合同会社の一人社長が給料(役員報酬)を決める際の決め方と注意点
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公開日:2024年9月
更新日:2024年11月21日
近年、税金や社会保険料の削減を目的に、従業員を雇わずに代表者1人で運営する合同会社が増えてきており、一人社長や一人会社とも呼ばれます。
個人事業主として所得が増加すると、国民健康保険料や所得税、住民税の負担が重く感じられることがあります。これを解決する方法の一つが、一人社長で合同会社を設立し、法人から給料(役員報酬)を受け取ることで、社会保険料や税金の負担を軽減するという方法です。
ただし、給料(役員報酬)を法人税法上の経費として認めてもらうには、一定の条件を満たす必要があります。条件に従わずに支給すると、後の税務調査で経費として認められないリスクがあります。
SoVa税理士お探しガイド編集部
本記事では、合同会社の一人社長における給料(役員報酬)の決め方やメリット、注意点について解説します。
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目次
合同会社における役員報酬と給与の違い
合同会社において、役員報酬と給与はどちらも人件費として扱われますが、性質が異なります。役員報酬は、会社法や法人税法において、雇用契約に基づくものではなく、委任契約に基づく報酬とされています。したがって、取り扱いが給与とは異なります。
役員報酬とは?
合同会社の役員報酬とは、会社の役員に支払われる給料のことです。会社法では、役員は株主から会社経営を委任される立場にあり、会社との間に委任契約を結んでいます。役員報酬は通常、株主総会の決議によって年額の上限が定められ、それを毎月一定額の月額報酬として支払う形をとります。
給与との違い
合同会社の役員報酬は、役員としての給料であり、労働の対価として支払われる給与とは異なります。役員報酬は株主総会で決定された年額を基に毎月支払われるため、年度途中での変更は基本的に行われません。一方、給与は労働の成果に応じて変動することがあり、月ごとに支給額が変わる場合もあります。税法上、給与には月ごとの変動に関する制約はありませんが、役員報酬を損金算入するには一定の条件を満たす必要があります。
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一人社長で合同会社を設立するメリット
合同会社を設立すると、社会的信用の向上や経費の幅が広がるなど、個人事業主にはない様々なメリットを享受できます。ここでは、一人社長が合同会社を設立する際の主なメリットについて解説します。
一人社長で合同会社を設立するメリット①:社会的信用を得やすい
合同会社を設立することで、たとえ一人社長で運営している会社でも、社会的な信用度が高まります。合同会社を設立するには、商号や住所、資本金などの情報を法務局に登記し、その内容は誰でも閲覧可能になります。この登記によって法人としての責任が明確になるため、個人事業主よりも合同会社を設立するほうが信用が高まりやすくなります。
一人社長でも合同会社を設立することで、個人事業主では契約できない企業とも取引が可能になる場合があり、信用度の向上に伴って金融機関からの融資を受けやすくなる可能性も高まります。
SoVa税理士ガイド編集部
合同会社のほうが株式会社に比べると、法人化に伴うコストを抑えられる傾向があるので、融資を検討している方は、合同会社の設立を選択肢に入れてみるのも良いでしょう。
一人社長で合同会社を設立するメリット②:税負担が軽減しやすくなる
一人社長でも、合同会社を設立することで経費の適用範囲が広がり、税負担を軽減しやすくなります。個人事業主は事業所得全体が課税対象ですが、合同会社では、条件を満たせば給料(役員報酬)を経費として計上できるため、課税所得を減らすことができます。
