役員貸付金とは?デメリットや消し方を解説!
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公開日:2025年12月
更新日:2025年12月1日
会社経営において意外と発生しやすいのが役員貸付金です。役員貸付金は会社が役員へ資金を貸し付けた状態を示す勘定科目ですが、単なる貸し借りに見えて、実は放置すると財務悪化や税務リスク、融資審査での不利など、企業にさまざまな影響を与えます。
さらに、役員貸付金が長期間残ることで信用力が低下したり、役員報酬扱いとなって追加課税が発生したりするケースも少なくありません。そのため、役員貸付金とは何かを正しく理解し、発生する原因やデメリットを把握し、早期に適切な役員貸付金の消し方を実践することが経営安定には欠かせません。近年では生命保険を活用した高度な役員貸付金の消し方も注目されており、状況に応じて検討できる選択肢も広がっています。
本記事では、役員貸付金の基本からリスク、そして実際の消し方までを体系的に解説し、経営者が適切に判断できるよう総合的な視点でまとめていきます。
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役員貸付金とは

役員貸付金とは、会社が役員に対して貸し付けた金銭のことで、会計上は「貸付金」として計上されます。つまり、会社が役員個人に資金を提供している状態を指し、この役員貸付金がどのように発生し、どんなリスクがあるのか、そして後述する役員貸付金の消し方を理解することが非常に重要です。
例えば、役員が個人的な事情で資金を必要とした際に会社が貸付を行った場合や、会計処理の過程で形式的に貸付金が発生した場合などが、いずれも役員貸付金に該当します。役員報酬の調整目的で結果的に役員貸付金が発生するケースもあり、このような場合も正しく把握し、適切な役員貸付金の消し方を検討する必要があります。
SoVa税理士ガイド編集部
詳しくは後述しますが、役員貸付金を放置すると、金融機関からの信用低下や法人税の負担増加といった企業にとって大きな悪影響が生じます。
また株式会社では株主からの不信感を招くリスクも高まるため、役員貸付金は極力発生させないことが理想です。万が一発生した場合も、早期に適切な役員貸付金の消し方を実践することで、企業の健全性を守ることができます。
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役員貸付金が生じる原因

役員貸付金はさまざまな理由で発生しやすい勘定科目です。放置すると企業に大きな悪影響を及ぼすため、原因を理解するとともに、適切な役員貸付金の消し方を把握しておくことが重要です。
役員貸付金が生じる原因①:役員の資金不足による借入れ
役員貸付金が生じる代表的な理由が、役員自身の資金不足です。役員が個人的な事情でまとまった資金を必要とした際に、会社から一時的に借入れを行うことで役員貸付金が発生します。

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たとえば、役員個人が不動産を取得するときの頭金を会社が立て替えたり、納税資金を会社負担で一時処理したりするケースです。特に、中小企業で株主や役員が親族で構成される場合、役員貸付金が膨らみやすく、「後で返せばいい」と安易に処理してしまいがちです。
SoVa税理士ガイド編集部
しかし、このような役員貸付金は後から正しい消し方を選ばなければ法人税リスクや税務調査での指摘につながりやすいため注意が必要です。
役員貸付金が生じる原因②:決算調整による粉飾的処理
決算時の数字を良く見せるため、経費処理すべき支出をあえて役員貸付金へ振り替えるケースがあります。これは実質的に粉飾決算であり、当然ながら禁止されている危険な処理です。
不適切に計上された役員貸付金が多額に膨らむと、金融機関は「本当に返済可能なのか」「資金繰りは大丈夫か」と疑念を持ちます。調査が入れば粉飾が発覚し、民事上の損害賠償責任だけでなく、刑事罰・課徴金・上場廃止など重大な結果を招きます。
このような不正による役員貸付金は、本来の正しい消し方を適用できず、多くの場合は追徴課税など厳しい処分につながります。
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【第2回:役員貸付金】融資への影響や消し方を経営者向けに徹底解説
役員貸付金が生じる原因③:杜撰な資金管理による誤った計上
小規模企業でよく見られるのが、会社と役員個人のお金の区別が曖昧になり、結果として役員貸付金が生じてしまうケースです。現金出納帳をつけていなかったり、用途不明の支出をとりあえず役員貸付金として処理してしまったりする企業も多く、こういった杜撰な資金管理によって「いつのまにか増えている役員貸付金」が発生します。
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計上した本人すら忘れてしまう役員貸付金も珍しくなく、財務管理の甘さが原因で溜まった役員貸付金は、後から適切な消し方(役員報酬への振替、弁済、賞与扱いなど)を選ぶ必要があります。
役員貸付金によるデメリット

