会社設立時の補助金(助成金)申請は税理士に依頼すべき?メリット・デメリットも解説!
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公開日:2024年8月
更新日:2024年11月6日
目次
補助金(助成金)申請を税理士に依頼すべきかどうかに関する基礎知識
税理士は、経営者にとって最も身近な相談相手です。会社設立にあたって補助金(助成金)の受給を検討する際、多くの経営者は「自社の財務状況を理解し、経営をサポートしてくれる税理士に依頼したい」と考えるでしょう。
しかし、補助金(助成金)申請を税理士に代行してもらう際は注意が必要です。
会社設立時に使える補助金(助成金)には国、自治体、民間団体などが提供するものがあります。その中でも厚生労働省が管轄する補助金(助成金)の申請代行は、税理士ではなく社労士の専業とされています。
会社設立時の補助金(助成金)を税理士に依頼すべきかどうかを正しく判断するためには、補助金(助成金)に関する基礎知識を理解する必要があります。
補助金(助成金)申請に関する基礎知識①:税理士と社労士の違い
税理士と社労士は、それぞれ専門とする分野が異なります。税理士は税務の専門家であり、社労士は人事労務管理の専門家です。どちらも資格が必要で、独占業務が定められています。
税理士の主な業務は、税に関する相談や申告書の作成です。税理士法第2条第1項、第52条によって、以下の3つの業務が税理士の独占業務とされています。
- 税務代理:
納税者の代理として税金の申告・納付や税務調査への対応。 - 税務書類の作成:
確定申告書などの税務関連書類の作成。 - 税務相談:
納税額の計算や各種手続き、節税の効果算出などの税務全般に関する相談対応。
税理士の独占業務は、無償であっても無資格者が行うことは違法です。
一方、社労士の業務は企業や個人事業における労務管理です。社会保険労務士法第2条第1項第1号、第2条第1項第2号、第27条で、以下の独占業務が定められています。
- 書類等の作成:
労働社会保険関係の法令に基づき行政機関等に提出する申請書等の作成。 - 手続きの代行:
健康保険や雇用保険の加入・脱退などの労働社会保険関係の法令に基づく手続きの代行、助成金申請の代行。 - 帳簿書類の作成:
労働社会保険関係の法令に基づく労働者名簿や賃金台帳、就業規則などの作成。
補助金(助成金)には国、自治体、民間団体などが提供するものがあります。特に、厚生労働省が管轄する補助金(助成金)は雇用や労働条件の改善を目的としているため、その申請代行は社労士の専業とされています。
社労士の独占業務は「有償独占業務」といい、資格を持たない人が有償で業務を請け負うことを禁止するものです。無償で行っても、営利性があると解釈される場合もあります。そのため、弁護士を除いて、社労士以外の専門家が報酬を受けて社労士の独占業務を行うことはできません。
補助金(助成金)申請に関する基礎知識②:助成金について税理士に相談できること
補助金(助成金)に関して税理士に相談できる内容は主に以下の3つです。
- 補助金(助成金)の申請手続きのサポート
- 補助金(助成金)の具体的な活用方法
- 補助金(助成金)の適切な会計処理
補助金(助成金)を申請する際には、補助金(助成金)ごとの要件で定められたさまざまな書類を準備する必要があります。税理士に相談することで、書類の記録・管理が適切か確認し、補助金(助成金)の申請書類作成のサポートを受けられます。
また、受け取った補助金(助成金)は課税対象となるため、全額を使う計画を立てると危険です。補助金(助成金)を受けることで税負担が増え、キャッシュフローが悪化する可能性もあります。税理士に相談すれば、受給した補助金(助成金)の活用方法や税務上の扱いについてアドバイスを受け、リスクを回避できます。
税理士には、補助金(助成金)受給前の申請手続きから受給後の会計処理まで、補助金(助成金)に関する総合的な相談が可能です。
補助金(助成金)申請に関する基礎知識③:助成金について税理士に依頼できること・できないこと
補助金(助成金)に関して税理士に依頼できること、できないことは以下の通りです。
税理士に依頼できること
- 補助金(助成金)の情報提供
- 補助金(助成金)制度の変更に関する情報共有
- 補助金(助成金)申請書類作成のサポート
- 補助金(助成金)受給後の会計処理
- 補助金(助成金)に関する税負担軽減の提案
税理士に依頼できないこと
- 補助金(助成金)申請書類の作成代行
- 補助金(助成金)申請手続きの代行
- 就業規則の作成・変更
補助金(助成金)について税理士に依頼できるのは、企業に適した補助金(助成金)の情報提供や、審査のポイントを踏まえた書類作成の支援です。受給後の会計処理や税負担の軽減など、税理士の専門知識を活かしたサポートも受けられます。
一方で、補助金(助成金)の申請書類作成や手続きの代行、申請に伴う就業規則の作成・変更を税理士に依頼することはできません。
ここがポイント!