また、個人事業主の所得税率は、所得に応じて最大45%になりますが、合同会社の法人税率は、資本金1億円以下で所得が800万円までなら15%、それを超える部分は23.2%となっています。そのため、所得が多くなるほど、法人化による節税効果が大きくなります。
気をつけておきたい注意点
ただし、全てのケースで法人化が有利になるわけではないので、合同会社を設立すべきかについては、専門家に相談しつつ判断することが重要です。
一人社長で合同会社を設立するメリット③:社会保険に加入できるようになる
合同会社を設立すると、一人社長でも健康保険や厚生年金保険といった社会保険に加入することが義務付けられます。厚生年金保険に加入することで、国民年金しか加入できない個人事業主に比べて、将来受け取る年金額を増やすことができます。ただし、社会保険料の事業者負担分が発生する点には留意が必要です。
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一人社長で合同会社を設立するメリット④:有限責任となり、倒産時のリスクが軽減される
合同会社を設立すると、一人社長でも個人事業主と異なり、倒産時の責任が有限責任となるため、リスクが軽減されます。個人事業主は無限責任であり、経営が悪化した場合、未払い金や借入金、滞納税金などの支払いを個人で負担しなければなりません。
しかし、一人社長として合同会社を設立すれば、出資額を超える支払義務が発生しないため、倒産しても個人の資産は保護されます。これにより、万一の際にリスクを最小限に抑えることが可能です。
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合同会社で一人社長の給料(役員報酬)を決める際のルール
合同会社において一人社長の給料(役員報酬)を設定する際、株主総会の決議に基づいて年間の上限額が決定されます。その後、社長には毎月同額の給料(役員報酬)が支払われます。
一人社長の役員報酬を経費として計上するためには、法人税法において「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかの要件を満たす必要があります。以下では、それぞれの要件について説明します。
一人社長の給料を決める際のルール①:定期同額給与
定期同額給与は、毎月一定の額を支給する給料(役員報酬)のことです。この金額は原則として、期首から3ヶ月以内に決定し、年に一度変更が可能です。ただし、経営状況が著しく悪化した場合には、給料(役員報酬)を減額することが認められています。
他のタイミングで給料(役員報酬)を変更することも可能ですが、変更による差額は経費として認められません。たとえば、月額50万円を20万円に変更した場合、30万円の差額は経費にできず、その分法人税が増える可能性があります。
一人社長の給料を決める際のルール②:事前確定届出給与
事前確定届出給与は、給料(役員報酬)の金額と支給日を事前に税務署へ届け出、その内容に従って支給するものです。合同会社の一人社長であっても、給料(役員報酬)を経費計上するにはこの届け出が必要です。
ここがポイント!
届け出は、株主総会の決議日から1ヶ月以内、または会計年度の開始日から4ヶ月以内のいずれか早いほうまでに行う必要があります。一人社長で新しく合同会社を設立した場合、設立日から2ヶ月以内に届け出を済ませる必要があります。
一人社長の給料を決める際のルール③:業績連動給与
業績連動給与は、会社の業績に応じて金額が変動する給料(役員報酬)です。定期同額給与や事前確定届出給与とは異なり、金額が固定されていません。
この給与を経費として認められるためには、次の条件を満たす必要があります。
- 金額が客観的な指標に基づいて設定されていること
- 有価証券報告書に記載し、開示していること
- 同族会社でない内国法人であること
合同会社で一人社長の場合、非公開企業であることが多いため、業績連動給与はあまり適用されず、定期同額給与を選択するケースが一般的です。
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合同会社で一人社長の給料(役員報酬)の決め方は?
