会社設立後は社会保険に未加入のままでもいい?社会保険未加入での罰則も解説

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公開日:2024年8月

更新日:2024年11月30日

会社を設立した後、「社会保険にはすぐ加入しなくても問題ないのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、社会保険に未加入のままでいると、会社にとって大きなリスクとなるだけでなく、法律上の罰則を受ける可能性もあります。この記事では、会社設立後に社会保険へ加入する義務や、未加入で放置した場合にどのような問題が起こるのかを詳しく解説します。さらに、社会保険未加入のリスクを最小限に抑えるための対策についてもご紹介しますので、会社経営をスムーズに進めたい方はぜひ参考にしてください。

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会社が社会保険に未加入の場合の罰則とは?

会社が法的に加入義務のある社会保険に未加入だったり、対象の従業員が未加入だった場合、さまざまな罰則が科される可能性があります。

社会保険に未加入時の罰則①:6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金

社会保険に加入する義務のある会社が未加入で、その中でも特に悪質な場合、健康保険法第208条に基づき、6ヶ月以下の懲役や50万円以下の罰金が課される可能性があります。

ここでいう「悪質」とは、虚偽の報告をしたり、何度も指導を受けても従わないケースを指します。

社会保険に未加入時の罰則②:過去2年間分の保険料の追徴

社会保険未加入が発覚し、年金事務所等から強制的に加入させられた場合、過去2年間に遡って未納の社会保険料が請求される可能性があります。

社会保険料は給与だけでなく、賞与からも徴収されるため、一度に高額な支払いが発生し、会社運営に大きな負担をかけることがあります。

社会保険に未加入時の罰則③:企業が従業員の負担分も支払う可能性

社会保険料は、会社と従業員がそれぞれ半額ずつ負担しますが、過去2年分を遡って支払う場合も同様です。

しかし、既に会社を退職した従業員などの場合は、徴収が困難となる可能性があります。その際、会社が従業員の負担分も含めて全額を支払わなければならないことがあります。

なお、遡って支払う場合、まずは会社が全額立て替え、その後従業員分の社会保険料を請求することが可能です。

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社会保険に未加入時の罰則④:延滞金の発生

社会保険料を期日までに支払わないと、督促状が送付され、指定された期限までに支払いが行われない場合、延滞金が発生します。

延滞金は未納額に応じて計算されるため、未納額が大きければ、その分延滞金の負担も増加します。

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社会保険に未加入時の罰則⑤:ハローワークでの求人掲載不可

社会保険への加入が義務付けられている会社が社会保険に未加入である場合、ハローワークに求人情報を掲載することができません。

このように、社会保険に未加入であると、発覚した際には重大なリスクを伴います。会社は事前に加入条件を確認し、該当する場合は早急に手続きを行うことが求められます。

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社会保険に未加入時の罰則⑥:会社が損害賠償を請求されるリスク

社会保険に未加入の場合、従業員やその家族から損害賠償を求められるリスクがあります。例えば、従業員が病気やケガをした際に、医療費を自費で負担した場合、その損害の賠償を会社に求めることがあります。また、会社の退職後に年金を受給しようとして厚生年金が支給されなかった場合、賠償請求に発展するケースも報告されています。さらに、社会保険に未加入だった従業員の遺族が遺族厚生年金を受け取れない場合もあります。

このような法的リスクを避けるためにも、早めに適切な社会保険加入の手続きを行うことが重要です。

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社会保険への加入が義務付けられている会社や従業員の条件とは?

社会保険の加入義務は、会社単位と従業員単位でそれぞれ定められています。会社が未加入である場合だけでなく、加入すべき従業員が未加入の場合も指導や罰則の対象となる可能性があります。

社会保険加入が義務付けられている会社の基準

法律により社会保険への加入が義務付けられている会社は「強制適用事業所」と呼ばれ、事業主や従業員の意向に関わらず、社会保険への加入が求められます。

法人事業所:(国や地方公共団体を含む) 法律の種類に関わらず、株式会社、合同会社、合資会社、有限会社、各種法人が対象です。また、従業員がいなくても事業主(社長)1名だけであっても強制加入の対象となります。

