおすすめ記事
税務調査の対応を自分ではなく、税理士に依頼するメリットは以下の記事がおすすめです。
「税務調査の立ち会いを税理士に依頼するメリット」
自分で決算申告を行う場合の手順
ここでは決算申告を自分で行う場合の手順について解説していきます。
自分で決算申告を行う場合の手順STEP1 日々の記帳を行う
自分で決算申告を行うときの手順の1つ目は、日々の記帳です。
法人が取引を行う際には、毎回の取引内容を正確に記録することが求められます。具体的には、収入や支出、購入した商品やサービス、顧客とのやりとりなどを帳簿に記録します。これにより、決算申告の際に正確で迅速な会計処理が可能になります。
決算申告を自分で行う場合は、会計ソフトや表計算ソフトを使って記帳する方法があります。また、記帳代行サービスや税理士に依頼する選択肢もあります。
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自分で行う決算申告に関連するおすすめ記事
自分で決算申告を行う場合の手順STEP2 帳票整理
自分で決算申告を行うときの手順の2つ目は、帳票整理です。
決算で帳票整理が必要な理由は、正確な決算申告のため、税務調査に備えるため、財務状況を把握するため、内部管理の向上、そして法的な義務の履行です。帳票を適切に整理することで、正確な決算書類の作成や税務調査への対応がスムーズになり、財務状況を把握しやすくなります。また、法的要件を満たすことで、将来のトラブルを防ぐことができます。
「自分で決算申告」解説部
税務調査で領収書などの提出を求められることもあるため、帳票整理は重要になります。
詳しくはこちらをご覧ください。
自分で決算申告を行う場合の手順STEP3 資産と負債の実査
自分で決算申告を行うときの手順の3つ目は、資産と負債の実査です。
実査を行うことで、会社の資産や負債を正確に確認することができます。
自分で行う決算申告に関連するおすすめ記事
決算整理事項の確認は、「【法人】決算と税務申告の流れ」のサイトが参考になるでしょう。
【資産・負債の実査の例】
・現金実査、銀行口座等の残高確認
・売掛金、買掛金の残高確認
・借入金の残高確認、貸付金の確認
・受取手形の実査、支払手形の確認
・固定資産の実査
・在庫の棚卸
自分で決算申告を行う場合の手順STEP4 試算表の作成
自分で決算申告を行うときの手順の4つ目は、試算表の作成です。
試算表は、自分で決算申告を行う際に、仕訳や総勘定元帳が正しく転記されているかを確認し、決算書の作成に役立てるために作成します。試算表には、一定期間の資産、負債、売上、経費、利益などが記載されており、企業の経営状態や業績を把握するのに役立ちます。
また、前年度の試算表と比較することで業績の変化を確認でき、定期的に試算表をチェックすることで業績不振時の迅速な経営改善が可能になります。試算表は、最新の経営状態や業績の推移を把握できるため、資金調達時には金融機関からの提出が求められることもあります。
参考:「試算表とは?種類や見方、効率的な作り方などについて解説」
このように、試算表は決算申告の準備や経営改善、資金調達において重要な役割を果たします。
自分で決算申告を行う場合の手順STEP5 決算整理仕訳
自分で決算申告を行うときの手順の5つ目は、決算整理仕訳を行いましょう。
自分で行う決算申告に関連するおすすめ記事
決算整理仕訳の概要はこちらの記事でご確認ください。
「決算整理仕訳とは?やり方やポイントをわかりやすく解説!」
決算申告を自分で行う際、決算整理仕訳は重要な作業です。これは決算時に最終的な修正を行うための仕訳です。企業は日々の取引を複式簿記に従って仕訳し、試算表を作成して業績や財産状況を把握しますが、決算時にはこれに加えて決算整理仕訳を行い、企業の数字を確定させる必要があります。
期中の仕訳だけでは不十分で、決算整理仕訳を行うことで、期末に必要な調整を反映させます。業種によっては、取引が少なく規模が小さい企業では決算整理仕訳が比較的簡単で済む一方、取引が多く複雑な企業では決算整理仕訳も複雑になることがあります。
自分で決算申告を行う場合の手順STEP6 法人税申告書の作成
自分で決算申告を行うときの手順の6つ目は、法人税申告書の作成です。
法人税申告書(別表)とは、株式会社や合同会社などの法人が、その事業年度に得た所得に対して支払う法人税を申告するための書類です。
合わせて読みたい「税理士なしで法人決算を行うときの注意点」に関するおすすめ記事
法人決算は税理士なしでもできる?自分で行う場合の注意点とリスクについて解説
特定の要件を満たす法人が税金の減額を受ける「特別控除」を適用する場合、申告書には「明細書」を添付する必要があります。たとえば、「試験研究費の特別控除」を適用する場合は、「別表六(六)」という試験研究費に関する明細書を作成し、申告書に添付して提出しなければなりません。
自分で行う決算申告に関連するおすすめ記事
自分で決算申告を行う場合であっても法人税申告書を作成する必要があります。
法人税申告書の概要は以下の記事がおすすめです。
「法人税申告書とは?種類や書き方、提出方法を詳しく解説」
自分で決算申告を行う場合の手順STEP7 決算書類の作成
自分で決算申告を行うときの手順の7つ目は、決算書類の作成です。
作成する必要がある決算関連の書類は以下のようなものがあります。