役員貸付金は少額であれば大きな問題にはなりませんが、放置すると企業に深刻な悪影響を及ぼします。適切な消し方を知らないまま蓄積してしまうと、経営や税務に大きなリスクが発生するため注意が必要です。
役員貸付金によるデメリット①:会社の手元資金が減少する
役員貸付金を計上すると、最も直接的な悪影響として会社の手元資金が減ってしまいます。
役員個人が会社から借入れを行う形で役員貸付金が発生した場合、あるいは法人の資金を私的用途に流用した場合も、会社の資金は確実に減少します。
SoVa税理士ガイド編集部
役員貸付金の消し方について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
手元資金が不足すると、事業運営に必要な支払いに充てる資金が足りなくなり、資金繰りが悪化するリスクが高まります。役員貸付金を正しく管理し、早い段階で適切な消し方(返済・報酬振替など)を行うことが重要です。
役員貸付金によるデメリット②:利息発生で税負担が増える

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役員貸付金には、法律で定められた利率に基づく利息を計上する義務があります。そのため、役員貸付金を抱えたまま放置すると受取利息が増え、結果として利益が膨らみ法人税負担が増えてしまいます。
役員借入金は利息をつけるかどうかを選べますが、役員貸付金は利息計上が必須である点に注意が必要です。こうした税負担の増加も、早期に正しい役員貸付金の消し方を実行することで回避できます。
役員貸付金によるデメリット③:役員報酬とみなされ追加課税が発生
長期間返済されず放置された役員貸付金は、税務上「役員報酬」とみなされる可能性があります。
役員報酬と認定された場合、源泉徴収していなかった源泉所得税・住民税を役員個人が追加で納める必要があります。さらに、社会保険料の追納、不納付加算税、重加算税が課されるリスクも。
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適切な役員貸付金の消し方(返済、賞与扱い、役員報酬への振替など)を選ばないと、個人・法人ともに大きな負担が生じてしまいます。
役員貸付金によるデメリット④:銀行の融資審査で不利になる
決算書に多額の役員貸付金が残っていると、銀行は「会社の資金が役員に私的流用されている」と判断します。
役員貸付金で気をつけておきたい注意点
また、「融資した資金が別会社に迂回されるのではないか」といった疑念を持たれるため、信用が低下し、融資審査が不利になります。金融機関は役員貸付金の存在を非常に厳しく見ているため、早期の消し方を実施し財務の健全性を示すことが重要です。
役員貸付金によるデメリット⑤:役員の死亡後、相続人に返済義務が生じる
役員貸付金は役員個人の借金として扱われるため、役員が亡くなった場合、その債務は相続人が引き継ぎます。
しかし、相続人が返済を拒否・困難とするケースも多く、会社としても回収不能になるリスクがあります。相続トラブルの原因にもなりやすいため、相続発生前に役員貸付金を適切に処理する消し方を選択することが非常に重要です。