従業員が常時5人以上の個人事業所:法定16業種に該当する場合は、強制的に社会保険への加入が必要となります。それ以外の業種では、任意で加入が可能です。強制加入の対象外となる主な業種は、農業などの一次産業、サービス業、宗教関連などです。

気をつけておきたい注意点

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会社設立している場合、従業員の数に関わらず、社会保険への加入が必要となるため注意が必要です。

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社会保険加入が義務付けられている従業員の基準

強制適用事業所にあたる会社で働く正社員は、原則として社会保険に加入する義務があります。また、週あたりの所定労働時間や月あたりの所定労働日数が、通常の労働者の75%以上に達する従業員も、本人の意思に関わらず、社会保険への加入が求められます。

さらに、上記に該当しない場合でも、以下の条件をすべて満たす従業員は、社会保険の対象となります。

  • 社会保険適用対象者が501人以上いる会社に勤めている
  • 週あたりの所定労働時間が20時間以上
  • 月の賃金が8.8万円以上
  • 雇用期間が1年以上見込まれる
  • 学生ではない

なお、2022年10月以降、適用条件が緩和され、1.の「501人以上」が「101人以上」に、4.の「1年以上」が「2カ月以上」に変更されました。さらに、2024年10月からは、適用対象企業が「51人以上」となるため、加入漏れがないよう十分な注意が必要です。

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社会保険の未加入会社への指導が強化されている理由は?

社会保険未加入の会社に対する指導が強化されている理由として、社会保険制度の財源確保や、多様化する働き方への対応が挙げられます。

  • 高齢者の経済的基盤の充実
  • 働き方の多様化への対応
  • 社会保険制度を維持するための財源の安定確保
  • 関係省庁との連携により未加入会社を把握しやすくなったこと

従来、社会保険適用推進の業務は法人登記情報を基に進められていましたが、その中には幽霊会社なども含まれており、効果的な指導が困難でした。

しかし、平成27年度から国税庁が法人事業所情報を提供するようになり、給与支払の実態に基づいて指導が行えるようになったため、未加入会社への指導が強化されています。さらに、労働力人口の減少、働き方の変化、長寿化する高齢期など、社会の変化も指導強化の一因となっています。

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会社設立後に社会保険に未加入だった場合の対応策

前述のとおり、会社設立後は社会保険の加入が必須ですが、例外として加入が免除されるケースもあります

たとえば、社長一人で会社を運営しており、役員報酬がゼロまたは月額12,000円程度の社会保険料を下回る場合など、社会保険料の支払いが物理的に不可能な場合です。このような場合、社会保険料の支払いができないと判断されれば、運用側が加入を認めないことがあり、これが唯一の例外となります。

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社会保険未加入の企業のケース

社会保険に未加入の企業には、主に以下の2つのパターンが見られます。

  1. 加入を希望しているが、まだ加入できていない企業
  2. 加入が可能であるが、未加入のままの企業

それぞれの状況を詳しく見ていきましょう。

1. 社会保険への加入を希望しているが、まだ加入できていない企業

会社設立直後で自身の給与が確保できない場合、社会保険に加入することが難しいことがあります。その場合でも、健康保険や年金保険には代替策が存在します。

健康保険の代替策

  • 国民健康保険への加入
    国民健康保険は他の保険制度に加入していない場合に適用され、市区町村で手続きが行えます。ただし、社会保険料は地域ごとに異なり、扶養家族がいる場合は一人一人に社会保険料が発生します。
  • 協会けんぽでの任意継続
    会社設立前に協会けんぽに加入していた場合、任意継続を選べることがあります。扶養家族がいる場合は家族分の社会保険料が賄えるため、費用面でメリットがあります。ただし、継続には一定の要件があり、申請には期限が設けられています。

年金保険の代替策

厚生年金保険に加入していた場合、会社の退職と同時にその資格を失います。20歳から60歳未満であれば国民年金に切り替える必要があり、手続きが遅れると将来の年金額が減少する可能性があります。切り替え手続きは市区町村で行い、配偶者の扶養に入ることも可能です。