引用:「令和5年版 法人税のあらましと申告の手引」
書類名 | 概要 |
総勘定元帳 | 全ての会計処理が科目ごとに記録された帳簿です。 |
証憑書綴 | 経費や領収書などの証明書類が日付順にまとめられたものです。 |
決算報告書 | |
・貸借対照表 | 企業の資産、負債、資本の状況を示した報告書です。 |
・損益計算書 | 収益と費用をまとめた報告書です。 |
・キャッシュフロー計算書 | 現金の流れを示した報告書です。 |
・株主資本等変動計算書 | 株主資本の変動を記録した報告書です。 |
・販売費及び一般管理費の明細 | 販売費や管理費の詳細が記載された報告書です。 |
・個別注記表 | 特定の会計項目についての追加情報を記載したものです。 |
法人税申告書 | 複数の別表とともに決算報告書を添付して提出する申告書です。 |
法人事業概況説明書 | 事業内容、従業員数、取引状況、経理状況などが記載された説明書です。 |
消費税申告書 | 消費税および地方消費税の申告に必要な書類です。 |
税務代理権限証書 | 税理士に申告書の提出や税務調査の立ち会いなどを委託するために必要な書類です。 |
地方税申告書 | 法人住民税や法人事業税などの申告に必要な書類です。 |
勘定科目内訳明細書 | 主要な勘定科目ごとの収支の詳細が記載された書類です。 |
自分で決算申告を行う場合の手順STEP8 取締役会や株主総会での承認
自分で決算申告を行うときの手順の8つ目は、決められた機関で承認を得ましょう。
監査役を設置している会社が決算申告を自分で行う場合、計算書類や事業報告、附属明細書はまず監査役の監査を受ける必要があります。これは会社法第436条第1項に基づいています。その後、監査を受けたこれらの書類は取締役会の承認を得る必要があります(会社法第436条第3項)。
さらに、定時株主総会では、取締役が事業報告の内容を報告し(会社法第438条第3項)、計算書類については株主総会での承認を受ける必要があります(会社法第438条第2項)。
自分で行う決算申告に関連するおすすめ記事
決算スケジュールについては以下のサイトが参考になるでしょう。
「取締役会設置会社(株式会社)の定時株主総会のスケジュールと手続き」
自分で決算申告を行う場合の手順STEP9 税務署へ書類の提出と納税を行う
自分で決算申告を行うときの手順の9つ目は、管轄の税務署に書類を提出し、納税を行う必要があります。
決算月から2か月以内に、確定した決算に基づいて法人税などの確定申告書を提出する必要があります。ただし、申告期限の延長を申請している場合は、消費税を除いて決算月から3か月以内が提出期限となります。
以下は、一般的に必要とされる提出書類をまとめたものです。
申告する税 | 提出先 | 提出書類 |
国税 | ||
法人税 | 所轄の税務署 | ・法人税申告書および地方法人税申告書(各種別表) ・適用額明細書(必要な場合) ・法人事業概況説明書(または会社事業概況書) ・勘定科目内訳明細書 ・決算報告書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、販売費及び一般管理費の明細、個別注記表) |
消費税(課税事業者のみ) | 所轄の税務署 | 一般課税 ・消費税及び地方消費税の確定申告書(一般用) ・付表2 または 付表1および付表2-(2) ・消費税の還付申告に関する明細書(還付申告の場合) 簡易課税 ・消費税及び地方消費税の確定申告書(簡易課税用) ・付表5 または 付表4および付表5-(2) |
地方税 | ||
法人都道府県民税法人事業税地方法人特別税 | 都道府県の税事務所 | ・法人事業税 ・地方法人特別税 ・法人都道府県民税の申告書(第6号様式) ・別表(必要な場合) |
法人市町村民税 | 市町村の税事務所 | ・法人市町村民税の申告書(第20号様式) ・別表(必要な場合) |
出典:「法人税の申告(確定申告)で提出する書類は何ですか?」
自分で決算申告を行う場合の手順STEP10 決算書類などの保管
自分で決算申告を行うときの手順の10個目は、決算書類の保管です。
自分で行う決算申告に関連するおすすめ記事
自分で決算申告を行ったあと、決算書類の保管期間は以下の記事がおすすめです。
「帳簿書類等の保存期間及び保存方法」
会社法では、帳簿書類の保存期間は原則として10年間です。これには会計帳簿も含まれ、税法とは関係なく10年間保存する必要があります。また、領収書や請求書などの書類については、税法により7年間または9年間の保存が求められます。
自分で決算申告を行う際に気をつけておきたい注意点
決算申告を自分で行う際、決算書、申告書、総勘定元帳、定款、登記関連書類、免許許可関連書類、不動産関連書類、重要な契約書や申請書、届出書などは、保存期間が定められているかどうかに関わらず、重要書類として永久的に保存することをお勧めします。
まとめ
決算申告は複雑に感じるかもしれませんが、中小企業の場合、自分で決算申告を行うことは可能です。重要なのは、毎月の経理処理を正確に行い、決算時にスムーズに対応できるように日頃からしっかりと準備しておくことが重要になります。
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