そのため、補助金(助成金)申請代行を丸ごと任せることはできませんが、補助金(助成金)情報の提供や申請サポート、税務知識の提供を含めた支援を受けたい場合は、税理士への依頼を検討するとよいでしょう。w
なお、厚生労働省以外が管轄する補助金(助成金)は他の専門家も申請代行できます。厚生労働省の補助金(助成金)とは異なり、自治体・民間団体の補助金(助成金)は採択件数が限られているため、審査に通らなければ受給できません。
金額が高額になりやすく、倍率も高いため、具体的な事業計画や事業の必要性が重視されます。そのため、厚生労働省以外の補助金(助成金)については、経験豊富な専門家に依頼することが審査に通る近道です。
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補助金や助成金について気になる方は是非ご覧ください。
税理士に会社設立時に補助金(助成金)申請を依頼するメリット
会社設立時に補助金(助成金)を申請するメリットは多くあります。
会社設立時に依頼するメリット①:返済が不要な資金である
会社設立時は何かと費用が発生しますが、補助金(助成金)は返済する必要がありません。返済しなくてよい理由は、補助金(助成金)の原資は会社と労働者が支払う雇用保険料や国税・地方税などが原資になっているものが多くあるためです。つまり、補助金(助成金)の要件に該当している個人や会社は受け取る権利があるため、返済義務はありません。会社設立時に返済不要の資金が約束されていることで、会社設立時には大きな助けになります。
会社設立時に依頼するメリット②:第三者からの意見が聞ける
会社設立にあたって補助金(助成金)を申請するためには事業計画書の作成が必要です。事業計画書を作成する過程で、会社設立する事業のビジョンや目安になる売上高などを明確にすることができます。また、審査がある場合は第三者からの会社設立に関する意見をもらうことができます。客観的な意見を参考にすることで、より良い事業へ発展させることが可能です。
会社設立時に依頼するメリット③:外部からの信用が得られる
会社設立にあたって創業補助金などを受給することができれば、金融機関などの外部から信用を得ることができます。会社設立時に受給が決定したということは、国や地方公共機関から事業計画が認められたことになりますので、融資を申し込む際などに有利になります。
会社設立時に補助金(助成金)申請を税理士に依頼すべきかどうか判断するためのおすすめ記事:【2024年版】起業・開業に使える助成金・補助金10選
会社設立時に補助金(助成金)を申請する際の注意点
会社設立時に補助金(助成金)を申請するメリットがある多くある一方で、以下の注意点についても理解した上で検討する必要があります。
補助金(助成金)申請時の注意点①:受給要件や審査がある
会社設立時に補助金(助成金)を受給するためには受給要件を満たさなければなりませんし、補助金(助成金)を受給するためには審査を通過しなければならず、申請すれば必ず受給できるものではありません。
補助金(助成金)申請時の注意点②:原則として後払い
会社設立時の補助金(助成金)についても原則後払いになります。審査を通過したからといってすぐに入金されるわけではありません。そのため、会社設立時、早急に資金が必要という場合には補助金(助成金)で対応することができず、金融機関などからの融資を考えなければなりません。
補助金(助成金)申請時の注意点③:書類作成に負担がかかる
会社設立時に補助金(助成金)を申請する場合に事業計画書を作成しなければなりません。また、審査を通過した後は資金の使い道などの報告書を作成し提出しなければならないため、書類作成に負担がかかります。
SoVa税理士ガイド編集部
特に会社設立したてで書類作成に慣れていない場合は、思いのほか時間を取られてしまいます。
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【起業家必読!】会社設立で受け取れる助成金・補助金を徹底解説
補助金(助成金)申請時の注意点④:期間が決まっているものがある
会社設立時に使える補助金(助成金)の中には、創業補助金など公募の期限が決まっているものがあります。公募の期限を見逃してしまうと申請することができませんので注意が必要です。
会社設立時に補助金(助成金)申請を税理士に依頼すべきかどうか判断するためのおすすめ記事:補助金・助成金の申請を税理士に依頼する方法と税理士の選び方を解説