SoVa税理士ガイド編集部

付加年金や国民年金基金などの制度を活用して将来の年金額を増やすことも可能です。

2. 社会保険に加入できるが、未加入の企業

社会保険の加入が可能にもかかわらず未加入の状態にある会社もあります。この状態は「未加入会社」として扱われます。

2015年以降、厚生労働省は国税庁と連携して未加入会社への調査を強化しており、給与支払いが確認された会社に対して、効率的に指導が行われるようになりました。その結果、適用指導を受けた会社は2010年の年間4,808件から、2015年には92,550件と大幅に増加しています。

社会保険未加入企業への対応

年金事務局は、まず未加入会社に対して社会保険加入の通知を送ります。この通知を受けた段階で会社は速やかに社会保険の加入手続きを開始すべきです。この段階で自主的に加入すれば、過去の未加入期間に対する社会保険料の請求は発生しません。

SoVa税理士お探しガイド編集部

しかし、通知に応じず未加入のままでいると、呼び出し通知が行われ、その後も応じない場合には会社への立入調査が実施され、強制的に加入手続きが進められます。この際、以下の罰則が発生する可能性があります。

追徴金
2年間さかのぼって社会保険料が徴収される場合があり、大きな負担となることがあります。すでに従業員が会社を退職している場合でも、事業者が負担する義務があるため、会社の資金繰りに大きな影響を及ぼすことがあります。

罰金
健康保険法第208条に基づき、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される場合があります。これは、立入検査で虚偽の回答をしたり、妨害行為を行った場合に適用されます。

社会保険の加入手続きは必ず行い、未加入によるリスクを回避することが重要です。

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社会保険に加入したがらない従業員への対処法

契約従業員の中には、毎月の社会保険料負担が増えることを理由に、社会保険への未加入を希望する場合もあるかもしれません。しかし、社会保険制度は本人の希望で選択できるものではなく、条件に該当する場合は必ず加入させる必要があります

対処法①:社会保険は義務であることを説明する

社会保険への加入に消極的な従業員には、まず、社会保険は任意ではなく、条件を満たせば必ず加入しなければならない「強制加入」の制度であることをしっかりと伝えましょう。

対処法②:労働時間の調整を提案する

フレキシブルな働き方が可能な場合、週の労働時間を20時間未満にし、月額賃金が8.8万円以下になるよう調整すれば、社会保険への加入は避けられます。ただし、2カ月連続して残業などにより週の労働時間が20時間を超え、今後も同様の状況が続くと見込まれる場合は、社会保険に加入させる必要があるため、慎重な対応が求められます。

対処法③:社会保険加入の利点を伝える

従業員に対して、社会保険に加入することによって得られる以下のようなメリットも伝えましょう。

  • 傷病手当や出産手当など、受けられる社会保障が増える
  • 家族を扶養に入れることができる
  • 老齢厚生年金を受給でき、年金額が増加する
  • 障害年金の受給資格が広がる
  • 遺族年金を受けられる遺族の範囲が拡大する

従業員の希望により社会保険に加入させなかった場合でも、企業は法的責任を問われる可能性があるため、十分な注意が必要です。

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まとめ

社会保険は、安定した生活を支える重要な制度です。従業員が加入者であり納税者である一方で、加入手続きや納税の実務は会社が担っています。会社がこの役割をしっかり果たしているからこそ、社会保険制度が円滑に運営されています。

税負担を軽減することは難しいかもしれませんが、手続きの負担を減らすことは可能です。具体的には、制度を正しく理解し、計画的に処理を行うことで手戻りを防ぐことや、専門家に外部委託することで効率を上げることが考えられます。

一方で、手間を増やしてしまう要因は、社会保険の制度を十分に理解せず、ミスや手戻りを繰り返してしまうことです。最悪の場合、手続きを放置して未加入による追徴金や罰則を受けるケースもあります。社会保険に未加入だった場合、迅速に適切な対応しないと、会社の資金繰りの悪化は避けられず、従業員や取引先からの信頼を失う可能性もあります。こうなってしまうと、事業の継続は非常に困難になります。

一時的な業務の繁忙や納税の負担があっても、社会保険には正しく加入し、適切に運用することを強くおすすめします。

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