合同会社で一人社長の給料(役員報酬)を決定する際の決め方について解説します。以下のポイントを基準に、適切な金額を設定する際の参考にしてください。
合同会社で一人社長の給料の決め方①:社会保険料を抑える
社会保険料を最小限に抑えたい場合、報酬月額を6.3万円未満に設定することで、最低等級に該当し、社会保険料を大幅に抑えることが可能です。最新の社会保険料については、全国健康保険協会のサイトを参考にしてください。
合同会社で一人社長の給料の決め方②:一人社長個人の所得税を抑える
極端な方法として、合同会社の一人社長で個人の所得税を最小限に抑えたい場合、給料(役員報酬)をゼロに設定することが考えられます。所得税は、給与から給与所得控除を差し引いた金額に基づいて計算されるため、収入を抑えれば控除内に収まります。
SoVa税理士ガイド編集部
2020年以降、収入が給与所得控除の年間55万円を下回れば、所得税は最小限に抑えられます。ただし、給料(役員報酬)をゼロにする場合のデメリットもあるため、事前に確認が必要です。
合同会社で一人社長の給料の決め方③:独立前の給料を考慮する
合同会社の一人社長の給料を決める際、独立前の収入額を参考にするのも一つの方法です。ある程度売上が見込めており、生活水準を変えたくない場合には、サラリーマン時代の給与額を基準に合同会社での給料(役員報酬)設定するのが良いでしょう。
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合同会社で一人社長の給料の決め方④:同業種・同規模の会社を参考にする
同業種や同じ規模の会社の、給料(役員報酬)を参考にして金額を決めることも有効です。国税庁が提供している「民間給与実態統計調査」では、株式会社の給料(役員報酬)に関するデータが公表されています。同規模の会社であれば参考にできますが、報酬を高額に設定しすぎると、資金繰りに影響する可能性があるため、バランスを考慮する必要があります。
合同会社で一人社長の給料の決め方⑤:会社の年間計画を考慮してシミュレーションする
一人社長の役員報酬を決める際は、合同会社の年間計画を考慮し、シミュレーションを行うことが重要です。年間の売上予測や必要経費を考慮し、設定した目標に基づいて現実的な給料(役員報酬)を決めれば、途中で変更する必要が生じるリスクを減らすことができます。
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合同会社の給料(役員報酬)を決める際の注意点は?
一人社長の合同会社における給料(役員報酬)の設定には、柔軟な対応と計画的な取り組みが必要です。以下の点を踏まえて、適切に給料(役員報酬)を決定することが求められます。
合同会社の給料を決める際の注意点①:報酬設定の柔軟性
合同会社の一人社長の場合、社会保険料や税負担を軽減するために、給料(役員報酬)を最低額に設定することが有効な場合があります。ただし、給料(役員報酬)を低く抑えすぎると、その分合同会社側の利益が増加し、結果として法人税の負担が増えることもあります。そのため、単に給料(役員報酬)を低くするだけではなく、法人税とのバランスを考慮した柔軟な設定が求められます。
合同会社の給料を決める際の注意点②:報酬設定の計画性
合同会社の場合、給料(役員報酬)は法人税法に基づき、会計期首から3ヶ月以内に決定する必要がありますが、その時点では合同会社の最終的な利益や法人税額は未確定です。そのため、給料(役員報酬)を設定する際には、事業の利益予測に基づいて計画的に決定することが大切です。報酬額を適切に設定するためには、期末時点の利益見通しを考慮する必要があります。
合同会社の給料を決める際の注意点③:柔軟かつ計画的な運用
合同会社の一人社長は、法人と個人の収入を総合的に見て、いかにキャッシュを残すかが重要な課題です。そのため、給料(役員報酬)の設定は、法人と個人の両方の所得を見渡しながら、柔軟かつ計画的に行うことが求められます。最終的には、合同会社の利益を確保しつつ、一人社長個人の年収を十分に確保することで、安定した財務基盤を築くことを目指しましょう。
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まとめ
今回は、合同会社の一人社長が給料(役員報酬)を設定する際のルールとその決め方について説明しました。
合同会社において、給料(役員報酬)を経費として計上するには、次の要件を満たす必要があります。
- 定期同額給与
- 事前確定届出給与
- 業績連動給与
合同会社の一人社長の場合、自由に報酬を設定しがちですが、これらの要件を満たさないと経費として認められない可能性があります。また、報酬額によっては、総納税額が予想以上に増えてしまうことも考えられます。
そのため、節税効果を最大化するためには、給料(役員報酬)の金額を決める際にしっかりとシミュレーションを行い、慎重に決定することが大切です。
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