会社設立時に補助金(助成金)を税理士に依頼するメリット
補助金(助成金)の受給要件は細かく、専門用語を理解しながら多くの項目を記入する必要があります。手続きも複雑でわかりづらいため、会社設立時の忙しい時期に補助金(助成金)制度を理解し、正しく申請するのは非常に難しいことです。
このような手間と労力に加えて、どの補助金(助成金)が会社設立にあたって自社に適しているかを把握できず、受給を逃す可能性も考慮すると、専門家のサポートを受けたほうが迅速で確実な受給につながります。
特に税理士に補助金(助成金)のサポートを依頼することには、以下のメリットがあります。
補助金(助成金)申請を税理士に依頼するメリット①:書類の精度向上でスムーズな受給が見込める
税理士に補助金(助成金)の申請を依頼すると、専門家のサポートを受けて書類を作成できます。これにより、精度と信頼性の高い書類を提出でき、スムーズな受給が期待できます。
補助金(助成金)の申請資料には難しい専門用語や法令の引用が多く含まれています。自社で対応すると、記載ミスや添付書類の不足などが発生する可能性が高いですが、経験豊富な税理士のサポートを受けることで、これらのミスを防げます。
税理士のサポートを受けることで、これらの書類の精度が向上し、審査をスムーズに通過できるため、受給までの時間を短縮できます。
補助金(助成金)申請を依頼するメリット②:効率よく補助金(助成金)の受給が完了し事業に集中できる
専門家(税理士)に補助金(助成金)を依頼することで、効率よく申請や受給後の処理が進められるため、自社の事業活動に集中できます。
自社で補助金(助成金)に関わる業務を行うことは不可能ではありませんが、正確な書類作成や会計処理には多くの知識と時間が必要です。特に会社設立前後は経営者にとって非常に忙しい時期であり、「補助金(助成金)を申請したいがなかなか手が回らない」というケースも多いでしょう。
ここがポイント!
税理士に依頼することで、会社設立前後の忙しい時期に補助金(助成金)の情報収集や煩雑な書類作成・会計処理にかかる時間を短縮できます。その結果、経営者や従業員は、会社設立後も利益を生み出す本来の業務に集中できます。
補助金(助成金)申請を依頼するメリット③:補助金(助成金)に限らない自社に適した資金調達を行える
税理士は資金調達支援も行っているため、補助金(助成金)に限らず自社に適した資金調達方法があれば、サポートを受けられます。
補助金(助成金)は申請後すぐにお金を受け取れるわけではなく、審査や後払い制度のために受給までに1年半かかることもあります。急いで資金が必要な場合は、他の資金調達方法も検討する必要があります。
税理士は、銀行や日本政策金融公庫からの融資、補助金(助成金)の受給、ベンチャーキャピタルや投資家からの出資、株式の発行、ファクタリングによる現金化など、さまざまな選択肢を提案できます。
補助金(助成金)申請を依頼するメリット④:受給後の会計処理や税対策も含めた補助金(助成金)活用ができる
税理士には、補助金(助成金)受給後の会計処理や税対策についても相談できます。これにより、受給後の処理も含めて補助金(助成金)の活用方法を考えることができます。
補助金(助成金)は税務上の扱いが複雑で、適切な会計処理を行うには税務の知識が必要です。適切な会計処理を行わないと、キャッシュフローの悪化や過少申告税や延滞金などのペナルティが発生することがあります。
例えば、補助金(助成金)の税負担によるキャッシュフロー悪化の危険性や、消費税に相当する額の返還義務が発生する場合があります。これらのリスクを避けるためには、税理士のサポートが欠かせません。
以上のように、補助金(助成金)は受給して終わりではなく、受給後の適切な会計処理や税対策が必要です。税理士に相談することで、受給後の会計処理や税対策も含めて補助金(助成金)を有効に活用できます。
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会社設立時に補助金(助成金)を税理士に依頼するデメリット
会社設立時、税理士に補助金(助成金)の申請を依頼する際の最大のデメリットは、費用がかかることです。
SoVa税理士ガイド編集部
税理士などの専門家のサポートを受ける場合、通常は料金が発生します。会社設立時に補助金(助成金)の申請を税理士に依頼する場合も同様で、一定の費用負担が必要となります。
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会社設立時に税理士に補助金(助成金)の申請を依頼する際には、主に以下の2種類の費用が発生します。