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役員貸付金の消し方

放置すると大きなリスクにつながる役員貸付金ですが、適切な消し方を選べば確実に解消できます。自社の状況を踏まえて最適な手段を検討し、できる限り早い段階で役員貸付金を整理することが重要です。
役員貸付金の消し方①:役員本人による資金調達で返済する
役員貸付金が役員個人の事情で発生した場合は、まず役員自身が返済できるかを検討することが基本的な消し方となります。役員が金融機関から個人として借入れを行ったり、不動産や株式といった個人資産を売却して資金を作ったり、生命保険を活用して資金を捻出する方法が代表的です。
役員貸付金の消し方②:役員報酬の一部を返済に充てる
毎月支払われている役員報酬の一部を返済に回す方法も、役員貸付金を減らす現実的な消し方です。ただし、役員報酬を減額して返済に回せば役員の手取りが減る一方、役員報酬を増額して返済原資とする場合は手取りへの影響は少ないものの、税金や社会保険料が増えるため、どちらが適しているかは会社ごとに判断が必要です。また、役員報酬の変更は期首から3か月以内にしか認められない点にも注意が必要です。
役員貸付金の消し方③:役員退職金と相殺する
役員貸付金は役員退職金と相殺して消すこともできます。生前退職金を使った相殺であれば、役員個人の所得税負担を抑えつつ、会社側も用意すべき退職金額を減らせるため、双方にメリットが生まれます。死亡退職金を使うと相続税の負担が増え、相続人から回収不能になるリスクが高まるため、生前退職金を活用するほうが安全な役員貸付金の消し方です。
役員貸付金の消し方に関するおすすめ記事
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役員貸付金のデメリットとは?発生する要因や消す方法をわかりやすく解説
役員貸付金の消し方④:役員借入金と相殺する
会社が役員借入金を抱えている場合は、役員貸付金と相殺するという消し方も可能です。役員借入金は会社の資金不足時に役員が立て替えた際に発生する勘定科目ですが、多額の役員貸付金と同様に金融機関の評価を下げる原因になります。双方が増えれば財務が悪化するため、相殺して貸借関係を整理することは有効な役員貸付金の消し方になります。
役員貸付金の消し方⑤:自己株式の取得と相殺する
役員が所有する自社株式を会社が買い取り、その代金を役員貸付金と相殺する方法もあります。ただし、この役員貸付金の消し方では株式が会社に移るため、議決権割合や経営権に影響が出る可能性があります。そのため、株式の動きが経営にどのような影響を与えるかを慎重に判断したうえで実行する必要があります。
役員貸付金の消し方に関するおすすめ記事:役員借入金・役員貸付金を決算書から消したい
役員貸付金の消し方⑥:経営者の個人資産を会社へ売却する
役員が返済できない場合や、前述の方法では役員貸付金が十分に減らない場合、経営者が自らの個人資産を会社へ売却し、その売却代金で役員貸付金を返済するという方法もあります。ただし、土地や建物を売却する場合は司法書士報酬や登記費用などのコストが発生するため、慎重に検討する必要があります。
役員貸付金の消し方⑦:貸倒れ処理を行う(最終手段)
役員貸付金が膨らみ、返済や相殺による整理が難しい場合、債権の一部を放棄し貸倒れ処理を行うという最終的な消し方もあります。
役員貸付金に関する気をつけておきたい注意点
しかし、この方法では債権放棄した金額が役員賞与として扱われ、税金・社会保険料の負担が大きくなるうえ、取締役会や株主総会の承認も必要で手続きが重く、できる限り避けたい選択肢です。他の役員貸付金の消し方で対応できる可能性がある場合は、そちらを優先すべきでしょう。
生命保険による役員貸付金の消し方

保険商品を使った役員貸付金の大規模な消し方は、財務改善につながる有効な手法です。ここでは、スキーム全体の流れと注意点を分かりやすく解説します。
スキームの全体像と実行フロー(役員貸付金の消し方としての保険活用)
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保険商品を活用した役員貸付金の消し方は、役員貸付金を一括で解消し、財務内容を大幅に改善できる手法として注目されています。会社が契約者となり、役員を被保険者とする保険契約に加入し、その保険証券を担保に金融機関から役員個人が融資を受け、その資金で会社へ役員貸付金を返済するという流れで進みます。結果として、決算書上の役員貸付金は保険積立金に置き換わり、財務の健全性が高まります。
SoVa税理士ガイド編集部
役員貸付金の消し方について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
このスキームの実行フローとしては、最初に取締役会で役員貸付金の存在を正式に追認し、債務弁済契約を締結します。続いて、会社と金融機関の間で債権譲渡契約を締結し、役員貸付金の債権が金融機関へ移転します。会社は債権譲渡で得た資金をもとに保険料を前払いし、役員を被保険者とする保険契約へ加入します。
金融機関はその保険証券に質権を設定し、それを担保として役員個人に融資を実行します。役員は融資された資金で会社に役員貸付金を一括返済し、以降は金融機関への返済を継続します。この一連の流れにより、役員貸付金の中でも最も大掛かりで効果的な消し方が実現します。
スキーム実行時の注意点と前提条件(役員貸付金の消し方を成功させるために)
この保険活用スキームを実際に役員貸付金の消し方として実行するためには、いくつかの前提条件と注意点があります。まず、会社の財務内容が健全であることが欠かせません。債務超過の状態では金融機関が役員貸付金の債権を買い取るための審査を通すことができず、スキーム自体が成立しません。