会社設立時に税理士に補助金(助成金)の申請を依頼する際にかかる費用
着手金(依頼時に支払う費用)
- 受給の難易度や依頼内容により金額が異なります。
- 依頼先によっては着手金が不要な場合もあります。
- 補助金(助成金)の受給可否に関わらず支払う必要があります。
成功報酬(補助金(助成金)受給の決定後に支払う費用)
- 受給金額の一定割合を支払います。
- 成功報酬の支払いは、多くの依頼先で求められます。
上記費用を踏まえた上で、会社設立にあたって税理士や社労士などへ依頼する場合は十分に検討するようにしましょう。
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会社設立時の補助金(助成金)を税理士に依頼するべきタイミング
補助金(助成金)については、可能な限り早い段階で税理士に相談することをおすすめします。「会社設立をしたい」と考え始めた時点で相談するのが理想的です。
補助金(助成金)は、会社設立してからでは申請しても受給できないことがほとんどです。会社設立にあたって既に支払った事業費用は助成対象外となるため、会社設立を始める前に申請する必要があります。
会社設立にあたって事業計画を策定する前のできるだけ早いタイミングで税理士に依頼すれば、会社設立における事業の方向性や目的を共有しながら、最適な補助金(助成金)の提案や活用方法、助成対象となる期間についてアドバイスを受けることができます。
ここがポイント!
補助金(助成金)の申請期限や支給申請期限に合わせてスケジュールを立て、申請書類の準備や必要な事業計画の策定などを円滑に進めることができるでしょう。
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また、補助金(助成金)は法改正や社会情勢の影響を受けて頻繁に見直され、以下のように要件の変更や既存の補助金(助成金)制度の終了が行われることもあります。
助成金制度の改正事例
- 緊急雇用安定助成金: 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて実施されていたが、2023年3月31日をもって終了。
- 雇用調整助成金: 新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例措置が、2023年3月31日をもって終了。
- 業務改善助成金: 2023年度から事業完了期限や手続きが変更。
- 各種労働関係助成金の生産性要件による割増制度: 生産性要件による労働関係助成金の割増は、2023年3月31日をもって終了。
会社設立にあたって気になる補助金(助成金)がある場合や申請を迷っているうちに、制度改正で要件が満たせなくなったり、制度が終了したりすることもあり、会社設立時に受給できる補助金(助成金)を逃す可能性があります。
- 「気になる助成金がある」
- 「受給できる助成金があるか知りたい」
- 「新しい事業を始めるにあたり、助成金を活用したい」
このような場合、会社設立を考え始めた段階で税理士に相談することを強くおすすめします。
会社設立時に補助金(助成金)申請を税理士に依頼すべきかどうか判断するためのおすすめ記事:会社設立時に税理士は必要?依頼するメリットとおすすめのタイミングとは
まとめ
これまでに述べたように、会社設立時に使える補助金(助成金)には税務と労務の両面が密接に関わっています。そのため、税理士と社会保険労務士の両方に依頼することをおすすめします。双方の専門家から総合的なアドバイスを受けることで、法的リスクを最小限に抑え、会社設立時に補助金(助成金)を適切に受給・活用することができます。
企業によっては、補助金(助成金)の申請に際して賃金台帳や雇用保険、労働条件の整備が求められる場合があります。中には、就業規則の内容変更が申請要件となる補助金(助成金)もあります。税理士と社労士の両方に依頼することで、企業の状況に応じた最適な補助金(助成金)の選定、書類作成や申請代行、受給後の効果的な事業資金活用まで、総合的なサポートを受けることができます。
このように、法的リスクを抑えつつ、補助金(助成金)を最大限に活用して会社設立時の費用負担を減らし、事業の発展や企業の成長を目指すことができるでしょう。
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