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次に、役員個人の信用情報も非常に重要です。過去の金融事故や多重債務がある場合はもちろん、クレジットに関する問題があるだけでも融資が受けられない可能性があり、役員貸付金の消し方としてこの方法を選ぶことが難しくなります。
SoVa税理士ガイド編集部
また、役員自身が被保険者となるため、健康状態も審査対象となり、重い持病や健康上大きな問題がある場合は保険加入が認められず、このスキームは適用できません。
加えて、債権譲渡や保険料の前払いといった取引は税務上の論点が多く、仕訳の正確性を保ち、税務リスクへ配慮した適切な処理を行う必要があります。そして、役員が金融機関への返済を滞らせた場合には、保険証券が実行され、解約返戻金や保障機能が失われてしまうおそれもあり、この消し方には返済管理の重要性も伴います。
保険を活用した役員貸付金のスキームは非常に強力ですが、前提条件やリスクを理解したうえで慎重に進めることが、役員貸付金を安全かつ確実に消すための鍵となります。
役員貸付金が返済されない場合のリスク

役員貸付金が返済されないまま残り続けると、会社に深刻な悪影響が生じます。適切な役員貸付金の消し方を早めに検討するためにも、返済滞納がどのようなリスクにつながるかを理解しておくことが重要です。
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役員貸付金が返済されない場合のリスク①:債権放棄すると役員賞与扱いになる
役員貸付金が返済されないまま滞留すると、最終的に債権放棄という消し方を選ばざるを得ない場合があります。しかし債権放棄は税務上「役員賞与」とみなされ、会社では損金算入ができず法人税の負担が増え、役員個人にも所得税・住民税が課されます。
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役員貸付金の解消方法7選!早めの解消で損失やリスクの発生を防ぐ
社会保険料が増える可能性もあり、企業と役員双方に大きな不利益が生じるため、債権放棄は役員貸付金の中でも最も避けたい消し方と言えます。返済が難しい場合でも、まずは他の現実的な役員貸付金の消し方を検討することが重要です。
役員貸付金が返済されない場合のリスク②:金融機関からの融資が通りにくくなる
役員貸付金が返済されず残高が膨らむほど、金融機関の融資審査では強いマイナス評価につながります。資金の使い方や管理体制を疑われ、場合によっては「役員による私的流用が行われているのではないか」と判断されることもあります。さらに、貸借対照表では資産に計上されていても、金融機関は役員貸付金を資産として評価しません。

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返済期限が曖昧で、長期間返済されないケースが多いためです。
SoVa税理士ガイド編集部
その結果、融資のハードルは高くなり、借入額が減額されたり、審査自体が通らなかったりする可能性が高くなります。
企業の信用力を守るためにも、役員貸付金を早期に整理し、適切な消し方を実行することが欠かせません。
まとめ

役員貸付金は一見すると役員と会社の内部で完結する問題のように感じられますが、実際には財務や税務、融資審査など外部からの評価にまで影響が及ぶ非常に重要な勘定科目です。
役員貸付金が生じる背景には資金不足や杜撰な管理、決算調整などさまざまな事情がありますが、どのケースでも放置すれば企業の信用力を損なう原因になりかねません。そのため、役員貸付金のデメリットを理解した上で、自社の状況に最も適した役員貸付金の消し方を選ぶことが大切です。
役員本人の返済や役員報酬の調整、退職金との相殺といった基本的な消し方に加えて、生命保険を活用したスキームのような高度な手法も選択肢として活用できます。また、役員貸付金が返済されない場合には債権放棄が役員賞与扱いとなるなど、企業にも役員にも大きな負担が生じるため、早期の対策が不可欠です。役員貸付金の正しい理解と適切な消し方の実践が、企業の財務健全性を守り、より強い経営基盤を築く第一歩となるでしょう。
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